コラム」カテゴリーアーカイブ

灯油と間違えてガソリン販売 福岡の石油店

福岡県飯塚市川津の石油販売店「ラッキー石油飯塚店」(秋元潤一代表取締役)が、灯油を買い求めた客7人に間違えてガソリンを販売していたことが30日、飯塚地区消防本部の調べでわかった。客の1人は特定できたが、残る6人ははっきりしないといい、消防本部や同市が、店の周辺で広報車両や消防車両を走らせて注意を呼びかけている。同日正午までの段階では、このガソリンが原因と見られる火災の報告はないという。

 消防本部によると、29日午前10時ごろ、タンクローリー車から同店の地下槽へ灯油を補充する際、ガソリンと間違えた。気づいた店側が30日午前10時半ごろ、消防本部に連絡してきたという。灯油を買い求めた客7人に対し、ポリ容器に入れたガソリン計234リットルを販売していたという。

(Asahi.comより)

この手の事故は何度も再発している.業界全体で有効な再発防止対策が取れていないと判断せざるを得ない.

普通ガソリンスタンドでは,灯油の給油スタンドとガソリンの給油スタンドは別の場所に設けてある.ここでガソリンと灯油を間違えて販売することはまずなかろう.
推測だが,このように灯油とガソリンの給油スタンドを分けて配置するのは消防法などにより決められており,これに合致していなければ開業許可が下りない様になっているのではなかろうか.

しかしタンクローリーから地下タンクに給油する口は一列に並べてあるのが普通のようだ.
また給油口に「ガソリン」,「灯油」という表示がしてあるのを見た事があるが,もっと大きな看板の方が良いだろう.

灯油とガソリンの地下タンク給油口を別の場所に配置する.
こうすると灯油を給油しに来たタンクローリィの停車位置は,ガソリンの場合と異なる.間違いがあれば一目瞭然だ.

しかし既に給油口を設置してあるガソリンスタンドに対し給油口の位置を変えなさい,と行政指導をすると販売店側の負担が大きくなり,なかなか守れない.
罰則付きの強制指導とした場合業界から一斉に反発が来るであろう.ただでさえ廃業しているガソリンスタンドが出ている業界である.

現実的な再発防止対策はどうしたら良いであろうか.
皆さんの中にガソリンスタンドを経営しておられる方はいないであろうが,ヒューマンエラーを防止するための対策を検討する時の訓練になると思う.


このコラムは、2008年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第59号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

列車逆走事故

 メールマガジン829号「失敗から学ぶ:列車の制御、新時代へ」で鉄道の自動運転システムをご紹介した。
「列車の制御、新時代へ」

その後間もなく自動運転の列車事故が発生した。
「逆走列車側に不具合か 「駅の合図は正常」 横浜の事故」(朝日新聞ディジタル)

記事によると「シーサイドライン」の車両が終着駅・新杉田駅で進行方向とは逆向きに走り出し、車止めに激突。乗客14人が重軽傷を負った。

その後の調査が以下のように報道されている。
運行制御装置側には問題が見つかっていない。
列車の電気系統の断線により方向転換の指示が伝わらず、逆走した。

新聞記事から判断すると、
駅側の制御装置と列車の制御装置間の通信には問題はなかった。
列車の制御装置と駆動機器間に断線があり、方向転換がなされず逆向きに走行。

「逆走、電気系統に断線 指示、伝わらず シーサイドライン」(朝日新聞ディジタル)

このようなシステムを設計する場合、中央制御装置と列車制御装置間の通信は司令/確認のプロトコルを入れるはずだ。例えて言うと、中央指令室の運行管理官と運転手の間で司令と確認が交わされるのと同様のやりとりが、中央と列車の制御装置間で行われているはずだ。
このプロトコルが成立しない場合(中央から走行方向切り替えの指示に対して確認の応答がない)安全側に動作するように設計する。

同様に制御装置と運行機器間でも双方向のやり取りがあるはずだ。
例えば加速の指示を出すとスピードメーターからのフィードバックが得られる。
今回の事故原因が「断線」によるものだとすると、モータの反転装置からのフィードバックがなくても正常と判断する「設計欠陥」があったはずだ。

自動機がある生産現場でも同様の問題がないか点検してみる必要があるだろう。
例えば非常停止ボタンを押した場合、安全に停止するかどうか。
→主電源を落としてしまうと危険な場合もありうる。

コンベアの駆動モータをオンにしたらコンベアが動いているか。
→なんらかの理由でコンベアが動かなければ、駆動モータが過熱し火災発生。

プレス機などのエリアセンサーが機能しているか。
→エリアセンサーの電源が入っていない場合安全側に動作するか。

シーサイドライン事故の記事を見た時に「サイバーテロ」が最初に思い浮かんだ。IOTにより我々の生活の利便性が格段に上がってる。しかしその裏でリスクも大きくなっていることを認識していなければならない。


このコラムは、2019年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第835号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人為ミスの対策

 先週は人為ミスについてコラムを書いた.今週は人為ミスの対策について事例を紹介したい.

人為ミスの対策として,安易に検査の二重化をしてはならない.
検査は不良の選別しか出来ず,品質の向上には貢献しない.客先出荷品質という限定された品質の保証が出来るだけだ.

例えば,不具合品が客先で見つかり,検査を二重化する.
しかし検査後に不具合品が混入したとすると,検査を二重化しても効果はない.
抜き取り検査を追加しても,AQL保証レベル・抜き取り数量と不良発生率を考慮すると,無意味な場合がほとんどだろう.全数検査で見逃した不良を,抜き取り検査で発見できる確立は,限りなくゼロだろう.
やるとすれば,検査員を換えて再度全数検査をするしかない.これとて検査員が二人とも不良品を見逃す確率をゼロに出来るわけではない.

事例として,ケーブルアッセンブリィを考えてみよう.
デスクトップPC用電源の出力ケーブルを想像していただきたい.いくつものコネクターが決められた長さの線材に取り付けられ,束線バンドで決められた位置を束線してある.

電気検査で発見できない人為ミスは,
コネクターの型式が間違っている.
コネクターの数が足りない(多い).
線材の仕様が違っている.
配線の長さが間違っている.
束線バンドの型式が間違っている.
束線バンドの数が足りない(多い).
束線バンドの位置が違っている.

通常,最終検査として上記のミスは,検査治具を使った目視検査が行われている.更に検査を二重化しても,生産コストがあがるだけで意味は無いだろう.

それよりは,結線作業,束線作業を治具化して間違いが発生しないようにする.この方が現実的であり効果的だ.
生産開始時にハツモノ検査を実施する.これは抜き取り検査の意味ではなく,間違った治具や製造指導書を使ってしまった場合の,修理手戻りを防ぐための自衛検査だ.


このコラムは、2011年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第198号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人為ミス

 今週は人為ミスについて考えてみたい.
実は先週PCの動作が急に不安定になった.マイクロソフトのパワーポイントとワードで文章入力をすると,フリーズしてしまう.アプリケーションを再インストールしても状況は変わらない.

以前にも同様の現象が発生し,Windowsの再インストールをしている.

このPCを使い始めて1年半,2度目のOS再インストールだ.
今回も2日がかりで,Windowsの再インストール,アプリケーションの再インストール,各ソフトの再設定を行った.

恥ずかしながら,この過程でミスを犯してしまった.
重要なファイルをバックアップしていなかったのだ.
しかも前回は,変換辞書,アドレスブック,IEのお気に入り等のバックアップがなく苦労したのに,今回もIEのお気に入り以外はバックアップ出来なかった.

これらの反省を踏まえ,人為ミスの分析と再発防止に関して考えた.

不具合の原因解析に「人為ミス」と書いて済ませてあるレポートを見たことがある.人為ミスは原因とはいえないだろう.人為ミスが発生した原因,誘因があるはずだ.

人為ミスの原因は以下の4つに分類できると思う.

  1. 正しい情報を持っていなかった.【情報ミス】
     情報がない,または間違っていたため発生する人為ミス.
    例えば部下に文房具を買ってきてもらう時に,間違った型名を指示してしまう.
    製造現場では,作業指示書が間違っている,という事例と同じ.
  2. 情報を正しく受け取らなかった.【認識ミス】
     いわゆる勘違いミス.
    指示された文房具を買って来る時に,型名を聞き違えて(覚え違えて)違う物を買ってきてしまう.
    製造現場では,通常,作業のたびに作業指示書は見ない.作業指示書の内容を記憶して作業している.ネジを3本締めなさい,と書いてあるのに2本しか締めなかったというミスと同じ.
  3. 判断を誤った.【判断ミス】
     判断を伴う作業でのミス.または判断すべきでない作業で判断をするミス.
    購入指示された文房具が売り切れのため,別の型名の物で良かろうと判断する場合.
    製造作業現場では,極力判断を伴う作業をさせないようにしている.しかし班長やスタッフ業務担当者は,しばしば判断をしなければならない場面に直面する.例えば,生産中に部品が不足した.同じ規格の部品を代用してよいかどうか,判断し間違うミス.
  4. 行動を誤った.【行動ミス】
     情報を正しく受け取り,正しく判断したが行動がうまく出来なかった.
    指示された文房具を棚に見つけたが,間違って隣の物を取ってしまうミス.

それぞれの人為ミスの対策を考えてみる.
本来人為ミスにはポカよけ対策を考え,ミスが発生しない,たとえ発生しても次工程に行かないようにするべきだ.ポカよけは発生した工程により,千差万別の対策となる.それ以外の対策をここでは議論する.

【情報ミス】
情報が間違っていたという事実には,更に原因があるはずだ.
作業指示書の内容が間違っていたというのであれば,これも人為ミスの可能性が高く,なぜ間違えたのかを更に分析をしなければならない.

【認識ミス】
認識の間違い,記憶の間違いの二通りがある.
認識の間違いは,間違う誘因があるはずだ.説明が複雑.指示が間違えやすい.
記憶の間違いは,以前の指示の記憶だけで実行しようとする場合に発生する.
ここまで分析すれば,対策はおのずと明確になるだろう.

【判断ミス】
判断能力が低くてミスをする.もしくは能力を過信してミスをする.
チェックリストにより,判断基準を合わせる,判断漏れを防ぐのがよい.
上位者や同僚のダブルチェックも,ミスの防止に役立つ.

【行動ミス】
うまく行動できない誘因を分析する.
やり難い:例えば,設備の後ろに隠れているスイッチを操作する場合など容易にミスが発生する.
間違えやすい:例えば,天井灯を消灯する場合,どのスイッチがどの電灯か識別されていなければ,容易にミスが発生する.
対策は,「やり難い」「間違えやすい」誘因を取り除けばよい.

ここまで分析すると,実に簡単に「原因」「対策」を検討できる.
しかし「人為ミス」の対策に,「作業者に注意しました」「作業者を再教育しました」というレポートをしばしば見かけるのは,この当たり前のことが出来ていないという証左だ.

一度あなたの部下がやった人為ミスの分析を見直してみてはいかがだろうか.

ちなみに今回犯した私のミスは「判断ミス」だ.
前回一度やっているので,すぐに出来るという過信が,今回の判断ミスの原因となった.
その遠因は,前回再インストール時に,もう二度とこの様な事故はないだろう,一度やったから二度目はうまく出来るはずだ,と過信したためだ.もし謙虚に考えていたら,次回のために手順を記録していたはずだ.

対策としては,自動バックアップソフトを導入し,定期的にバックアップを取っておく.さらに今回バックアップを取り忘れた項目を自動バックアップの範囲としておく.これでミスは防げる.想定外のミスが発生しても,ひとつ前のバックアップがあるので,被害は小さくて済む.

しかし当面はバックアップソフトを購入する資金がないので,再インストール時の手順をチェックリスト形式で作ることにする.


このコラムは、2011年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第197号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人口減少対策

 水曜日配信のメールマガジン「鉄道の安全対策」でカンブリア宮殿の番組からJR東日本冨田会長の「安全は守るものではなく、作るものだ」という言葉をご紹介した。カンブリア宮殿は2週連続で冨田会長を取り上げた。番組の趣旨は冨田会長の経営改革だと思う。

人口減少、車や航空機による移動増加など鉄道会社の経営にとっては不利な要素が増加している。そのために冨田会長は多角化に取り組んでいる。駅ナカや駅周辺の商業施設開発など、親方日の丸の国鉄では不可能だっただろう。

しかし冨田会長は多角化に頼った経営をしているわけではないと思う。逆境下の本業成長にも注力されている。「人口が減っても移動人口を増やせば良い」という発想が鉄道事業の本質を突いているように感じた。

人口が減れば乗客も減る、と考えるのは並みの経営者。
昔から私鉄は、乗客を増やすためにニュータウンの開発を手がけていた。しかし皮肉なことに、ニュータウンの開発により小家族化が進み人口は減少。地方の若者は都会に出て、地方の人口減少はより深刻となる。

こういう環境下でJR東日本は、廃線候補のローカル鉄道に魅力的な観光列車を走らせ「移動人口」を増やすとともに地方経済にも貢献している。

中国製造業は勤勉な農民工に支えられてきた。しかし世の中が豊かになるにつれ、労働者の賃金が上昇する。若者の製造業離れが始まる。これは経済成長の過程における必然だ。中国も人口減少のフェーズに入っている。人口が減少しても「労働人口」を増やすというのはほとんど不可能だろう。

賃金上昇、人口減少が避けられないとしたら生産効率の向上を考えるしか方法はない。


このコラムは、2018年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第740号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人口減少

人口が減少すれば、消費が減少する。
だから売り上げが減る。業績が上がらないのはやむを得ない。

しかし本当にそうだろうか?

GDPの60%を占める家計最終消費支出は、2009年3Qと比較して2018年3Qは5.8%増加している。
業界・業種によって条件が異なるのは確かだろうが、マクロに見れば国内市場は成長している。

以前ご紹介したJR東日本の冨田会長は「人口が減っても交流人口は増える」と言っておられる。

第739号「鉄道の安全対策」

つまり人口が少なくなっても交流人口(鉄道を利用する人)を増やせば良い。そのために廃線候補の路線に観光列車を走らせる。駅ナカに商業施設を作れば、鉄道運賃以外の収益が上がる。

私たちはネガティブな状況に出会った時にため息をついてしまう。ため息をつけば消極的な事しか思い浮かばないだろう。

冨田会長の言葉「人口が減っても交流人口は増える」を「〇〇は減っても□□は増える」と一般化して考える。そうすればため息ではなく、アイディアが浮かぶだろう。

例えば「売り上げが減っても利益が増える」と考えれば、

  • 製品の付加価値を高めて売値を上げる。
  • 製品のコストを下げて利益率を上げる。
  • 製品の販路・市場を増やす。

などが簡単に思いつく。ため息などついている暇はない。
(三番目のアイディアは売り上げが上がってしまうのでNGか?・笑)


このコラムは、2018年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第759号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

経営計画

 先週土曜日は朝から一日東莞和僑会の勉強会に参加していた。
朝からお昼を挟んで2時までは、限定メンバーで目標管理勉強会。3時から5時半までは、一般参加者向けの定例会。その後8時過ぎまで懇親会に参加した。

目標管理勉強会は今年から始めた試みだ。年度事業計画を作る事により、目標管理を勉強している。年末までに2016年の事業計画を作成し発表会をやる予定でメンバーの工場持ち回りで勉強会を開催している。第三回の今回は中国人スタッフも参加して、大人数で開催した。

私も前職時代は、品質保証部門長として、毎年年度計画を作成していた。
事業部室から、事業部年度計画作成の為の基礎データとして各部門の計画提出要求が来る。
品質保証部門の年度計画は、協力工場・仕入れ先指導の出張経費、人材育成費用、品質損失コスト程度しか無い。人員の変動はほとんどないので、労務費は前年のコピペで済んでしまう。

これを年度末にやる訳だが、ほとんど私一人で鉛筆をなめながらやってしまう。品質損失の売り上げ比率を、毎年の品質目標にしているので、営業部門の売り上げ計画から計算すれば来年度の品質損失コストの計画(目標)が出る。次年度の協力工場・仕入れ先指導計画だけは、メンバーが集まって各協力工場、仕入れ先の今年のパフォーマンス評価、来年の計画を作る作業をしていた。

事業部全体の事業計画を立てる事は無かったが、自部門の計画作成はこの程度で良いと思っていた。

しかし目標管理勉強会で、これでは不十分だと気がついた。
年度計画の作成は、予算の確保だと言う観点でしか考えていなかった。もちろん毎月のQA会議では、事業部長に目標の執行状況を報告する。品質損失コストの推移、品質指導の出張経費の執行状況、人財育成費用の執行状況により、計画が予定通り執行出来ているかどうか判断出来る。未達の項目が有れば、対策を議論する事になる。

こういう目標管理活動の計画を、自分が鉛筆をなめながらやってしまう。これが間違いだったと気がついた。人材育成計画や品質損失コストの目標達成施策は、予算の承認が降りた後にメンバーと議論していた。これではメンバーの参画意識を高められない。またメンバーに自部門の年間計画作成する訓練が出来ない。

勉強会の講師を勤めていただいている富田氏は、こういう日常業務を通して中国人幹部の育成をしていたのだろう。初めの2、3年は各部長が持ってくる計画はほとんどザルだそうだ。自分自身でザルだと分かっているので、自ら工夫努力する様になる。

最終的にはA3シート1枚の売り上げ計画が、A3エクセルシート30枚のバックデータを元に作成される。バックデータは顧客の製品別生産計画・新製品投入計画、業界の経済動向および自社の拡販計画が織り込まれている。

製造部門,生産技術部門なども同様に次年度の計画がA3シートで出てくる。

各部門の次年度計画が合体して次年度の事業計画が出てくる。
そこには毎月の人材採用計画、購買計画、設備投資計画が出て来て、それらの計画を実施する為に月次の資金計画が出てくる。

この過程に参加させる事が、最高の人財育成だと感じた。
こういう実戦訓練により経営マインドが育成され、自部門の都合より全体を考える力がつくだろう。

私自身も、そのような心構えで自部門の次年度計画を作っていれば、もっと経営者マインドを高める事がで来ただろう。多分独立後の苦労も少なかったはずだ(苦笑)

東莞和僑会「目標管理勉強会」はさらに進化し「改善交流会」を定例開催している。


このコラムは、2016年5月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第476号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

列車の制御、新時代へ

 以前メルマガに2007年に発生した「福知山線脱線事故」について書いた。
この事故以来ATS(自動停止システム)の導入が加速した。

5月26日付の朝日新聞に新しい列車制御システム・ATACSの記事が出ていた。
列車の制御、新時代へ 位置情報発信、車間保つ 路線データ搭載、脱線防ぐ

従来のATSは750mの閉塞区間に車両が1編成しか入らないように制御していた。
線路は全てつながっているように見えるが、実際には短い線路が1本ごとに電気的に結ばれている。これを750mを単位として閉塞区間が設けられ、車輪で左右の線路を短絡している区間に列車が存在している、と判断する仕組みとなっている。

この仕組みでも問題はないのだろうが、自動車を改造した工事用車両は左右の車輪間に導通がないので、ATSではどこにいるか見えない。都心の通勤時間帯の過密ダイヤでは750mに1編成では乗客輸送が間に合わない。

新たに導入されるシステムは「無線式列車制御システム」といい、位置情報を列車自らが無線で発信する方式のようだ。

しかし「なんとまぁ時代遅れな」という感想を禁じ得ない(笑)

自動車はGPSを頼りに無軌道で自動運転を模索する時代だ。
軌道上しか走らない鉄道の方が、自動運転に近いはずだ。自動運転となれば、運転手がミスを咎められることを恐れて過速度運転することもないはずだ。
乗用車事故が発生すれば数人から十数人の死傷者が発生する。それに対し列車事故が発生すれば数百人規模の死傷者が出る。慎重にならざるを得ないのは理解できる。

しかし過去の不幸な出来事を克服するのが、進歩だ。
我々の生産現場でも「前例がない」「リスクがある」などの言い訳で新しい事への挑戦を避けていないだろうか?前例がないから、画期的な進歩が得られる。リスクがあるなら、事前にリスクを洗い出し未然防止をする。

「失敗から学ぶ」とは失敗を恐れて身を縮めることではない。


このコラムは、2019年5月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第829号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

「まちかど厨房」の応用

 先週のニュースで、ローソンが店内調理をした総菜やお弁当を販売する、と言う記事をご紹介した。街角にあるローソンを厨房にすると言う「まちかど厨房方式」を製造業で応用出来るか?と言うお題でアイディアを募集した。

今週は締め切りが早かったためか、お一人様しかメールがなかった。
メールを下さったF様、ありがとうございます。
では中国で電子製品製造業にお勤めのF様のアイディアをご紹介する。

※F様のアイディア

私たちは、情報関連製品を生産しています。生産工程の最後で、完成品を梱包してFQC検査の後、製品倉庫に入庫します。

「まちかど厨房」のアイディアは、私たち自身の工場のアイディアではなく、梱包工程を、梱包資材メーカーさんにすべて請け負っていただく、と言うアイディアです。

梱包資材は、組み立ててしまうとかさばり、輸送効率が悪くなり、倉庫での保管場所の確保が大変です。また組み立ててないと、梱包作業者が組み立てをする必要があります。

梱包資材メーカーさんの設備を持ち込むとなると、ちょっと大変ですが、出来上がった梱包資材を組み立てないで持ち込み、製品にビニル袋をかけ、化粧箱に取り説と一緒に梱包、集合梱包の段ボール箱に入れ封をする。

これを梱包資材だけではなく、作業員も合わせて提供していただければ、製品単価プラスアルファでも、ペイすると思います。

こういう発想は、梱包資材を生産しておられる方からは、なかなか出て来ないのではなかろうか?梱包資材を売っていると考えていると、この発想は出ない。「梱包」そのものをサービス提供すると考えるから出る発想だ。

こういう発想は、ユーザ側の方が思いつき易いのかもしれない。

「梱包」をもう少し拡大解釈すれば、製品保管、出荷輸送もサービス範囲に出来る。以前にも申し上げたが、「モノを売る」と言う考えからから、「モノを提供することにより、お客様の生産をサポートする」と言う考えに転換すれば、生産をするサービス業となる。

こういう考え方をすれば、同じ生産量でも売り上げ金額は上がる。

またお客様の現場に、ダンポール箱生産の設備を持ち込んでしまえば、そのお客様内での、シェア比率を上げることができるだろう。特に緩衝材などは、原材料で輸送すれば輸送費用は安くなる。

今回の「まちかど厨房方式」を総括すると、お客様の現場で、お客様の声を聞き、お客様の声にならない要求を見つけること。その要求を満たすことにより、お客様にとって欠かせない存在となることができる。


このコラムは、2013年10月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第333号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

「まちかど厨房」

ローソン、5000店で店内調理 カツサンドなど提供

 ローソンは2015年春までに、カツサンドやおにぎりを店内で調理する「まちかど厨房」を現在の3倍強の5千店に広げる。全店舗の半数にあたる。総菜・弁当工場で作った商品よりも価格、利益率ともに高い。コンビニエンスストアの既存店売上高が苦戦傾向にあるなか、できたての軽食を集客の目玉に据え、カフェやファストフード店から客を取り込む。

 まちかど厨房は、仕入れた食材を店員が店内で調理して販売する。「厚切りカツサンド」は398円と通常のサンドイッチの2倍近いが、厚さ2センチメートルのカツの食べ応えが人気。導入店舗のうち、早朝や夜間の利用も見込める店では調理パンなどのほかに、おにぎりや弁当など最大20品を扱う。

 店内調理品の1日の平均売上高は2万円で、購入した客の平均客単価は購入していない客に比べて2~3割高いという。

 現在は1500店で展開しているが、13年度末に2500店、14年度末には5千店と全店の5割程度に引き上げる。

 導入店では店員の休憩スペースなどを割いて、5~10平方メートルの調理スペースを確保する。年900店程度の新店の大半にはあらかじめ設け、加盟店のオーナーに働き掛けて既存店の改装を促す。費用は200万円程度。

 並行してローソンは、いれたてコーヒーの導入店を13年度末に8千店と現在の2倍に増やす。コーヒー導入店にまちかど厨房を組み合わせ、カツサンドなどとの同時購入を促す。ファストフードやカフェの客を取り込む狙いだ。

 店内で調理したできたて商品の提供では他のコンビニエンスストアにも広がっている。サークルKサンクスは全店舗の4割にあたる約2500店でコロッケや春巻きなど主に揚げ物を扱い、夕食のおかずとしての利用を見込む。ミニストップは全約2200店で、店内で握ったおにぎりや空揚げなどを販売している。ただ、最大手のセブン─イレブン・ジャパン、ファミリーマートは現段階で、店内調理品を手がける予定はないという。

(日本経済新聞・電子版より)

 いつもと毛色の違うニュースを取り上げた。実はこれには、チョットした理由がある。
先週読者様からこんなメッセージをいただいた。

※K様のメッセージ

 大変面白い企画でした。経営コンサルタントをしていますが、企業や経営者が自社の製品・商品が売れないと嘆くだけで、逆に何故売れないのかを考えればその結論の反対をすれば売れる可能性が見えてきます。他社事例では良いアイディアが出るのに、自社については余り真剣に考えていないように感じます。
できればこのような企画を今後も希望します。

先々週「靴下拡販」のお題を出し、読者様のアイディアを先週のメルマガでご紹介した企画に、上記の様なご感想をいただいた。

読者様のご希望があれば、何としてでも応えようと言う姿勢で、メルマガを書いている。と言う訳で、第二弾だ(笑)

コンビニのファーストフード店化は、とどまる所を知らない様だ。
コンビニの淹れたてコーヒーの販売は、ドトールコーヒーやスターバックスにとって脅威だろう。コンビニの場合、コーヒー単体で利益を出さなくても、ついで買いの商品が沢山並んでいる。そう考えれば、戦略的にコーヒーの利益率を下げておくこともできるが、コーヒーショップは、コーヒーがメインの売り物だ。そういう価格競争に乗る訳には行かないだろう。

定食屋「大戸屋」は、セントラルキッチンを持たず、食材のカットから店舗での調理に徹していると聞く。さすがにコンビニでここまでは出来ないだろう。各店舗の厨房に対する投資が大きくなる事と、味を均一に保つ事が難しい。

「まちかど厨房」は他店との差別化、それによる売り上げ・利益率のアップを狙う作戦だろう。

さて、この作戦を我々製造業に応用してみよう。
製造業はほとんどの場合B to Bであり店舗などない。ここで考えを止めてはだめだ。更に一歩深く掘り下げる。

店舗とは「売り場」である。しかしこれは売る側の論理であり、消費者の立場から考えれば、店舗とは「買い場」である。

製造業にこの論理を当てはめれば、「買い場」とは「納入先」であり、お客様の「製造現場」であるはずだ。こう考えた場合、ニュースに取り上げた事例は、製造業にとって、お客様の製造現場で生産する、と言うことになる。

【今週のお題】
「まちかど厨房」のアイディアを製造業に応用してみよう。

ヒントとして実例を挙げよう。
タイヤメーカは、車メーカの組み立てラインの横にタイヤのミニプラントを持ち込み、車にタイヤを組み付けるタイミングでタイヤを生産する。こうすればタイヤの中間在庫は最大で4本しかなくなる。究極のJIT生産だ。ムダな在庫も輸送費もなくなる。

読者様の奇抜なアイディアをお待ちしている。


このコラムは、2013年10月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第332号に掲載した記事を改題・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】