ローソンは食品メーカーが活用し切れていない技術を生かして独自商品を開発する。製法や素材など約70社から聞き取った情報を蓄積。自社がもつ売れ筋データと照らし合わせて、複数のメーカーの技術も組み合わせながら2014年度に独自商品を最大100品を発売する。製造過程から深く関与するSPA(製造小売り)を目指す戦略の一環で、消費者にとって選択肢は広がりそうだ。
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(日経新聞電子版より)
マーケットを知っている人が、技術を持っている人達を結びつけて、商品を開発しようと言う考え方だ。固有技術があっても商品が開発出来る訳ではない。試作品は作れたとしても、売れなければ商品とは言えまい。
発明王・エジソンの最大の発明は、発明のプラットフォームだそうだ。
高い技術力と豊かな発想があっても、一人では偉大な発明は出来ない。技術が分かる人とマーケットが分かる人、そしてプロデュースする人が、発明には必要だそうだ。この3者のコラボレーションを発明のプラットホームにしたのがエジソンだそうだ。
エジソンが電球を発明した頃は、こういう考えは必要なかったかも知れない。「明かり」に対する市場の要求は明確であり、実現しさえすれば売れる事は確実だ。技術者とマーケッターの調整をするプロデューサーも必要ではないだろう。技術者が諦めなければ、それで十分だ。
しかし、世の中に便利な物が溢れている時代には、「商品を実現する技術」より「商品の市場ニーズ」の方が重要だったりする。
ローソンの取り組みは、市場ニーズを持っている自分たちが、プロデューサーとなり、技術を持った複数の仕入先を組み合わせて、新商品を開発するという考え方だ。
小売り流通業の仕事は、あるモノを仕入れ消費者に届ける、という所から出発している。近年はプライベートブランド商品の様に、独自企画商品をメーカにOEM生産させて販売する、と言う新しい方向性が出て来た。更に複数メーカの得意技術を組み合わせることにより、独自性を高める動きになっていると考えたら良かろう。
大手の製造業で言えば、昔は製造部門が力を持っていたのが、技術部門に移り、最近ではマーケット部門が社内でのプレゼンスが高くなって来ている。産業全体で見ても、ローソンばかりでなく、小売り流通業主動で商品開発が行われる事例が増えている様に思う。
ユニクロが実現した製造小売りの構図が、食品、日用品にも拡大している。
製造小売りと言っても、小売業が製造部門を持つ訳ではなく、垂直分業の形だ。つまり三角形の頂点に小売り流通業が居て、底辺に製造業がぶら下がっている形となっている。
このスタイルでは、中堅・中小の製造業にとっては、依然として下請け仕事の域を脱出することができない。
勿論、他社が真似出来ない突き抜けた技術を持っていれば、下請け仕事と言え、お客様が頭を下げて仕事を持って来てくれる。従って独自技術を磨き続ける事は重要だ。
設計・サービスの付加価値が高く、モノ造りの付加価値が低いとするスマイルカーブ理論が言う様に、設計・サービス機能を持たない製造業は常に下請け仕事に甘んじていなければならないのか?
このメルマガで何度かお伝えして来たが、私はそんな事はないと考えている。
中堅・中小の製造業には設計・マーケティング機能はないかも知れない。しかしそれらのリソースを持っている人達と協業する事は可能だ。それらをまとめるプロデューサー機能が有れば出来るはずだ。
そういう考えで立ち上げたのが、「ソーシャルモノ造り」だ。
色々な技術を持っているメーカが集まって、自分たちの独自ブランドの商品を開発する。足りないリソースは互いに持ち寄る。製造小売業態が三角形の垂直分業ならば、こちらは横並びの水平分業だ。
各メーカは、自分たちの技術を持ち寄りる。「商品データベース」ではなく「テクノ・データベース」だ。
例えば、中島製作所の商品は船舶のプロペラだ。商品だけを考えると、船舶業界しか考えられない。プロペラと言う切り口で考えれば、航空機や扇風機も考えつくだろう。しかし人工関節を思いつきナカジマメディカルと言う新会社設立には至らないだろう。
新会社設立に至った発想は、商品ではなく加工技術に着目したからだ。
プロペラ生産に必要な鏡面研磨技術があったから、人工関節と言うオリジナルブランド商品を持つことができた。
こういう発想を持つことにより、下請けから脱出しオリジナル商品を持つ会社にする事が出来るはずだ。
ぜひあなた会社の独自技術を棚卸ししてみていただきたい。
このコラムは、2014年3月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第355号に掲載した記事に加筆しました。
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