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トヨタの強み

 トヨタ生産方式(TPS)は中国では『精益生産系統』と呼ばれ、有難がれている。トヨタ系の自動車工場(中国企業)を指導したことがある。トヨタの指導が入っているのだろう、現場のレイアウトや物の流し方は他の中国企業と比較すると優れているように思う。しかし見かけだけであり、これがTPSであるとは言い難い。TPSの外形を真似ただけであり、TPSのココロが宿っていないと言えばいいだろうか。

ではTPSのココロとは何か。
「問題を顕在化し解決を繰り返すうちに、問題がなくなってしまい不安になり、皆で一生懸命問題を探し始める」という組織の心理状態だ。

カンバン方式、リーン生産方式は表層の技術的な競争優位性であり、その気になれば簡単に真似ができる。しかしTPSの深層にあるココロがなければ、表層的な競争優位は維持できない。

本当の競争優位は、従業員全員の改善能力向上意欲、改善を渇望する組織文化だ。この組織文化がTPSのココロであり、競争力の深層を支える組織力だ。

多くの中国企業が『人本主義』という言葉を使ってる。資本ではなく人財が企業にとって重要な資産である、と言いたいのだろう。

本当の人本主義はこんな会社だと思う。
「リストラなしの年輪経営」塚越寛著
「末広がりのいい会社をつくる」塚越寛著


このコラムは、2020年6月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第998号に掲載した記事です。

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違いに着目する

 以前のメールマガジンで、均一性国家・日本が多様性国家とどう付き合うかと言うテーマで考えた。

「違いを認識する」

「出る杭は打たれる」「雉も鳴かずば撃たれまい」が常識の均一社会日本では、極力「違い」を隠し、他者の「違い」には目を向けないのが処世術の基本だ。

しかし中国を含む世界の大半は多様性社会だ。
横並び断固反対、出る杭は伸ばせ、が自己成長、多様性社会の成長原動力だ。
多様性社会に適応するためには、「違いに目を瞑る」のではなく「違いに着目」することだ。違いを無視したり抑圧しても、対立が発生するだけで何も改善しない。違いの原因、違いを活用する方法に着目すれば、調和と改善が得られる。

均一社会では違いは差別となる。
多様性社会では違いは気づきとなる。

設備の稼働点検は「いつもと同じ」ではなく「いつもと違う」を探す方が感度が高くなる。設備の稼働は正常・異常・故障の状態がある。いつもと同じは、故障していない。いつもと違うは正常ではない。異常はいつもと違うに含まれる。故障する前に異常を発見するためには「いつもと違う」を探すことだ。

ベテラン作業員と新人作業員の生産性の違いは簡単に測定できる。同じ基準を使えば評価は簡単・正確になる。しかし生産性を数値評価しても、何もわからない。動作の違いに着目すれば、改善方法が見つかる。

参考:「ポカミス」


このコラムは、2020年7月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1002号に掲載した記事です。

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野鴨

 IBMには創業以来「Think」というスローガンがあるそうだ。人から指示されるのではなく自ら考えて行動せよ、という意味だ。
IBMからPC事業を買い取った聯想(レノボ)の社名は「Think」から来ていると思っていた。調べて見ると、IBMの創業者・トーマス・J・ワトソンはIBMの前身CTRを創業(1914年)以来「Think」をモットーとしていたそうだ。聯想創業時(1984年)に創業者柳伝志がIBM創業者の伝記を読んでいた可能性はある(笑)

IBMには創業以来のモットーがもう一つある。「ジーランドの野鴨」だ。
これは、デンマークの哲学者キュルケゴールが残した逸話である。
毎年やって来る渡り鳥に老人が餌を与えた。何年も継続するうち鴨たちは定住するようになってしまった。野鴨は家鴨(アヒル)のように太り、羽ばたく事もできなくなる。老人の死後、餌を与える者がいなくなり、飼い慣らされた鴨は絶滅してしまう。

野鴨を飼いならしてはいけない、というのが「ジーランドの野鴨」の意味だ。

金平糖のように尖った人が、尖った発想をする。そこから新しい製品や革新が発生する。金平糖の棘がなくなれば、丸い飴玉となる。飴玉同士の摩擦は減る。安定はするが革新は遠くなる。

調和を重視する日本の伝統的組織経営は「野鴨型」ではなく「家鴨型」ではなかろうか。家鴨型組織は改善には向いているが革新には向かない。革新と調和、野鴨と家鴨、それぞれ異なるものを止揚したところに目指すべき組織文化があるのだろうか。


このコラムは、2020年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1001号に掲載した記事です。

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中国ビジネス

 中国で成功している日系企業として、ベビー用品のピジョン株式会社を紹介する方が有った。ネットで調べてみると、取締役常務執行役員の北澤憲政氏がその立役者の様だ。

毎年新生児の数が減っている中で、増収増益を継続しているピジョンの成長源泉は、海外展開と言ってよいだろう。

中期経営計画書によると、2014年1月期の売り上げは、
連結総売上げ:774億65百万円
海外売り上げ:385億40百万円
中国売り上げ:224億17百万円
となっている。

関連会社の連結総売上に対し50%が海外の売り上げ、海外売り上げの58%が中国での売り上げだ。中国の売り上げは連結総売上の29%となる。中国市場での売り上げが全社に大きく貢献している。

中国も新生児数は減っており市場は減少傾向だ。しかし国民の可処分所得が上昇しているため、マーケットは拡大している。

北澤氏の経営成功要因を自分なりに推定してみた。

  • 長期経営。
    北澤氏は中国ビジネスを立ち上げたときから一貫して中国の経営トップを勤めて来られた。一部上場企業の場合、3~5年の任期を終えると、帰任される方が多い。長期間経営トップが変わらないのが良いと言う訳ではないが、ともすると、赴任期間を大過なく過ごし、帰任後のキャリアパスを睨みながら仕事をする傾向にあり、腰の据わった舵取りが出来ない。同じ経営者が長く居ることによる弊害も有るが、企業文化の浸透や、従業員からの信頼を得る、と言うメリットの方が大きいだろう。
  • 権限委譲
    副総経理には、中国人女性が抜擢されている。経営幹部は日本人赴任者が占め、中国人部長と言っても名ばかりで、人事権もない、と言う日系企業も有る。ローカル人材がいかに優秀であろうと、日本人だと言うだけで上位職を占める、と言う組織では優秀な人間から離職をして行くだろう。
    ピジョンには充実した人材育成の仕組みが有る様に思える。
  • 販路構築
    中国国内に15,000社の取り扱い小売り店が有ると言う。販路の整備拡大は、一朝一夕では出来ない。中国に進出した2000年当時から、中国を市場として捉え、継続的に販路構築の努力をされたのだろう。
  • ブランド戦略
    ピジョンは中国でも病院、産院と協力し、出産育児のサポート活動をしている。また、中国内陸部に小学校を寄付する活動も継続している。「貝親希望小学校」は既に5校有るそうだ。
    ブランド構築は、広告宣伝ばかりではない。この様な地域社会への貢献活動が企業ブランドを上げる。

このコラムは、2014年4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第359号に掲載した記事です。

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現場伝達ミスで放水5分遅れ 東京消防庁

 東京都北区で3月、住宅など4棟が焼けて女性が焼死した火災で、東京消防庁が現場を間違え、最初に出動した隊の放水開始が5分遅れていたことがわかった。担当消防署の幹部が今月17日、女性の遺族を訪ねてミスを謝罪した。同庁は近く経緯を発表する。

 ■先月の北区火災、100メートル離れた消火栓に到着

 東京消防庁の説明では、火災の通報があったのは3月23日午後1時16分ごろ。王子消防署東十条出張所から約20メートルの距離にある女性(86)宅から煙が出ているのを、近くの住民が気づいて出張所に駆け込んだ。

 50代の男性消防士長が直接、女性宅に行って番地を確認。出動は本庁が指示する仕組みのため、通信担当の20代の男性消防士に本庁へ電話連絡するよう指示。この消防士が誤った番地を本庁に伝えた。

 本庁からの誤った指示を元に最初に出動した消防車は女性宅から約100メートル離れた消火栓に到着し、同1時半に放水開始。規則で使うよう定められている火元に最も近い消火栓は女性宅から約40メートルにあり、ミスがなければ同25分には放水を始められたという。

 後発の消防車が同28分に放水を開始しており、同庁は3月下旬の検証で、先発隊の到着遅れと女性の焼死との因果関係はないと判断した。一方、消防士長が通報を記録していなかった内規違反を確認したという。

 火災で木造2階建ての女性宅約110平方メートルは全焼し、女性が焼死。火は隣接の建物にも燃え移り、住宅1棟が全焼し、マンション2棟の外壁などが焼けた。同庁警防部は「伝達ミスで出動場所を間違うのは管内では前例がない。都民に心からおわびし、再発防止に努める」と説明している。

 全国の消防では救急車が現場を間違えるミスが相次いだため、総務省消防庁が昨年12月、通報内容を複数で確認するなど再発防止策をとるよう都道府県に求めていた。

(朝日新聞電子版より)

 この記事の続報は見当たらない。東京消防庁は既に詳しい経緯を発表したのか不明だ。

この記事だけで判断すると、消防署の目の前で火災が発生。消防士長が現場を確認。20代の消防士に本庁に伝える様に指示。20代消防士は、誤った住所を本庁に電話連絡。本庁から誤った住所に出動命令が下され、消防隊は誤った場所に出動。

新聞記事には「伝達ミス」とあるが、あなたはどのようにお考えだろうか?

伝達ミスが発生する可能性は、以下のケースとなる。

  • 本庁が消防署に誤った住所で出動命令を出した。
  • 20代消防士は正しく伝えたが、本庁職員が住所を聞き違えた。
  • 20代消防士は正しく聞き取ったが、本庁に誤った住所を伝えた。
  • 消防士長は正しく伝えたが、20代消防士が住所を聞き違えた。
  • 消防士長が誤った住所を20代消防士に伝えた。
  • 消防士長が住所を誤認識した。

本庁で情報を受け取った職員と、出動命令を出した職員が別ならば、更にミスの可能性は増える。

この手の問題を「伝達ミス」と片付けてしまうと、再発防止は難しくなる。なぜ「伝達ミス」が発生したのか?と更に原因追及を深めなければならない。

そうすれば、消防署の目の前で火災が発生しているのに、わざわざ本庁に連絡し本庁からの出動命令がなければ消防隊が出動出来ないと言う、硬直した規則に問題が有ると気が付くはずだ。

消防車や救急車の出動は一刻を争うモノだ、いい加減な情報で間違った場所に出動してしまうと取り返しがつかなくなる可能性が高い。しかし「複数で確認」などと管理を増やしてしまうと、迅速性が損なわれる。

あなたの工場では、同じ様な事が行われていないだろうか?
一度全体を見渡すと良かろう。


このコラムは、2014年4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第359号に掲載した記事です。

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日本の空港、アジア進出 官民で海外勢追う

 日本の空港がアジアの空港運営に乗り出す。成田国際空港会社(NAA)は三菱商事と組み、ネパールで運営権を獲得する。日本の空港による初の海外進出となる。羽田空港も双日と連携し、インドネシアの空港の運営参画をめざす。アジアで広がる空港運営の民間
先行してきた。日本は官民一体で巻き返しをはかる。

全文はこちら

(日本経済新聞電子版より)

 日本の新幹線とそっくりな車両は別の国でも生産出来る。しかし、安全正確な運行は、簡単には真似出来ない。それらの技術は、例えば、停車位置が2mずれたら停車位置を修正する、そんな人の感性に支えられている。新幹線とそっくりな車両で後進国の、鉄道ビジネスを総ざらいする勢いを持つ国も、運用技術で比較すれば雲泥の差だろう。

面白い事に、鉄道の車両を設計製造する技術はそこそこのレベルに来ているが、バスはからきし駄目だ。全く使い難い。この違いは、国が金をつぎ込んで育てようとしている産業と、そうでない産業の差が出ているのではなかろうか?

バスのソフト面は、日本のバスと比較する事すら恐れ多いレベルだ。運転手は、路上でタクシーや乗用車とばかりではなく、同業のバスとも、先を争うバトルを繰り返す。急ハンドル、急加速、急減速の三拍子が揃う。下車途中の客がいてもかまわず発車する。年寄りには危険な乗り物だ。お陰で車内の若い乗客は、必ず年寄りや子供を座らせてくれる(笑)

空港、交通機関共にソフト面は、日本が断然優れている。
これらの技術は、農業とともにアベノミクス第3の矢になるのではなかろうか。

これからの日本の成長は、超ハイテク、運用技術、サービスの分野で差別化を計るべきだろう。そして、匠の業に支えられたモノ造りも、他国が容易には追いつけない分野だと思う。


このコラムは、2015年第2月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】409号に掲載した記事です。

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中国人経営者の苦悩

 昨年知人の紹介で中国人経営者と知り合った。人事制度をきちんと作りたいという事だったので、人事コンサルの仲間と訪問した。
話を聞いてみると、自分が会社を立ち上げた頃は、自分で営業し業績を上げて来た。数社の会社を買収し、事業が大きくなっているのに、業績のパフォーマンスは下がっている。営業職員達のやる気を上げるために、賞罰制度を導入したいと言う話しだった。
賞罰制度で人のモチベーションを上げられる、と考えている経営者の指導をしたいとは思えない。私には関係ない話しと判断し(笑)仲間の人事コンサルと話をしてもらった。

しかし仲間の人事コンサルも半分匙を投げ始めた(笑)
買収の結果企業規模が3倍になったのに、売り上げは2倍にしかなっていない。これは部下の営業職員がさぼっているからであり、賞罰制度により、彼らのやる気を引き出したいと一点張りだ。
このまま友人にこの経営者を押し付けておくのも何だと思い(笑)どんな営業をしているのか尋ねてみた。

この経営者は洗浄材料を販売している。エンドユーザは工場だが、仲介業者に卸売りをしている形になっている。元売りから仕入れた材料を、小口の容器に移し替え転売するだけだ。揮発性が高い材料であり、消防・安全上地方政府の許認可が必要。これが参入障壁となっている。認可を得ている会社を次々と買収し、地域市場を独占しようと言うのがこの経営者の戦略の様だ。

しかし市場が飽和状態なのに、事業規模を拡大しても業績は上がらない。
エンドユーザの需要動向が変わっていれば、拡大どころか衰退産業なのかもしれない。
この辺の動向を営業職員にどう把握させていますか?と質問しても要領を得た答えが返って来ない。質問を変えて営業職員はエンドユーザの工場をどの位の頻度で訪問していますか?と質問しても、経営者の頭の後ろには「?」マークしか出ていない(笑)彼らにとってのお客様は、仲介業者であり、工場を訪問した事はないそうだ。
これでは、業績が落ちているのかどうか(営業職員がさぼっているのかどうか)判断することができない。市場調査して見なさい、と言って帰って来た。

その後半年余り連絡がなかったが、年が明けてまた連絡が有った。
訪問し、マーケティングの理論を少しだけ教えたあとに、若い頃どういう思いで事業を立ち上げたのか、今後事業をどうしたいと考えているのか、経営者の思いを聞いてみた。

彼は広東省の田舎から東莞に出て来て、同郷の人がやっている仕事についた。
その後、独立し必死に働いて会社を今の規模にしたそうだ。この業界で仕事を始め、独立したのは「儲かる」と思ったからだそうだ。将来の夢も「上場したい」と言う漠然とした希望しかない。

察する所、彼が解決したい課題は、ここまで頑張って事業を大きくして来たがこの後どうしていいか分からない、と言う事の様だ。まずは今の事業の経営目的と経営理念を考えてみてください。と宿題を出しておいたが、全然思い浮かばないそうだ。日曜日に一緒に考えることになった。

そんな訳で、日曜日も仕事となった(苦笑)


このコラムは、2015年第2月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】409号の編集後記に掲載した記事です。

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米国人とマスク

 安倍首相がアベノマスクをしている姿は、スリラーバーク住人・ペローナの忠実なペット・クマシーを想起させる。失礼ながらTVで姿を見るたびに笑いを堪えている。

しかし米国・トランプ大統領がマスクをしている姿はほとんど見かけない。
米国は、「個人の自由」が何よりも優先する社会だということらしい。つまり他人に感染させるリスクより、個人の快適さが優先するのだろう。

日本には、個人よりその所属集団を優先する風習が今でも残っている。つまり個人より家族、家族より地域、地域より国家。人によって所属集団をどこまで広げるか個人差はあるだろう。戦時中は国家第一に極端に振れた。不幸な経験を持つ日本人が今だに組織依存の風習を捨てきれない。長い歴史で培われた風習は簡単には変えられないのだろう。
米国はほんの200年の風習が変えられない。黒人差別はいまだに残っている。

米国内でトランプ大統領がマスクを着用していないことを非難するつもりはない。しかし日本を訪問する際はマスク着用をお願いしたい。まぁ彼が大統領任期中に日本を訪問することはなかろうが。私人としての来日ならば、友人との交流だろう。どちらも私人であれば、誰も咎めないだろう。


■■ 編集後記 ■■

最後まで読んでいただきありがとうございます。

「スリラーバーク」「ペローナ」「クマシー」などの固有名詞を説明なしで使ってしまいましたが、尾田栄一郎「ワンピース」に登場する地名、人名です。


このコラムは、2020年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第999号に掲載した記事です。

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失敗する人が成功する

 以前何度か、成功の反対は失敗ではない、という趣旨のコラムをメルマガに書いた。

成功の反対語は何?
続・成功の反対語

成功の反対語は失敗ではなく、むしろ失敗は成功の秘訣だと思う。
優秀な経営者の失敗例を見てみよう。

  • スティーブ・ジョブズ(Apple)
    LisaやNewtonの開発などの失敗例は多くあるが、ジョブズの最大の失敗は自ら招聘したジョン・スカリーにApple社を追い出されたことだろう。
  • ビル・ゲイツ(Microsoft)
    マイクロソフトの最大の失敗はモバイルOSの覇権争いに敗れたことだろう。
  • マーク・ザッカーバーグ(Facebook)
    彼は「長年にわたり、私は皆さんが想像できる限りほぼすべての失敗を経験してきた。多くの技術的なミスや割に合わない取り引きをした。信用すべきでない人たちを信用し、才能ある人たちをふさわしくないポストに就けた。重要なトレンドを見落としたり、乗り遅れたりすることもあった。相次いで製品を送り出しては、失敗を重ねた」と言っている。
  • ジェフ・ベゾス(Amazon)
    彼はイーベイのオークションビジネスを真似しようとして見事に失敗。Amazonのプラットホームを他社に貸し出すサービスを始めて失敗している。

 優秀な経営者ほどたくさん失敗しているのではなかろうか。失敗経験がカンを育てる。それが成功につながる。

スティーブ・ジョブズはAppleを追い出されたおかげで、ピクサーを起業し、Appleに復帰後iPhoneを世に送り出している。
ビル・ゲイツはモバイルOSは取れなかったが、マイクロソフト帝国は健在だ。
マーク・ザッカーバーグのFacebookはアクティブユーザが20億人、売り上げ1兆円規模。Facebookは世界一の人口を有し、FacebookよりGDPが小さい国はいくらでもある。
ジェフ・ベゾスの失敗は、アマゾンマーケットプレイスとしてリベンジした。

失敗をしない経営者は成長しない。失敗しないように消極策ばかり選ぶので成長しない。


このコラムは、2020年7月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1009号の編集後記に掲載した記事です。

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モノ造りからコト造り

 何度か「コト造り」に関してメールマガジンに書いた。

「モノは売らない,コトを売る」
「コトづくり」

今回もコト造りについて考えてみたい。
バルミューダの寺尾玄社長の話をラジオ放送で聞いた。
寺尾玄社長は、高校を中退。スペイン、イタリア、モロッコなど、地中海沿いを放浪。帰国後音楽活動をしていた。バンド活動を辞めたのちバルミューダを起業しておられる。モノ造りの経験はない。
彼は創業の思いをこう言っている。
「アップル、パタゴニア、バージンは自分たちがやりたいことをビジネスにしている。それは顧客を感動させ、それを共有することだ。」と言っている。

アップルは説明するまでもないだろう。アップルが提供するのはコンピュータやスマホではない。それらを使うことによって得られる感動体験だ。そのため彼らの社名から「コンピュータ」がなくなった。

パタゴニアはアウトドア用品を製造・販売している。
彼らの企業理念は「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」である。

バージンは、航空産業、音楽産業、携帯キャリア、映画館、鉄道、金融、宇宙産業、F1など多角企業グループだ。全二社とは全く違う業種の会社だが、彼らに共通しているのはモノやサービスを提供するだけではなく、提供したモノやサービスを通して顧客に感動を提供することだ。

バルミューダの最初の製品は扇風機だ。彼らが提供しようとしたのは扇風機ではなく「夏の午後を吹き抜ける心地よい風」という感動体験だ。空気清浄機、調理家電、照明器具どれも感動体験を商品コンセプトにしている。

最近スピーカをリリースしている。
寺尾社長は、自身が音楽活動をしていたので、音響製品は造る気はなかったと言っている。
音響製品のメーカは、いい音を作りたいと考えている。しかしミュージシャンはいい曲を作りたいと考える。「モノを作る」と「感動体験を提供する」の違いはここにあるようだ。


このコラムは、2020年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第978号の編集後記に掲載した雑感です。

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