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一粒の麦

 「まことに、まことに、あなたがたに告げます。一粒の麦がもし地に落ちて死ななければ、それは一つのままです。しかし、もし死ねば、豊かな実を結びます。」

(ヨハネの福音書 第12章24節)

青山繁晴氏の「僕らの哲学」に出ていた一節だ。青山氏はこう書いている。
人間は誰しも一粒の麦に過ぎない。自分だけは死にたくないと生きていれば、ただ一粒の孤独が永遠に続くだけだ。むしろ死ぬことによってこそ、次の命に繫がり、空しさから救われるのだということです。

私はまだその境地には至っていない。
友人がコロナに罹患したと聞けば、近所の寺に恢復の祈願に通う。
かのオールドパーのように168歳まで生きられるとは思わないが、まだ覚悟はできていない。友人も自分もこの世から消えてしまうのに耐えられない。

せめて何をかこの世に残し、人々の記憶に生きたいと願う。
オールドパーのように自由奔放な人生で毎夜人々の記憶に蘇るもの良いが私にはその「素質」はなさそうだ(笑)

できることなら、生きている間に関わる人の中に麦を撒きたいものだ。


このコラムは、2022年1月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1241号に掲載した記事に加筆したものです。

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楽観主義と悲観主義

 若い頃は楽観主義は軽薄な印象でカッコ悪いと思っていた。こう言う考えそのものが軽薄短小であるとは思いもよらず、深刻ぶってものを言ったりする。学生運動の最後の尻尾あたりにいた我々世代には、同類が多いような気がする。

全共闘の東大安田講堂占拠は高校1年。
三島由紀夫が市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部で割腹自殺したのは高校2年だった。

多分最後の学生運動世代と言えるだろう。
大学生の頃、周囲には学生運動の残党がまだ大勢いた。国や政治と戦うのではなく、セクト間の闘争に変容していったように思う。

そんな時代に青春時代を過ごすと悲観主義的傾向が強くなるのかも知れない。

悪い出来事に対して
悲観的な人は普遍的な原因があると考える。
楽観的な人は悪い出来事には特定の原因があると考える。

良い出来事にたいして
悲観的な人はよい出来事は特定の原因があると考える。
楽観的な人はよい出来事には普遍的原因があると考える。

つまり悲観的な人は、
悪い出来事は普遍的理由があり、避けることはできない。
良い出来事は特定の原因があり、自分がその恩恵を得ることはない。

楽観的な人は、
悪い出来事は特定の原因があり、避けることができる。
良い出来事は普遍的理由があり、自分もその恩恵を受けることができる。

つまりネガティブシンキングでは、悪いことは皆に起きるのだから避けることはできず、良いことは自分には起きない。
ポジティブシンキングでは、良いことは皆に起きるのだから自分もその恩恵を受けられ、悪いことは避けられる。

これはもう「ニヒル」を気取っている場合ではない。
即座に楽観主義に切り替えようと決意した(笑)


このコラムは、2022年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1247号に掲載した記事です。

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ビュリダンのロバ

 例によって乱読で得た例え話だ。「ビュリダンのロバ」とは空腹のロバが、左右2方向の分岐点に立っており、双方の道の先には干草がある。左右共に完全に同じ距離、同じ量。どちらに行っても干草を食べられる。
しかしロバはどちらの道も進まずに餓死してしまう。

意思決定時の迷いを象徴している例え話だ。

私もよくある。空腹でコンビニに行きすぐ食べられるものを選択しようとするが選べずにアパートまで戻りストックのインスタントラーメンを食べる(苦笑)

中国で仕事を始めた頃、ノキアのガラケーを使っていた。iPhoneが出た時にはApple教徒の私としては、ただちに買い換えるべきだという心の声を無視していた。4Sが出た時にようやく買い換えた。4Sが「For Steve Jobs」と読めたからだ(笑)その後長らく「For Steve Jobs」を使っていた。Steve没後SEが発売され待ちに待った「Steve Edition」だと飛びついた。その後のモデルチェンジには心動かず、SE2に僅かに心が揺れたが、いまだにSEを使っている。

私もビュリダンのロバ同様に選択できずに餓死するのかもしれない。
二者択一でも悩むのだから、多くの選択肢から選ぶ場合はもっと困難かも知れない。
そういう場合は子供の頃を思い出して「どれにしようかな天の神様の言う通り」とでも唱える事にしようか(笑)


このコラムは、2022年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1245号号に掲載した記事です。

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ポカミス

 香港、華南地区で発行されている月刊ビジネス誌「華南マンスリー」に連載コラム「四文字熟語に学ぶ 儲かる工場の作り方」を書かせていただいている。
10月号には「ポカよけ」について書いた。

時々熱心な読者様からメールをいただく。今回はこんなメールをいただいた。

はじめまして
毎月華南マンスリーを読ませていただいてます。
私は7年前から中国での技術指導のため赴任生活をしているものです。
10月号記事で日ごろ中国人との会話のなかで気にしていた熟語について記述がありましたので今後の教育に活用できないかとさっそくメールさせていただきました。
ポカミスは日本語では「ポカンとしているときに間違った作業をしてしまうとか見逃してしまう」あるいは難しい表現では「緊張が途切れるときのミス」の総称と理解しています。
緊張が途切れる(ポカンとする)のは誰でもありうる。ということを注意させるためにあえて幼児もでもわかるポカンという言葉を使っていることに意味があると思います。
そういう意味で和訳にある「物事に対する関心がなければ、いつも見ているものが見えていないのと同じである」 は意味が通じても本来の目的が十分伝わらないような気がしますが、それまで含んだ表現は他にありませんでしょうか?
残念ながらこれからも”ポカミス”は頻繁に使用せねばならないのでぜひ良いご指導をお願いしたいと思います。

中国の工場で「ポカミス」を何とか減らそうとご苦労されているようだ。
我々日本人にとっては「ポカミス」とか「ポカよけ」など短くてもそのニュアンスまで伝える便利な言葉があるが、これを中国人従業員に説明するのは大変だ。

「ホウレンソウ」(報告、連絡、相談)を中国の会社にも根付かせようと『報・連・相』という標語を作っておられるところも多いだろう。
しかしこれでは日本語の「ホウレンソウ」のニュアンスもインパクトも伝えられないだろう。ホウレンソウは賛成土壌では育ちません。という駄洒落も通じない(笑)

「ポカよけ」は中国語で言うときは『防呆』と訳せば通じる。
しかし「ポカミス」は一言でうまくいえる言葉は思いつかない。『発呆錯誤』といえば意味はあっているだろうが、いまいちニュアンスが伝わらない。

同じようにムダ・ムラ・ムリを一言で言う「ダラリ」も中国語でうまく伝えられない。一つずつ説明しても「ムラ」を『斑点』と通訳に訳されてしまったりする。
そこで「ムダ・ムラ・ムリ」を説明するために『無益・無均・無理』という中国語を考えた。ちょっと無理やり感があるが、ムラを『斑点』と訳されるよりはましだ

これらの言葉を中国中に広めるのならともかく、会社の中だけならば「ポカミス」「ダラリ」をそのまま教えてしまってはどうだろうか。

「KAIZEN」、「KEIRETSU」という言葉はすでにそのままでも世界中に通用する。
同じように「ポカミス」や「ダラリ」もそのままで通じるようにしてしまう。
初めはきちんと意味を伝えなければならないが、意味が理解できればあとはそのまま日本語で通す。

言葉はいってみれば「記号」なので、これでも問題はないだろう。


このコラムは、2009年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第118号に掲載した記事です。

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正論は暴力になりうる

 コロナ禍の閉塞感に感じたことはいくつもある。それらの共通点を見つけるとすると「正論は暴力になりうる」ということではなかろうか?
「自粛要請」という名を借りた飲食店の酒類提供自粛、夜間営業自粛これらの「要請」により売り上げ減少により経営破綻した人、収入をたたれた人、など多くの困窮者が出ただろう。また夜間働く人々は深夜食堂の営業自粛により、空腹難民となったことだろう。

「コロナの拡散防止」の正論のもとに科学的根拠の薄い要請は社会的暴力と言えるだろう。市民同士でも根拠のないデマが正論の元に拡散し暴力となる。

「〇〇すべき」もしくは「〇〇すべきでない」という文言には注意が必要だ。

これは社会問題だけではない。
我々の仕事の中にも、暴力とは言えないかも知れないが、根拠のない常識がまかり通っていることはないだろうか?

代々伝わっている「べからず集」の中には、陳腐化したまま厳守されているモノも有るだろう。これらを家訓の如く信じ込んでいると、時代の流れに取り残される。深刻な被害がなくともなますを吹いて食べる様な無駄に気がつかなくなる。

若者、よそ者、馬鹿者が世の中に変化を起こすというが、常識を超えた改革をもたらすのは、正論に立ち向かう勇者だろう。


このコラムは、2021年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1229号に掲載した記事です。

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事故は繰り返す・赤リン

パナがリコール、ドアホンが相次いで発煙 いまさら赤リンのなぜ

 問題なく使えていた自宅のインターホン。ところが、7~9年たったある日、突然、発煙する──。パナソニックが製造・販売するインターホン「テレビドアホン」の室内側モニター親機(以下、親機)の発煙トラブルが2019年9月
以降に相次いでいる。このうち、4件が火災認定事故となり、同社は21年12月1日にリコールの実施に踏み切った。

 対象は、「VL-MV18」「同20」「同25」の親機の3品番(セット品番では4品番)と、その修理用基板。合計で12万9792台をリコールする。製造期間は12年7月~12月。パナソニックは「製品内部の基板パターンの安全機構および基板
や筐体(きょうたい)に使用している難燃材料により、製品の温度上昇が収まる構造となっており、本体からの発火や拡大被害に至る危険性はないと判断」していると説明する。

日経クロステックより

赤リンによる発煙、火災事件は昔から繰り返している。
参考:トラブルは繰り返す

過去にTV受像機のフライバックトランスからの発煙・発火事故が多発。
フライバックトランスの絶縁樹脂の難燃材料を赤リンからブロム(臭素)に切り替えた。これでTV受像器の発煙・発火事故は激減。
しかし環境問題に対応するRoHS指令によりブロムが使えなくなる。材料メーカは赤リンの耐湿性あげることで、難燃材料・赤リンを復活させる。

しかしその後、ハードディスク装置からの発煙事故が多発。原因は赤リンだ。
フィライバックトランスの様に高電圧25kVがかかっているわけではないが、ハードディスクドライブ制御IC内部のパターン間隔はμmを切っている。電圧が低くともパターン間の電界は高いだろう。
耐湿性向上に限界があるのか、耐湿性に寿命があるのかわからないが事故は発生し続けている。

部品内にある臭素を回収する方法を開発するのが次善の策かもしれない。


このコラムは、2021年12月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1228号に掲載した記事です。

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お祭り騒ぎ

 今回のメルマガの「お祭り騒ぎ」と言うタイトルからどんな内容を連想するだろうか?賑やかでポジティブな内容を想像される方もあるだろう。しかしちょっとネガティブな内容だ。

釣りをされる方は「お祭り」は好まないだろう。釣りの仕掛けが絡んしまう事を「お祭り」という。絡んだ仕掛けを元に戻す最中は餌の付いた針は水中にはない。その間は魚釣りという作業にとって必要だが、全く価値のない作業となる。

ここまで書くと、はは~ん林の言いたいことは想像がついたぞ、と内心思っておられるだろう(笑)

先日、紙製袋物の工場に行ってきた。宅急便の袋、通販カタログなどを入れる袋を生産している。この工場は、袋を展開した材料を折りたたみノリ付けする全自動の設備を持っている。同業の工場で指導した事があるが、この種の設備を見るのは初めてだ。

工場を訪問した時は、年末顧客に配る来年のカレンダーを生産していた。
大勢の作業員を投入してまさに「お祭り騒ぎ」だった。

1月から12月までの月ごとのカレンダーを山形に折って12枚セットで箱に入れ熱収縮フィルムで包装する。そんな作業を事務員さんまで投入してお祭り騒ぎで生産していた。

全自動の糊付け・折りたたみ設備で月ごとのカレンダーを作り、後工程で12枚揃え箱詰めする作業を大勢の人員を投入して作業していた。

全自動の糊付け・折りたたみ自動機は0.4秒間隔で1枚生産可能だ。一方12枚揃え箱詰めする作業は27秒かかっている。
冷静に考えれば、12枚のカレンダーを糊付け・折り自動機は5秒で完了する。後工程の箱詰め作業は6人もいれば十分なはずだ。

しかし月ごとにまとめて自動機が吐き出すカレンダーを移動させる人、月ごとに揃えて箱詰め作業者に供給する人などが、製品を移動させるだけの価値を生まない作業に従事している。

しかし自動機に投入する際に12ヶ月セット投入すれば、箱詰め作業者にそのまま渡せるはずだ。冷静に考えれば、簡単にわかることだが「お祭り作業」をしている当人たちにとっては「納期プレッシャー」で冷静な判断ができなくなっているのだろう。

多分この工場は年に一度、カレンダーの生産を受注しているのだろう。毎年同じ様な「お祭り作業」に追われ、今年もかという諦観があるのだろう。営業担当者も通常の(利益が出る)受注を手放すわけにもいかず、赤字でも仕事を受けているのかもしれない。(お祭り作業の文員さんの労務費はコストに算入してない?)

残念ながら、私の話を聞いた営業責任者は意味が理解できなかった様だ。
顧客の要求納期を守らなければ、の一点張りだった(苦)
少人数であっても、正しく工程設計をすればコストだけでなくリードタイムも短縮できるのは理の当然だ。


このコラムは、2021年12月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1227号に掲載した記事です。

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データ

 私たちはデータを集めて分析することが重要だと考えている。例えば不良のデータを集め、不良対策を検討する。工程毎の作業時間の計測データを集め、工程編成効率を計算し改善する。顧客アンケート(言語データ)を集め新製品の商品企画を検討する。データに基づいた仕事の進め方が推奨され、多くの人がそういう仕事の進め方をしているだろう。

データは過去のものだ。過去の悪さ加減を分析し改善する活動には効果を発揮する。しかしありたい未来を実現するのは過去のデータではないだろう。

顧客アンケートも顧客の過去の体験に基づくものであり現在の願望だ。
アップルのマッキントッシュもバルミューダの扇風機も顧客アンケートから生まれた訳ではない。新しい未来を築くのは優れた人(飛んじゃってる人)の思いつきなのではなかろうか。

では、私たちデータ重視型の凡人はどうすればいいのか?
私たちが得意なのは、データを分析したり、物を作り上げる、物を作る工程を作り上げることだ。「飛んじゃってる人のアイディア」を実現するのは私たち工業、工芸に携わる人間の役割だと思う。

今私たちに必要なことは、飛んじゃってるアイディアに対する拒否感を捨てるとこだろう(笑)


このコラムは、2020年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第992号に掲載した記事です。

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ホームラン打者

 伝説の営業マンと言われるフランク・ベドガーの本を読んだ。
「頑張れ社長!」のyoutubeチャンネルで紹介されているのを見て、即近所の古本屋に探しに行った。

「私はどうして販売外交に成功したか」フランク・ベドガー著

大リーグの選手だったベドガーは緩慢なプレーで解雇される。その後移籍先のマイナーリーグで、重要なのは野球の技術ではなく情熱だと気がつき大変身。
しかし試合中に骨折で引退。保険外交員となるが鳴かず飛ばず。そんな不幸のどん底から伝説の営業マンになる。2日で読了した。

書籍中に「ベーブルースの偉大な記録714本のホームランは1,330回の三振に支えられている。」という記述があった。では我らが王貞治は?という思いで調べて見た(笑)

【王貞治】
通算打数:9,250
本塁打数:868
三振数:1,319
四球:2,390

【ベーブルース】
通算打数:10,617
本塁打数:714
三振数:1,330
四球:2,062

王貞治の868本のホームランは1,319回の三振に支えられている。ベーブルースも王貞治も三振の悔しさをバネにホームランを打ちまくったのだろう。更に王貞治は2,390本の四球、ベーブルースは2,062本の四球を選んでいる。多分強打者に打たれるより四球を与える方が試合を組み立てる上で有利だ、という相手チームの判断だろう。一塁が空いていれば王貞治は敬遠され歩かさせる。

四球はバットを振らせてもらいない。悔しいに違いない。

更に王貞治には「王シフト」という試練もあった。
守備は全て右寄りに守る。外野に4人配置するチームもあった。サード側に転がせば必ずヒットになる。
しかし王貞治はそれをやらなかった。どんな守備をされてもフェンスを超える打球を打ち返すことだけを考えていた。

私たちも今、悔しい、辛い状況にある。膝を屈することなく前を見よう。
明けない夜はなく、やまない雨もない。


このコラムは、2020年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第990号に掲載した記事です。

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東横線の車いす転落 別の7駅も急傾斜、さく設置へ

 東京都大田区の東急東横線多摩川駅で車いすの女性(当時81)がホームから転落した死亡事故に絡み、東急電鉄の別の7駅でもホームの傾斜が急で、車いすでは線路に転落する恐れがあることが同社への取材で分かった。同社は転落防止策としてホームでガードマンが警戒し、11月中にさくを設置する。

 同社によると、死亡事故を受け、さくが未設置の54駅を緊急調査。この結果、東横線の中目黒、自由が丘、新丸子、武蔵小杉と田園都市線の渋谷、鷺沼、長津田の7駅は、ホームから線路までの傾斜が1メートル当たり2センチ以上と急であることが判明したという。

 多摩川駅では07年9月にも車いすの女性が線路に転落して骨折する事故が起きている。

(asahi.comより)

 先週の苦言が功を奏したわけではないだろうが、水平展開という意味ではなかなか良い答えが出てきたといって良いだろう。

事故に対する暫定処置としてホームでガードマンが警戒する。
再発防止対策としてホーム端に柵を設ける。
同様な危険のある駅を調査して暫定処置と再発防止対策を水平展開した。

しかし事故の真因である、プラットホームの傾斜に関しては何も改善されていない。ホームから線路に転落しなくとも、転落防止柵に激突して怪我をするということもありうるだろう。

もちろん日々の利用客があるので、工事が難しいのは理解できる。
しかし日本の「段取り力」を持ってすれば、終電と一番電車の間に工事を済ますことも不可能ではないだろう。

この「段取り力」というのは目立たないが、日本の優れたところだ。

中国の工事はこの段取り力がないため、利用者に迷惑のかけ放題だ。
道路工事で渋滞など当たり前。工事しているのだから「没方法」というわけだ。渋滞しないように工事をするという「段取り力」がない。

私事であるが、以前通っていたジムではシャワールームの排水を改善する工事のため工事資材をロッカールームに積み上げた。そのためシャワーばかりでなくロッカールームも使用不可能になった。
その工事資材は何日も使わずにロッカールームに積み上げられたままだった。
必要な資材を必要なときに持ち込むという初歩的な「段取り力」もない。


このコラムは、2009年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第118号に掲載した記事です。

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