子曰:“三年无改于父之道,可谓孝矣。”
《论语》里仁第四-20
素読文:
解釈:
この節は、学而第一-11と同じです。
国土交通省、2009年の自動車不具合による事故・火災情報をとりまとめ
発表によると、事故・火災情報の総件数は1138件。内訳は、事故154(13.5%)、火災984件(86.5%)となっている。また、装置別の事故・火災情報の上位は、不明342件(30.1%)、原動機191件(16.8%)、制動装置72件(6.3%)の順となっており、原因別では、点検・整備起因321件(28.2%)、原因特定できず273件(24.0%)、現車確認できず157件(13.8%)が上位。なお、製造設計に起因した事故・火災情報は、すべてリコールの届出がされているとのこと。
(中略)
●エンジンルーム内の可燃物置き忘れなどに関する調査結果概要
事故・火災情報の中で、エンジンルーム内の可燃物置き忘れなどが原因となった火災が72件あり、火災の分析、可燃物の発火温度、実車によるエンジンルーム内の部位別温度測定及び発火試験などについて調査も行っている。
それによると、車種別では、乗用車32件、軽乗用車19件で、原因別では、可燃物(ウエス等)の置き忘れ56件、枯れ草7件、小動物が持ち込んだ可燃物4件、鳥類が持ち込んだ可燃物4件であり、可燃物(ウエス等)の置き忘れが全体の約8割となっている。ユーザーへの注意事項は下記のとおり。
- 運行前に、エンジンルーム内に可燃物の置き忘れがないことを確認すること。
- 車両を長期間使用しなかった場合は、小動物や鳥類に持ち込まれた小枝等がないことを確認すること。
- 走行中、焦げた臭いを感じたときは、走行を継続しないこと。
(Car Wacthより)
国土交通省がまとめたこれらの資料は、自動車運送業に関わる者だけではなく、車を運転する者も、参考にすべき内容だと思う。運送業ではなくても社内に運転手を雇っている工場、会社の経営者・経営幹部は是非参考にしていただきたい。
今回は上記のCar Wacthに出ていた事例について考えてみたい。
ボンネットを開けエンジンルームを清掃し、ウェスを取り忘れてボンネットを閉めてしまう。工場でもありそうなミスだ。良かれと思ってやっているメインテナンスの結果事故を起こしてしまう。
枯葉や小動物、鳥類が持ち込んだ可燃物もしばしばエンジンルームを点検していれば見つけることが出来るだろう。しかしその点検で、二次災害が起きてしまう。ならば、いっそメインテナンスを止めてしまったほうが安全だ、などという極論にもなりかねない。
しかしメインテナンス後に問題が発生することは意外と多い。
メインテナンスも一つの変化点として、変化点管理をするよう留意すべきだ。
ところで国土交通量が呼びかけている注意事項は、「確認」だけだ。
いわゆる「ポカよけ」がない。
例えば複写機をメインテナンスして扉を閉めようとしても、レバーを戻し忘れると扉が閉まらないようになっている。こういうのを「ポカよけ」という。
ウェス忘れもポカよけが考えられないだろうか?
複写機と同じ方法はちょっと難しそうだ。
発想を変えて、ウェスを置いたままにしても問題ないように、エンジンの表面温度を下げる。
又は、ウェスが燃えても影響がないようにする。エンジンルーム内全てを、耐燃仕様にするのは大変なので、燃える可能性のある部分(コード類、プラスチックケースなど)のそばにはウェスが置けなくする。
更にもう一度発想を変えて、エンジンルーム内の問題が起きない場所にウェスの置き場所を作っておく。そこにウェスを置けるトレーを用意しておく。
置き忘れのチェック方法も工夫したい。
ウェスの置き場所を決めておく。例えばトランク内の決められた場所に、ウェスをエモン掛けに掛けて吊るして置くようにする。これならば洗車後、洗車道具をトランクにしまう時にウェスがないことにすぐ気が付くだろう。
このコラムは、2010年7月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第161号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】
私は現場改善の仕事をしている。お客様の工場に出かけ、生産性や品質の改善を現場で進める仕事だ。
面白いことに、景気が悪くなると改善コンサルの仕事が増え、景気が回復すると改善コンサルの仕事は減る。08年11月から徐々に仕事が増え、09年はかなり忙しかった。しかし09年の11月頃から、仕事が減ってきている。
お客様の工場は、受注が増え改善どころではなくなってきた、ということなのだろう。それはそれでめでたいことなのだが、忙しさに負けて改善を後回しにすると後で苦労することになる。
今は作業員が足りていない状況だ。徹底的に改善をし、少人数でも生産できる体制を構築する必要が有る。
最近は改善コンサルの仕事は減っているが、社内研修の仕事が増えている。
最近発生した、フォックスコンの連続自殺事件や、自動車部品メーカでのストライキの影響なのだろうか。お客様が、従業員の教育に力を入れ始めているのを、肌で感じる。
改善も従業員教育も、重要な仕事である。しかし一刻を争う仕事ではない、
「重要だが急ぎではない仕事」だ。こういう仕事は往々にして、後回しになる。
「重要だが急ぎではない仕事」は計画を立て、計画に従って進めるのが良い。
計画なしにいつかやろうと考えていると、時機を逸してしまうことがまま有る。
このコラムは、2010年7月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第162号に掲載した記事です。
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個人の使命の一番深い部分には、「信仰」が有るのではないだろうか。
信仰とは宗教だけではない。日本には、無宗教の人が多い。仏教でも多くの宗派がある。キリスト教など、多くの異なる宗教が混在している。これらの人々が争いごとも無く平和に共存しているのは、宗教だけではなく、道徳とか武士道というものが信仰の対象としてあるからではないかと考えている。
生きてゆく上で、拠り所となるものが信仰だと考えている。
中国で缶ビールを積載したトラックが横転する事故が有った。新聞の記事には、道路に散乱した缶ビールを失敬して飲んでいる男性の写真が掲載されていた。同じような事故が日本で発生した時に、散乱した缶ビールを飲んでしまう人がいるだろうか?
地震で被害を受けた商店から、商品を略奪する群集を海外からの報道で見る。
日本でも同じような略奪が発生することがあるだろうか?
日本人にとって、道徳とか武士道が拠り所となっているので、こういうことは日本では発生しないというというのが私の希望的観測だ。
仕事でも同じだ。
仕事のための拠り所となる使命が明確であれば、どんな仕事でも意義がある。
NASAのオフィスで働く黒人の清掃夫に、あなたの仕事は何ですか?と尋ねたら、「ロケットに人を乗せて、月に送り込むことさ。そのために俺はここで掃除をしている」と答えたそうだ。
レンガを積み上げている作業者に、あなたの仕事は何かと尋ねた時に
「見りゃ分かるだろう。こうしてレンガを運んで積み上げるのが仕事だ」
「レンガを積み上げて、教会を作っている」
「人々の安寧のために、教会を作っている」
と答える3人の作業者がいた時に、誰が一番モチベーションが高いか、一番仕事のパフォーマンスが高いか、明確だろう。
目前の作業ではなく、仕事を見つめる。仕事によって達成される自分の使命、自分の夢を考える。こういうことが考えられる人にとって、あらゆる仕事は苦役ではなく、夢を実現するチャンスだ。
作業を教えるのではなく、仕事を教える。更に使命を持つ、夢を持つことを教えられれば、あなたの従業員のパフォーマンスは上がるはずだ。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】
アディダス・ジャパンは14日、今年4月以降に全国で販売した女児用の水着が、着用して水にぬれると肌が透ける状態になると発表した。同社は自主回収する。薄いブルーと、薄いピンクの水着で6モデル、10種類が対象。
問い合わせは、同社の製品回収センター(0120・774・435)。同社によると、主に小学校高学年までで、身長100~160センチを対象とした「女児用スイムウェア」。これまでに、約4千着を販売した。生地と色の薄さが透ける原因だとしている
(asahi.comより)
スポーツウェアの業界では、新製品の「設計検証」「製品の妥当性検証」をどのような手順でやっているのだろうか?今回の様な不具合は、出荷後ではなくもっと早くに発見出来たはずだ。
本来この様な問題は、製品に使う材料を決定する段階で、問題に気が付かねばならない。
電気・電子製品の場合、新規に採用する部品・材料は設計の初期段階で、部材及び、それを供給するメーカの評価を実施する。長期信頼性など時間がかかる評価については、評価計画とリスク回避の代替案を初期設計審査で確認する。
今回の様な、透ける素材を使って水着をデザインするということはありえない。初期評価でサンプルを濡らしてみればすぐに分かることだ。
また、万が一不幸にも初期設計の段階で不適合に気が付かなかった場合も、設計検証で洗い出す仕組みになっている。それでも気が付かない場合は、量産開始前の第三者(普通は品質保証部)の製品妥当性検証で気が付く。この妥当性検証は、完全に利用者の立場で評価を実施することになっている。
電気・電子製品の設計者は安全事故を発生させない様に、最大限の注意を払う。水着メーカにとって「透ける」という不適合は、電気・電子メーカの安全事故と同等の致命的不適合だろう。
衣料メーカにとっては、意匠性が重要なのは理解できるが、基本的な機能の評価がおろそかになったり、手薄になると、今回のような回収騒ぎとなる。
「保証」と「補償」は紙一重。品質保証は「先手必勝」だ。
このコラムは、2010年7月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第162号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】
今度は、月でロボットになんかさせたるねん――。大阪の町工場発の人工衛星「まいど1号」を開発した東大阪宇宙開発協同組合(大阪府東大阪市)は27日、2015年を目標に人型の二足歩行ロボットを月に送り込む構想を発表した。まいど1号で得た経験を生かし、将来的には地質調査などで貢献したいという。
同組合の計画では、車輪型ロボットを15年に月に送り込もうという政府の宇宙開発戦略本部の構想に「便乗」。予算も補助金などで数億円を見込むが、それが無理でも、全国の人に支援を呼びかけたいという。
人型ロボットには、まいど1号で得た放射線対策や放熱技術を応用し、人間より小さなサイズを想定している。開発には全国の中小企業の技術を結集したいとしている。会見した同組合の吉田則之・副理事長らは「ハードルは高いが、『ものづくり』の技を世界にアピールしたい。2本足で無理だったら、四つんばいになってでも」と話した。
(asahi.comより)
東大阪の中小企業が集まって人工衛星「まいど1号」を打ち上げた話は、まだ記憶に新しい。プロジェクトに参加しなくても、そのニュースに触れて元気の素を得た経営者、若者も多いのではないだろうか?
その東大阪宇宙開発協同組合が、人型ロボットを創って月に送り込むという。「月でロボットになんかさせたるねん」という夢を掲げたプロジェクトだ。金融危機以来、日本だけが景気回復から取り残されているように見える。特に製造業の停滞感、閉塞感が厳しい。そんな中で「元気」を与えてくれるプロジェクトをまた東大阪宇宙開発協同組合がぶち上げてくれた。
製造業をボトムとするスマイルカーブ、つまり笑ったときの口の形の底が製造業であり、より付加価値の高い口の端の方にサービス業、金融業などが位置するという考えかたが浸透し始めている。中小企業だけではなく、大手企業までがモノ造りから離れ始めている。
しかし製造業がなくなるはずは無い。
このメルマガで再三提案しているが、スマイルカーブは、製造業の中でも適用できる。
顧客から支給された図面どおり加工するモノ造りが、スマイルカーブのボトムだ。付加価値を高めるために、ありえないサービスを提供する非常識なQCDを実現する現場力、魅力的付加価値を創造するR&Dを磨かなければならない。
R&Dといっても大企業がやるような、商品、素材の研究開発である必要はない。
新しい加工技術、素材の利用技術で良いのだ。東大阪宇宙開発協同組合の様に力を合わせれば、大企業でもやらない開発をも可能にする。
私も、こんな物を造りたいと言う依頼を仲間内に紹介していたが、世の中に無い全く新しいアイディアを実現できないかという話も出てきており、盛り上がっている。
「中国華南モノ造り協同組合」を立ち上げてみようかという気になっている。
時として、血縁や利害関係で結ばれた仲間より、夢の実現を目的に結ばれた仲間の方が団結力は強くなる。
このコラムは、2010年5月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第151号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】
子
zǐ 贡gòng 方fāng 人rén (1)。子zǐ 曰yuē :赐cì 也yě 贤xián 乎hū 哉zāi (2)?夫fú 我wǒ 则zé 不bù 暇xiá 。《论语》宪问第十四-29
(1)方人:人を評論する
(2)赐也贤乎哉:赐(子貢)も賢いものだなぁ。疑問語気。
素読文:
子
解釈:
孔子は子貢の人物評をからかって偉くなったものだと言ったのでしょう。しかし孔子自身も人物評をしばしばしています。子貢は孔子に「お前は器だ」と言われています。孔子は「君子は器であってはならない」と言っています。格調の高い瑚琏の器と言われてもがっかりしたでしょう。
先週は広州市で開催された「広東省2010年科技創新与優秀QC小組成果発表大会」に呼んでいただき、参加をしてきた。
広東省科学技術協会、広東省質量協会、広東省科学技術諮詢服務協会が開催者に名を連ねており、180人ほどが参加する盛大な成果発表会であった。3日間で70サークルほどが活動成果を発表するそうだ。
中国広東省では、QCサークル活動が始まってすでに30年。今回参加した成果発表会はすでに10年継続しているそうだ。
今回の参加により、自分の不明を思い知ることになった。
今まで中国におけるQCサークル活動は、日系企業の中で細々と行われており、その活動は企業単位で縦にまとまっており、日本本社との交流はあっても、横方向の交流はないと考えていた。
しかし今回成果発表を聞いた11サークルは中国ローカル企業のほうが多かった。業種はタバコ、家電、空調、オートバイ、塗料、洗剤などの製造業だ。
中には日本で発表しても十分通用する活動もあった。
活動内容は「問題解決型」であり、ほとんどが不良の低減をテーマとしていた。製造部門主体でQCサークル活動が行われているようだ。中には明らかに製造間接・設計の活動テーマや、生産性改善、コストダウンの活動もあり「課題達成型」活動の切り口で取り組んだ方が良いテーマも有った。
「問題解決型」→「課題達成型」→「顧客指向型」に活動内容が変遷してゆく過程で、製造部門中心の活動が、全社的な取り組みに変わってゆくはずだ。
活動成果だけではなく、QCサークル活動にはOJT教育・訓練効果がある。むしろOJT効果のほうが大きいと考えている。
問題解決能力、改善能力、チームワーク(リーダシップ、フォロワーシップ)、QC手法活用能力、プレゼンテーション能力などを「計画的に」OJT教育・訓練できる。
日本ではQCサークル活動が下火になりかけているが、やり方を変えれば中国でも大きな成果を上げ、組織力を向上させることが出来るはずだ。
このコラムは、2010年4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第150号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】
山陽新幹線で3日、博多発東京行き「のぞみ56号」(N700系)のギアケースが壊れた問題で、上越新幹線でも2001年に同じようなトラブルが起きていたことが分かった。ともにギアケース内の歯車のベアリングが壊れ、部品がケースを内部から破損させていた。JR西日本の担当者は上越新幹線のトラブルを把握していなかったといい、教訓が生かされなかった。
JR西によると、のぞみのギアケース破損は、ケース内の小歯車の両側にあるベアリングが壊れ、部品が大歯車とケースの1センチのすき間に挟まったためとみられる。ベアリングが壊れた原因は不明だが、モーターの動力を小歯車に伝える軸が何らかの原因でずれたことなどが考えられるとしている。
JR東によると、上越新幹線のギアケースが壊れたのは01年4月22日。新潟発東京行き「Maxあさひ」(E1系)が高崎駅(群馬県)―熊谷駅(埼玉県)間を走行中、台車の異常を示す警告ランプが点灯した。列車はそのまま東京駅に到着し、折り返して新潟まで運行した。
車両基地で点検したところ、ギアケースが割れて潤滑油が漏れていた。
その後の調査で小歯車のベアリングが壊れ、その部品がケースを破損していたことが分かった。JR東は、ベアリングを押さえつけていた部品が不良品で、「遊び」ができていたと断定。改善策を講じたという。JR東によると、上越新幹線のトラブルの原因は鉄道総合技術研究所(東京)で究明し、国土交通省に報告した。
(asahi.comより)
「のぞみ」の車内に白煙が立ち込めたと言うニュースの続報だ。
このニュースを読むと、以前発生した上越新幹線での事故では、発煙する前に警告ランプが点灯し、故障が認知されている。しかしのぞみの事故の場合は、警告ランプが点灯せずに発煙が発生したようだ。ギアケースの破損と同時に、警告ランプが点灯しなかった原因も究明・改善しなければならないだろう。
乗り物に限らず、発煙・発火は利用者に多大な恐怖心を持たせる。あってはならない事故だ。予防保全、未然防止に最大限の努力を払わねばならない。
昔から、10年に一回同じような不良が再発されると言われている。
それは不良・事故を経験した現場の記憶が薄れて行き、また同じ事故を引き起こしてしまうためであろう。
不良・事故の経験を現場の記憶として継承してゆくには限界がある。
記憶として残すのではなく、記録に残し更に、組織の暗黙智として仕組み・仕掛けに落とし込まなければならない。
上越新幹線の事故の後に、車両保守点検手順、車両の製造手順、設計基準等が改定されただろうか?基準書、手順書の形で組織の暗黙智を形式智にしておくのが、過去の経験を忘れない方法の一つだ。
以前、積層セラミックチップコンデンサに亀裂が入る不良事故を経験した事がある。当時想定していたよりも、はるかに簡単にチップコンデンサには亀裂が発生することが分かった。そのため設計基準を変え、製造での加工方法も変更した。
しかし2年後、別の事業部で同じ不良が発生した。
当時私は大いに反省をし、毎月定例開催されていた全社QA会議の他に、全事業部の品質エンジニアが情報を共有しあうための月例会議を発足させた。そこで議論された内容は、技術資料・議事録として残り、全社に公開する。
これも組織の暗黙智を継承してゆくための仕組みと仕掛けになるだろう。
このコラムは、2010年3月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第144号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】
北海道足寄(あしょろ)町の旅館「オンネトー温泉 景福」で2014年10月、男性入浴客が浴槽内で倒れて重体に陥る事故があり、道警が業務上過失傷害の疑いで捜査している。事故直後の保健所の測定では、温泉に含まれる硫化水素ガス濃度が国基準を大幅に超えていた。この施設では以前にも2人が同じ浴槽で倒れ死亡しており、道警はこの2件についても経緯を慎重に調べている。
(朝日新聞電子版より)
この男性は、未だに意識不明で入院中だそうだ。
この事件以前にも2013~2014年に3人が入浴中に倒れ、救急搬送されている。内2名は死亡している。この時の死因は「溺死」、「虚血性心疾患」として片付けられている。同じ温泉旅館で3人が入浴中に死亡している。少なくとも3人目が硫化水素ガス中毒と判明した時点で過去2名の死因が正しかったのか再検証すべきではなかったのか?
「事態を重く見た環境省は今年9月に再発防止に向けた検討会を設置し、硫化水素を含む温泉の安全対策について基準を見直す方向で検討している」と記事にあるが、事故発生後2年経ってもまだ検討段階なのかと行政の行動速度に不信感を覚える。
この事故の原因は何だったのだろか?
直接の原因は硫化水素ガスが浴室内に高濃度で存在した事だ。
温泉であるから硫化水素がすが出る事はやむを得ないのかも知れない。しかし人が入浴するのならば、健康に害がない程度に排気や換気が必要だろう。
この温泉施設にはそのような設備はなかった。
そればかりではなく、硫化水素学の濃度を測定した事すらなかったそうだ。
別の記事によると、温泉旅館の主人は1987年開業以来一度も硫化水素ガス濃度検査を受けていないと言っている。監督官庁である保健所も、事件後初めて硫化水素ガス濃度を測定し、基準を超えている事を把握した。
保健所の監視要領には2年に1度立ち入り監視をする事が定められているが、監視項目に硫化水素ガス濃度の測定は含まれていない。
環境省の基準では都道府県知事が必要と認めた時には、温泉施設にガス濃度の測定を命じる事が出来るとなっている。しかしどのような時に測定を命じるのか基準は示されていないとある。そのため北海道ではガス濃度測定を命じた事はないそうだ。
法律に規定ないからやむを得なかった、などというのは言い訳に過ぎない。福島県、群馬県などは定期的にガス濃度測定を行っている。
少なくとも2人目の死者が発生した時点で、硫化水素ガスによる死亡の可能性を検証すべきだったはずだ。その上で、行政監視に欠陥がないか調べれば、3人目の犠牲者は出なかったはずだ。
工場の安全災害も同様だ。
マニュアルに書いてないから何もやらない、という考えを改めねばならない。
マニュアルは作成された時点で、想定した事態に対応出来る様に書いてある。当然その時点で想定出来なかった事に対する手順は書いてない。
それらを補って行くのは、マニュアルを運用している者の責任だ。日々発生するヒヤリハットから重大事故の潜在要因を見つけ、マニュアルを改訂せねばならない。
このコラムは、2016年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第499号に掲載した記事です。このメールマガジンでは、市場不良などの事例から再発防止対策のヒントをお伝えしています。
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