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システムより理念

 最近続けて,若い中国人が経営する工場を3社訪問した.業種はさまざまだが,彼らには共通する点があった.
創業してがむしゃらに仕事をしてきた.そして事業が軌道に乗り,会社は大きくなってきた.しかしどうも管理がうまくできていないように感じる.だから日本式の管理方法や「システム」を勉強したいと思っている.

彼らとの会話の中で,盛んに『系統』(システム)と言う言葉が出てくる.
たぶんISO9001や中国人の経営コンサルタントの影響で『系統』とか『系統化』と言う言葉が,経営者の間で最重要点として認識されているのだろう.

TPS(トヨタ生産システム)等は,中国のコンサル会社,経営学書がこぞって取り上げており,ちょっと勉強熱心な経営者は全員知っているようだ.

しかし経営システムとは,会社ごとに違うものである.
例えば,TPSを真似しようとしても,会社や生産現場の風土が出来上がってなければ,導入は逆効果になる場合もありうる.

まずは,自分の会社をどういう会社にしたいのか,と言う理念があり,それを実現する方法として経営システムが出来上がるはずだ.

彼らが羨望する,日本式経営システムとか生産システムというのは,「幻」なのではないかと思っている.元々日本の企業は,「システム化」が下手だ.経営のシステム化,組織のシステム化というのは,元々米国企業のお家芸だろう.

日本的経営システムとは,現場の泥臭い努力の集大成であり,現場の努力が経営に報われるようにするための仕組みなのだと思っている.
本家米国のシステム的アプローチとは真逆だ.

したがって,日本的経営システムの形を真似しても意味のないことだ.
自分が経営する会社がどうあって欲しいか,そこに働く従業員がどうあって欲しいか.そういう経営理念がまずある.その上でシステムが意味を成す.

私が尊敬するT社長はこう言っている.
「三年後の夢.二年後の希望.一年後の実行」
私としては,もう少し長期にし(対数目盛りで)「五年後の夢,二年後の希望,一年後の実行」と言いたいところだ(笑)これが理念を経営計画に落とし込んでゆくことそのものだ.

そしてこれをもっと長期にする.
100年後,貴方の会社はどうなっていたいですか?
100年後には会社は貴方の手を離れているはずだ.そのとき貴方の会社がどうあって欲しいかを考えるのだ.

貴方の曾孫に富を与える会社であって欲しいのか?
社会に何かを貢献する会社であって欲しいのか?
従業員を幸福にする会社であって欲しいのか?

まず100年後の夢・理念があり,それから経営システムが出来るのだと思う.

私が会った中国の若い経営者たちは,経営システムと管理手法を学べば,会社経営が磐石になると考えていたようだ.ちょうど,チルチル,ミチルが青い鳥を探しに旅に出たように,彼らはシステム,手法を外に求める.しかし本当は彼らの心の中に答えはある.

100年後の会社がどうあって欲しいか,という話を,中国の若者にすると理解できずに引かれると思っていた.
しかし意外なことに,すごく感動したと言われる.

同行した助手に,アレは御世辞だよな?と確認すると,そうだと素気ない返事(笑)
しかし,帰宅後,その若者たちから長文のメールが携帯電話に届いた.

30代の若者でも100年もすれば,もうこの世にはいない.その時に自分の会社が,自分の曾孫に富を与える会社であって欲しいとは考えないようだ.

こういう若者たちが立派な経営者に育てば,中国はきっとすばらしい国になるはずだ.その過程で私がほんの少しでも貢献できれば大変光栄だ.


このコラムは、2008年11月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第178号に掲載した記事に加筆しました。

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理念の浸透

 従業員が同じ目的を共有し、共通の理念のもとに働く。経営者が目指すのは、この様な従業員が集まった組織だと思う。

そのために経営者は日々目的や理念を、全従業員に浸透させる努力をしなければならない。

例えば「○○を生産することにより、豊かな社会を実現する」と言う理念の工場で働く作業員や清掃係はどのような心構えで仕事をすべきか?
これが理解出来なければ、お題目の様に理念を毎日唱えても浸透しないだろう。

なぜなら、作業員や清掃係の仕事と理念が結びついていないからだ。
理念を何度唱えても、今自分がやっている組み立てや、トイレ掃除の作業と「豊かな社会の実現」が結びつかないからだ。

自分の作業や仲間の作業が集まり一つの仕事になり、その結果豊かな社会が実現出来ると言う事が腑に落ちなければ、理念はただのお題目となる。

ではどうすれば良いのか?
以前このメルマガで書いた様に「ストーリィの力」を使う。

「物語型内発的動機付け」

理念を箇条書きにしても、心にはささらない。
物語として伝えれば、腑に落ちる。

人類が太古の昔から、生き残る為の知恵として語り継がれ、DNAに落とし込むための手法が「物語」なのではないかと考えている。
私たちは子供の頃から「物語」として昔の人々の知恵を引き継いでいる。物語が、潜在意識に過去の記憶を刻み込み、DNAレベルの行動をひき出す事が出来るのだと推測している。

この様な方法で理念を伝えれば、一人ひとりの心の奥深いところまで理念が浸透するだろう。理念の浸透は広さと深さが必要だ。

映像制作を上海でやっている友人がいる。
彼は企業の新人教育や作業マニュアルを映像化する仕事をしている。
彼のサイトを見ていて、理念の浸透にはストーリィの力が有効だと確信した。


このコラムは、2015年8月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第439号に掲載した記事です。

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