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刮目相待

 『刮目相待』とは中国語の四文字熟語で三国志の『士別三日,即更刮目相待』という一節が原典だ。勇猛なだけで学のない呂蒙という武将が暫く会わぬ内に、学識を身につけた、という故事だ。日本語では「男子三日会わざれば刮目してみよ」と訳されている。

珍しく中国の四文字熟語をテーマとしてみた。実は2月10日付の朝日新聞・天声人語に「刮目」という文字が出ており、『刮目相待』という成語を思い出した。

(天声人語)イーロン・マスク

イーロンマスクの新型ロケット「ファルコン・ヘビー」の打ち上げ成功に関連して書かれたコラムだ。
ファルコン・ヘビーは、ステラのスポーツカーを搭載しデビット・ボウイの「スペース・オデッセイ」をかけながら火星まで運ぶという。米国の宇宙開発を担うNASAよりすごいことを民間企業がやってのけた。

南アフリカ生まれの青年はアメリカに渡り、今では電気自動車、太陽光発電、宇宙開発企業のオーナー経営者だ。世界中の人間がイーロン・マスクを刮目しているだろう。

天声人語の論調は、米国には若者の「妄想」に金や技術をだす大人がいる。日本にはその様な若者がいないだろうし、「妄想」には冷笑しか与えない、と悲観的だ。

日本の若者という「群像」を考えると、就職氷河期に就職できずに今だに非正規職員として働いている40代の「若者」を筆頭に、若者に覇気を感じない。当然若者の中には、「妄想」を抱いて努力している人もいるだろう。私の友人にもそういう若者はいる。しかし峰の高きは、裾野の広さによる。

イーロン・マスクの様な高い峰が存在するのは、米国にはそれを支える裾野となる若者が大勢いるということだ。

この問題は若者の意識の問題ではない。
日本の大人たちが「ゆとり」「思いやり」の本質を見失っている様に思えてならない。ゆとり教育は、出る杭を育てる教育ではなかった。数学が苦手でも芸術を磨く。数学が得意なら徹底的に尖らせる。そういう理念ではなっかったのか。円周率を3と教える様では、出る杭を育てる教育は無理だろう。
働き方改革も残業時間にしか目が向いていない様だ。働く目的や目標が確かであれば、寝ずに働いても心は折れないはずだ。

一番の問題は、若者の「妄想」を冷笑する我々大人の姿勢だ。
刮目して大器を探したい。


このコラムは、2018年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第629号に掲載した記事に加筆修正しました。

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記憶力と忘却力

 年齢を重ねるほどに、物忘れが多くなるものだ。
私は「記憶力は若干衰えてきたが、おかげで忘却力は絶倫だ」とか「自分の頭脳は新しいことを創造するために使っているのであり、記憶は外部補助記憶で十分」などとうそぶいていた(笑)
しかし外部補助記憶(手帳やメモ)のどこに記憶したか思い出せない事もある。
そんな折に「60代から簡単に頭を鍛える方法」という書籍を見つけた。

「60代から簡単に頭を鍛える方法」高島徹治著

いささか直接的な書籍で照れくさいが、いくつか啓発を受けた。

この書籍によると、30代と60代では生きてきた期間が倍違うわけであり、記憶している量も倍違うはずだ。当然思い出すのに時間がかかるのは必然となる。もし記憶容量が一定ならば不必要な記憶を捨てる事、すなわち忘却力が重要になるはずだ。(著者は記憶容量は脳を鍛える事により増やす事が出来ると嬉しい事を言っている)

記憶のメカニズムは、海馬が記憶すべき内容を取捨選択する事により重要な事を長期記憶エリアに送り込み、重要でないことを捨てる働きをしているそうだ。海馬はこの仕事をレム睡眠中に作業している。夢(将来の夢ではなく寝ている時に見る夢)はこの海馬の活動中に見るのだそうだ。
ということは、海馬に重要な事柄と思い込ませることができれば、記憶に残る。当然寝ている間に海馬を騙す(笑)様な事は出来ない。起きている間に仕込む。

つまり記憶の「整理整頓」をする必要がある。
重要ではない記憶、短期的な記憶は捨てる。重要な記憶だけを長期記憶エリアに送り込む。やはり忘却力が必要となる(笑)忘れても構わない様に、TODOアイテムがスマホに届く様にする事は簡単だ。

新しい技術で、高齢となっても知的な生き方が可能となる。大変嬉しい事だ。


このコラムは、2018年2月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第633号に掲載した記事です。

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行動評価

 毎月1回中国でがんばっている日本人経営者・経営幹部の皆さんと集まって「人財育成勉強会」をしている。
「人材」を「人財」に変えるために、具体的なワークをしたり事例研究をしている。

6ヶ月間「従業員のモチベーションを上げる」をテーマとして取り組んできた。

この勉強会メンバーが基本的に合意している認識は、福利厚生、給与は不満の解消にはなるが、モチベーションを上げるには効果が薄いと言うことだ。一方「公平な評価」はモチベーションを上げる効果があると認識している。

評価において数値評価ができるもの、例えば営業職ならば売り上げ目標に対する達成度などは具体的に数値で評価できる。こういう評価は公平感を維持するのは比較的たやすい。
しかし勤務態度とか勤務意欲などは定量評価が難しい。無理やり点数をつけたとしても、評価者によって大きく異なってしまう。こういう場合は公平感を保証するのは困難となる。

例えばこんな事例もある。
上級管理職で中国人管理職を一人ひとり評価をしていると、人によって大きく評価が変わってしまう。
理由は簡単だ。直属の上司に対しては非常に協力的だが、他部署の上司に対しては何かと理由をつけて仕事を断ってくる。こういう人間に対しては直属の上司の評価は高いが、他の部署の管理職から見ると仕事ができない人間に見えてしまう。

これは評価すべき態度・意欲のありかたとその基準が不明確であるためだ。

そこで期待される勤務態度・意欲を持った人間はどのような行動をとるかを定義する。そしてその行動が取れれば加点する「行動評価主義」を採用すればよいと考えている。

勉強会ではこのテーマに時間を割き、リーダとしての「行動評価基準」を作成した。

これを評価者だけの秘密の評価基準にするのではなく、基準をオープンにする。オープンになっていれば、全ての従業員が会社が期待する行動がどういうものか理解できる。その期待に沿えば給与も上がることが理解できれば、正しい方向に努力するだろう。

上記の例では「部門間協力」「全社的立場での視点」について経営者がどのような行動を期待しているかを明確にしておけば良いわけだ。

いくら機械化を進めて人を減らしても最終的には「人質」が経営に大きな影響を与える。むしろ機械化を進めてゆけば、作業者よりも中間管理職以上の職位の重要性が増す。この人たちの「人質」を上げないことには、機械化投資の負担ばかり増えて業績は上がらないだろう。


このコラムは、2009年11月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第125号に掲載した記事です。

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非常識なパフォーマンス

 不良率、生産性などのパフォーマンスを業界内だけで比較をしていると「井の中の蛙」になってしまう。

例えばセットメーカは電子部品業者に対し不良20ppm以下の納入品質を要求されるところが多い。部品にもよるだろうが、まったく実現不可能な品質レベルではない。がんばれば何とか達成できる。

しかしこの要求を電源装置にも適用されて、大いに弱った。
電源装置の中には、電子部品、機構部品が200点ほど入っている。それぞれの部品が20ppmの品質レベルなのに電源も同じ品質要求では不公平ではないかと、お客様に苦情を呈した事がある(笑)

このお客様に収めた電源装置は生産開始初期につまらない不良を何度か出してしまったため、最終的には20ppmを切れなかったが、0ppmを何ロットも継続した。

電源屋は電源屋の常識で品質レベルを考えていると、そこそこのところで止まってしまう。電子部品業界の常識レベルにチャレンジすることにより、更に上のレベルに到達できるわけだ。

一方自動車関連部品やモジュールを生産されている方々は、初めから不良ゼロが常識である。
ひとつには人の命を預かる部品であるということ、更に部品不良が発生すると最終の完成車組み立て工程が止まってしまう。という理由により不良ゼロが常識なのである。この常識は自動車関連の部品メーカであれば、ネジ屋にも適用される。

このように業界を越えてパフォーマンス評価をすると、更に高い目標がでてくるものだ。

同じような作業をしているにもかかわらず、業界内比較をしてしまうとこの程度で十分というレベルになってしまう。ベストプラクティスを業界の外に求め、それにチャレンジする。同業者の中では非常識なパフォーマンスを実現することにより、業界内で圧倒的な競争優位が得られるであろう。


このコラムは、2008年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第45号に掲載した記事です。

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タカタ、納入価格の引き下げ見送り要請 車各社に

 エアバッグの品質問題を抱えるタカタが、製品納入先であるホンダ、トヨタ自動車などの完成車メーカーに価格引き下げを見送るよう要請したことが分かった。年間で100億円規模の収益改善効果を見込み、リコール(回収・無償
修理)拡大による損失を一部穴埋めできるとみている。各社が応じれば取引先による本格的なタカタ支援の第1弾となる。

全文はこちら

(日本経済新聞電子版より)

リコールの対象となっているタカタのエアバッグは、作動時に異常に強い爆発が起きることで内部の金属片が飛散。運転手らを死傷させる事故が発生した。

この問題が、ここまで長期化し、リコール対象が拡大している原因は、異常爆発が起きる原因を特定で来ていないからだ。

ガス発生剤の「硝酸アンモニウム」が湿気に弱いようだ、と言う曖昧な推測が提示されているだけで、真因が分かっていない。少なくとも公表されていない。

硝酸アンモニウム+湿気が原因と推定したのならば、それを確認する実証実験をすれば良いはずだ。既に実証実験が済んでおり、硝酸アンモニウムの吸湿が原因ではないと特定出来ているのであれば、実験結果とともに公表すべきだ。
それがないから、リコール交換品にまで不安が発生する。

原因究明に一生懸命頑張っておられるであろうタカタのエンジニアの方々には敬意を表したい。しかし失礼を承知で、あえてネガティブな想像を申し上げる。これはタカタを非難するのが目的ではなく、貴重な経験として共有したいと考えている。製造業に携わっている方々も同様なリスクを背負っているはずだ。

第一:真実を隠さないこと。

リコール問題が発生し、真実を隠し通せたことはない。異常爆発のメカニズムを判明したが、これを公表すると更に自社に取って不利益となる、などの理由で秘匿しても絶対にうまくいかない。一時的に隠せても、必ずその報いは来る。

第二:全社を挙げて自主的に関わること。

タカタは異業種からシートベルトで自動車部品業界に参入している。シートベルトは自社技術が応用出来る商品だ。しかしエアバックは、新規技術が必要となる。新聞記事によると、完成車メーカからの強い要請が有り、自動車部品業界に参入したそうだ。これをイクスキューズとしてはならない。商品化したからには、自社に責任がある。購入原材料に関しても同じだ。

第三:新規、珍奇は慎重に評価すること。

ガス発生剤に硝酸アンモニウムを使っている大手エアバッグメーカーはタカタだけという。他社が使っていない優れた物を採用すれば、それが優位性を確保する要因になる。しかし同時に技術的な問題、調達性の問題が発生するリスクが存在していることを認識しなければならない。


このコラムは、2015年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第432号に掲載した記事です。

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研究開発

 中国の現場で仕事をしていると,どうしても製造現場に偏りがちだ.今まで日系・台湾系のお客様が多かったため,研究開発は本社,生産は中国と住み分けが出来ているからだ.

元々開発設計上がりの品質証証マンなので,設計品質保証の仕事が少ないのを寂しく感じていた.

それでも応用設計は中国でやります.と言うお客様はあった.
応用設計の仕事は,ミスを減らしたり効率を上げるのは比較的易しい.

中国企業の場合は,開発設計の機能を持っているところが多い.
先週訪問した中国企業も,商品開発主導型の企業だ.
生産の方は,開発設計部隊の試作生産の延長と言う趣であり,多分あっという間に20%,30%は生産効率を上げられるだろう.

商品開発・製品開発の現場は,応用設計のように仕事がパターン化していないことが多く,効率を上げる努力をすると創造性を失ってしまうこともありうる.
大体設計者と言うのはルールに縛られるのを嫌がる(自分もそうだった・笑)

こういう仕事を無理やり「ISO9001だから」みたいな強制力で縛ろうとすると,うまくゆかないことがある.
例えば,設計審査などのレビューが形骸化しており,実際には設計を完了しているのに,初期設計審査の開催がまだ済んでいない.などと言うことが起こる.

もう仕事は終わっているのに,ISOのための「アリバイ作り」のために設計審査をするという形式主義に陥っている.このようなことはムダ以外の何物でもない.更に本来,設計審査で機能すべきチェックが働かなくなる.

私は前職の会社で,開発期間が3年もかかる製品の設計をしたことがある.
同時に顧客の受注から1ヶ月で最初の量産出荷をしたこともある.
もちろん異なる事業部での経験だが,会社の品質保証システムは一つである.システムと運用を工夫し,全くカテゴリィの違う製品も,同じ品質保証システムでマネジメントを出来るようにしていた.

こういう運用の工夫をすることで,研究開発エンジニアの創造性を失うことなく,新製品プロジェクトの目標管理,品質保証をしてゆくことが重要だ.


このコラムは、2012年3月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第247号に掲載した記事です。

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京急脱線事故

 9月5日横浜市神奈川区の踏切内で京急電鉄の電車とトラックが衝突、死者1名、重軽傷30名の大事故が発生した。

本日は踏切事故の未然防止について考えてみたい。

事故を起こした13tトラックは道に迷っていたようで、狭い道から踏切に入るために3分以上も切り返しをし、踏切に入った途端に遮断機が降りてしまったようだ。

列車運転士は直前の赤信号を視認。ブレーキをかけたが間に合わなかった。

踏切事故を防ぐ最善の対策は、踏切をなくすことだ。しかしコストも時間も必要だ。日経新聞の記事には、踏切を立体交差にするには約9年、40億円かかるとあった。現場の航空写真を見ると、踏切をなくし列車を高架上を通すのは現実的ではなさそうだ。

踏切の非常ボタンを押せばATS(自動列車停止装置)が働き列車は非常停止するはずだ。しかし昼近くの住宅街だ。踏切の付近に人がいるとは限らない。

列車が自動で停止する仕組みを考えなければならない。

監視カメラで踏切内に障害物を検出したらATSが起動する仕組みであれば、ほとんどコストをかけずに対策できるのではなかろうか?
人の命は金には換えられない。しかし1箇所で40億ものコストをかけたのでは会社そのものが存続できないかもしれない。現実的な対策を考えなければ意味はない。


このコラムは、2019年9月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第874号に掲載した記事です。

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救命胴衣着てエア遊具、危険

東京都練馬区の遊園地「としまえん」のプールで昨年8月、ライフジャケットを着た8歳の女児が水面に浮かべた遊具の下で溺れて死亡した事故を受けて、ライフジャケット着用時の遊具のリスクを調べていた消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は19日、転落状況によっては体が真上に浮上せず、遊具の下に潜り込んで自力脱出できなくなる危険があるとする報告書をまとめた。

(全文)

(朝日新聞電子版)

昨年8月15日に発生した豊島園プールでの女児死亡事故の続報だ。

(注)エア遊具とはとは子供を対象とした、空気で膨らませた大型遊具の総称。本事例ではプールなどの水面に浮かべその上で遊ぶ大型遊具のこと。

この記事は消費者安全委員会が6月19日に発表したとしまえんプールで発生した8歳女児の溺死事故調査報告が元になっている。女児はライフジャケットを着用、プール水面に設置されたエア遊具から転落。エア遊具の下に潜り込んでしまい、ライフジャケットの浮力でエア遊具底面に押しけられ、脱出できず溺死している。

消費者安全調査委員会報告書

事故原因を特定し、再発防止を提案するための調査・再現実験を含む報告書だ。
事故発生から10ヶ月かかっている。公共性の高い報告書だ。何層もの上位者の査読・修正指示があったことは想像にかたくない。としまえんプールでの事故後、同業施設では自主的に再発防止が取られていたと思う。幸い事故後同類の事故はなかったようだが、もう少し早く報告書が公開されても良いのではないかと思う。

死亡事故といえば、我々製造業にとっては「重大不適合」である。再発防止対策を含む原因調査報告書は1週間以内に提出されねばならないだろう。少なくとも即日再検査などの暫定処置を取らねばならない。

ISO/IECガイド51「安全側面-規格への導入指針」では、リスクア セスメントによりリスクを明らかにし、以下の優先順位に基づきリスク低減を行うことを、リスク低減の 基本原則としている。

  1. 設計における本質的安全設計方策(危険源の除去等)
  2. 設計における安全防護及び付加保護方策(ガードの設置等)
  3. 設計における使用上の情報(警告の表示等)
  4. 使用における各種保護方策(監視、保護具の使用、訓練等)

この指針は製品安全の大元締めとなる規格だ。
製品ばかりではなく、オフィス・工場の安全に適用すれば以下のようになる。

  1. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を除去する。
  2. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を緩和する。
  3. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を可視化する。
  4. 作業従事者に注意喚起・教育訓練する。

より上位の対策が有効度は高くなる。


このコラムは、2020年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第997号に掲載した記事です。

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子供の遊具事故

 15日午後2時10分ごろ、東京都練馬区向山3丁目の遊園地「としまえん」にあるプールで、水面に浮かべられた遊具の下の水中に女児がいるのを監視員が見つけた。女児は病院に搬送されたが、午後4時ごろ死亡が確認された。
警視庁は女児がおぼれたとみて、詳しい経緯を調べている。

 全文

(朝日新聞ディジタルより)

 夏休みに家族でプールに来ていたのだろう。父親が娘がいないことに気づき監視員に通報している。その時には発見できず、1時間後の一斉点検時に心肺停止状態で発見されている。通報時に全員プールから上げて探していれば、と思ってしまう。幼い子供を亡くした家族のことを思うと心が痛む。

この様な事故を防ぐために、ライフジャケットなど安全用具はどうあるべきかなどの議論がされている。しかしプールに浮かべられた遊具の下に潜り込んでしまえばどんなライフジャケットを装着しても助からなかっただろう。

もっと根本から考えなければならない。

私が少年だった頃は、外遊びで怪我をした。しかし命に関わる様な危険な目にあったことはない。豊島園ではないが、都営プールで溺れかかったこともある。大人用の競泳プールだ。小学生だった私の身長より水深の方が深かった。足がつかなくてもがいている私を、隣にいた大人がひょいと持ち上げてくれた。

当時と比べれば今の方が確実に危険度が増している様に思う。
公園には鉄棒とブランコぐらいしかなかった。プールはただ「プール」だった。遊具はせいぜいが浮き輪だ。

当時の子供たちは、広場で夕日に向かってただ走るだけで楽しかった。ビー玉やメンコで駆け引きを学んだ(笑)当然子供の遊びは子供だけだ。親の監視など考えられなかった。

親や多くの大人の目があっても事故が起きてしまう。生活の水準は上がっても子供の安全は下がってしまったのではなかろうか?

一度あらゆる子供の遊具をリセットしてはどうだろう。過去に何度も子供の遊具事故が発生している。

「スピード出すぎる滑り台」
(こちらの遊具は大人が怪我をしている)

今の子供たちはゲームなどの仮想世界での刺激が強すぎて、メンコやビー玉で遊ぶ楽しさが理解できないのだろうか?そういう刺激を与え続けているのは大人自身だということを考えるべきだ。


このコラムは、2019年8月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第865号に掲載した記事です。

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ポカ避け

東北新幹線ドア、280キロ走行中開く ドアコック戻し忘れ

 21日午前10時17分ごろ、東北新幹線仙台発東京行き「はやぶさ46号」(10両編成)が仙台―白石蔵王駅間を時速約280キロで走行中、運転台に9号車のドアが開いたことを知らせる警告表示が出たため、緊急停止した。
車掌が確認したところ、ドアがほぼ全開となっていた。非常時に手動でドアを開けるための「ドアコック」のレバーが引いた状態になっていたという。けが人はいなかった。

 ドアコックはドアの上部に設置され、ふたを開いて内部のレバーを引くとドアを手動で開閉できる。非常時のほか、清掃の際にも利用されている。JR東日本がデッキにある防犯カメラの映像を確認したところ、仙台駅を出発する前の車内清掃で作業員がホームとは反対側のドアコックのレバーを引いたが、ドアを開けずにレバーも戻し忘れていた。出発前の最終チェックでも見落とされたという。

(朝日新聞ディジタルより)

 時速280キロで走行中の列車の扉が開けば相当の恐怖だろう。扉近辺に人が立っていれば、風圧で転落事故が発生したかもしれない。

清掃作業員がドアコックレバーを戻し忘れたという、典型的な人為ミスだ。

JRは「はやぶさ46号はE5系の10両編成。JR東の最新車両E7系はコックのふたが開けば通知するシステムがあるがE5系にはないことも、盲点になった。今後、改修する方針」と発表している。

しかしコックレバーのふたが開いているのが検知できていても、今回の事故が防げたのだろうか?「コックレバーを戻し忘れた」と記事にあるが、フタが開いていた、とは書いてない。

列車内のコックレバーふたにセンサーを付けて新たな配線工事をする。費用も時間もかかるだろう。もっと簡単に「ポカ避け」の方法を考えた方がよかろう。

コックレバーが引かれていてもフタが閉まっていれば、外から確認できない。コックレバーを改造してとフタと干渉するようにする。コックレバーが引かれている状態(手で扉が開けられる状態)の時はフタが閉まらないようにする。この改造により、コックレバーのふたが開いていれば一目でわかるはずだ。

清掃作業員は清掃終了後必ずコックレバーのふたを確認する、自分が作業した車両以外から下車する。こうすればコックレバー閉め忘れをダブルチェック出来るはずだ。

このようなポカ避けの仕組みは、コピー機に応用されている。紙詰まり修復作業後レバーをすべて元の位置に戻さないと扉が閉まらないようになっている。他社事例は改善案、再発防止案の宝庫だ。

■■ 編集後記 ■■

日本の新幹線の清掃作業員の質の高さ、礼儀正しさを中国の乗務員と比較して中国の列車に乗るたびにがっかりしています。
今回の事故は、短時間で完璧な清掃を目指している彼らだけの責任ではないと思っています。人の注意力や努力によらず、仕組みから変えるのが本当の改善です。


このコラムは、2019年8月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第868号に掲載した記事です。

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