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電源コンセントの不良

 独立行政法人・製品評価技術基盤機構・NITEのホームページに2008年9月24日から9月30日までの事故速報が紹介されていた.事故速報79件中の3件が電源コンセントの不良と思われる事故である.

AC電源コンセント部分から火花が出て火災に至る事故だ.
現象だけから推定すると,ACコードのプラグを受ける金具の部分がゆるくプラグをくわえる接触圧力が不足したため接触が不安定になり火花がパチパチと発生したのであろう.

以上は日本での事故であるが,中国で販売している電源テーブルタップや,壁コンセントはすぐにユルユルになってしまう.事故統計データのようなものは見た事がないが,きっと多くの火災事故の原因になっているのではないだろうか.

特にソファーの裏側にある壁コンセントなど気をつけないと危ない.
ソファーに座るたびにコンセントに振動がかかる.ソファーの材質が燃えやすい.条件がそろっている.
NITEの事故情報を見てソファーの裏にある壁コンセントから電源ケーブルを早速引き抜いた(笑)

皆さんのオフィス,工場などの電源コンセントも一度点検をされてはいかがだろうか.火災に至らないまでも接触不良で電源が瞬断,PCのデータが飛んでしまった,などという悲しいことになりかねない.

ところで事故速報でもっと気になるのは複写機の背面から黒い煙が出たという事故報告が8件も発生していることだ.いずれも原因調査中になっているが,早く手を打たないと大きな事故につながりかねない.特に複写機は機械の周り,内部に紙が置かれているので容易に類焼してしまうだろう.


このコラムは、2008年10月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第46号に掲載した記事に加筆しました。

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不良データの取り方

 不良データはパレート図などで整理して,上位の不良から対策をする.というのが定石である.

しかしこの方法がうまく行かないと考えている方があった.
「現場が生産するときに支障となるような不良項目と集計上件数の多い不良項目とが一致するとは限らない。」という主張である.
そのため,「現場が優先して解消してもらいたいと思っている不良項目を確かめることが大事だ。」と言っておられる.

この方は不良データが役に立たないので,もっと現場の声を聞いて対応しようという主張をもっておられる.この考え方を否定するつもりは全くないが,別の考え方ができないであろうか.

現場の改善に役に立たないデータは集めても無意味である.品質管理部などの自己満足にしかならない.改善の役に立って始めてデータが活きてくる.

例えば,パレート図で不良数量が多い供給メーカを上位から順に品質改善をしても,現場の改善につながらないと彼は主張する.当然であろう.購入数量の多い供給メーカは,分母が大きいので不良数量でデータを整理すれば,上位に位置づけられることになる.

これはデータが役に立たないのではなく、テータの取り方が適切ではない.不良数量ではなく不良率でデータを整理すれば,購入量に左右されないデータが得られるはずである.

また工程が困る度合いと,不良率が一致しないと言う彼の主張もありうるだろう.
この場合は不良率でデータを整理しないで,不良による工程の停止時間、修理にかかる時間などの不良による損失でデータを評価すべきである.

データが役に立たないのではなく、データを取る目的をはっきりさせ,それにあわせたデータの評価をすべきだと考えている.


このコラムは、2008年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第46号に掲載した記事に加筆しました。

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不良品の流出

 中国の生産委託工場で,どう見ても工程内で不良として除去されねばならない物が出荷されてしまう事があった.

プラスチック筐体に入った電源装置が客先から不良返却されてきた.
中をあけてみると,部品固定用の接着剤がめちゃくちゃに塗布されていた.不良は別に原因があったのだが,何人もの作業員が接着剤の塗布が異常であるのを見ているはずなのにそのまま出荷してしまった.

接着剤を塗布した作業者,その下流のケースをつけるまでの工程の作業者が接着剤の塗布に異常があることを見ていながら全員何事もなくその製品を流してしまったわけだ.「異常品」を見つけても自分の作業として指示がされていなければ何もしない.

どうも彼らには,他人の仕事に口を出してはいけないという間違った「美徳」がある様である.

問題を発生させた工程と,その後で気が付くべき工程の作業者全員に連帯責任で罰金をかけるという手もあると思う.しかし過去の出来事で叱られても実感がわかない.このような不良が見つかるのは,氷山の一角でしかないので単に「運が悪かった」と思うだけ.ということであまり効果がないだろう.

また現場で叱ろうと思っても,このような現場に出会うのはよほどの幸運がなければ見つからない.

即効性は期待でないが,毎日毎日言い続けて作業者や班長たちの意識を換えてゆくしかてはないと思っている.
私は「Check-Do-Check」,前工程から受け取ったものをチェックして自分の作業をする,自分の作業結果をチェックして次工程に流す,ということをしつこく指導した.
また前日の不良品を集めて製造,品証,生産技術を中心とした幹部と毎朝不具合検討会をやっていたが,この場で教材になると思える不具合品があると,製造の班長を呼び現物を見せてしつこく教えた.

「異常とはいつもと違うこと」の具体例を現物で見せるわけだ.そして異常があれば必ず報告するように作業員に指導させる.

最終製品がエンドユーザにどのように使われているのかを,理解させる.それと平行して自分たちの使命(例えば良い品質の製品をお客様に届けて他の会社より高くても買っていただく)を良く理解させて,仕事に対する誇りを持たせる.

自分たちの仕事や製品に対する誇りがあれば,指示されたこと以上の仕事ができると考えている.


このコラムは、2008年5月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第34号に掲載した記事に加筆しました。

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設計不良

 ある台湾メーカの中国工場を指導していて驚いた事がある.
半完成品の最初の通電検査で不良が大量に発生しているのである.数%というオーダーではなく数十%も不良になっている.

訳を聞いて更に驚いた.
回路に使用しているICのばらつきによって,このようなことはしばしば起きる.その場合検査外れ品は回路中の抵抗を交換してやれば検査は合格し良品となる.従って工程内に山ほどラインアウトされた半完成品は,後ほど作業者が抵抗を交換してラインに再投入するのである.

私に言わせれば,これは設計不良である.
このような製品はすぐにラインを止めて,設計を変更すべきである.

しかしこの製品は量産開始以来ずっと工場の努力で生産し続けてきたのである.今更差し戻されても,というのが台湾本社設計部門のいいわけである.

ここは100歩譲って,先にICの特性を測っておきランク別にしておく.出庫するICのランクにあわせて抵抗を変更して生産する.このように部品表と製造基準を変えてもらった.

これで不良は1%未満となり通常の生産が可能となった.

更にこの工場には,試作審査と量産移行審査の制度を導入させた.
試作時の生産性の問題を整理し,これがきちんと解決していなければ量産には移らない.これをこの2回の審査できちんと確認をしてゆくわけである.審査を通らなければ,本社の設計部門に差し戻しである.

この制度を導入して一番喜んだのが,工場サイドのエンジニアだった.彼らは毎回本社設計部門の言われるがままに生産するしかなかった.それが自分たちで審査をしてだめなら「設計を受け取らない」「作らない」という選択があることを知り,モチベーションがすごく上がった.

もちろん「作らない」という負の対応ばかりではなく,今まで押し付けられていた生産を,自分たちで改善するという意欲が出てきた.

このように製造現場が変わると,本社設計部門も必然的に変わらなければならなくなる.現場の改革が,連鎖して全社を改革してゆくのである.


このコラムは、2007年10月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第5号に掲載した記事に加筆しました。

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人財品質

 品質月間に合わせ「設計品質」「製造品質」について考えてみた。最後に「人財品質」について考えてみたい。「人の品質」という言葉は奇異な印象を与えるだろう。「人質」という言葉もしっくりしないかも知れない。
企業活動における人のバフォーマンス、とでも理解すれば良かろうか。この定義で人財品質を考えると次の様な式を思いつく。

企業業績=a×全従業員の人財品質の総和×b×その他の経営因子
人財品質=能力×意欲×cosθ

企業業績は全従業員の人財品質の総和と、経営因子(商品力、不景気・好景気などの経営経営で制御できる因、制御できない因子)の掛け算で求められるのではなかろうか。

人財品質は能力と意欲はかけ算と考えるのが妥当だろう。つまり能力が高くても意欲が0ならば、業績に貢献する事はない。逆も然り、意欲ばかりあっても能力がなければ業績貢献は低い。
θは角度を表す数値で、企業が目指す方向と個人の方向の差異をさす。
つまり企業が目指す方向と個人の仕事に対する方向性が一致すれば、θは0°、cosθは1(最大値)となる。この様な人が「人財」と呼ばれる。

企業の方向性と個人の方向性に差異があれば、cosθの値は小さくなり、90°でcosθは0となる。つまり業績に何ら貢献をしない。こういう人を「人在」という。いるだけという意味だ。

θが180°、すなわち企業の目指す方向と個人の方向性が逆向きの場合、cosθは-1となり、業績に負の貢献を与える事になる。こういう人を「人罪」という。業績に害を与える存在となる。

マネジメントの仕事は人を活用し業績を出す事、と考えれば、管理職は部下の能力と意欲を高め,組織に方針を徹底する事が仕事だ。

つまり業績が悪いのは部下のせいではなく、管理職のマネジメントの問題だ。

元々人財品質が高い、もしくは人財品質を高めやすい人はいる。こういう人を「素質」がある人、というのだろう。素質がある人を採用し、人財となる様に育成する事が管理職の仕事だ。

素質の高い人とはどういう人か。私は「3K人材」だと思っている。「3K職場」の「3K」ではない。
好奇心。
向上心。
貢献心。
の3K心を持っている人を素質が高い人だと考えている。

好奇心、向上心が高ければ、能力や意欲を高めやすい。貢献心があれば,方針に対するぶれ(θ)を小さく出来る。

人財品質の根源はこの「3K」だと思うのだがいかがだろう。

こちらもご参考に
設計品質
製造品質


このコラムは、2016年11月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第504号に掲載した記事に加筆しました。

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製造品質

 「製造品質」というときの「品質」とは何をさすのだろうか?工程内不良が少ない、出荷品不良が少ない、という事を製造品質の評価指標として良いのか?

先週設計の品質を議論した際に、設計ミスの多少を品質指標として語ったが、設計品質は、その他に「機能」「操作性」「意匠」などが設計品質に含まれる。一言で表現すればユーザー・イクスペリエンスと言えば良いのだろうか。

「品質」という言葉を分解すると品(物)の質となる。漢字の束縛から自由になれば、ユーザー・イクスペリエンスという発想が生まれるだろう。

では、製造品質にもこの発想を適用するとどうかるか?
生産効率、生産リードタイムも製造品質と考えて良さそうだ。すなわち製造品質向上とは、不良削減ばかりではなく生産効率向上、リードタイム短縮もその範疇に入る。高度な設計公差に応える。美しい意匠デザインを量産で実現する。これらも製造品質だ。

価格競争が厳しいからこの程度の品質で……と考えるのは、品質とコストをトレードオフする考え方だ。こういう考え方をしていると、価格競争から逃れる事は出来ない。高度な設計要求に応える高度な製造品質があれば、価格競争から距離を置けると考えるが、いかがだろう。


このコラムは、2016年11月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第503号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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設計品質

 前職時代は、設計技術者としてプロセスオートメーション設備のハード設計でキャリアをスタートした。典型的な重厚長大製品で多品種微量生産だ。
その後、真逆の量産製品を海外の生産委託先で生産するという経験を品質保証の立場で経験した。生産委託先での生産立ち上げなどで、必然的に生産技術的なサポートもする。
この様な経歴で、商品企画から設計、生産、品質保証の全工程を修行した。

独立した当初は、日系企業、台湾企業の仕事がメインだった。本社で開発設計した製品を中国工場で生産する。従って工場の生産性向上、生産の品質向上がメインの仕事となる。

製品開発などの上流工程の仕事は殆どなかった。しかし中国企業からの依頼も増えており、上流工程の仕事も増えて来た。当然だが彼らは開発設計も中国国内で行っている。
昨年は中国企業の開発部門で、設計品質の向上プロジェクトを支援した。
先週は、技術系の中国企業から相談を受け、設計プロセスの革新を検討中だ。
連休中もデスクに貼り付いている(笑)

ところで、日系企業も少し様子が変わって来たように感じている。
ローコスト生産を目指し中国に進出して来た企業は、製品開発設計は日本国内で完結していた。しかし既に中国はローコスト生産国ではない。ローコスト生産を目指す企業はアセアン方面に出て行った。残った企業はローコスト生産から、消費地生産に切り替えている。開発設計は日本本社だが、顧客対応のエンジニアリングは中国工場で設計する企業が増えている様だ。
統計的なデータがある訳ではない。企業研修を提供している会社から設計部門に対する研修の依頼がじわっと増えている。

こちらの記事もご参考に
「設計品質」


このコラムは、2017年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第526号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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品質月間

 2019年11月は第六十回品質月間だ。今年のテーマは「みんなでつくる つなぐ お客様の笑顔」となっている。

以下は三年前に品質月間に合わせて配信したメールマガジンです。

 日本では、毎年11月に品質月間の行事が開催される。第57回となる今年の品質月間テーマは「あなたが主役 みんなでつなぐ 感動と安心を!」だ。

戦後間もない頃「Made in JAPAN」は安物の代名詞だった。安いだけならば結構だが、品質が悪い、すぐ壊れるという悪評ばかりだった。そんな状況を払拭せんと、企業が個別に品質管理強調月間を設け品質管理の意識を浸透し始めていた。品質管理活動を国を挙げて取り組もうと、日本科学技術連盟、日本規格協会、日本生産性本部、日本能率協会が主催機関となり、科学技術庁、通産省、日本商工会議所、日本放送協会などの後援を受けて「品質月間委員会」が結成された。この時(1960年)より毎年11月が品質月間と定められている。

頭初より品質月間は製造業ばかりでなく、消費者も一緒に参加する活動であるという趣旨により「品質管理月間」「品質管理強調月間」という生産者よりの名前は採用されなかった。つまり私たちの先輩諸氏は、60年も前から品質管理は自分たちのためではなく、お客様のためにすべきものと考えていたのだ。

品質管理、品質改善を従業員全員の品質第一のココロで進める。これは全て顧客満足を上げる活動だ。戦後、日本が急激に復興し工業国として世界的地位を築いた背景にはこの様な活動があったからだろう。

QC活動はTQC活動と呼ばれる様になり、製造部門ばかりではなく全社に広がる。さらにTQCからTQM(Total Quality Management)となり、品質以外の業務改善活動にも広がってきた。

しかし日本は中国に「世界の工場」の地位を奪われた感がある。日本人の完璧を目指す品質意識が中国との競争に負けた、と論評する人もいる。確かに家電業界は、軒並み日本勢が追い込まれている。しかし中国人が憧れる日本製炊飯器は、中国製と比較して2倍の炊飯時間がかかり、10倍の価格だ。それでも、わざわざ日本にまで行って買って帰ってくる。

世界のマスマーケットは、未だ「安かろう悪かろう」かも知れない。
しかし我々日本企業が、その様なモノ造りを続ける必要があるだろうか?
「安かろう悪かろう」のモノ造りを続けていても、従業員も会社も成長しない。

中国企業は金の力で業績不振に陥った日本企業の設計力を手に入れている。設計力が日本企業並みとなり、同じ中国人労働者を雇用している中国企業に対し、我々日系企業はどの様な戦略をもって競争優位となすべきだろうか?


このコラムは、2016年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第501号に掲載した記事に加筆しました。

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無駄を許容する

 青森県沖で訓練中の航空自衛隊機が墜落した。メルマガ執筆時、パイロットは依然行方不明であり、事故原因も不明だ。「レーダーから機影が消えた」という報道があるが、ステルス機がレーダーで捕捉できるのだろうか?墜落の原因は何か?など知りたいことは多くあるが、軍用機なのでその性能や弱点などを含む情報が公開されることはないだろう。

今日は事故原因からではなく、別の角度でこの事故を考えて見たいと思う。

航空自衛隊は、次期防衛戦闘機としてF35を導入することを決めているようだ。すでに150機ほど納入済み(あるいは納入決定)らしい。保守・修理を考えれば、すべて同型機で揃えるのが常識だろう。

整備・修理用の保守部品、機材、修理・メンテナンス中の予備機などの準備は同一機で運用する方が経済効果が高いはずだ。更に整備・修理工やパイロットも単一機とした方が育成コストが安く済む。

しかしもう少し踏み込んで考えると、揃えた戦闘機に致命的な欠陥が発見されると、代替えで運用できる戦闘機は無くなる。過去のF15が再登板する事になれば、戦闘時に性能的に劣勢になるかもしれない。軍備は相手と拮抗している事により「抑止力」となる。明らかに劣勢であれば、捨て身で本当に戦うことになる。

これは工場も同じだろう。同型の設備に統一しておけば、保守・修理などの運用コストは抑えられるが、その設備に固有な致命的問題が発生すれば生産が止まってしまうリスクがある。

組織も同様だと思う。
アリは働き者だという認識が一般的だが、実は一定割合でサボるアリがいる、という研究結果がある。その不埒なアリを集団から排除してしまうと、別のアリが働かなくなり、怠け者のアリの比率は一定となるそうだ。

全てのアリが休む事なく働き続ければ、多くのアリが疲れ切り集団の存続が危うくなる。「種の保存」原理が働いているのではなかろうか?
人間も、効率ばかり優先する集団より、無駄を許容する集団の方が、生産性や創造性が高くなるのではなかろうか?


このコラムは、2019年4月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第810号に掲載した記事に加筆・修正したものです。

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オンライン点検

 「オンライン点検」などという言葉があるのかどうかわからない。
通常点検・メンテナンスは非稼働時に行われる。稼働中の設備を止めて、又は非稼働時を狙って点検を行い、必要があれば設備を止めてメンテナンスを行う。

以前JR西日本でのぞみ34号の台車に亀裂が入っているのにそのまま運行した重大インシデントについてメルマガに書いた。

メルマガ第607号:運行停止判断、なぜ遅れた? 「のぞみ34号」トラブル

メルマガ第649号:のぞみ34号

メルマガ第652号:組織事故

この事故は、走行中に異常を感知しながら、運行を止めて点検する判断が出来なかったという問題だ。幸いにも何事もなかったが、一つ間違えれば大事故につながる重大インシデントだ。

直接のぞみ23号に関わる記事ではないが、JRは運行中に線路点検をしている、という記事を見つけた。

「鉄道の点検は列車にお任せ、首都圏でハイテク車両活躍中」(朝日デジタル)

運行車両にセンサーを取り付け、線路などの状況を運行中に監視するという。
通常は保線区の職員が、徒歩で線路の状態を点検する。ハイテク車両はレーザ照射、カメラなどの装備を備え、画像診断でレール、枕木、留め具などの異常を発見する。

新幹線でも「イエロードクター」という路線点検用列車が走っているそうだ。
記事のハイテク車両は営業運転中の車両に点検装備が積み込んであるので、リアルタイムで点検が可能になる。更にこういう仕組みがあると保線要員が歩き回る必要は無くなる。

同様の発想で、車両の各部にセンサーを貼り付け振動解析をすれば、今回重大インシデントとなった台車の亀裂は簡単に発見できるだろう。

工場の設備も同様のことができる。
ベテラン保全マンは、設備の稼働音を聞いただけで設備異常の兆候を察知する。このノウハウをセンサーと音声解析に落とし込むことで、故障する前に予防保全が可能になるはずだ。


このコラムは、2018年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第664号に掲載した記事に加筆したものです。

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