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エレベーター、扉開いたまま急上昇 東京・台東区

 エス・イー・シーエレベーター(東京都台東区)が保守管理する同区根岸5丁目のビルのエレベーターで、人が降りた直後に扉が開いたまま、突然、かご部分が天井近くまで上昇する事故が起きていたことがわかった。同社管理のエレベーターでは、06年6月に港区で同様の事故があり男子高校生が死亡、警視庁が業務上過失致死容疑で捜査を続けている。

 同社によると、事故は今月11日午後3時ごろ発生。7階建てビルの5階から乗った男性が3階で降りた直後、扉が開いたままの状態でかごの部分が急上昇し、7階を約1メートル過ぎて止まったが、けが人はなかった。制御盤内部の故障が原因とみられるという。エレベーターは30年以上使用している日立製。法定の定期検査を昨年8月に、月1度のメンテナンスを事故3日前の8日に行ったばかりだった。

(asahi.comより)

 メンテナンス直後の事故というのは意外と多いものだ.
特に気をつけたいのが,メンテナンス時に変更した設定の戻し忘れ.メンテナンス作業時に機能を殺しておいた安全装置を戻し忘れると労災事故が発生する可能性がある.

部品の自動実装機,プレスマシンなど作業者の手が機械の中に入ると機械が安全停止するようになっている.このままではメンテナンスができないので,一時的に安全装置を解除してメンテナンスをする.作業完了後に安全装置を戻すのを忘れても,機械は正常に動いているように見えるので気がつかない.

以前こんな例を聞いたことが有る.
装置内でX線を使用しているため,装置内部に手を入れる扉を開けたときはX線が止まるように安全装置がついていた.メンテナンス時にX線が正しく出ているかどうか調べるために,扉の開閉を検出するマイクロスイッチをテープで止めて扉が閉まっている状態にしておいた.点検完了時にマイクロスイッチのテープをはがすのを忘れ運転を開始.このため運転中に扉を開けるたびに作業者がX線に被爆していた.幸いX線の量が微弱であったため人体への影響は心配なかったが,目に見えないだけに深刻な事故だといえよう.

今回のエレベータ事故はメンテナンスから3日後に発生しているので別の原因だと思われるが,メンテナンス作業後の点検項目,方法をチェックリストにしておくとポカよけに役に立つだろう.
今回の事例から,配線コネクタの不完全挿入,ねじの締め忘れなどの想定される原因に対してチェック項目を追加したら良いと考える.

それにしてもこのメンテナンス会社は前回の事故が教訓として活かされていなかった様である.


このコラムは、2008年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第18号に掲載した記事です。

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急速充電器リコール

 行政法人・製品評価技術基盤機構(nite)によると、アンカー・ジャパン社のUSB急速充電器が市場にて電解コンデンサーの液漏れ発煙事故が発生し、対象製品の回収をしている。

メーカのホームページに回収告知が掲載されている。

2019年4月23日より販売を開始したUSB急速充電器「Anker PowerPort Atom PD4」(以下 本製品)につきまして、製造工程において発生した不良品(初期ロット内40個) が正常品と混在した状態で出荷されていたことが判明致しました。
事故等の発生防止を第一に考え、この度、本製品の回収を実施させていただきますのでご案内申し上げます。(以下略)

メーカは事故原因を以下の様に説明している。
2019年6月7日:顧客から電解コンデンサーの液漏れと発煙が生じたと報告。
2019年6月30日:本不具合の原因を特定。回収を決定。

多分海外の生産委託先との間で、原因特定の作業が進められたのだろう。
何人かは本件で生産委託先に出張しただろう。発煙という最もシビアな故障モードであり、3週間は長いと感じるが、全力で調査をしたのだと思う。

原因を以下の様に発表している。
製造時のリフロー(はんだの接合)工程において、通常よりも長い時間加熱された製品が40個発生。当該製品は出荷不可として廃棄処理がなされる予定でしたが、委託先の製造工場の管理体制に不備があり、正常品と混在した状態で出荷がなされました。

「40個だけリフロー炉で長時間加熱された」というところを突き止めるには、生産委託先の報告を聞いているだけでは見つけられないだろう。

リフロー炉の故障でコンベアが止まり、製品PCBがリフロー炉内で停滞。
停電でPCBがリフロー炉内に取り残された。
などの原因により電解コンデンサが過剰に加熱され「半殺し状態」となり出荷後2ヶ月ほどで寿命モードの故障となったのだろう。こういう事実は現場の記録・記憶をたぐらねば出てこない。生産委託先に原因調査を任せてしまえば、見つからない真実だ。責任の所在が自身にあると判明すれば、リコール費用などを請求される。真実は隠される。

リフロー炉でもディップ槽でも同じことは発生する。現場の班長さんレベルで判断し、不良品処理ができる様にしなければならない。

昔会社員だった頃生産委託先工場に出張している折に停電があった。

「現場力」

リコールとは関係ない話だが、現場力を鍛えられるのは現場だと思う。


このコラムは、2019年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第853号に掲載した記事です。

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シンドラー事故、検察側が控訴 元課長の無罪判決

 東京都港区の公共住宅で2006年、高校2年の市川大輔さん(当時16)が死亡したエレベーター事故で、業務上過失致死の罪に問われた「シンドラーエレベータ」の元保守第2課長の原田隆一被告(46)を無罪とした東京地裁判決について、東京地検は9日、控訴したと発表した。

 9月29日にあった地裁判決は、原田元課長を無罪(求刑・禁錮1年6カ月)とする一方、保守会社「エス・イー・シーエレベーター」の幹部ら3人を、禁錮1年6カ月~1年2カ月執行猶予3年の有罪とした。エス社の幹部側は即日控訴していた。

(朝日新聞電子版より)

 エレベータの扉が閉まらない状態で上昇を始め、エレベーターの床と天井の間に挟まれ死亡する、という考えられない事故だ。裁判ではブレーキ部品の異常摩耗が、メンテナンス時に発見できたかどうかが争点になったようだ。

しかしブレーキ部品の摩耗という1故障だけで、致命事故につながる様では十分な安全設計ができているとは思えない。故障状態でも正常に動作することを要求する訳ではない。最悪、ブレーキ部品が摩耗した場合事故に至らない様にブレーキ機能のバックアップを用意する、またはアラームをだして動作を停止する。

メンテナンスだけで事故を防ぐのは限界がある。
少なくとも摩耗を可視化しなければ、見逃しはあり得る。例えばタイヤは摩耗すると、交換の警告サインが出る様に路面との接地部分がデザインされている。

以前、近所のホテルでエレベータが最上階から地下2階まで落下する事故があった。この時は、定員13人(1000kg)に対して21人乗客が乗っていた。事故の直接原因は、牽引ワイヤの断裂とかブレーキ故障かもしれないが、13人を超えて乗ってもアラームが発生しなかったところにも原因があるはずだ。

この事故事例から、エレベータのメンテナンス時に積載オーバー検出機能はどのように検査しているのか疑問に思っている。中国だけではなく日本でもエレベータの点検作業に出会うことはしばしばある。しかし重量オーバの検査用錘りは見たことがない。重量センサーの出力を擬似的に操作する方法では、重量センサーそのものの故障を検査発見できない。

また検査記録も単純に、レ点を入れるだけでは本当に検査したかどうか不明だ。検査を行ったことが証明できるような記録を残さなければならない。

例えば、半田ごてのコテ先温度の検査では、合格のレ点を記録するだけでは不十分だ。コテ先の測定温度を記録しなければならない。

今回の事故も摩耗が事故前に発生していたかどうかが、争点になった。メンテナンス記録に摩耗が点検検査されており、交換修理の要不要を正しく判断したという記録が残っていれば、裁判が長期化することはなかっただろう。というより、事故そのものが発生しなかっただろう。

工場の中には、点検検査の記録(チェックシート)がたくさんあるはずだ。何かあった時に、証拠として機能するかどうか見直しされてはいかがだろうか。


このコラムは、2015年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第445号に掲載した記事です。

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ホームの客の手、ドアに挟んだまま90メートル 愛媛

 6日午前10時ごろ、愛媛県西条市小松町のJR予讃線伊予小松駅で、松山発観音寺行きの普通列車(1両編成)が同市に住む乗客の女性(75)の手をドアに挟んだまま出発。女性は約90メートル引きずられてホームから転落し頭や足などに軽いけがをした。列車の乗客10人にけがはなかった。

 JR四国によると、伊予小松駅は無人駅で運転士がホームの鏡を確認するなどして出発する規則だが、運転士の男性(28)は「異常がないと思い出発した」と説明しているという。ホームにいた人が気付き110番通報した。列車は気付かずそのまま走り続けたという。半井真司・鉄道事業本部長は「けがをさせてしまい大変申し訳ありませんでした。再発防止を徹底します」と謝罪した。

(asahi.comより)

 車両の扉には,完全に閉まったことが確認されるスイッチがついているはずだ.女性の手が挟まっていてもそのスイッチが作動しなかったのだろうか?もしくは扉が閉まっていないことはランプなどで表示するだけで,運転手の見落としがあったのだろうか?

私も以前終電の車内で,上着を挟まれそのまま電車が発車したことがある.このようなヒヤリ・ハット事故は無数にあるはずだ.ヒヤリ・ハットを放置せずに改善する姿勢があれば,列車の扉開閉センサーは違う形になっているはずだ.光センサーを使った方式にすれば,完全に防げる事故だろう.

また開閉センサーは,ブレーキとインターロックをかけておき,扉が閉まっていなければブレーキが解除されない方式にしなければならない.

「伊予小松駅は無人駅で運転士がホームの鏡を確認するなどして出発する規則」と言う規則も理解ができない.運転手はホームに降りて,扉が閉まったことを確認の上発車すべきだ.

電車の扉開閉センサーをすべて交換するには,それなりのコストが必要だ.
安全とコストをトレードオフにすべきではないが,上記の運転手による確認動作の変更には,コストや運行効率にはなんら影響が無いだろう.

「再発防止を徹底します」と言うのは当たり前だ.
私たちが製品開発や,工程設計時に使っているFMEA(潜在故障モード効果解析)を使って,潜在事故に対し未然防止対策を検討すべきだ.

工場でも,従業員の安全,顧客の安全は最優先しなければならない.
あなたの工場でもFMEAを活用されているだろうか?


このコラムは、2010年12月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第183号に掲載した記事です。

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大型タイヤ脱落

大型トラック、バスからタイヤが脱落する事故に関して興味深い記事が出ていた。
「大型タイヤ脱落、4~6年目注意 部品交換直前、ハブ・ボルト劣化 事故、7年間で7倍」

(朝日新聞)

記事を要約すると、2002年に発生したトレーラーのタイヤが外れ、母娘三人が死傷する事故が発生以来、国土交通省は8トン以上のトラックや定員30人以上のバスで起きたタイヤの脱落事故を集計している。
その統計によると、2004年度87件から2011年度11件まで減少したが、近年増加傾向にあるという。2018年度は前年比14件増の81件発生している。

この事故の発生時期を分析すると、11~2月が54件(全体の67%)、タイヤを取り付けてから3カ月以内に起きた事故が70件(全体の86%)、積雪の多い地域での発生46件(全体の57%)、であることが判明。

以上の分析から、夏タイヤから冬タイヤに交換した際にタイヤホイールを固定するナットの締め付けに問題があると推定。
国土交通省は以下の対策を呼びかけた。

  • タイヤを交換する際に適切な力でナットを締める。
  • タイヤを交換して50~100kmを走った後にナットを締め直す。
  • 運行前にハンマーを使って点検。
  • タイヤを交換する冬場に特に注意する。

しかし対策を実施しても事故は増加傾向にあった。

さらに事故発生車両について過去4年間に事故を起こした車両を調査した結果車両の登録後の使用期間で以下のことがわかった。

  • 登録後4~6年目の車両の事故が95件(全体の約4割)
  • 登録後7年以降の車両は事故が大幅に減少。

単純にタイヤ交換時のナットの締め付けの問題とは言えなくなった。
車両メーカによるとタイヤのハブやボルトは7~8年で交換することが多い。

以上の結果、タイヤ交換が頻繁にある雪国で使用する車両で且つハブやボルトが交換してない車両を重点的に点検すれば良いことがわかった。

事故車の破断したボルトの破断面を調査しても、疲労破断とナットの締め付け不良による破断の区別がつかなかったのだろう。
この事例では、原因不明の事故の統計データを発生時期(季節・使用期間)に着目して見直したことで原因が特定できた。

同様なことは製造業でもある。
不良率の変動を月ごとに見直すことで乾燥(静電気)が原因とわかった。
不良が発生する時間を調べるたら近隣を列車が通過する時刻と一致した。

原因がなかなか特定できない事故や不良を調査する時に「統計データの切り口を変えてみる」というのは、業界が違っても役に立ちそうだ。


このコラムは、2019年12月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第910号に掲載した記事です。

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行政文書流出

 神奈川県庁のサーバーから取り外されたハードディスク(HDD)がネットオークションを通じて転売され、大量の行政文書が流出した問題で、神奈川県は6日、「データ消去やHDDの廃棄を請け負った企業の社員が18個転売していた」と明らかにした。うち9個は回収済みだが、9個は行方がわからず回収できていない。

(朝日新聞より)

 3TBのHDD18個で1800万件の納税情報になるという。9個のHDDは回収済みなので、900万件の納税情報が行方不明となっている。

報道によると、神奈川県庁のサーバーをリース会社に返却。県庁はリース会社にHDDのデータを復元不可能な状態とすることを契約条項に入れていた。リース会社は、廃棄処理会社にHDDのデータ完全消去(データを完全消去するか、HDDを物理的に破壊)するよう指示。廃棄処理会社の従業員が、HDD18個をネットオークションで転売。

実行犯である従業員はHDD内のデータが何であるか、完全消去が契約条件であることを知らなければ、横領の罪にしかならないだろう。

廃棄処理会社は、HDDを完全消去しなければならないこと、消去作業の完了・未完了を現物に表示しておかねば「事故」が起こることを予測できたはずだ。当然データ流出の責任を問われるだろう。

しかしデータの守秘義務は県庁にあるはずだ。サーバ返却時にリース会社との契約にデータを復元不可能な状態とすることを入れておいても免責となるわけではないと思う。

HDDの再フォーマットは時間はかかるが、手間はかからない。
県庁はHDD再フォーマット後にリース会社に返却すべきだったのではないだろうか。


このコラムは、2019年12月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第913号に掲載した記事に加筆修正しました。

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賢者は他人の失敗から学ぶ

 「賢者は他人の失敗から学ぶ」ベンジャミン・フランクリンの名言らしい。
そしてこう続く「愚者は自分の失敗にも学ぼうとしない」。

失敗から学ぶ3ランクは、他人の失敗から学ぶ、自分の失敗から学ぶ、自分の
失敗からも学ばない、となる。
ベンジャミンの言い方を借りれば、
◯賢者:他人の失敗から学ぶ
△並の人:自分の失敗から学ぶ
×愚者:自分の失敗からも学ばない
というランク付けになる。

例えば、1月14日付のブルームバーグのニュースに以下のリコールニュースがあった。

トヨタ自動車は、米国で「レクサス」および「トヨタ」ブランドの一部車種約69万6000台を対象にセーフティーリコール(無料の回収・修理)を実施すると発表した。燃料ポンプが作動しなくなる恐れがあるという。

どのような故障なのか、その原因は何か、まだ何も発表されていない。
この時点で「他人の失敗」から学ぶことは、賢者といえどもほぼ不可能だろう。

しかしこの事故を抽象化し、「動力源が断たれた時に発生する事故」としたならば、

  • ガスストーブのガス開閉スイッチの故障の挙動。
  • ノンストップシステムの停電時の挙動。
  • フォールトレラントシステムの待機システム替え装置故障時の挙動。

など、抽象化した内容を自社製品に当てはめて考えることが出来るのが、本物の賢人と言えるのではないだろうか。

以上に挙げたような例は、当然製品設計時に考慮されているはずだ。
「設計時に考慮しているから大丈夫」と安心するのではなく「本当に大丈夫?」と考え検証するのが品質保証の立場だ。


このコラムは、2020年1月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第931号に掲載した記事です。

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コロナウィルス

 中国のコロナウィルスは収束に向かいつつあるように思える。しかし欧州、米国などまだこれからも拡大しそうな勢いだ。ダントツの感染者数だった中国を欧州勢が追い上げている。

コロナウィルス感染者数

このデータを別の角度から見てみる。
感染患者の死亡率の大きい順に並べ替えて見た。

コロナウィルス死亡率

感染者数で4位のドイツは死亡率で見ると0.34%となりダントツの低さだ。
スイス、韓国、米国が続いている。韓国はよくわからないが、ドイツ、スイス、米国は医療機器や医薬品メーカが多い印象がある。重篤な患者に使用する人工呼吸器や、症状を抑える医薬品などが豊富にあったのではないだろうか?

中国は強権で感染拡大を抑え込み、収束方向に向かいつつあるように見える。一方感染が一気に広がったドイツでは、99.66%の患者が治癒している。

このような危機を救うのは政治の管理力よりも産業の技術力だろう。


このコラムは、2020年3月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第958号に掲載した記事です。

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危機

 3月13日に発表になった中国国内のコロナウィルス感染者は8人増、内武漢の増加が5人、海外からの帰国者が3人だった。中国国内でのコロナウィルス危機はそろそろ収束に向かい始めたと期待できそうだ。

ところで「危機」という言葉は「危険+機会」に因数分解できる。危険を乗り越えることで成長機会が与えられる、という意味だと理解している。

残念ながら、中国でうまくいった方法をそのまま日本に適用することは不可能だろう。感染拡大防止のための都市封鎖、大量の医療スタッフを武漢に強制派遣、1日で病院を建設、外来者の強制隔離、人権を尊重する民主主義国家の日本で許される施策ではないかもしれない。しかし他人に感染させることを目的に外出する罹患者に保護すべき人権があるのだろうか?

休校中の児童をファミレスやカラオケに行かせる親がいるという。近所の公園にはマスクをしていない子供達が遊んでいる。たかが数週間の春休み前倒しで大騒ぎになっている。しかし中国では1月末からずっと休校だ。休校中の児童向けにインターネットによる授業が行われている。日本でも「危機」を「危険+機会」に転換する発想があれば、教育のICT化を進めることが出来たはずだ。


このコラムは、2020年3月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第955号に掲載した記事です。

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指示と復唱

 春節休暇が開け、新型コロナウィルス感染拡大中の中国に戻った。
しかし外出もままならぬ状況にあり、一時日本に撤退している。2月以降毎日部屋にこもり読書生活を送っている(苦笑)

「機長からアナウンス第2便」内田幹樹著

内田幹樹氏はJALのパイロットをしておられた。海外出張が多かった頃、前作の「機長からアナウンス」を読んだ。続編は前作より興味深かった。
本書中に、2004年から2005年前半JALグループは重大インシデントが続いた、という記述があり、航空・鉄道事故調査委員会の重大インシデント報告書を調べてみた。

参照報告書:
「航空重大インシデント調査報告書 AI2005-1」
 平成17年 1 月28日発行

ボーイング・737-400型JAL機が、平成16年4月9日大阪国際空港ー熊本空港便が使用滑走路とは逆方位の滑走路07へ進入を行い、最終進入経路に入る直前に熊本飛行場管制所からの通報により、進入滑走路の誤りに気付き、進入を中止するという事故だ。一歩間間違えば滑走路25番で離陸滑走を開始していた自衛隊機と正面衝突事故となる重大インシデントだ。

滑走路25番と滑走路07番は別の滑走路の様に見えるが、一本の滑走路だ。滑走路の後にくる番号は方角を表す。滑走路25番は北から250°滑走路07番は北から70°の方向を向いていることを示している。つまり風向きによって25番、07番を使い分ける。滑走路が平行に複数ある場合はLCR(左、中、右)の記号を併用する。

管制塔はまず25番滑走路から自衛隊機を離陸させ、その後に25番滑走路にJAL機を着陸させようとしていた。しかしJAL機の操縦席では、出発時の予定通り07番滑走路に着陸と思い込んでおり重大インシデントにつながった。

思い込みによる人為ミスの典型例といっても良いだろう。
管制塔からの指示に対してコックピットからの応答は「ラジャー」だけだった。聞き取れなかった、着陸に備えて指示聞き取りが散漫になっていた、などの理由があったのだろう。しかし指示の復唱があれば、もしくは管制塔から復唱要求があれば、インシデントは防げたはずだ。

指差し確認、指示復唱は仕事の基本だ。「重要なことは復唱せよ」ではダメだ。
指差し確認、指示復唱が習慣になるまで徹底しなければならない。
会議の決定事項は、ホワイトボードのコピーを配布すればよかろう。しかし口頭指示をやめて、全て文書指示にするのは現実的ではない。


このコラムは、2020年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第952号に掲載した記事です。

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