生産改善」カテゴリーアーカイブ

競争優位の源泉

 企業にとって最大の競争優位の源泉は何だろう。
あなたは何だとお答えになるだろうか?
商品?
技術?
顧客?
生産設備?
サービス?

どれも正しい。しかしこれら全てが「人」によって生まれる。
競争優位を作り出す人が、本当の競争優位の源泉だ。
そう言う人を「人財(Human Capital)」という。資産だ。
「人材(Human Resource)」をいかに「人財」に育てるかが、企業発展の鍵と言ってよいだろう。つまり資源を資産に変える事だ。

余談だが、人には4段階ある。
「人財」企業活動の資産となる人。
「人材」企業活動の資源となる人。
「人在」いるだけの人。
「人罪」足を引っ張る人。

人材を人財に成長させる。
人罪や人在はせめて人材に成長させる。
企業活動を突き詰めれば、従業員を育て、従業員により、多くの社会的価値を創造する活動と言えるだろう。その結果企業にも従業員にも繁栄が得られる。

ではどうしたら従業員は育つのか?
人は「場」によって育つ。
「場」とは人が作り出す環境と言ってもいいだろう。「文化」と言い換えると分かりやすいかも知れない。人は人によってしか育てられない。人が育つ環境を企業文化にする事が、最大の競争優位となる。

QCC活動を指導している企業の総経理は、5Sにより従業員の心を変え生産効率を4倍にしている。5Sを企業文化とし、その文化の中で従業員を成長させて来た。更なる飛躍を目指し、従業員を「考える軍団」に成長させるためQCC活動を導入する事にした。毎年春節前に行われている経営計画発表会にて、QCC活動の成果発表会を実施している。先日第二回目のQCC成果発表会が行われた。今回は各チームともに、ダイレクトに業績に結びつくテーマを選定し活動が出来た。
「場」が出来ると企業の成長は加速される。


このコラムは、2017年1月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第521号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

出来ない理由が解決課題

 不良改善や生産改善活動をしている時に、出来ない理由を挙げる人を時々見かける。
「以前やってみたけど上手く行かなかった」
「その対策はコストがかかるからダメだ」
「会社のルール上それは出来ない」
等々「○○だからダメ」式の意見を言ってしまう人がいる。往々にしてリーダ格の人がこういう発言をする。するとチームの士気が一気に下がる。

「以前やってみたけど上手く行かなかった」という事は、違う方法でやれば上手くいくかも知れない。つまり上手く行かない方法が一つ分かったのだから、上手く行く方法を知るために一歩前進している。

ナットを締結する時に、何度もスパナをナットにセットし直す必要がある。ラッチ機構がついているスパナを使えば、一度セットしたスパナをそのまま往復すれば、締結する事が出来る。こういう話をすると、やってみたけどダメだったと言う。使った工具を見せてもらうと、ナットにセットする部分がナメてしまっている。これいくらだった?と聞くと30元だったと言う(笑)
ダメな理由は、工具が安物だったから。ちゃんとした工具を手に入れる、のが解決課題になる。

「コストがかかる」という問題は、改善コスト<改善効果という関係が成り立つのならば、「コストをかける」のが正解だ。改善コストの方が大きいのであれば、「改善コストを下げる」「改善効果を上げる」のどちらか、又は両方が解決課題になる。

「段取り替え後の初物検査に時間がかかる」という問題の原因を聞くと検査員が忙しくて検査待ちとなるためだと言う。では、製造部の自主検査にしようと考えると「品管が検査するのがルールだ」と反対する。
ではなぜ品管が初物検査をしなければならなのか?
作業員では正確に検査できない。
当事者が検査したのでは第三者チェックにならない。
等のダメな理由が出て来る。という事はこれを解決すれば、自主検査に出来るという事だ。


このコラムは、2016年12月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第508号に掲載した記事に加筆したものです。

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改善活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、複数の部門の協力がなければ達成できないような改善はQCC活動に任せるのが良い。

QCC活動を指導している顧客で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、
新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。
したがってQCC活動に適したテーマと考えていた。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで出荷した試作サンプルは、まだ3件しかないということだ。
ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度サンプル不合格の原因
調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証でサンプル出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

QCC活動では「歯止め」を行う。不具合の再発防止、水平展開、未然防止などをさして「歯止め」といっている。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。
しかし一番大きな歯止めは、前述したサンプル出荷判定会議である。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。
製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。
それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。
問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

こちらもご参考にQCC道場


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事に加筆したものです。

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整理整頓が継続しない理由

 中国民営企業で指導をしている。生産現場は、合理的なレイアウトを持っており、指導を大変楽しみにしている。しかしハードはよく出来ていてもそれを使うソフトに改善の余地が沢山残っている。

ソフトを鍛え直すために、まずは現場の5Sを指導している。
先週訪問時には、機械加工職場の班長が自分が使う刃具類を整頓する収納戸棚を自作していた。初回指導時に戸棚の整頓をすれば、作業効率が上がるよね、とヒントを出したら古い戸棚を整理整頓した。そして今回は新しい戸棚を自作し更に改善してあった。私が見ても「おぉ!」と感心する出来映えだ。

場所が狭い、購入部材が足りないなど不平不満を言う職長が多い中、彼は自主的に改善活動を継続している。
私の助手は彼に『工匠精神員工』と言う称号を与えている(笑)

我らの『工匠精神員工』は更に自分が使っている加工機の徹底清掃を開始している。徹底清掃とは、ただ設備の油汚れを清掃する事ではない。古い設備を復元する作業だ。先ずは剥げちょろになっている設備の塗装を剥がし、再塗装を始めた。私は何も教えていないが、結果的に彼はTPMの第一歩を踏み出した。彼は、他人の指示ではなく自分で改善を始めたと認識しているはずだ。これが改善意欲を高める。

しかしまだ大部分の現場で整理整頓が出来ていない。管理職の強引な指導で見かけは整理整頓が出来ている様に見える。しかしすぐに元に戻ってしまう。
これを繰り返していると、現場の作業員も管理職も疲弊してしまい、5Sが継続出来なくなる。

これは現場の監督職や作業員に『工匠精神』が足りないからではない。
整理整頓すべき物を減らす努力が足りていないからだ。

作業現場には今必要な物だけを置く。前工程は次工程が必要な物だけを次工程に送る。この基本が出来ていないから、現場に物があふれ整理整頓に工数を割く事になる。5Sで生産性を高めると言う本来の趣旨から逸脱してしまう。

前工程(この場合は機械加工工程や部材調達工程)で適時適量生産をすれば整理整頓が楽になる。段取り替えに時間がかかる、輸送費がよけいにかかると言う自己最適を優先させ、全体最適を考慮していない。

どうすれば、段取り替え時間を短縮出来るか、を工夫する事が必要だ。
一番手間がかかっているプレス機の段取り替え作業をビデオに録画し、機械加工工程の職長に見せた。職長は金型の段取り替えは10分以内に出来ている。と豪語していたが、ビデオを見てまだ改善の余地がある事に気がついた様だ。

実はこの職長は、暇になってしまうと職場の規律が落ちてしまうと考えていた様だ。確かに暇にしておくと、作業員は煙草を吸っていたり、携帯をいじっていたりしている。しかし彼は『工匠精神員工』の直属の上司だ。暇な時間に自主的に改善に取り組む事により、部下の能力や意欲が高まる事を理解出来たはずだ。

次回訪問も楽しみになっている。


このコラムは、2016年8月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第490号に掲載した記事です。

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改善人財の育成

 私の仕事はお客様の生産現場を改善することだ。生産性を上げる、品質を上げる、リードタイムを短縮するなど、お客様のお客様に価値が提供できる事を改善といっている。しかし本来の目的は、ここではない。

コンサルが現場に入って改善する。すぐに成果は出るが、これでは改善が継続しない。得られた改善を維持できないこともありうる。
私の本来の仕事は、お客様の生産現場に改善が定着し、改善が継続するようにすることだと考えている。

従って改善を維持・継続する人財を育成することが、本来の目的になる。

そのために現場での指導では、なるべく教えないようにしている(笑)
「教えない」という言い方は極端だが、改善リーダが自分で改善したと感じれば、リーダの改善意欲は高まるだろう。意欲を高めることができれば、自ら成長する。「馬を水場に連れて行くことはできても、馬に水を飲ませることはできない」というが、馬が自ら水場にゆき水を飲むように仕組むわけだ。

研修でも、講師と受講生との間で一方通行に教えても効果はあまりない。
座って講師の話を聞くだけではなく、頭や手を動かすことで効果が上がる。受講生間での「学び合い」「教え合い」が、研修効果をさらに高めるはずだ。

研修効果に関しては、吉田新一郎氏の著作が参考になる。
社内研修や、会議での部下育成の参考にしていただきたい。

「効果10倍の教える技術」
「『学び』で組織は成長する」

こういう考えで、現場の指導や研修のプログラムを考えている。
そして今年から「QCC道場」を開催することにした。
以前から実践的なQCC研修のプログラムを提供している。

改善リーダ育成のため、QCC活動を実践する研修だ。
QCC活動のスタートアップや、レベルアップのためにご利用いただいている。この研修では、社内から選抜された改善チームをが改善活動を実践する。

新たに開始する「QCC道場」も同様にQCC活動の実践を通して学んでいただく。
通常の研修と異なる点は、違う会社のチームが合同で実践研修するところだ。異なる会社、異なる業種・業界の改善リーダが、一緒に学び合い、教え合う環境でより効果を高めたいと考えている。

改善リーダがチームを率いて参加されるのもいいが、改善リーダでチームを作り参加され社内に戻り、参加者それぞれが自分のチームを作り活動をする、そんなやり方で研修の費用対効果を高めていただくをこと想定している。

QCC道場の詳細はこちらをクリック。

究極を目指す

 欧米の契約社会が目指すモノは「合格点」だと思う。
欧米発の品質管理基準ISO9000では、顧客満足とは、顧客の要求をもれなく定義しそれを過不足なく満たすことだ。いわば「合格点主義」

一方本来の日本のモノ造りは「究極主義」だと思う。
不良は究極まで減らし「ゼロ」を目指す。
ほぼ1日かかっていた自動車ボディのプレス金型の段取り換え時間を3時間に短縮し、更に3分まで短縮してしまう。

こういう「究極主義」がなければ、田口メソッドの「損失曲線」という概念は生まれないだろう。

随分昔の話だが、シンガポールのハードディスクドライブ組立工場を見学した事がある。

工程を見て直行率が低そうに思えたので、質問をしてみた。責任者の話では普通は80%代、90%に達したら工程改善をしないそうだ。その改善リソースは次世代機立ち上げに振り向けるという。

いかにも合理主義的な考えである。
しかしこれは現場に改善エンジンを持たない者の「敗者の戦略だ」というと言過ぎだろうか。

日本のモノ造りの現場には、改善エンジンが仕込まれている。QCサークルのような現場の改善チームもそのエンジンのうちの一つだ。この改善エンジンが、モノを作り続ける限り改善をし続ける原動力となる。


このコラムは、2009年2月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第81号に掲載した記事です。

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QCC活動の運用について

 先週はメルマガ読者様から、こんなご相談をいただいた。

週二回1時間と時間を決めて、就業時間内にQCC活動をやっています。
スタッフの自主性に任せ、日本人幹部は口を出さない様に気をつけています。
しかしなかなか成果が出なかったり、歯痒くなり口を出したくなります。
どのように活動を継続させて行くのが良いでしょうか?

日系企業の総経理様からのメールだ。この方は日本でQCC活動を経験されており、指導者的立場だった方だ。

私は、経営者、経営幹部が積極的にQCC活動に参画した方が良いと考えている。

本来QCC活動は従業員の自発性を尊重し、自主的活動が原則となっている。このため管理職は、サークル活動には口出しをしないことになっている。しかしこれが、日本のQCC活動が衰退してしまった遠因だと私は思っている。

1985年日本が絶好調だった時にQCサークルは日本全体で約27,000サークルあった。それが2000年には3,000サークルほどに激減している。

QCC活動の成果として、サークル数、活動件数を重視したため、各サークルに年間活動件数○件と言う目標が課せられた。その結果、簡単に完結出来るテーマが選ばれたり、既に結果が見えている活動にQCストーリーを当てはめるだけ、などと言う成果実感のない活動が増えて来た。

私はそれらの活動を
・ドブさらいQCC
・ままごとQCC
・なんちゃってQCC
と呼んでいる(笑)

少々厳しい評価かもしれないが、
「事務仕事の効率化を図るためファイルキャビネットを整理しました」
「ミスを防ぐために○○の勉強会を全員でしました」
業務として取り組んだ生産性向上、不良削減活動にQCストーリーを当はめるこんな活動ばかりになって来た。

これでは残業代を支払って、ムダな事をさせている様な物だ。サークルメンバーの方も、達成感がなく、やらされ感しかない。

こういう経緯で、バブル崩壊後活動サークル数は1/10近くまで急降下した。

私はこの頃に、前職で事業部内のQCC推進者として関わっていた。私がいた事業部は、製造部門のないファブレス事業部だったので、営業、設計等、余りQCC活動に積極的に取り組まない部署ばかりを抱えており、上記の様な現象をまさに体験していた。

全社のQCC推進部署も同じ問題を共有しており、再活性化の方策として、管理職のQCC活動への参画をする事とした。

勿論活動そのものは、自主性を尊重する。
しかしテーマ選定には、職場の管理職が積極的に関与する。職場の方針・目標を共有する。テーマ選定時には管理職も参加し意見を言う。こういう方式に変更し、上述の様なメンバー・上司双方の不満の解消をした。

この様な経験もあり、中国でQCC活動をやる時は管理職もテーマ選定までは、積極的に参画する方法をお勧めしている。また全員が初めてQCC活動をする様な状況では、指導者がいなければ何をしたら良いかさえ分からないだろう(笑)

更にQCCを人財育成のOJTとして活用するために、サークルリーダやテーマリーダも経営者・経営幹部が指名した方が良いと考えている。勿論、公平・公明な人財育成計画の元でやらねば、メンバーの反発を買う事になる。

活動そのものは、定期的にリーダ会議などを開催し進捗を確認しアドバイスをする程度にする。経営者・経営幹部が口を出すのは最初だけ、後は自主性に任せるスタイルにするのが良いと考えている。

この様な活動にすれば、活動の成果、メンバーの成長、チームワーク、改善意欲の向上、現場経験技術の蓄積等の結果がすぐにでも見えて来るはずだ。

私たちは、QCC活動を初めてする企業、まだ数回しかしていない企業、相当活動経験がある企業(日本本社の発表会に参加して最優秀賞をとるレベル)ともに、QCC活動の指導経験がある。どのタイプの企業にも、テーマ選定までは上司が参画する方式が有効だった。


このコラムは、2013年12月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第341号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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QCC活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、原因がよくわからない問題の改善は、QCC活動に任せるのが良い。複数の部門の協力がなければ達成できないような改善は、複数部門で改善プロジェクトを起こす。単純な改善活動は、日常業務として取り組めば良い。

指導先で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、サンプル不合格となった原因を整理・分析し対策を検討する。さらに顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。したがって、関連部門でチームを作りQCC活動をするのが良さそうだ。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで不合格となった試作サンプルは3件しかないということだ。ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度不良の原因調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証で出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

道具にはそれぞれそれに適した仕事がある。プラスネジをマイナスドライバーで締めることはしない。改善という仕事にも、日常改善、プロジェクト改善、QCC活動を課題に合わせて使い分けるのがよかろう。


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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終わりなき改善

 ずいぶん昔のことになるが、シンガポールのハードディスク工場を訪問したことがある。
工場を見せていただいて、工程内不良が多いのがすごく気になった。案内をしていただいた幹部の方に質問すると、歩留まり率が80%を超えたので、もう改善はしていない。改善のリソースは全て新機種の立ち上げに投入している、という説明だった。

当時(1993年)のハードディスク業界は、容量アップの競争が激しく、新機種をどんどん投入しないと、旧機種の売値が即下落してしまうという状況だった。

その話を聞いた時に、合理的な経営判断と感じたが、その後もずっと違和感を感じていた。量産製品の生産指導をするようになって、その違和感の原因が分かって来た。

まず第一に、改善リソースと新機種立ち上げリソースがトレードオフ状態になっている事だ。つまり新機種立ち上げに人を投入してしまうと、旧機種の改善を担当する人がいなくなってしまうという事だ。

私たちは、量産開始時に設計完成度、生産技術完成度が一定の水準に達している事を確かめ、その後は現場のリーダが継続的に改善を進める、というやり方をしていた。そのため、新製品の立ち上げリソースは量産開始後すぐ次の新製品に取りかかることができる。

まれに、生産性や品質を改善するために、設計にさかのぼって変更をかける必要がある事もあったが、それが原因で新機種の立ち上げが遅れる事はほとんどなかった。

第二の原因は以下にある。
旧機種の改善により、設計完成度が量産開始時には相当高いレベルに達する事が出来ていた。量産品の設計完成度とは、作り易く不良が出ない、と言う事だ。旧機種の問題の改善は、新機種の設計にどんどんフィードバックする仕組みを作った。
例えば、設計審査時に製造部のメンバーも参加し、生産性のレビューをする。量産試作時は当然だが、技術試作時にも製造部、生産技術が積極的に参加をするようにした。

これは相当効果が高かった。このシステムを導入した当初は、設計部門は仕事が増えると、陰で反対したモノだ。しかし実際には量産リリース後の手間は激減、しかも試作時に製造部や生産技術が手伝うので、試作にかかる設計部門の作業も軽減出来た。

更に大きな効果は、製造部、生産技術の生産側のメンバーが、開発初期から設計に関わるので、彼らの意欲が向上した。それまでは、出来の悪い機種を「造らさせられている」というネガティブな思いがあったが、造り易い機種にするために、積極的に設計に関わるというポジティブな意欲となった。
当然設計部門と生産側のコミュニケーションが格段に上がった。

こういうレベルとなると、製造部がコツコツと改善する。そしてその成果は次の機種の設計に反映されるという、ポジティブサイクルが出来上がる。

私たちが生産していたのは、電源装置であり、ハードディスクの生産とは直接数字の比較は出来ないが、量産開始後3ヶ月以内に工程内不良を100ppm以下にすることができた。つまり直行率が、99.99%という意味だ。歩留まり率は、修理して良品になった物も良品としてカウントするので、歩留まり率は100%だ。

歩留まり率や直行率の目標を置く事は間違いではない。しかし中途半端な目標に満足するのは勿体ない。

改善を阻害する要因(リソース不足)を排除する。つまり製造現場の改善力を鍛え上げる。それにより生産が続く限り改善が継続するようにする。
過去の設計・生産経験を積み上げる仕組みを作る。
私はこの二つに取り組むことにより、ハードディスク工場で感じた違和感を払拭した。


このコラムは、2012年9月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第276号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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逆転発想

 「逆転発想」とは我ながらへたくそなネーミングだと思う(笑)この「逆転」は一発逆転の逆転ではない。右回りに対する左回り、という意味で正転、逆転という言葉を当ててみた。

例えば、改善活動で誰かが改善案を提案したとする。この時に「○○だからそれは上手く行かない」という考え方を逆転発想すると、「○○という制約を解決すれば上手く行く」となる。

ポジティブシンキングとは少し違う。制約条件により上手く行かないと発想するのではなく、制約条件をアイディアを実現させるための解決課題と考える。
発想の方向を逆にするという意味だ。

設備の可動率を上げるために金型交換時間を短縮する、という改善を考えて見よう。次に使う金型を台車に乗せて事前に準備する、という「外段取り化」を考えたとしよう。段取り替えのエンジニア達は、200kgもある金型を台車に乗せて運ぶのは無理だ,と反対する。しかし金型用の昇降台付きの台車を用意すれば可能となる。

逆転発想が上手く出来ないのは、意外にも経験のある優秀な者だったりする。
長い間「正転」で考える習慣がついているので、発想の転換が難しいのだろう。

市場で発生した発煙事故の原因を検討する時に、電源の過電流保護が働かないと発煙事故につながる、という仮説を立てたとしよう。どのような場合にその様な現象となるか?と設計部門のリーダに質問すると、暫く回路図を睨んで「設計は間違いない。そんなことは起きない。」と正転で考えるので、会話が噛み合ない。どの部品が故障すれば、保護回路が働かなくなるか?という発想で考えて仮説が正しいかどうか検証するのではなく、設計に誤りがない事を先ず考えてしまうのだろう。

QCC活動で改善をしている時も、その改善案には投資が必要だからダメだ、と可能性に自ら蓋をしてしまう事がある。
逆転発想では、先ずはどのくらいの投資が必要なのか見積もり、投資が見合う効果が出るか検討する。更にもっと安く同じ効果が得られる方法がないか検討する,という手順になる。

逆転発想で上手く行く体験をすると、次から逆転発想をする様になる。
この様な体験を「目からウロコが落ちる」というのだろう(笑)


このコラムは、2016年12月5日配信のメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第505号に掲載した記事です。
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