経営」カテゴリーアーカイブ

細部にこだわる

 あなたは,QC七つ道具の一つ,パレート図をExcelを使って正しく描くことが出来るだろうか?

パレート図を普通にExcelでグラフにすると,累積比率を表す折れ線グラフが,左端の棒グラフの上辺真ん中からスタートする.

正しいパレート図では,累積比率を示す折れ線グラフは,原点から出発し,左端の棒グラフ右肩を通らねばならない.

実はこれをどう実現するか,ずっと悩んでいた.
Excelで描いたパレート図が,少しくらいおかしくても役には立つ.ただ累積比率の折れ線グラフが,少しずれているだけだ.しかしパレート図を描くたびにすっきりしない気分を持っていた.

細部にこだわることに,どれほどの意味があるのか議論はあろうが,私は細部にこだわり続けた.そして昨年ついに,Excelで正しいパレート図を描く方法を考えついた.

こだわりを持っていなければ,この方法は見つけられなかったろう.

モノ造りも同じだ.
梱包は,お客様の工場に入れば捨てられてしまう.しかしここにも,きちんとこだわりを持つ.例えば,段ボール箱を封止している透明テープの長さが,皆揃っている.製品が入れてあるポリ袋が,直角並行にきちんとたたまれている.こういうこだわりを持ちたい.

品質は細部に宿る.
一見製品の品質とは関係ないようだが,こういうところにこだわりが持てる工場は製品の品質も良いはずだ.

これは品質だけではない.コストにも影響を与える.
前述の透明テープの長さが揃っていれば,余分な材料を使っていないということだ.

また,細部にこだわる文化があれば,従業員の態度も変わる.
あるベンダーから納入された部品の梱包箱に,足跡が付いていたことがある.足跡が製品を梱包した後に付いたのか,梱包箱を組み立てる前に付いたのか不明だが,細部にこだわる心があれば,梱包箱に足跡が付いていることはありえない.


このコラムは、2010年8月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第164号に掲載した記事に加筆しました。

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組織の使命・任務

 先週のメルマガで,「組織の壁」に関して書いた.
組織の壁がない企業文化は,一夜にして完成しない.まずは組織の壁を低くする仕組みを持つ.その仕組みの一つが,各組織,各個人の職務分掌をオーバーラップさせておくという趣旨だった.

しかし職務分掌が拡大することになり,従業員の不満又は給与アップの要求が出ないかという心配もあろう.私は,職務分掌を決める前に,組織の使命・任務を職員自身で決めてもらうという方法を取っている.
今まで何例か試してみたが,全ての例で従業員のモチベーションは上がった.

「職場の使命・任務をお前たちで考えろ」と丸投げしても,結果は出ない.今まで与えられた職務分掌で仕事をしてきた人に,いきなり180度異なる成果を求めても,どうすればよいか戸惑うだけだ.

まずは経営者が,会社の使命・任務を明確にする.
経営理念に基づいて,従業員・顧客・仕入先などパートナー・社会・株主など会社の利害関係者に対して,会社はどういう使命を持ち,どういう任務を果たしているのかを明確にするのだ.

その会社の使命・任務を決めた過程を従業員に明確に示す.
その上で,組織単位ごとにリーダ,志願者でチームを作り,各組織の使命・任務を決定する.これも○○日までに提出するように,と指示をするのではなく1,2日経営者,経営幹部も一緒に缶詰になって決める.

これをやって従業員のモチベーションが下がった事例は,今のところ一例もない.
与えられた職務分掌に従って仕事をするより,自ら自分の仕事のあり方から考えた方が,モチベーションが上がる.
これでモチベーションが下がってしまう幹部職員は,本当に会社にとって価値のある人材かどうか再考した方がよいだろう.


このコラムは、2010年7月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第161号に掲載した記事に加筆しました。

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組織の壁

 先週のメルマガで,中国人職員の「自己責任意識の不足」に関して書いた.自分の責任範囲を小さく囲み,問題を極力「他責」とする傾向があるようだ.

こういう人たちにとって「組織の壁」は安心できる防火壁の役目を果たしている.ではこの組織の壁はどうやれば取り払うことが出来るだろうか.

昔の日本企業は,個人の責任範囲をあいまいにしておくことにより,組織の壁を低くしていた.こういう組織運営がうまく行くのは,自己責任意識の高い職員がいることが前提となる.

野球の守備範囲を例に考えてみよう.
二塁手と遊撃手の守備範囲は,固定的な線が引かれているわけではない.状況によってその線は変動する.ランナーがいない局面では,二塁ベースの後ろ辺りまで遊撃手の守備範囲となる.なぜなら二塁手が打球を捕球しても,振り返って一塁に送球せねばならなくなり,送球が遅れる.そのためバッターランナーをアウトにできなくなる可能性があるからだ.

しかも相手打者、ボールカウント、守備位置やピッチャーの投球コースによって守備範囲は毎回異なる.それを補うのが,オレが何とかする,と言う自己責任意識だ.

これがうまく行くのは組織構成員が,組織の目的を強く共有しているからだ.特に日本の様に「均一性」が高い組織文化が前提ならば,こういう組織運営はすんなり受け入れられる.

しかし,多様性が組織文化となっている中国の組織では,自分の責任範囲があいまいになっていることに順応できる人は少ないであろう.他人のミスまで自己責任として引き受けなければならないのだ.

それを改善するためには,責任範囲は明確にするが,その責任範囲が隣同士オーバーラップしているようにする.オーバーラップしている範囲で問題があれば,双方の責任とする.こうすることにより,組織間の協業が発生し,組織の壁は低くなるだろう.

そういう組織の中で仕事をしていれば,自然と自己責任意欲も養われるはずだ.


このコラムは、2010年7月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第160号に掲載した記事に加筆しました。

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継続力

 継続するという力は,非常に重要だ.
禁煙とか,ダイエットではなく組織の継続力について考えてみたい.
例えば,5Sを継続する力のことだ.

5Sを継続させるのは,意外と難しいのではないだろうか.
初めは皆一生懸命取り組むが時間が経つにつれて,徐々に熱が冷めてくる.5S継続の秘訣を考えてみよう.

まずは敷居を低くする.
中国で工場を経営するW社長は,5Sを始める時に,全員に雑巾を配った.
当然W社長自身もマイ雑巾がある.これで全員が拭き掃除から始めた.誰でもが出来る事から始めようと思った.とおっしゃっていた.

難しくて敷居が高いようでは,継続などは望めないだろう.敷居を低くして,まずは出来るところから入る.

二番目に責任を明確にする.
W社長の例で言えば,全員が雑巾を持っており,拭き掃除をする場所が決まっている.W社長も自分のデスクの拭き掃除は自分の責任になっている.

掃除ばかりではない.
何かを始める時に,担当者を決め期待する成果を明確にしそれに責任を与える.
日本人と違って,責任が曖昧になっているのを中国人は好まない.きちんと誰の責任か決めておく.そしてそれがマンネリにならないように,時々責任者を入れ替える.責任者といっても,管理職のことではない.誰が責任を持ってその仕事をするかということだ.

三番目.コトを造る.
楽しいことは継続できる.これは誰もが同意できるだろう.しかし仕事そのモノは楽しいものではない.仕事を楽しいと感じるのは,仕事を通して得られる達成感,自己成長を実感するからだ.

この達成感や自己成長を,お互いに認め合い,実感するための「コト」を造るのだ.

5Sで言えば,社長の月例巡視で優秀部署を決め,社長が食事会に招待する.これが「コト」だ.

技能を研鑽する継続力を持つために,「技能オリンピック」を年一回開催する.QCC活動を継続する力を与えるために,QCCの成果発表会を開催する.

日常とはちょっと違う「ハレの場」を演出するのが,コト造りだ.

この三つをやれば,継続力がつく.
規則・罰則で継続力をつけようという発想ではうまくゆかないだろう.
イソップ童話に出てくる,北風と太陽が旅人のコートを脱がせようとした逸話と同じだ.
旅人にムリにコートを脱がせようとするより,脱ぎたいと思わせればよいのだ.
継続も同じで,継続したいと皆に思わせるのがベストだ.


このコラムは、2010年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第170号に掲載した記事に加筆しました。

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共感力

 個人の成果は、能力×意欲と言う関数になると考えている。能力がなければ成果は出せない。能力が有っても意欲がなければ成果にはならない。
足し算ではなくかけ算だ。能力がゼロならば、いくら意欲が高くても成果は出せないだろう。意欲がゼロならば、能力が高くても行動しない。行動して初めて成果となる。従って、能力と意欲のかけ算で成果の大きさと考えるのが妥当だと考えている。

個人の集合体であるチームや組織の成果を考えると、個人の成果の総和が組織の成果となるはずだ。しかし目指す方向がずれていれば、組織に貢献する成果が少なくなる。組織が目指す方向と同じならば、個人の成果がそのまま組織の成果に足し込まれる。個人の方向が組織の方向と45°ずれていれば、個人の成果のルート2分の1しか組織に貢献しない。90°ずれていれば、組織への貢献はゼロになる。180°ずれていれば、組織の成果はー1になる。

能力も意欲も高い人が、組織が進むべき方向と反対を向いていれば、最悪の結果となる。

組織の成果を関数で表すならば、Σ能力×意欲×cosθとなるだろう。
 Σは総和の記号
 θは組織が目指す方向と個人が目指す方向の角度差

リーダの仕事は組織の成果を最大にすることだから、
・メンバーの能力を高める。
・メンバーの意欲を高める。
・メンバーと組織の方向性を合わせる。
の3点が重要な役割となる。

メンバーの能力を高めるのは比較的容易だろう。教えて練習させれば良い。(もちろん学ぶ意欲がなければいくら教えてもムダだが)
しかしメンバーの意欲を高める、方向性を合わせるのは,教えるだけでは達成できない。能力を高めるためにも意欲の向上は必要だ。

意欲を高め、方向性を合わせる方法が分かれば、成果は上がる。

実現したい目標を具体的に提示することだと考えている。
例えば、今期の売り上げを20億円にすると言う具体的目標が有れば、メンバーの意欲が上がり、方向性が合うだろうか?多分無理だろう。

20億円と言う数値がまず想像出来ない(笑)

売り上げ目標を達成したときの状態が、自分自身のこととしてリアルに想像出来なければ意欲を上げるのは難しいだろう。
例えば、目標を達成したら給料が上がり、毎晩ロマネコンティを夕食に1本空ける生活をしている、と想像したとしよう。そのために一度ロマネコンティを飲んでみる。良いアイディアだと思うが、物欲では上手く行かないだろう。
達成してしまった時に、意欲を継続するための新たな物欲を探さねばならない。
逆にいつまでも達成出来ない物欲を持てば、そのうち心が折れる。

仲間に対する貢献、顧客に対する貢献、社会に対する貢献など、具体的ではあるが終わりのない目標、むしろ生きて行くための目的が出来れば、継続的に意欲を持ち続けることが出来る。

そしてそれが組織の方向性に合っていれば、組織に対する貢献も大きくなる。
メンバーにそのような目的を持たせるのは、統率力とか指導力と呼ばれるモノでは不十分だろう。力を発揮するのは「共感力」だと思っている。
共感力とは、自分たちの仕事の目的に共感させる力のことだ。


このコラムは、2016年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第468号に掲載した記事に加筆しました。

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濡れ雑巾でコンピュータを拭き掃除

 今週のテーマ「出来るを叱らない」に登場した濡れ雑巾でコンピュータを掃除する女子作業員は,本当に実在した.

このくらいで驚いてはいけない.

現場をきちんと観察し,想像力を高めれば,当然予測できる内容だ.
例えば,作業員たちが終業後の掃除をどうやっているか観察していれば,分かるはずだ.

びしょ濡れのモップで床掃除をすれば,梱包箱が濡れる.ダンボールは一度濡れると,その強度が落ちてしまい,乾燥しても復活しない.また中の部材,製品にダメージを与える可能性もある.
材料,半完成品や完成品が入った箱を床に直置きしてはならないと,何度も指導するのはそのためだ.

SARSが流行っていた時も,宿舎や工場の消毒をしたと報告を受けて,すぐにヤバイと感じた.塩素系の消毒液が,電子部品にかかれば信頼性上の深刻なダメージを受ける.

この様な感性を,現場リーダは持つ必要がある.

事故の影に「ヒヤリ・ハット」がある様に,物事にはすべて,正常・異常・事故の三つの状態がある.
正常な状態からいきなり事故は発生しない.必ずなんらかの異常があり,それが直接原因,間接誘因となり事故は発生する.

リーダは,正常と異常の中間にある「正常ではない状態」を感知する感性を持たせなけらばならない.

つまり掃除をするのも,消毒液を散布するのも「正常ではない状態」だ.
正常ではない状態が,安全,品質,生産性に与える影響を予測できるようにする.これは机上の一般論だけでは教えきれない.
OJTで教え,それを水平展開する力を持たせなければならない.


このコラムは、2010年8月に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第165号に掲載した記事に加筆しました。

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働く意欲

 フォックスコンの自殺騒ぎを何度かこのメルマガでお伝えした.
農村から出稼ぎに来た若者が,孤独感,未来に対する不安に負けて,大切な命を自ら捨ててしまう行為に走っている.

この様な弱い気持ちを克服するのは,働く意欲だ.
自分は何のために生まれてきて,何のために働いているのかと言う「夢」を持てなければ,働く意欲はわかないだろう.

一昔前の打工妹たちは,弟や妹の学費を稼ぐため,家族の生活を支えるためと言う強い使命感が,働く意欲を支えていた.
しかし農村も豊かになってきており,80后,90后と呼ばれる若者にはその様な使命感は薄くなってきているのだろう.

残業よりは余暇を好む.故郷に仕送りする必要がなく,高価な携帯電話を持っている.中国の若者が変わってきてしまった.
この様な若者たちにどのような「夢」を与えれば,働く意欲を持たせることが出来るのだろうか.

実はそんなに難しいことではないと考えている.
彼らに必要なことは,仕事を通して成長する,仕事を通して会社や同僚から認められる,仕事を通して自己実現することの喜びを知ることだ.

「自己成長」により自分の夢を実現する.そんな夢が持てれば働く意欲は高まるはずだ.

原田氏の経営哲学・人心活用の基本はここにある.

原田社長の最後の秘書だった閻苗苗さんは,作業員として生産現場で仕事をしていた時のことをこの様に回想している.

一週間の新人研修を経て,配属になった生産ラインからはオフィスが見え,そこには社長秘書が原田総経理や部長たちから指導を受けている光景があった.いつかは自分もあそこに座って仕事がしたいと思った.

そして彼女は,作業の合間に猛然と勉強をし内部登用試験に合格し,めでたく総経理秘書となるのだ.彼女の働く意欲を支えたのは,いつかは直接原田氏や部長たちから指導を受けたいと言う夢だったのだ.


このコラムは、2010年6月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第479号に掲載した記事に加筆しました。

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プロフェッショナルとは

ニュースから:コーヒーに浮かぶ妙技 国内初の女性王者、世界へ挑戦

 エスプレッソコーヒーにミルクを注ぎ、ハートやリーフ(葉)などの絵柄を
描く「ラテアート」。ロンドンで6月開かれるその世界大会に、国内初の女性
チャンピオンになった滋賀県近江八幡市、クラブハリエ日牟禮(ひむれ)カフェの村山春奈さん(25)が出場する。繊細な手技と敏感な味覚で、世界に挑む。

 村山さんは、コーヒーを入れるプロの職人「バリスタ」だ。豆から最上の味を引き出すため、産地や焙煎(ばいせん)具合、抽出方法など、広い知識と卓越した技術が必要とされる。お店で接客を担当していたが、2006年に新しいエスプレッソマシンを使いこなすバリスタが必要となり、「やってみたい」と手を挙げた。欠かせないのが、お客さんを目で楽しませるラテアートだ。

 コーヒーに泡立てたミルクを注ぎ、模様を作る。カップまでの高さや揺らし方などで浮かび上がる模様が微妙に違う。「実は絵が苦手」という村山さんだが、見よう見まねでぐんぐん上達。同僚は「手先が器用」と感心するが、マネジャーの玉村亮さん(33)は「仕事を終えてから何時間も練習している」と言う。

 玉村さんが驚いたのは、「実は紅茶党」という村山さんの味覚のセンスだ。「喫茶店でもコーヒーは頼まない」というが、豆の焙煎に応じてひき方を変えると、最もおいしい味を引き出してくる。
(以下略)

(asahi.comより)

 ずいぶん昔のことだが,プロフェッショナルとは何かと言うことを,ソフトウェアエンジニア向けの本で読んだことがある.

プロのすし職人は納豆が嫌いでも「納豆巻き」を完璧に作る.
自分が食べられないものでも,ちゃんとお客様に出せるようにするのが本物のプロフェッショナルだ.

逆に,興味がある(好きな)ソフトウェアのコーディングしかしないのは,「プログラマー」ではなく「アマグラマー」だと書いてあった.
「アマグラマー」と言うのはアマチュアのプログラマーと言う意味だ.

当時ソフトウェアプログラマーが決定的に不足しており,文科系大学卒業生が,いきなりソフト開発部隊に新人配属されたりした.そういうメンバーでも一定の期間の研修を受け,天才的なプログラマーではないにしても,着実なコーディングができるプログラマーになった.
これも一種のプロフェッショナルと言ってよいだろう.

余談だが,私の周りにはロシア語専攻や哲学専攻の女性プログラマーがいた.

もう一つこの記事を読んで思い出したのは,10年ほど前中国のカフェチェーン黎明期のことだ.当時東莞市の郡部にしばしば出張していた.その街に,まともな珈琲を飲ませる店が出来たのだ.名典珈琲と言う名前のその店に,時々通っていた.
ある時若いウェイトレスが,さかんに話しかけてきた.
初めは他愛もない話であったが,その内「名典珈琲の企業文化」をどう思うかなどという質問が,まだ20歳にもなっていないであろう若い女の子の口から出てきて驚いた.
彼女は,珈琲は苦くて飲めないと言っていた.しかし珈琲の味を理解するために毎日少しずつ,ブラックで飲むようにしているそうだ.

紅茶党の村山さんが,バリスタチャンピオンになり世界大会に挑戦する.
ロシア語や哲学を勉強した女性が,ソフトウェアエンジニアになる.
珈琲が飲めない農村出身の女の子が,珈琲の味を理解しようと努力する.

この人たちは,好きだから一生懸命やると言う「アマグラマー」ではない.この人たちのモチベーションを上げるスイッチはどこにあるのだろうか?
モチベーションスイッチの場所が分かれば,あなたの部下もすぐにプロフェッショナルと呼べる人財になるだろう.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事を改題加筆しました。

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ライバル

 ライバルがいると、成長が早くなる事もある。「事もある」とネガティブ気味に書いてみた(笑)

ライバルと競争する事でより成長意欲が高まると言う効果はある。しかしこの効果は万能ではない。負ければもっと頑張る事もあるだろうが、追いつけないと分かると、モチベーションはしぼんでしまう。
社内ライバルの場合は、競争心が激しくなりすぎると具合の悪い事もある。
他人と比較されるのを嫌がる人もいるだろう。

皆が皆一昔前の「企業戦士」ではない。今時「24時間戦えますか?」などと言っていると「社畜」扱いされかねない。

やたら部下同士の競争心をあおる様な指導は、限界があるだろう。
順位が固定化してしまうと、競争心だけでは組織全体が停滞する。つまり上位の者はいつも上位なので安心する。下位の者は上位に行けないのであきらめ感を持つ。こうなると競争心をあおっても動かなくなる。最悪なのは、競争心がある優秀な者(組織運営上都合のいい人)は競争環境を求めて出て行く事になる。

成長し続ける組織では、メンバーのライバルは昨日の自分自身だ。メンバーは相互の成長を支援し、昨日の自分自身と競争する。
こういう組織ならば、どこと戦っても勝てると思うがいかがだろうか。


このコラムは、2016年6月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第479号に掲載した記事に加筆しました。

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掃除の効果

 「掃除をすれば業績が上がる、と言うけど本当ですか?」と言う方は意外と多い。中には掃除と業績には因果関係はない、と言い切る人までいる。

しかし私の周りには、

  • 総経理自らトイレ掃除をして生産性が4倍になった。
  • 製造部長が職場のゴミ拾いをして工程内不良が激減した。

掃除と業績に直接的な因果関係は見いだせないかも知れない。
掃除を通して従業員の心が変わっている。従業員全員の心が変われば、当然業績も変わる。従業員全員の心が変わっても業績が上がらないのであれば、経営者の腕がよほど悪いと考えざるを得ない(笑)

従業員の心とは、仕事に対する積極性、自己成長意欲、仲間に対する感謝と貢献意欲、不良の兆候を見分ける感性などの事だ。これらが改善されれば、業績が上がらないわけがない。

重要な事は、従業員全員の心が変わるまであきらめずに継続する事だ。

トイレ掃除の総経理は、従業員全員が掃除をする様になるまでトイレ掃除を継続し、従業員全員が掃除を継続する様に社内制度を整えている。

ゴミ拾いの製造部長は、部下が真似をしてゴミを拾う様になる、誰もゴミを捨てない様になるまで継続した。

掃除をする事により、落ちているゴミや部品、汚れている床や設備に気がつく感性が養われる。毎日掃除をすれば、設備のわずかな変化にも気がつく。毎日掃除をする事により、汚れない工夫も生まれる。

ある経営者は、全員が取り組む蹴る活動として雑巾がけをする事を思いついた。
彼は従業員全員にマイ雑巾を配り、毎朝雑巾がけをする事にした。当然彼自身も自分の机の周りを雑巾掛けする。

従業員のマイ雑巾が職場ごとに並べて干してあるのを見て、これがこの会社の「埋蔵金」だと実感した(笑)

掃除の効果を実感出来ない方、部下に納得させられない方はこちらの書籍も参考にしていただきたい。

「なぜ『そうじ』をすると人生が変わるのか?」志賀内泰弘著

「ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになる」鍵山秀三郎著


このコラムは、2016年6月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第480号に掲載した記事に加筆しました。

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