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何処からより何処へ

 普通の人は初対面の自己紹介で、出身地や勤務先などを話すだろう。
つまり「何処から来たか」を紹介する。自分が何者であるかを紹介する。
すでに実績を上げている人ならば「何処から来たか」「何をしてきたか」を紹介すれば良いだろう。実績はその人の価値だ。

ではまだ実績のない若者はどうするか?
精一杯背伸びをして「実績」を語っても、年長者の心には残らない。
実績より、何を目指しているか。つまり「何処から」より「何処へ」の方が聞き手の興味を惹き、共感してもらえるだろう。

すでに高齢者と呼ばれる年齢に達している自分も「何処へ」という話を聞けば、途端に何歳か若返り応援したくなる(笑)

【閑話休題】
 WHOの定義によると私は前期高齢者だそうです。特に『前期』に力を込めて申し上げる(笑)


このコラムは、2022年3月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1263号に掲載した記事です。

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流行語

 ニュースサイトを流していたら「ユーキャン新語・流行語大賞」発表の記事を発見した。記事には流行語大賞の候補が紹介されていた。

 中国に住んでいても、日本の新聞は毎日チェックしている。日本のニュースサイトも見ることもある。毎朝ポッドキャストでニュースを聞いている。

しかし流行語大賞にノミネートされた言葉はほとんど知らない。
常識的に何の意味かわかる言葉もあるが、意味すらわからない言葉、なぜその言葉が流行語になったのかわからない言葉がほとんどだ。

日本のTV放送を見ないためだろう。流行語の解説には、オリ・パラの影響でスポーツ関係の言葉が多かったとあるが、どれがそのスポーツ関係かさえ分からない(苦笑)

流石に「SDGs」は分かった(笑)
「NFT」も「みんなのメンタールーム」というPodCast番組を聴いていたおかげで分かった。あとはほぼ全滅だ。

まぁ、日本にいても「イカゲーム」「ウマ娘」は分からなかっただろう。

中国に住んでいるための「情報格差」と言うよりは加齢による「興味減退」と考えるべきだろう。これは由々しき問題だ。本ばかり読んでいては馬鹿になるのかもしれない(笑)


このコラムは、2021年11月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1214号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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チェックリストの使い方

 何らかの不具合(特に人為ミスに起因する不具合)の対策として「チェックリストを作成しました」という事例を多く見ると思う。

人為ミスの対策として「ポカ避け」「チェックリスト」「ダブルチェック」が三種の神器の様に信奉されている。

私自身この考え方に異論はない。
しかしよく考えると「ポカ避け」はミスの原因が起きない様にする発生原因対策だ。一方「チェックリスト」「ダブルチェック」はミスが流出しない様に検査をする、という流出対策だ。「ダブルチェック」に至っては付加価値を産まないチェックを二度もする。

それでも過去の失敗事例を集め、その集大成としてチェックリストを作成することを推奨している。それはチェックリストには、仕事が終わってから問題がないことを検査するという役割の他に、使い方があるからだ。

本来ミスが起きない作業方法(ポカ避け)を採用すれば、チェックという付加価値を生まない作業をする必要はないはずだ。しかし設計作業でポカ避けを組み込める場面は限られる。コンピュータ支援の設計作業には比較的簡単にポカ避けを組み込める(例えばPWB設計のCADでは、部品の間隔、位置などのルールを自動的にチェックできる)が、その手前の基本設計などではポカ避け機能を導入することはそうは簡単ではないだろう。

チェックリストは設計が終わってから確認するのではなく、設計開始時に何を確認して設計を進めるか考えるために使う。

設計完了後にチェクリストをリーダとともに確認をする。この時のリーダの役割は、設計者がチェックリストの意味を正しく理解していることを確認することだ。


このコラムは、2018年9月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第724号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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ダブルチェック

 読者様からこんなメッセージをいただいた。

さて、本日のメルマガ『ポカミス』についてですが、ポカよけ
うんうんとうなずきながら拝読させていただきました。
でも、一番の問題は何を持ってダブルチェックかをわかっていない管理職がいるということです(笑)
林さんのご指摘通り、ただ2回見ただけではダブルチェックではありません。
それを指導する側が認識していないで、ダブルチェックのミスを指摘してはいけませんよね。
そりゃあ、ミスする人に全くの責任がないとは言いませんが、ベストな方法を指示・指導できないことにもっと重きをおかないといけないと常々感じています

H様、メッセージありがとうございます。

ダブルチェックを何の工夫もせずにやってしまうと、工数が増えるだけだ。作業そのものがダブルチェックになるような工夫が必要だ。

先週の記事で例として上げたネジ締めは、昔指導していた工場の組長さんが考えた。その工場に生産委託していた製品は設計の出来が悪く(笑)やたらネジ締めが多くあった。
ネジの締め忘れとか製品への混入があるとやばいので、組長さんにネジを見せて「このネジが一本なくなったらどうする?」と聞いてみた。

彼女はその一言を聞いただけで、小皿を持ってきて作業者に必要なだけ先に小皿にネジを入れてから作業をするように教えた。

彼女は日本語は全然分からないが、私が言いたいことをすぐに理解する能力があった。こういう人と仕事をするのは楽しいものだ。


このコラムは、2009年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第106号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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チェックリスト

 先週号でポカミスについて記事を書いたが、ミスの防止(流出防止)にはチェックリストが良く使われている。一種のダブルチェックだ。
今回はチェックリストの効能を別の切り口で考えて見たい。

私は自分一人でする作業にも自己チェックリストを作っている。
定例セミナーの開催にも自己チェックリストがある。
当日会場に持って行く物リスト。講演テーマの決定、会場の予約、セミナーの告知、参加者への会場案内、参加者へのお礼、議事録の作成など一連のスケジュール。
これらがチェックリストの形になっている。

持ち物リストは前の日にプリントアウトし、鞄につめながら各項目にレ点を付けてゆく方式になっている。
スケジュールリストはwebのスケジュール管理ソフトにTODOとして登録してある。その日にしなければならないTODOアイテムが朝メールで届くようにできる。

こんな仕組みによって「ついうっかり」を防止している。

このチェックリストにはもうひとつ目的がある。
将来この仕事を部下に任せるときに、このチェックリストが業務マニュアルになる。
スケジュールリストは仕事の流れに沿って時系列にTODOアイテムが並んでいる。
各TODOアイテムごとに、誰と相談して決めるか、誰の承認決済を貰うかなどを追加してゆけば立派な業務マニュアルになる。

ホワイトカラーのオフィスワークは非定型要素が多くあり業務マニュアルを作るのが困難だ、という話を良く聞く。そう考えていたら一生かけても業務マニュアルなどできない。

まずは不完全で良いから、チェックリストを作る。それを運用しながら改善する。この運用・改善のプロセスを通してチェックリストに魂を入れる事ができる。

持ち物リストのようなモノは業務マニュアルまで昇華することは少ないかもしれないが、将来業務マニュアルに進化させることを前提にチェックリストを作れば良いのだ。

自己チェックリストができたら、相互ダブルチェックが働く仕掛けを用意する。
例えば業務プロセスが完成し報告書や伝票などを上司のチェック・承認を貰うために提出する時に、自己チェック済みのチェックリストを添えて提出するように義務付ける。

まだ業務に慣れていない部下には上司が部下と一緒にチェックリストを内容をチェックする。こうすることにより上司は部下のその業務に対する理解度、習熟度が把握できる。このプロセスがOJTそのものだ。

こういう習慣をつけることにより「ホウレンソウ」もうまく行くようになる。
必要があれば、このような「報告・連絡・相談」アイテムをチェックリストの中に入れておけば良い。「ホウレンソウ」とは部下から上がってくるのを待つのではなく、部下が「ホウレンソウ」をするように上司が仕向けることだ。


このコラムは、2009年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第106号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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中国工場の力

 先週は、広東省恵州市にある中国大手家電メーカの工場を訪問した。
副総経理の案内で30分ほど生産現場を見せていただいた。工場を一目見て、日本人が指導した工程だとすぐにわかった。

一年前に訪問して、これではダメだと私を連れてきた友人はその変貌振りに驚いていた。多分この一年の間に、日本人を招聘し指導を受けたのだろう。短時間の訪問だったため詳細は分からないが、少なくともパッと見には良くできた組み立てラインになっている。

台湾、香港を含めた中華系企業は顧客に品質が悪いといわれると、すぐさま検査装置を買ってくる。これで品質は大丈夫だという考えだろう。
これでは良品を選択しているだけで、品質は良くならない。

しかしこういう割りきりがあるため、日本人を連れてきて工程改善をする、ということをいとも簡単にやってしまう。技術を教わればそのレベルには容易に到達できる。

しかし日本のモノ造りのココロの本当の強さは、技術的なノウハウではないと考えている。本当の強さは、毎日現場が進化する仕組みと仕掛けだ。私の仕事も、コンサル契約が終わった後も現場が継続的に改善を続けるようになることだと考えている。

中華系企業がこれに気がついたときに本当の競走が始まると考えている。


このコラムは、2009年6月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第103号に掲載した記事です。

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自責で考える

 失敗の原因を追求し適切に再発防止対策をする。不良改善の鉄則だ。
工程内不良でも、客先不良でも「人為ミス不良」が原因という不良解析が多い。作業者にとっては「自責」であるが、不良を解析する生産現場のエンジニアや品質担当者にとっては「他責」だ。こういう不良解析をしていると、対策として「作業者に注意した」「作業指導をした」などという効果の実感できない再発防止対策となる。

自責で考える必要がある。
例えば「作業方法がやりにくい」という原因であれば作業方法の改善、治具化、設計変更などの対策を検討すべきだる。「作業員の勘違い」であれば作業指導書の記述を改善すべきだ。

他責にすれば有効な解決方法は見つからない。
景気が悪いから売り上げが上がらない。
作業員の人件費が上がったので利益が減少。
顧客の使用方法が悪いから壊れる。

これらの分析は全て「他責」であり、言い訳程度の効果しかない。「他責」をやめなければ成長はない。


このコラムは、2021年11月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1216号に掲載した記事です。

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メモリィの寿命

 5~6年の利用で制御装置のメモリーが寿命となり、後方カメラや運転支援システムなどの機能に不具合が生じると指摘している。

日本経済新聞

テスラのリコール記事だ。記事には続けて以下の文章がある

NHTSAによると、対象車両の制御装置は容量8ギガ(ギガは10億)バイトのNAND型フラッシュメモリーを搭載する。車を起動するたびにメモリーを消費し、平均5~6年で制御装置そのものが故障するという。

車を起動するたびにメモリィを消費し平均5~6年でメモリィが故障する、とはどういう意味なのだろうか?
起動・停止時に初期化したり、走行記録(例えば走行距離の積算値など)を不揮発メモリィに書き込むことになるだろう。毎日車を起動・停止したとして6年で5000回程度の書き込みとなる。この程度で寿命となる半導体メモリィがあるのだろうか?

他紙は、ボンネットにあたる部分が走行中に開いて視界を遮るおそれがある、と報道している。後方映像が表示されないのはトランクの開閉でケーブルが損傷するためとしている。

いずれにせよフラッシュメモリィが5~6年で寿命になるとは思えない。
プログラムのバグで記録エリアのアドレスポインタの更新が5~6年でオーバフローするというのはありそうだが。

日本経済新聞には技術系の記者も大勢いるはずだ、記事のチェックが漏れたのだろうか?

【編集後記】
記事の技術的な内容が間違っていても困る人はほとんどいないでしょう。
メモリィは5、6年で壊れる、と思ってもらえれば電気製品のメーカは喜ぶかもしれません(笑)
困るのは、よそ様の失敗から学ぼうなどという欲深かの人だけです。


このコラムは、2022年1月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1239号に掲載した記事です。

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ケアレスミスと人為ミス

 人の作業ミスにケアレスミスと人為ミスがある。普通はこれらのミスを区別することはないだろうが、今回はこの二つのミスについて考えたい。

ケアレスミス:注意不足で発生するミス。
人為ミス:人が関わるミス。ヒューマンエラー。

人為ミスの中にケアレスミスが含まれているような図式だが、

  • ケアレスミスを注意力という属人的なものに依存するミス。
  • 人為ミスは人の思考・動作などに関わるミス。

と分類してみた。

例えば外観検査で、未検査のものを検査済みと間違え合格とするのは、ケアレスミス。
合格基準に満たないものを合格と判断するのは、人為ミス。

どちらも人に関わるミスだが、原因が違う。ケアレスミスは「不注意」という属人的な問題。一方人為ミスは認知、動作など人の特性に依存する問題。
このように分類して考えてみよう。

普通に考えると、ケアレスミスは注意して作業をする、ダブルチェックする、などというあまり効果・効率を期待できない対策をとりがちだ。

一方人為ミスを属人的な問題と考えてしまうとケアレスミスと同じになってしまうが、人の動作や認知の特性によって発生する問題と解釈すれば、個人に依存しない対策を考えることになる。

こう考えれば、
「間違った方法では作業できないようにする」という発想が生まれるはずだ。
つまり冒頭で申し上げたケアレスミスと人為ミスのどちらもミスが発生しない方法を考えるということだ。

人が絡むミスを一括りにしてしまうと「作業員に再教育」など効果が疑わしい対策になりがちだ。誰がやっても同じ効果が期待できる作業方法の改善を考えるとよいだろう。

例えば、
ケアレスミス:注意力を発揮しなくてもよい作業方法に変える。
人為ミス:人の判断を極力減らす作業方法に変える。


このコラムは、2022年1月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1242号に掲載した記事です。

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中国ゼロコロナ政策に暗雲、トヨタやVW天津工場停止

中国ゼロコロナ政策に暗雲、トヨタやVW天津工場停止

 中国のゼロコロナ政策を受け、トヨタ自動車とドイツのフォルクスワーゲンの現地工場は約1週間前から操業を停止している。新型コロナウイルスのオミクロン変異株が中国という世界最大の自動車生産拠点で感染拡大し始める中、世界的メーカーの運営に支障が出る兆しを示すものだ。
(以下略)

四季報オンラインより

                   

 中国は冬季オリンピックの開催もあり、何としてでもコロナを抑え込もうとしている様だ。私が住んでいる広東省東莞市でも、コロナ感染者が見つかると、その地域をロックダウン(マンション単位だけでなく、道を封鎖し町内ごとロックダウンしたりする)さらに住民全員を対象にPCR検査を実施する。

私が住んでいる地域から少し離れた場所でコロナ感染者が見つかった時は連続3日間全員PCR検査が実施された。午前中検査すると、夕方までにその結果がスマホに反映される。日本の報道でPCR検査をしても結果は翌日以降になると聞いた。千人単位のPCR検査結果を半日で出す中国の体制が、とんでもない事だと気がついた。

まさに中国の国家メンツに欠けてゼロコロナを目指している様だ。

これを「失敗から学ぶ」で取り上げるのはちょっと奇異かも知れない。
不動産企業のデフォルト、コロナ禍による経済停滞、国民の厭世観などにより何かとんでもないことが起きるのではなかろうかと危惧している。
つまりまだ発生しない失敗を畏怖しているといえばよかろうか?


このコラムは、2022年2月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1249号号に掲載した記事です。

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