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意識

 「品質意識を高める」「安全意識を高める」こんなスローガンや講話を多用していないだろうか?

確かに意識が低い状態で仕事をしていれば、不良や事故が発生する。しかし「品質意識を高めろ」「安全意識を高めろ」と言えば従業員全員の意識が高まるだろうか?
「意識を高めろ」言われた方は何をすれば良いか判断できるだろうか?

意識が高まっている状態が可視化できなければ、「意識を高めろ」と指示した側も意識が高まっているかどうか判断できない。

意識が高まっている状態ではどの様な行動をとるのか?

例えば、品質意識が高まっている作業員は、設備の点検をもれなくしている、工程内で発生した不良の報告が早い、などの行動をとる。安全意識が高まっていれば、安全防具の着用が徹底している、危険箇所の点検に漏れがない、などの行動をとる。

この様に意識が高い行動、意識が低い行動を定義して、それらの行動が行われているか、行われていないかで意識のレベルを評価する。

この様な仕組みを作っておけば「意識を高めろ」という抽象的な指示をせずに具体的な行動を指示できるはずだ。

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品質意識


このコラムは、2019年1月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第773号に掲載した記事です。

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品質意識

 「品質意識」と言う言葉を使う事がよく有る。

「作業員の『品質意識』を高めて、慢性不良を減らしたい」
こんな風にお考えの経営者や経営幹部の方々は多いだろう。

ここで言う「品質意識」とはいったいなんだろう?
これが明確になっていなければ、作業員に「品質意識を高めろ」と言っても、効果はないだろう。品質意識が明確になっていなければ、自分は何をすれば品質意識が高まるのか分からないはずだ。

「意識」を辞書で調べてみると、以下の様に解説されている。

  • 物事に気づくこと。また、その心。感知。知覚。
  • (混濁・無意識などに対して)はっきりした自律的な心の働きがあること。
  • 状況・問題のありようなどを自らはっきり知っていること。
  • 思考・感覚・感情・意志などを含む広く精神的・心的なものの総体。特に対象を認識する心の働き。主観。物質・存在・世界・自然など、客観的なものに対する。現象学では世界を構成する超越論的自我の働き、また唯物論では存在に拘束される観念一般を意識と呼ぶ。
  • 単なる直接的な情意作用や知覚ではなく、自他の在り方自身を察知する明瞭で反省的な心の状態。また、その作用・内容など。自己自身を対象化する対自的・反省的働き、人格あるいは自我による統一・自律、一定水準の明晰さなどによって規定される。

(参照:三省堂・大辞林)

簡単にまとめてしまうと、意識が有る・ない(覚醒している・無意識状態)と言う知覚や感覚の領域に関する意識と、より高度な思考・認識などを含む領域の意識が有る。

「品質意識」と言う時の意識は後者の、より高度な思考・認識を含む意識と考えた方が良さそうだ。

品質に関して、状況や問題のありようなどを自らはっきり知っており、その状況や問題を自ら積極的に改善・解決しようと行動をとる事が出来る力を、「品質意識」と定義すれば明確になるだろう。

では冒頭に掲げた「作業員の『品質意識』を高めて、慢性不良を減らしたい」という課題を考えてみたい。

まずは、状況や問題のありようをはっきりさせる事が第一歩だろう。
つまり慢性不良がとはどのような不良なのか、なぜ発生するのか、どのように発見できるのか、の三点を明確にし作業員に知らせる必要が有る。
その上で、慢性不良を発生させない、流出させないための行動を作業員自身が考える事が出来れば、最高だろう。
通常はこの段階を現場の監督職クラスがやる事になる。

こう考えれば「作業員の『品質意識』を高めて、慢性不良を減らしたい」と言う課題に対する、経営者、経営幹部がとるべき行動は明確になっただろう。

慢性不良をきちんと解析し、再発防止対策を考える能力と意欲を現場監督職に持たせる事が、経営者、経営幹部がとるべき行動だと考えている。

経営者、経営幹部が自ら慢性不良の解析、再発防止対策を実践しても良いが、これでは現場監督職クラスがいつまでも依存体質のままとなり、幹部だけが忙しい状況になる。現場監督職クラスに能力が不足していれば、意欲を高める。意欲が高まれば、自分から成長する。
人を「育てる」事は困難だが、人が「育つ」のを助ける事は出来る。

品質道場「品質意識」もご参照ください。


このコラムは、2016年1月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第458号に掲載した記事です。

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品質意識

 以前「無料工場診断」でお邪魔した工場で,品質保証部ローカルスタッフの皆さんと昼休みに雑談をしたことがある.

アルミダイキャスト製品を中心とした工場だ.
午前中の現場診断で,工程内不良率が高いのがこの工場の問題点だと認識していた.しかし工程内不良品は,また原材料として再利用できる.歩留まりという観点だけを見ていれば,そこそこ良いデータが見えている.従って経営者の問題意識は,リードタイムや納期遵守に関する問題に集中していた.当然工程内不良率を下げてやれば,リードタイム,納期遵守率も改善できる.

品質保証部のスタッフはどんな問題意識を持っているのか興味があり,雑談をしてみた.

彼らの問題意識は「各部署の品質意識が低い」ということだった.
いろいろな部署の実例を挙げて品質意識に関する不満を説明してくれた.

しかし「品質意識が低い」ということは品質保証部にとっては不満ではない.課題だ.
「品質意識が低い」と不満を漏らすということは,自分たちの仕事が全うできていません,ということを言っているのと等しい.

品質保証部の仕事は「品質管理」と「品質改善」だ.
これを通して顧客の満足を得るのが品質保証部の仕事だ.
この二つの任務「品質管理」「品質改善」が円滑に行われるためには,従業員全員の「品質第一のココロ」を養わなくてはならない.

従って品質保証部のスタッフは他部署の人間が「品質意識が低い」という感想や不満を漏らしてはならない.どのようにすれば全社の品質意識が上がるかと真剣に考え,それを実際の施策に落とし込まねばならない.


このコラムは、2009年12月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第130号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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マズロー第六段階欲求

 先週末は第八期品質道場の最終回「品質意識向上」を開催した。
人の意識・意欲はどの様なメカニズムで動くのか?社会学者や心理学者の実験・研究を紐解き、それを組織の品質意識向上にどう役立てるのか?というテーマで勉強した。

20世紀にはあらゆる角度で人のモチベーションに関する研究が行われその成果が発表されている。しかしその研究成果が十分経営に生かされていないと常々感じている。

例えば「マズローの段階欲求説」は人の欲求を五段階に分け、下位の欲求が満たされると、上位の欲求を望む様になる、という理論だ。
五段階の欲求は以下の様になっている。
第一段階:生理的欲求
第二段階:安全欲求
第三段階:社会的欲求
第四段階:尊厳欲求
第五段階:自己実現欲求

中国人従業員のほとんどは、第一段階、第二段階の生理的欲求、安全欲求を満たしている。それでもなお、金銭が労働に対する主要因であると考えている経営者が多くおられる様に感じる。

ほとんどの従業員は、社会的欲求(所属している組織や集団に守られていると感じることができる)、尊厳欲求(仲間や組織が自分を承認していると感じる)を満たしている、または望んでいる段階だと思う。
その上で「自己実現」を目指すことになる。

というのがマズローの段階欲求説だ。
従って、金銭的なインセンティブよりは、より挑戦的な仕事を達成し仲間や上司から賞賛されることの方がモチベーションが上がるはずだ。

ところで「自己実現」を果たしてしまった人は、どこに行くのだろう?
もう死んでもいいという境地になるのだろうか(笑)
達観してしまえば、もうこの世には未練はないのかもしれない、と小人の私は考えていた(苦笑)

マズローは五段階欲求説を発表後、晩年に第六段階の欲求を発表している。
実は恥ずかしながら最近知った。

その第六段階の欲求は「自己超越欲求」と言われている。
自己実現の次は自己超越というとなんだか当たり前の様に思えるが、自己超越とは「利己」を超えて「利他」の境地に至るということだ。

自己実現までの段階はすべて「自分」が中心だ。自己生存欲求、自己成長欲求、自己実現欲求。自己が他人や社会・組織との関係で自己実現するまでの欲求で五段階は終わっている。

その先は他人の利益「利他」を目指す、というのは私たち仏教徒(葬式の時にだけ仏教徒になる潜在的仏教徒を含む)にとってとてもわかりやすい。

つまり自己実現を果たした人は、世のため人のために貢献することを欲求する。
自己超越欲求とは、社会貢献欲求と言い換えてもいいだろう。これには終わりはない。自己実現を果たした後も永遠に続く欲求だ。これなら何歳まででも生きられる(笑)


このコラムは、2018年5月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第663号に掲載した記事に加筆しました。

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品質保証の仕事

 中華系の工場の経営者と話をしていてあきれる事がある.
彼らは品質保証とは検査装置を買ってきて検査をすることだと考えている.もちろんちゃんとした考えをお持ちの経営者もいるのだが,中にはこんな考え方をしている人が本当にいるのだ.

こういう考えの下では品質保証部は検査をすること,不良が出た場合の客先対応が仕事となる.

工程内検査員を品質保証部の職員にしている.品質保証部の職員が異常に多い工場がある.こういう工場の経営者は,品質保証部の職員比率が高い,品質保証は製造部と独立した権限を持たせている,などと間違った自慢をしたりする.

製造部は不良でもなんでもただモノを作れば良い.それを品質保証するのが品質保証部の仕事である.という考え方である.

こういう工場で働いている従業員は品質保証部は「尻拭い」の仕事だと理解してる.
昔指導をしていた工場でもこういう風潮が蔓延しており,まずこの考え方を改めさせるところから指導が始まった.
生産技術にしろ,製造にしろこういう発言をする人間を叱りつけ,徹底的に品質保証のあり方を説明した.

すなわち,品質保証は会社のすべての部署の成果の「積」である.
「和」ではなく「積」であるといっているのは,どこかひとつの部署がゼロであれば,全体がゼロになってしまうという意味である.

したがって各部署が自部署の仕事の品質を保証する責任がある.

では品質保証部の仕事は何か?
「各部署が品質を保証できている事を確かにすること」が品質保証部の仕事である.
すなわち各部署が品質保証が出来るように仕組み・仕掛けを作る,品質保証が出来ている事を確認する仕事である.

これは決して「尻拭い」の仕事ではない.「尻拭い」をしなくても良くする仕事である.

品質保証部のリーダが「ウチの製造部は品質意識が低くて」と嘆いているのを良く耳にする.製造部が品質意識を高め品質保証が確実になるようにすることは,品質保証部の仕事である.
したがってこの嘆きは,自分の仕事がちゃんと出来ていませんと言っているのと同じだ.

品質保証部の職員は場合によっては製造部の管理者に生産を停止させる権限を持っていなければならない.中国式の縦割り型タコツボ組織は往々にしてこの権限発動を妨げる.

品質保証部の職員が生産現場のリーダに生産停止をするように言っても,上長の指示ではないのでいうことは聞かない.
品質保証部の上司に報告し製造部の上司から指示をしても,部署間の縄張り意識があり言う事を聞かない.
工場長まで上げて初めて生産停止が出来る.
この間に不良品を作り続けるわけである.

組織の責任と権限を明確にしておかないとこういうばかげた事態が日常的に発生することになる.
権限・責任とともに「品質意識」も高める必要がある。

こちらもご参考に「品質意識」


このコラムは、2008年9月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第50号に掲載した記事です。

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品質意識

 昔台湾人経営者から、ISO9001を取得したいので指導して欲しい、と依頼を受けたことがある。ISO9001を取得するだけならば、指導をパッケージ化して低価格で取得サポートしてくれるコンサル企業が有るから、そういう会社を探しなさいとアドバイスした。しかし彼は、ウチが必要なのは「ペーパーISOではありません」とおっしゃった。つまり認証が欲しいだけではなく、ISOを組織運営の基礎にしたいと考えておられた。大変意識の高い方だと感心し、工場を訪問した。経営者より先に、会議室に集まっていた品質部門の幹部と雑談していると、幹部からは「ウチの経営幹部は品質意識が低い」と愚痴を聞かされた。残念ながらこの会社の品質部門の幹部には、組織の品質意識を高めるのは自分の仕事である、と言う意識が低い様だ。

ここで「意識の高い経営者」「品質意識が低い経営幹部」と言う時の「意識」とは一体何を指すのだろうか、考えてみたい。

意識とは「起きている状態にあること」または「自分がおかれている状況を認識出来る状態にある事」と言う定義が有る。つまり覚醒している状態を意識がある、と表現する。昏睡状態に陥っている時は「意識が無い」外界の状況を認識出来る状態を「意識が有る」と言う定義だ。
この定義では「意識が有る・無い」を表すことができるが、冒頭の事例の様に「意識が高い・低い」を表現しようとすると違和感が有る。

あなたはどのように定義されるだろうか?
続きを読む前に、少し考えてみていただきたい。

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品質意識

 品質意識という時の「品質」は物の質(良品・不良品)ではない。もっと広義の「品質」だ。作業の質、サービスの質、経営の質などが含まれる。
作業、サービス、経営は全て「人」が行う。従って「品質」は「人質」と言えるだろう。

そう考えれば、「品質+意識」の意味が理解出来るのではないだろうか。

以前このメルマガでご紹介した、5S改善に意欲を発揮する班長さん、仕事貫徹に燃える電気店の店員さんなどが,品質意識の高い人だ。

●5S改善に意欲を発揮する班長さん「整理整頓が継続しない理由」
●仕事貫徹に燃える電気店の店員さん「仕事貫徹の意欲」

では従業員の品質意識を高めるためにはどうしたら良いだろう。

金銭的な報酬も効果があるだろう。
昔香港の警察官は、地回りのやくざと変わらなかったそうだ。自分の管轄区域の商店から「みかじめ料」を徴収するなどの行為がはびこっていたと言う。これに業を煮やした政府が、思い切って警察官の給与を上げたそうだ。この改革により、警察官の意識が変わり自分の仕事に対する誇りが高まった。結果不正を働く警察官が激減したそうだ。

しかし製造業において、金銭的な報酬を上げて従業員の意識を高めることが出来る企業はそうは多くないだろう。そのコストが利益を圧迫することになる。
従業員の品質意識が高まっても、会社が倒産したのでは意味がない。

香港警察の事例は、仕事に対する誇りを持たせることに成功した、と考えれば金銭を使わずに仕事に対する誇りを持たせる方法を考えればよいはずだ。

こちらもご参考に
品質道場「品質意識向上」


このコラムは、2017年3月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第521号に掲載した記事です。

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