今日家賃の集金に来た大家さんが部屋に入ってきて開口一番「景気が悪い」彼は海運業の会社に勤めており,華南地区の製造業が軒並み景気が悪く,彼の会社にも影響が出ているとのことだ.
最近このあたりで工場の倒産,台湾,韓国系工場の夜逃げの話を良く耳にする.
しかし一方で注文が増えている工場もある.競争相手がつぶれてしまい仕事が回ってくるというのである.
こういう時期にしっかり力を蓄えておけば,景気が回復した時に一気に波に乗る事が出来るはずである.ピンチをチャンスに変える.今のうちに贅肉のない筋肉質の体に鍛え上げておきたい.
ところで以前指導していた会社にいた中国人の若者は,独立してネジの工場を経営している.4年近く前に電話で独立した事を知らせてくれた.
一度工場を見に行ってやると言ってあったのだが,彼は遠慮してなかなか迎えには来なかった.ところが最近良く電話をしてくるようになった.
彼も電話のたびに景気が悪い,どこかネジを必要としている会社を紹介してくれというのだ.
しかし工場も見ていないのにうかつには紹介できない.たかがネジとは言え品質問題が出れば厄介なことになる.
随分昔になるが,北欧のメーカから周辺装置を購入していた事がある.
特に品質問題もなく安心していた.北欧のメーカにしばしば品質問題を出されてはたまったものではない.そのたびに工場に出かけて原因や対策の確認をするのでは,少ない出張予算があっという間になくなってしまう.
ところが突然メーカの品証から,今回納入したロットは使わないで返却してくれという連絡が入った.
報告によると製品に使用したネジの製造工程に問題があり,暫くするとネジの頭がポロリと取れてしまう事があるというのだ.
ネジを作った後にメッキをするが,メッキ後のアニール(熱処理)工程を飛ばしてしまったというのだ.
メッキ処理中に発生した水素原子が鉄ネジの中に入り込む.通常はアニール工程でこの水素をたたき出してしまうので問題がないが,水素が残留していると「水素脆性破壊」が発生する.応力がかかっている部分
が脆化してポロリと破断してしまうのだ.
メッキ工程は,水洗処理,薬剤による前処理・後処理,メッキ処理など幾つもの工程をバッチごとに持ちまわって処理をしている場合が多い.一種類のメッキ処理だけをやっていれば,工程順に処理槽を並べれば
間違いなく工程を進める事が出来る.何種類も同時生産をしていると,この製品にはこの処理は必要ないが
別の製品にはこの処理が必要という事が出てきてしまう.
メッキだけではなくこのような工程になっている製品はあるだろう.特に設備で加工する場合,バッチで設備間を持ちまわって生産するような製品は「工程飛ばし」「工程間違い」に対する予防策をとっておかないと必ずミスが発生する.
例えばある製品はA工程→B工程→C工程の順に生産するが,別の製品はA工程→D工程→C工程の順に生産する.
このような場合にどうすれば間違いなく工程順が守られ,工程を飛ばすことなく生産できるだろうか?
皆さんはどんな工夫があるだろうか?
またご一緒に検討してみたい.
今回の制約は,
・工場の中は機械化が進んでおらずバッチ単位で人間が持ち回り生産する.
・設備は簡単には移動できない.
という条件にしよう.
(次号に続く)
このコラムは、2008年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第61号に掲載した記事に加筆修正しました。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】