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双日、海外現地社員を日本で研修 幹部候補として

 双日は海外現地社員を幹部候補として日本で研修する制度を月内に導入する。
欧米、中東、中国、東南アジアなどから15人前後を選抜し、年2回開催する。商社の海外拠点は日本の出先機関として補助的な意味合いが強く、幹部社員のグローバル化が製造業に比べて遅れている。双日は将来的に現地社員の支店長も誕生させる方針だ。

 初回の研修は、米国やブラジル、ドイツ、アラブ首長国連邦(UAE)など12カ国から16人の社員を選抜した。30代後半から40代で、約2週間かけ企業理念のほか、本社での仕事内容、リーダーシップ論などを学ぶ。

 双日は6月に海外社員を1~3年間本社に置き実務を担当させる「本社逆駐在制度」を導入済み。今回、集合研修を加えることで現地の優秀な人材を登用しやすくし、競争力強化に向けた取り組みを加速する。三菱商事や三井物産など他商社も、海外で採用した社員の研修回数を増やしている。

(日本経済新聞電子版より)

 研修を日本本社で行うだけでは、本当のグローバル化とはいえない。
現地採用の幹部職員が、日本本社で海外拠点の戦略を決め、司令塔として働く。
日本採用の職員が、海外拠点で現地採用のトップの元で仕事をする。
この様な双方向の、グローバルな人材活用が普通に行われて、グローバル化と呼べるのではないだろうか。日本本社での研修はその第一歩でしかない。

記事には製造業のグローバル化が進んでいるように書かれている。
しかし私の周りの日系企業を見ると、ローカル採用の人材(日本人を含む)が経営幹部となっている企業はまれだ。部長職のローカル人材はいるが、経営的決定権は持っておらず、課長職、係長職レベルの仕事しかしていない例が多い。

中国人大学生の日系企業に対する人気は低い。
就職したい企業トップ100に入る日系企業は、2、3社しかないのが実情だ。
それは彼らにとって、社内の上昇空間が狭いからだろう。重要なポジションは、全て日本本社からの駐在員が占めており、その下にしか中国人従業員のポジションがないとしたら、優秀なものほど転職してゆく。

本社採用の中国人が、中国に異動になると、中国人上司より給与が高くなると言う逆転現象も発生している。

ローカル採用でも、実力さえあれば日本本社の職位にもつける。
そのためには、給与テーブルもグローバル化しなければならないだろう。
ローカル人材をコストと考えていると、本当のグローバル化は不可能だろう。


このコラムは、2011年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第230号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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ディズニー流人材育成

 人ごみが嫌いな自分は、東京ディズニーランドに行った事はない。
しかし、随分昔から東京ディズニーランドには興味を持っている。
そのきっかけは、週末の夕刻に放送していたFM番組でTDL設立のエピソードを聞いたことだった。

米国ディズニーランド本社役員に、TDL開業のプレゼンテーションをした時の逸話が実に面白かった。

  • 本社役員たちは、リスク分散のため出張時には同じ飛行機に乗らない。
  • 浦安の建設予定地を案内する時に使ったトリック。
  • 役員たちの好みを事前調査し、徹底的にもてなした。
  • プレゼンテーションとはこう有るべきだと、当時大いに啓発を受けた。
    (このテーマに関しては、後日機会があれば…)

    その後、海外の生産委託先を指導するようになって、委託先工場とTDLの類似点に気が付き、TDLのマネジメントを調べてきた。

    その共通点は、

    • TDLでは、マニュアルによってアルバイト職員がゲストに感動を与えている。
    • 工場では、作業指導書によって出稼ぎ労働者が製品に付加価値をつけている。

    どちらも、長くて3年ほどしか働かない職員を、戦力として活用している。
    しかし一方は、アルバイト職員がゲストに感動を与え続け、リピート顧客が98%もある。他方は、作業員の管理がうまくゆかず四苦八苦している。

    TDLに集まるアルバイトが皆優秀かと言うとそうではない。
    毎年9千人のアルバイトが入れ替わる。優秀な人材を選別している余裕はない。
    「素質は問わない」採用しか出来ない。
    工場と同様だ。

    秘訣はTDL内の人材育成システムにあるはずだ。

    TDLでは、アルバイトをトレーナー(アルバイト)が指導する。
    工場では、作業員を班長(元作業員)が指導する。

    顧客に価値を提供している職員(感動、製品の加工)を直接指導しているトレーナー、班長を育成することが重要となる。

    TDLのリーダー育成システムを、工場に応用できたら、すばらしい工場になるはずだ。そんな思いで、手当たりしだいにTDL関連の書籍を読み、セミナーに出席し、元TDLの職員(しかもディズニーインスティチュート職員)に会いに行き話を聞く。そんなことをしてきた。

    最近読んだ
    「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方」
    はお勧めだ。

    初版が出て1年経つが、未だに売れ続け版を重ねているようだ。
    私は5月の連休に帰国した折、ショッピングセンター内の書店で見つけ、家内の買い物を待っている間に一気に読んでしまった(笑)


    このコラムは、2011年11月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第231号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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班長研修

 先週は立て続けに、班長研修についてのご相談を受けた。
日本人たった一人で、中国企業の品質改善に乗り込んでいる大先輩。
研修を提供しているパートナー。
職場を班編成にするため、班長の力量をアップしたいと考えておられる方。

班長研修で重要な点は、

  • 教える目的、学ぶ目的を明確にする。
  • 班長目線で、現場事例を中心に教える。難しい理論は使わない。
  • 一テーマ一回、30分くらいで完結する。
  • 研修の効果は、行動で測定する。

だと考えている。

こう考えると、班長研修は研修会社に任せるのではなく、社内で行うのがベストだと考えている。

私のビジネスにとって、研修はひとつの柱なので、自己矛盾しているように見えるだろう。しかし私たちが提供したいのは、班長研修のシステムそのものだ。
お客様から、毎年班長研修の仕事をいただくよりは、お客様に班長研修をするシステムを提供した方が、効果・コスト共に満足いただけるはずと考えている。

先にあげた、班長研修のポイント「一テーマ一回、30分」を外部の研修講師を呼んでやったのでは、お客様、研修会社共にコストがかかりすぎる。

「研修の効果は、行動で測定する」は、外部研修講師にはほとんど不可能だ。

研修の目的は、「知っている」を「できる」にする。「できる」を「行動を起こす」にすることだ。
並みの研修は「知っている」までしかサポートできない。
良い研修ならば「できる」までをサポートできる。
優良な研修でも「行動を起こす動機付け」までであろう。
その後、期待する行動を評価し、その行動を強化するのはお客様の仕事になる。

であるならば、私たちのノウハウをお客様に全て公開し、研修のPDCAを回すシステムを提供した方が、研修の効果は高くなる。

つまり、お客様の現場に即した教材の作り方から、研修の成果を測定する方法までを、お客様に合わせて造りこむ。そしてそれを毎年改善してゆく仕組みを入れる。
こういうやり方をすれば、お客様での研修効果が上がり、複数年度で見れば研修コストも安くなるはずだ。

このメルマガの読者様には、研修会社の方もあるかもしれない。
他の研修会社の方に、私の研修戦略を公開してしまったが(笑)
研修業界のレベルアップにつながれば「三方よし」(お客様、業界、自社)だと思う。


このコラムは、2011年10月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第229号に掲載した記事です。

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班長マニュアル

 先週は「職位が人を育てる」というテーマで記事を書かせていただいた。
しかし勘違いをしてはいけない。職位を与えておけば自動的に人が育つわけではない。モチベーションを与えて、教育訓練をしなければ人は育たない。

作業者の中から少し優秀な者を班長に抜擢する。
これはどこの工場でも良くやっている。しかしきちんと教育訓練ができているところは少ないように思う。
このような状態で、元作業者の班長がめきめき力をつけて立派な現場リーダに育つというのは、ほとんど奇跡といってよいだろう。

作業者のためのマニュアル(作業指導書)はほとんどの会社で作っている。しかし班長のためのマニュアルがある工場はあまり見たことがない。

以前このメルマガで紹介したことがあるが、ある工場(台湾資本の中国工場)でこんな光景を見たことがある。

作業現場の掲示板に、A4の紙に「私は注意して作業します」と何度も何度も書いてあるものが、作業者の署名入りで掲示してあった。
事情を聞くと、班長が作業不良を多発する作業者に書かせたものだという。

たぶん班長は、作業者に作業不良を発生させないようにどう指導してよいか分からずに、昔学校で教師から受けた「罰」を思い出して同じことをしてみたのだろう。

苦笑するとともに、この班長が不憫に思えた。
この班長は会社からも上司からも何も教えてもらっていないのだろう。

班長に昇進したといっても、他の作業者と同じように農村で中学を出てすぐに出稼ぎに出てきた女工さんなのだ。その彼女たちに何も教えないで仕事をさせる方が間違っている。

作業者に作業指導書があるのと同じように、班長が仕事の指針とできるマニュアルが必要だ。そしてそのマニュアルを使いきちんと教育をする。時々現場でフォローをしてやることによりOJTをする。

実はある工場のためにそのようなマニュアルを作ってみた。
「現場リーダのためのQAマニュアル」というタイトルだ。
書くそばから項目を追加したくなりほぼ毎日改訂している(笑)


このコラムは、2009年11月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第128号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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レンジから火花、犯人はゴキブリ 掃除で製品事故防止

 火花が出たオーブンレンジの中からゴキブリ4匹の死体が――。製品評価技術基盤機構(NITE)の製品事故の調査で、小動物がしばしば“犯人”とされている。

 「電気炊飯器が過熱して煙が出た」「電子レンジの電源が勝手に入った」。これらの原因は、製品内に入り込んだゴキブリやそのフンが基板に触れたことだった。

 他にも、ネズミがかじって冷蔵庫のコードから火が出たり、エアコンの室外機やパソコンの中にムカデが入ったり。彼らがよく出没する台所などは掃除して清潔に。

(asahi.comより)

 笑い話のようだが昆虫や小動物による被害は結構ある。
私は以前サラリーマンだったころ電源装置を作っていた。お客様(PCメーカ)から黒焦げになった電源装置を返却され、原因の調査を依頼された事がある。

エンドユーザ様からのクレームで、長期休暇の後電源を入れたらPC本体から異臭と煙が上がったという。電源装置の中を開けてみると、プリント基板のパターン面が焼けて殆ど炭化していた。中から黒焦げになった巨大なゴキブリが出てきた。

デスクトップPCの電源はPCがオフの時にも動作し続けている。
PC本体についている起動スイッチは電源スイッチではなく、CPUに起動の割り込みを入れるためのスイッチだ。このスイッチが押されたことを検出するために、PCがオフの時にも5Vの出力だけ供給し続けている。

僅かな電力だが、スイッチング電源は動作しており内部の電圧は400V以上になっている部分がある。この電圧に感電死したゴキブリが原因で発火したと推定した。

当然推定だけではお客様に信じていただけないので、実証実験をした。
事業部のメンバー全員に同報メールを流し、生きたゴキブリを捕獲してくるよう依頼した。さすがにすぐには集まらなかった。数日して知り合いのレストランから貰ってきた(苦笑)というゴキブリが手に入った。

早速スイッチング電源と同じ電圧のパターンの上をゴキブリに歩いてもらった。何度か繰り返すうちに、感電して死んでしまうゴキブリを観察する事が出来た。
ゴキブリは感電死した後も体内に電流が流れ続け、湯気のようなモノが立ち上がる。その後徐々に炭化してゆく事が分かった。

連休中PCがオフになっており、電源のファンが回っていない。
ファンの風孔からゴキブリが侵入。電源装置は動作しているので僅かながら暖かい。暖かいところを求めてさまよっていたゴキブリが内部の高電圧に触れ感電死、徐々にゴキブリ体内の水分が蒸発してしまい炭化してゆく。
そして連休明けにオフィスに戻ってきた人間がPCを立ち上げる。
電源の冷却ファンが回りだし新鮮な空気(酸素)が大量に供給され一気に発火、発煙にいたった。

実験結果からこんな「推理小説まがい」の不具合解析報告書を書き上げお客様に提出した。

しかしこの対策に困ってしまった。
世の中にはゴキブリが寄り付かないプリント基板が存在する。
家電メーカ系列のプリント基板業者がゴキブリが寄り付かないプリント基板を商品化している。昆虫の生態学者かと思われるほどの知識を持った営業マンに色々教えていただいた。

ゴキブリが嫌う臭いを基板に印刷してある。この基板を使うとゴキブリが寄って来ないそうだ。
しかし普通のプリント基板よりもコストが高くなってしまう。
実はこのプリント基板業者の親会社も、一部の高級炊飯器にしか使っていないそうだ。

またゴキブリは温かいところが好きなので、常時通電しておくようなアプリケーションでは暖を求めてゴキブリが寄ってきてしまう。
ゴキブリは平たい隙間ならば難なくもぐりこんでしまうが、円形の孔に対しては体の幅以下の直径ならばもぐりこめない。

など教えてもらったゴキブリの習性から、冷却ファンの通風孔の形状を変更することにした。しかし出荷済み製品には適用できない。既出荷品に関しては長期休暇の間はコンセントを抜いておくように注意をしていただくことになった。

後にも先にもゴキブリによる電源装置の焼損事故はこれ一度きりだった。
当時品質保証を担当していた私は、こういう事故の調査解析が秘かな楽しみであった(笑)


このコラムは、2009年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第97号に掲載した記事に加筆しました。

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お金は「ありがとう」を流通させる通貨

 毎月定例で深センと東莞でセミナーを開催している。
毎回セミナーの後に懇親会を持っているが、参加された経営者様、経営幹部の方との懇談が毎回非常に有意義だ。

先週はある経営者様からこんな話を聞いた。

営業職員が、受注額確保のために無茶な値引きをするので「お金の意味」を教えたそうだ。

 マクドナルドでハンバーガを買ったときに店員に渡すお金は、ハンバーグを作るために働いてくれた人全てに「ありがとう」を伝えるためのものだ。

 オーダーを聞いてくれた人、キッチンで調理してくれた人ばかりでなくパンを作るための小麦を育ててくれた人、牛肉を作るために牛を育ててくれた人皆にお礼をいわなければならない。
 だけど皆忙しく、農場や牧場まで行って御礼を言う暇はない。

 遠くにいる人にも「ありがとう」を届けるためにお金はある。
 
 自分達がいただいているお金も、自分達の製品を作るために働いてくれた全ての人たちに「ありがとう」を伝えるためのものだ。だからむやみに安く製品を販売してはいけないのだ。

これなら誰が聞いても良く分かるだろう。
こんな子供みたいな話を、と馬鹿にしてはいけない。我々日本人とは違う教育、環境で育った人たちだ。理解しあっているつもりでは足りない。お互いに一つずつ理解しあう努力が必要だ。

以前、営業職員が楽に売れる利益率の悪いモノばかり受注してきて困る、と嘆いている社長さんにお会いした事がある。
この方には、営業職員の目標を「売上高」ではなく「売り上げ利益」にしてはどうですか?とお話をした。

やさしい例で意義を教える。
目標をきちんと目的に合わせる。

この二つがそろえば、従業員は成果を出す方向で仕事をしてくれるはずだ。


このコラムは、2009年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第84号に掲載した記事に加筆しました。

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両エンジンとも脱落 回収急ぎ原因究明へ 

 【ニューヨーク=真鍋弘樹】USエアウェイズ機がニューヨークのハドソン川に不時着した事故で、米国家運輸安全委員会(NTSB)は16日、事故原因の調査を本格的に開始した。野鳥の衝突による事故とみられているが、エンジンは2基とも外れて水没していることが判明し、原因を特定する物証はまだ得られていない。
……
 両エンジンは、機体がハドソン川に不時着した際に脱落したとみられている。水中ソナーで沈んでいる位置を特定する作業を進める。エンジンを回収し、付着物のDNA分析をすることで、バードストライクの有無や、鳥の種類まで分かるという。

(asahi.comより)

エンジンが停止してしまった旅客機を155人の乗客乗務員誰一人犠牲者を出さずにハドソン川に不時着させたチェスリー・サレンバーガー機長はすごい奇跡を起こした英雄としてたたえられている。

別の記事には

「あの機長は男の中の男だ。事故後、フェリーターミナルに座り、何ごとも起きなかったかのように制帽をかぶってコーヒーをすすっていた」
救出後の機長を近くで見た警察官は、そう米メディアに語った。

と紹介されている。まるでアメリカ映画のような話だ。

まだ事故の原因は判明していないが、このバードストライクというのは何とかならないものだろうか。鳥が飛行機のエンジンに巻き込まれるのは、奇跡的な確率だろう。航空機の事故も車の事故と比較したら発生確率はうんと低いだろう。
しかし発生確率だけで考えてはいけない。

人命がかかっており、更に1回の事故での犠牲者が自動車事故の100倍もある。
「重大性」という概念からすれば、航空機事故の発生確率は自動車事故の1/100でなければならない。
人命がかかっているという事を考慮すれば、発生確率は限りなくゼロでなければならない。

私たちのように工場でモノ造りにかかわっている者も、業界の水準がこの程度だからと不良率という概念に甘えるのではなく。不良ゼロを目指すべきであろう。


このコラムは、2009年1月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第78号に掲載した記事です。

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現場を知らない設計者が良い設計が出来るはずはない

 今日はテーマとして「設計不良」を取り上げた。

私が若かった頃は、工場にはたいていすごく怖い人がいたものだ。下手な図面を出すと電話がかかってきて叱られる。場合によっては工場まで呼びつけられて叱られる。

私は機械加工は専門ではないのだが、若い頃板金図面を描いていた時期がある。
その頃は良く板金工場の親方に呼び出されて叱られていた。加工する機械を見せられ、この機械でどうやってこれを作るのだ、と叱られるわけである。

私はこんな風にして、専門外の機構設計を学んだ。

本日のテーマで取り上げた会社は、本社設計部門の若手設計者が中国工場に出張してくることはめったにない。
実はこの会社の経営者は技術系の人間であり、設計者が忙しいのを十分承知しており、設計者の処分な負担を極力排除しようとしているように見受ける。
しかし現場を知らない設計者が良い設計が出来るはずはない。


このコラムは、2007年10月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第5号に掲載した記事に加筆しました。

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QFD

 QFD(品質機能展開)とは顧客の要求を開発、生産技術、製造、品質保証の各工程でどのように実現するかを明確にするツールだ。
例えば顧客の要求事項が「可愛い」だとする。商品企画は「可愛い」を実現するため商品の特性を定義する。という具合に設計、製造、販売、品質保証の各工程が達成すべき特性に展開する手法だ。

以前勤務していた会社でもQFDを作成していた。どちらかというとこの作業は開発設計部門の仕事のように捉えられていた。顧客要求事項をマーケティング部門から聴取し、製品仕様を決定する。各工程への展開は新規の製造技術が要求されない限り従来と同じ項目を埋め込むことになる。

アリバイ的にQFDを作成しました、という形式主義だったように思う。

しかし従来とは少し違う市場向けの新製品を投入する。市場が同じでも従来にない製品ラインナップを投入する。という場合には力を発揮するはずだ。
特に部門間のベクトルを合わせる機能がある。技術試作品が完成してからマーケティング部門からNGを喰らうようなことは発生しないはずだ。

つまりQFDは新製品開発における社内各部門のコミュニケーションツールとして活用できるはずだ。


このコラムは、2021年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1151号に掲載した記事に加筆しました。

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将棋と組織経営

 日本の将棋とチェスや象棋(中国の将棋)との大きな違いは、相手の駒を使える、「歩」であっても成金となることができる事だ。

日本の組織経営は「将棋型」と言えるのではないだろうか?

欧米の先端企業では、専門職を雇い専門職の能力を引き出し経営に貢献させる。と言う経営のように思える。高い金を出し、優秀な人材を雇う。その人材の効率を高めるために、余分な仕事をさせない。そのための人材を部下としてあてがう。

日本の組織のように「すり合わせ」とか「会議」などはない。
日本企業では社長がコピーを取る姿も見かける。日系企業に勤める中国人人事部長は、人材の無駄遣いと嘆いていた。

しかし日本の経営は「歩」や「金」銀」「飛」「角」が一緒に戦う。「歩」は単純な動きしかできないが、敵陣に攻め入れば「金」と同等の働きができる。さらに敵方の駒をも自陣の駒として活用できる。

日本の企業では雇った人材は「歩」を「金」にするように育てて使う。職種の変更も普通に行われる。工学部を卒業して技術者として雇われても、職場異動で営業職として活躍する人もある。

日本的組織は効率が悪いように思えるが、その効率の悪さが百年企業が多くある理由ではないだろうか?
今はだいぶ変わっているようだが、若手社員の給与を抑え、「年齢」で給与の上昇が期待できるようになっていたのも、社員が長く勤め自己成長をとげるモチベーションになっていたのだろう。

中途半端にチェスや象棋方式の組織経営を真似ないほうがいいと思う。


このコラムは、2021年6月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1155号に掲載した記事に加筆しました。

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