経営」カテゴリーアーカイブ

成長プラットホーム

 先週末は、東莞和僑会方針管理・目標管理勉強会を開催した。
この勉強会は、1年間かけて会員企業の経営者、中国人幹部が方針管理・目標管理を実践する勉強会だ。三回目となる今年は6社が参加している。毎回幹事会社に集まり、勉強会・工場見学をしている。

今回会場となった幹事会社は電子部品を生産するT社だ。
プラスチック部品、金属部品の加工から最終電子部品の組み立てまで原材料から一貫生産出来る工場だ。

昨年、引っ越し直後のT社で勉強会を開催した。当時は新人作業員が多く苦労しておられた。あれから半年あまり、生産ラインの見かけは大きくは変わっていないが、内容は改善が大きく進んでいた。生産性が約1.7倍、直行率は劇的改善が続いており、直近の1ヶ月だけでも20%改善されている。

T社の中国人メンバーは、改善の原動力を以下のように語ってくれた。

  • 作業者の多能工化が進んだ。
  • 作業者に日報を書かせ、毎日達成感や反省を感じてもらっている。
  • 他のラインと比較することにより、競争心を持たせた。

そしてメンバー自身は、方針管理・目標管理勉強会に参加し自分たちで目標を設定したことでモチベーションが上がった。

一緒に参加している企業の良いところを学び、他社からコメントをもらう。そんな活動を通して、現場力を上げてきた。その原動力が参加メンバー自身の成長だと語ってくれた。

参加企業のメンバーの成長プラットホームとして、方針管理・目標管理勉強会を始め、微力ながら裏方として勉強会を支えてきた。彼らの話を聞いて私自身のモチベーションも上がった。


このコラムは、2018年7月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第796号に掲載した記事です。

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上手くできた事は忘れる

「30年前に上手く行った事を今やってみても上手くは行かない。」
臨済宗妙心寺退蔵院副住職・松山大耕禅師の言葉だ。

成功体験は、成功する要因があって得られる。要因の内には成功した時代背景、社会背景、タイミングなど制御できない要因が含まれている。したがって成功事例をそのままやってみても上手くいかない事が多い。

会社の役員などをみていれば良くわかる。昔の成功体験により高い地位を得ている。30年前に上手く行った事業が、今うまくいくはずはない。顧客の嗜好も社会そのものも変わってしまっている。
例えばコンパクトカメラの商品企画で、会社に大きな利益をもたらした重役がいまだに商品企画に関わっている様では、その会社の繁栄は怪しい。コンパクトカメラの役割がスマホに奪われて久しい。過去の成功体験が邪魔をして、今売れる商品を見極める目が曇る。

しかしダメな事をやれば必ず失敗する。
たまたま何事もなくても、いつかは失敗することになる。

従って上手くできた事は忘れてしまう。失敗した事はしっかり覚えておく。

精神衛生上あまり好ましくはないかもしれない。
人は上手くできた事はいつまでも覚えておきたいだろうし、失敗した事は他人に知られるのも嫌だ。早く忘れてしまいたいものだ。

上手く行った事は、皆で賞賛して忘れてしまう。
失敗した事は、失敗したことで進歩できたと皆で感謝し時々に思い出す。時々にとは月に一回とか二回という意味ではない。折に触れてという意味だ。そんな組織文化を持てば、失敗から学ぶ事ができる組織になる。


このコラムは、2019年1月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第772号に掲載した記事です。

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人材の活用

 私が住んでいる辺りは,東莞政府庁舎があり,オフィス街,商業地区だが,一歩路地を入ると,昔からの零細製靴工場が密集している地域がある.

しばしば通りかかるこれらの零細工場の門口には,工員募集の赤紙が貼り出されている.その貼紙を見ると細分化された工員の募集になっている.

開料,車面,介面,折面,界皮など靴製造の一工程と思われる単位で工員の募集をしている.
全部で2,30人の工員がいればこの辺りでは,大手工場という規模だ.零細工場が工程を細分化して,職人を募集する.非常に非効率なことに思えて仕方がない.

私は靴製造業界には詳しくないが,想像するに,日本の小さな靴工場は親方を中心に弟子何人かと靴を造っている.弟子は初めは下働きかもしれないが,そのうち靴造りの全工程を任され,一人前の靴職人になる.

しかしここいらの靴工場では,「車面」(たぶん靴製造工程中のミシン作業)という職人が存在し,その職位を極めることになる.従ってどんなに小規模であっても靴を造るためには数人の職人を雇う必要がある.

こういう工場を経営するには,運転資金を確保するため「量」を追求せねばならない.「質」より「量」,「品質」より「低価格」を追求するモノ造りは,未来はない.

弟子を育てるには時間がかかる.しかし弟子と二人でモノ造りをしていれば,「量」ではなく「質」,「低価格」ではなく「高付加価値」を追求できる.生産量の増加には,弟子を増やしてゆけばよい.一度に何人もの作業員を雇う必要はない.

既に中国でも単機能の職員や作業員をたくさん集めて,モノ造りをする時代は終わった.多能工を育て,少人数でフレキシブルなモノ造りを目指すべきだ.


このコラムは、2010年9月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第171号に掲載した記事です。

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人材の活用

 人,モノ,設備,方法がばらつくと品質がばらつく.
人のバラツキは,直接作業のバラツキとなる.モノ,設備,方法のバラツキをコントロール出来るのは人だ.従って直接・間接的に人が全てのバラツキの源と言ってよいだろう.

人は一人ずつ個性があり,ばらついている.
一人の人も体調や感情により,ばらつく.

これらのバラツキをコントロールする事で,品質のバラツキをコントロールできる.

人のバラツキをコントロールする方法として,人を仕事に対して固定化する,という手法が昔から日本の企業で行われていた.
仕事に関する暗黙智は,個人に蓄積され効率よく仕事を遂行することができる.この仕事に関しては,○○さんに聞け,という余人を持ってして替え難いマイスターが各職場に何人もいたモノだ.

こういう仕組みがうまく機能していたのは,長期雇用が前提としてあったからだ.
団塊世代の引退,契約社員・派遣社員など雇用形態の変化で,現場から多くのマイスターと暗黙智が失われる事となった.

バブル崩壊後,多くの経営者が飛びついた米国式経営は「仕事に人を付ける」形となっている.従って各職位の職務分掌や,マニュアルが充実している.
一方日本式経営は,上述の様に「人に仕事を付ける」形となっている.この大元のところを変えないで,表面的に米国式経営をまねたため,多くの日本企業が現場力を失ってしまった.

「人に仕事を付ける」方式が万能であると言っている訳ではない.
この方式は長期雇用が前提でなければ,暗黙智は蓄積されない.世代交代時の難しさも内在している.
日本の長期雇用は既に崩壊している.中国の労働市場では,初めから長期雇用は望めない.この前提に立てば,「人に仕事を付ける」方式はもはやうまくはゆかないだろう.

では,米国式に職務分掌・マニュアルを充実させればうまく行くだろうか?
短期的には,人材の入れ替わりに強い組織となるだろう.マクドナルドなどの業務マニュアルは,アルバイト職員がいつ入れ替わっても良い様に作られている.

しかしこの方法だけでは,日々蓄積される暗黙智を取り込んで行くことができない.日々成長する組織にはなり難い.

個人に蓄積された暗黙智を組織の形式智に変換する方法.
業務と業務の間の落ちてしまう様な仕事をお互いにフォローし合う方法.これらをインストールした,新しい人材活用方式に変えて行かなければならない.

新しい人材活用方式構築のキーワードは「意欲」だと考えている.


このコラムは、2012年8月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第272号に掲載した記事です。

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品質管理の形骸化

 少し古いが日経テクノロジーに「不良品が減らないのは、品質管理が形骸化しているから」と題するコラムがあった。

リーマンショック以降、日本の国内市場が縮小し、工場が海外シフトした事により「現場力」が低下したことで品質管理が形骸化し、不良が減らない、と言うのがコラム筆者の主張だ。彼が取り組んだ改善事例が二件紹介してあった。

一つはISO9001対応に成り下がり、形骸化したQC工程図の運用を元に戻した。
もう一つの事例は、5Sを徹底することにより現場の問題を見える化した。

確かにこれで一定の効果はあるだろう。しかし本当にこれだけで良いのだろうか?と言う違和感を持った。

ほとんどの日系工場にはQC工程図は有るだろう。
しかし新規工程を作らなければ、QC工程図にはほとんど変化はない。新機種を生産投入しても、QC工程図の改訂は無く、以前のQC工程図をコピペして新機種のQC工程図を作成する場合がほとんどだろう。
リーマンショック以前から、この様な対応で済ませていた工場が大半だろう。
リーマンショック以前から、ある意味ではQC工程図は形骸化していたと思う。

誤解を恐れずに言えば、元々QC工程図はレベルの低い工場を一定の品質レベルに揃えるための手法でしかない。QC工程図の運用を変えた所で、最低基準の品質レベルにしか到達しない。

日本製品の品質に定評が有ったのは、QC工程図の運用ではなく「現場力」の強さに有った、と考えた方が良いだろう。具体的に言えば、QC工程図には工程内検査を実施すると言う事は書いてあるが、検査規格をどう設定するかは書いてない。

例えば、電源装置の仕様に電圧保持時間の規定が有る。電圧保持時間とは、入力電源が切れてから出力電圧が保証される時間の規定だ。通常製品仕様は電源OFF後○○msは出力電圧を保証するとなっている。従って設計者は、電源保持時間が○○ms以上となる様に設計している。そのため生産技術者は工程検査の仕様を○○+αms以上と規定し、検査装置をプログラミングする。ここのαは、実使用環境と検査環境の差異を吸収するためのマージンだ。

しかしこの様な検査仕様を作成すると、ベテランの技術者から指導を受ける事になる。正しくは△△±□msと検査仕様を設定する。なぜならば、製品仕様が○○ms以上であっても、設計仕様は△△±□msにしかならないからだ。電圧保持時間に影響を与えるのはコンデンサーの容量であり、コンデンサー容量の仕様は±□%で規定されている。そのため設計者は△△ー□msが製品仕様の○○ms以上となる様に設計している。
製造が設計通りに作っているかどうかを確認するために上限も検査しなければならない、と言う理屈だ。
こういう「感性」が現場力であり、これを新人の生産技術者に教えて行く事が、現場力を維持することになる。QC工程図だけでは、現場力は取り戻せない。

5Sを維持改善するのも現場力だ。

現場力が低下してしまった原因は、リーマンショックでも国内市場の縮小でもない。バブル崩壊後、日本的経営に自信を持てなくなった経営者が、米国流の短期成果主義経営を盲目的に取り入れたのが原因だと考えている。つまり生産現場を要員化し、人的コストを変動比化した事で現場力が下がった、と考えるのが妥当だと思う。

景気の後退や国内市場の縮小が問題であれば、一経営者には解決方法はない。
人的資源を「リソース」と考えればコストになる。人的資源を「キャピタル」と考えれば、人財育成は必須の投資だ。

以前、バブル崩壊後の日本工場を訪問して驚いたことがある。
変種変量生産が可能な先進的な工場だ。しかしその工程で働いていたポニーテールの男性作業員は、手待ち時間に扇子を使って涼んでいた。その工程の責任者に問うと、派遣作業員なので直接指導が出来ないとの答えだった。私には言い訳にしか聞こえなかったが、この様な状況では、現場力を上げる事は出来ない。

不良を減らし、生産性を改善するためには、QC工程図の運用や5Sの取り組みを小手先で考えても効果は限定的だろう。自ら考え改善を継続する現場力を育成するのが本道だと考えている。


このコラムは、2015年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第424号に掲載した記事です。

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JR運転士を書類送検へ 三重・名松線の無人走行事故

 津市白山町のJR名松線家城(いえき)駅で4月、車両の入れ替え準備中だった回送列車(1両編成)が無人で約8キロ自走した事故で、三重県警は、ブレーキをかけずに列車を離れた男性運転士(25)を業務上過失往来危険の疑いで、近く書類送検する方針を固めた。

 県警などによると、男性運転士は4月19日午後10時ごろ、JR名松線家城駅で車両の入れ替え準備中に列車のエンジンを始動させたまま、ブレーキをかけずに運転台を離れ、列車を同市一志町の井関─伊勢大井駅間の踏切付近まで8.5キロ自走させ、衝突などの危険を生じさせた疑いが持たれている。

 名松線では06年8月、今回と同様に家城駅に止めてあった無人の列車が車輪止めの付け忘れなどが原因で自然に走り出す事故があり、男性運転士が業務上過失往来危険の容疑で書類送検され、起訴猶予となった。

 捜査関係者は、今回も運転士のみを送検する理由について「JR側の再発防止策が不十分だったわけではなく、運転士の過失が大きいと判断した」としている。

(asahi.comより)

 記事にある06年8月の事故は,車輪止めのつけ忘れに加え,エンジンの停止時に空気圧が抜けてブレーキが緩む構造だったことが分かり,JR東海はエンジンを切った場合も制動の機能が落ちないようブレーキの機構を改良していた.

つまり,車輪止め忘れと言う人為ミスが発生しても,ブレーキの欠陥を改善することにより問題が発生しないようにしている.言ってみればポカ除けをしてあったわけだ.

今回の事故では車輪止めをはずした後にブレーキをかけ忘れている.
ポカ除けがしてあっても人為ミスを起こしたのだから,今回は書類送検となったようだ.

もちろん人の命を預かる業務をしている者が「ついウッカリ」でも良いというわけでは無い.
しかし人の命にかかわる作業であるからこそ,人の注意力に頼らない徹底的なポカ除けを考えるべきだろう.

工場の不具合発生にも同様の人為ミスはある.その不具合に対し「作業員に注意し,再教育した」「作業員を罰して,担当業務からはずした」などというレベルの低い対策を良く見かける.

今回のニュースをポカ除けの観点で見直してみよう.

06年の不具合は車輪止めを付け忘れている.
そのためブレーキの性能を上げて(エンジン停止後にブレーキが緩むという欠陥を改善して)対策とした.

今回の事故ではブレーキをかけ忘れている.人為ミスとしては同じレベルのミスだ.エンジンをかけた状態では車輪止めをつけないわけだから,ブレーキのかけ忘れが直接事故につながる場面は多いはずだ.

例えば駅に停車した際に運転席からプラットホームに降りるという状況はいくらでもあるだろう.

従って車輪止めの付け忘れと言う人為ミスよりもブレーキのかけ忘れと言うミスの方がリスクは高いだろう.
リスク=影響×発生確率と考えた時,上記のミスはどちらも同じ影響度であり,ブレーキのかけ忘れのほうが発生確率が高そうだ.

車輪止め忘れよりもブレーキかけ忘れに対するポカ除けをする方が優先度が高いはずだ.
列車の運転手は指差し点呼で人為ミス防止をしているが,これは自己チェックの機能しかなくポカ除けとはいえない.

例えばブレーキレバーを引かなければ運転席の扉が開かない構造にするなどは比較的簡単に出来るのではないだろうか.こういうのがポカ除けだ.


このコラムは、2009年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第107号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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完結編・灯油誤販売の対策

 今週のメルマガで,灯油とガソリンを間違えて販売してしまったという事故に対する現実的な対策を募集した.
「灯油と間違えてガソリン販売 福岡の石油店」

ヒューマンエラーをなくすためには,まずミスを防ぐ事が出来るようにはっきりと識別できるようにしておくことが重要だ.
更に一歩突っ込んでミスをしたら作業ができないようにする「ポカよけ(フールプルーフ)」まで対策ができると良い.

私が考えた「ポカよけ」は

※灯油とガソリンの給油口のネジ径を変えてしまう.

タンクローリィのホースを接続する地下タンクの給油口のネジ径を灯油だけ変えてしまう.こうすることによりガソリンを持ってきたタンクローリィのホースは灯油の給油口には接続できなくなる.

しかしタンクローリィのホースの接続口と地下タンクの給油口は規格化されており,これを変更するとなると,販売店ばかりか輸送業者にも影響がありうまく行かない.

この方法はタンクローリィのホースの接続口と給油口の間にアタッチメントを付けるようにする.

販売店は灯油のタンクローリィが来た時には,伝票を受け取るときに灯油用給油口に接続するアタッチメントをタンクローリィの運転手に渡す,アタッチメントの反対側はタンクローリィのホースが接続できる様になっている.給油後運転手は納品書と引き換えにアタッチメントを返却する.
という仕組みだ.

これでガソリンスタンド,タンクローリィともに最小限の変更で誤給油をポカよけできる.

以下ご投稿いただいたアイディアを紹介する.

※作業する上ですぐに判別出来る方法として

  • 形を変える=>給油口の変更=>費用がかかる(今回はそぐわない)
  • 給油口の色と表示を変える=>作業する人が間違わない

というのは、どうでしょうか?赤と黄色とか。

 色と表示による識別で徹底する方法ですね.
 「形を変える」というのはポカよけになります.

※設備改善等ハード面は変更できないという前提で考えました。

  • ガソリンと灯油の給油口に違う色を塗る(例えば、ガソリンは黄色・灯油は赤色)。
    灯油を販売するときに入れる容器の色をこの給油口の色と同一にする。
    表示の文字も同様に給油口の色と同一にする。
  • 給油時に、運転手や伝票とのダブルチェック
    「灯油の給油ですね。ここが灯油の給油口です。間違いないですね?」等の確認。
    納品予定との確認。

 このアイディアも色と文字による識別の徹底です.
 更にダブルチェックを追加されているところが良いですね.

※ガソリンスタンドの問題について考えてみました。
一番良いのは、物理的な対策かと思いますが、なかなか良い案が思い浮かびません。(色分け、表示、記録では弱い為)

  • 給油口の形状と給油ホースの形状を変え、間違った場合は給油(接続)出来ない様にする
     →しかし、相手側(タンクローリー給油ホース)の変更が必要なので、非現実的
  • 給油口に比重計?を付け、間違った比重のものを給油しようとしても、給油口が開かない
     →どれ位の設備投資が必要か不明

以上の通り、私の頭では良い案が思い浮かびませんでした。林さんや他の皆さんのアイディアを期待しています!

 こちらは初めから「ポカよけ」に絞って検討されたようです.
 「比重が違う物は給油できない仕掛け」というのは案外簡単な方法で実現できるかもしれません.
 例えばフロートが弁になっているような物をつけておけばできそうですね.
 ひょっとして実用新案が取れるかもしれません.

今回もすばらしいアイディアをありがとうございます.
私の設問で給油口の位置変更を非現実的なアイディアとして評価してしまったので,ちょっと「引っかけ」のようになったかもしれない.
その制約を一歩踏み込んで現実的な解決方法を考えるというのが良いだろう.


このコラムは、2008年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第60号に掲載した記事に加筆修正しました。

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灯油と間違えてガソリン販売 福岡の石油店

福岡県飯塚市川津の石油販売店「ラッキー石油飯塚店」(秋元潤一代表取締役)が、灯油を買い求めた客7人に間違えてガソリンを販売していたことが30日、飯塚地区消防本部の調べでわかった。客の1人は特定できたが、残る6人ははっきりしないといい、消防本部や同市が、店の周辺で広報車両や消防車両を走らせて注意を呼びかけている。同日正午までの段階では、このガソリンが原因と見られる火災の報告はないという。

 消防本部によると、29日午前10時ごろ、タンクローリー車から同店の地下槽へ灯油を補充する際、ガソリンと間違えた。気づいた店側が30日午前10時半ごろ、消防本部に連絡してきたという。灯油を買い求めた客7人に対し、ポリ容器に入れたガソリン計234リットルを販売していたという。

(Asahi.comより)

この手の事故は何度も再発している.業界全体で有効な再発防止対策が取れていないと判断せざるを得ない.

普通ガソリンスタンドでは,灯油の給油スタンドとガソリンの給油スタンドは別の場所に設けてある.ここでガソリンと灯油を間違えて販売することはまずなかろう.
推測だが,このように灯油とガソリンの給油スタンドを分けて配置するのは消防法などにより決められており,これに合致していなければ開業許可が下りない様になっているのではなかろうか.

しかしタンクローリーから地下タンクに給油する口は一列に並べてあるのが普通のようだ.
また給油口に「ガソリン」,「灯油」という表示がしてあるのを見た事があるが,もっと大きな看板の方が良いだろう.

灯油とガソリンの地下タンク給油口を別の場所に配置する.
こうすると灯油を給油しに来たタンクローリィの停車位置は,ガソリンの場合と異なる.間違いがあれば一目瞭然だ.

しかし既に給油口を設置してあるガソリンスタンドに対し給油口の位置を変えなさい,と行政指導をすると販売店側の負担が大きくなり,なかなか守れない.
罰則付きの強制指導とした場合業界から一斉に反発が来るであろう.ただでさえ廃業しているガソリンスタンドが出ている業界である.

現実的な再発防止対策はどうしたら良いであろうか.
皆さんの中にガソリンスタンドを経営しておられる方はいないであろうが,ヒューマンエラーを防止するための対策を検討する時の訓練になると思う.


このコラムは、2008年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第59号に掲載した記事に加筆修正しました。

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人為ミス

 今週は人為ミスについて考えてみたい.
実は先週PCの動作が急に不安定になった.マイクロソフトのパワーポイントとワードで文章入力をすると,フリーズしてしまう.アプリケーションを再インストールしても状況は変わらない.

以前にも同様の現象が発生し,Windowsの再インストールをしている.

このPCを使い始めて1年半,2度目のOS再インストールだ.
今回も2日がかりで,Windowsの再インストール,アプリケーションの再インストール,各ソフトの再設定を行った.

恥ずかしながら,この過程でミスを犯してしまった.
重要なファイルをバックアップしていなかったのだ.
しかも前回は,変換辞書,アドレスブック,IEのお気に入り等のバックアップがなく苦労したのに,今回もIEのお気に入り以外はバックアップ出来なかった.

これらの反省を踏まえ,人為ミスの分析と再発防止に関して考えた.

不具合の原因解析に「人為ミス」と書いて済ませてあるレポートを見たことがある.人為ミスは原因とはいえないだろう.人為ミスが発生した原因,誘因があるはずだ.

人為ミスの原因は以下の4つに分類できると思う.

  1. 正しい情報を持っていなかった.【情報ミス】
     情報がない,または間違っていたため発生する人為ミス.
    例えば部下に文房具を買ってきてもらう時に,間違った型名を指示してしまう.
    製造現場では,作業指示書が間違っている,という事例と同じ.
  2. 情報を正しく受け取らなかった.【認識ミス】
     いわゆる勘違いミス.
    指示された文房具を買って来る時に,型名を聞き違えて(覚え違えて)違う物を買ってきてしまう.
    製造現場では,通常,作業のたびに作業指示書は見ない.作業指示書の内容を記憶して作業している.ネジを3本締めなさい,と書いてあるのに2本しか締めなかったというミスと同じ.
  3. 判断を誤った.【判断ミス】
     判断を伴う作業でのミス.または判断すべきでない作業で判断をするミス.
    購入指示された文房具が売り切れのため,別の型名の物で良かろうと判断する場合.
    製造作業現場では,極力判断を伴う作業をさせないようにしている.しかし班長やスタッフ業務担当者は,しばしば判断をしなければならない場面に直面する.例えば,生産中に部品が不足した.同じ規格の部品を代用してよいかどうか,判断し間違うミス.
  4. 行動を誤った.【行動ミス】
     情報を正しく受け取り,正しく判断したが行動がうまく出来なかった.
    指示された文房具を棚に見つけたが,間違って隣の物を取ってしまうミス.

それぞれの人為ミスの対策を考えてみる.
本来人為ミスにはポカよけ対策を考え,ミスが発生しない,たとえ発生しても次工程に行かないようにするべきだ.ポカよけは発生した工程により,千差万別の対策となる.それ以外の対策をここでは議論する.

【情報ミス】
情報が間違っていたという事実には,更に原因があるはずだ.
作業指示書の内容が間違っていたというのであれば,これも人為ミスの可能性が高く,なぜ間違えたのかを更に分析をしなければならない.

【認識ミス】
認識の間違い,記憶の間違いの二通りがある.
認識の間違いは,間違う誘因があるはずだ.説明が複雑.指示が間違えやすい.
記憶の間違いは,以前の指示の記憶だけで実行しようとする場合に発生する.
ここまで分析すれば,対策はおのずと明確になるだろう.

【判断ミス】
判断能力が低くてミスをする.もしくは能力を過信してミスをする.
チェックリストにより,判断基準を合わせる,判断漏れを防ぐのがよい.
上位者や同僚のダブルチェックも,ミスの防止に役立つ.

【行動ミス】
うまく行動できない誘因を分析する.
やり難い:例えば,設備の後ろに隠れているスイッチを操作する場合など容易にミスが発生する.
間違えやすい:例えば,天井灯を消灯する場合,どのスイッチがどの電灯か識別されていなければ,容易にミスが発生する.
対策は,「やり難い」「間違えやすい」誘因を取り除けばよい.

ここまで分析すると,実に簡単に「原因」「対策」を検討できる.
しかし「人為ミス」の対策に,「作業者に注意しました」「作業者を再教育しました」というレポートをしばしば見かけるのは,この当たり前のことが出来ていないという証左だ.

一度あなたの部下がやった人為ミスの分析を見直してみてはいかがだろうか.

ちなみに今回犯した私のミスは「判断ミス」だ.
前回一度やっているので,すぐに出来るという過信が,今回の判断ミスの原因となった.
その遠因は,前回再インストール時に,もう二度とこの様な事故はないだろう,一度やったから二度目はうまく出来るはずだ,と過信したためだ.もし謙虚に考えていたら,次回のために手順を記録していたはずだ.

対策としては,自動バックアップソフトを導入し,定期的にバックアップを取っておく.さらに今回バックアップを取り忘れた項目を自動バックアップの範囲としておく.これでミスは防げる.想定外のミスが発生しても,ひとつ前のバックアップがあるので,被害は小さくて済む.

しかし当面はバックアップソフトを購入する資金がないので,再インストール時の手順をチェックリスト形式で作ることにする.


このコラムは、2011年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第197号に掲載した記事に加筆修正しました。

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人口減少対策

 水曜日配信のメールマガジン「鉄道の安全対策」でカンブリア宮殿の番組からJR東日本冨田会長の「安全は守るものではなく、作るものだ」という言葉をご紹介した。カンブリア宮殿は2週連続で冨田会長を取り上げた。番組の趣旨は冨田会長の経営改革だと思う。

人口減少、車や航空機による移動増加など鉄道会社の経営にとっては不利な要素が増加している。そのために冨田会長は多角化に取り組んでいる。駅ナカや駅周辺の商業施設開発など、親方日の丸の国鉄では不可能だっただろう。

しかし冨田会長は多角化に頼った経営をしているわけではないと思う。逆境下の本業成長にも注力されている。「人口が減っても移動人口を増やせば良い」という発想が鉄道事業の本質を突いているように感じた。

人口が減れば乗客も減る、と考えるのは並みの経営者。
昔から私鉄は、乗客を増やすためにニュータウンの開発を手がけていた。しかし皮肉なことに、ニュータウンの開発により小家族化が進み人口は減少。地方の若者は都会に出て、地方の人口減少はより深刻となる。

こういう環境下でJR東日本は、廃線候補のローカル鉄道に魅力的な観光列車を走らせ「移動人口」を増やすとともに地方経済にも貢献している。

中国製造業は勤勉な農民工に支えられてきた。しかし世の中が豊かになるにつれ、労働者の賃金が上昇する。若者の製造業離れが始まる。これは経済成長の過程における必然だ。中国も人口減少のフェーズに入っている。人口が減少しても「労働人口」を増やすというのはほとんど不可能だろう。

賃金上昇、人口減少が避けられないとしたら生産効率の向上を考えるしか方法はない。


このコラムは、2018年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第740号に掲載した記事に加筆修正しました。

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