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後悔

 失敗から学ぶのは、後悔しないためだ。自分自身の失敗から、何が悪かったのか、どうすればそれを防げるのか、検討し再発防止対策を実施する。さらに他人の失敗も同様に検討し未然防止対策を実施する。このような活動により、失敗による後悔をなくす。

つまり「やってしまった失敗」で後悔しないために再発防止をする。
それを拡大して、他人が「やってしまった失敗」にも未然防止をする。
こういう趣旨で「失敗から学ぶ」のコラムを書いている。

しかしよく考えてみると、後悔するのは「やってしまった失敗」だけではない。「やらなかったこと」に対する後悔もあるはずだ。

卑近な例で考えてみよう。

  • やってしまった後悔
     想いを寄せている女性に告白する。そして断られてしまった。
  • やらなかった後悔
     想いを寄せている女性に告白できなかった。

どちらも後悔するだろう。
しかし、やってしまった後悔は、時が経つにつれてだんだん小さくなる。
一方、やらなかった後悔は、時が経つにつれてだんだん大きくなる。

製造現場にも同様な後悔はないだろうか?


このコラムは、2020年3月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第949号に掲載した記事です。

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ラピート台車亀裂

 大阪・難波駅と関西空港を結ぶ南海電鉄の特急「ラピート」の台車に約14センチの亀裂が見つかった問題で、以前にも別の車両の同じ部分で亀裂が見つかっていたことが同社への取材でわかった。この亀裂を含め、同社はここ2年間、計4両で七つの亀裂を確認。国の運輸安全委員会は構造上の問題がないか調査している。

全文

(朝日新聞ディジタルより)

 南海電鉄は他の車両の台車を緊急点検し、別の車両でも溶接部分で約10cmの亀裂が見つかった。17年11月、1車両から約17.5cmと約3.8cmの亀裂を確認したほか、今回約14cmの亀裂が見つかったのと同じ車両から約4cmと約6.5cmの亀裂を発見。19年4月、別の車両で約14cmの亀裂を発見している。

過去に類似の事象がありながら、運輸安全委員会は今回ようやく、本件を「重大インシデント」に指定し調査を開始している。

17年に亀裂を発見した時、南海電鉄は運輸安全委員会に報告をあげている。しかしこの時運輸安全委員会は、「修理するまで運行していない」ことなどを理由に重大インシデントに認定しなかった。本来重大インシデントとは,人身事故には至らなかったが重大な影響があると想定される事故を意味するものだ。そして今回発生しなかった重大事故を未然に防止する活動を起こすのが本来の姿のはずだ。

運輸安全委員会のホームページには,17年の事故に対する調査報告はない。

新聞記事によると、亀裂はモーター(710kg)の荷重を支える箇所に発生。その部分は溶接部位となっている。

機械工学に関しては素人であるが、溶接箇所に応力や衝撃がかかり続ける構造とするのは設計ミスなのではなかろうか?

以前メルマガに書いたのぞみ34号台車亀裂は、溶接部位を研磨したことにより溶接部位の強度が低下し発生した。

のぞみ34号トラブル

最初に発見したラピート台車の亀裂を、専門家が調査していれば今回の事故は発生しなかったのではなかろうか?のぞみ34号の事故は2017年12月に発生している。南海電鉄はのぞみの事故後に自社の台車亀裂を見直すチャンスがあったはずだ。


このコラムは、2019年9月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第871号に掲載した記事です。

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検査漏れミス

「下船23人、検査漏れ クルーズ船乗客 厚労相が陳謝 新型肺炎」

 大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号について厚生労働省は22日、必要なウイルス検査をしないまま下船した乗客が23人いたことを明らかにした。加藤勝信厚労相は「国民の健康につながることで、本来許されない。深く反省をしている」と陳謝した。対象者には自宅待機を依頼し、再検査をするという。

(朝日新聞より)

 本来下船前に、ウィルス検査を実施し陰性の乗客だけを自宅に戻って待機して貰うはずだった。しかし2月5日以前の検査で陰性だった人が23人間違って下船対象となってしまったと言うミスだ。

当然一人一人の検査記録は、きちんと管理されていただろう。だから今回のミスを発見することができた。では何が足りなかったのか。ずばり「識別管理」が足りなかった。識別管理とは誰が見ても一目瞭然、正しい判断ができる様にすることだ。

事例を紹介しよう。
新型コロナウィルス防疫対策として、大阪国際空港では入国審査時に色付きのカードを渡している。このカードを見れば、危険区域、注意区域、安全区域からの入境者が色で識別でき、健康チェック・問診の漏れを防ぐことができる。

製造業でも同様の識別管理をする。
例えば、出荷抜き取り検査で不良が見つかってしまい、全数検査をすることになった。この場合再検査漏れがあれば、顧客に不良流出のリスクが発生する。
検査済みの製品を再検査すれば、不必要な検査コストが発生する。
これらを防ぐため、未検査品置き場、検査済み品置き場を分離し、表示する。
または梱包箱に再検査済みのマークをつける。などの識別管理をするはずだ。

厚労省関係の職員は感染の恐怖の中、国民を守るために働いてくれている。
私には彼らのミスを責める気にはなれない。むしろ失敗をきちんと公表した「勇気」を賞賛したい。


このコラムは、2020年2月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第946号に掲載した記事です。

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新型コロナウィルス

 失敗と言えるかどうか判断しにくいが、新型コロナウィルスに対する対応の日中の差を考えて見たい。

「屋形船の従業員ら2人の感染確認 10人が発熱など症状」(朝日新聞)によると、タクシー組合の新年会には約80人が参加し、このうち約10人に発熱などの症状があるとでていた。中国で起きていることを「対岸の火事」としか考えていないのだろう。

2月12日の羽田発広州白雲行きのJAL便で中国に来ている。搭乗機の機内には十数名の乗客しか乗っていなかった。そのほとんどが中国人旅客のようだった。広州白雲空港に到着して驚いた。いつも大勢の人が入国審査に並んでいるが、私の前には1人しかいなかった。いつも利用している空港バスもガラガラ。

羽田空港で体温測定を受けてから白雲空港で2回、バスに乗車する時に1回、高速道路を出たところで1回、地下鉄に乗車する時1回、マンションのゲートをくぐる時に1回、合計で6回体温測定をした。

入国審査の時に、問診票を提出する。これにより過去2週間の滞在場所、健康状態、中国での滞在先、電話番号、機内の座席番号がパスポート番号とともに記録される。空港バスでも同様の記録が取られる。同じ機内、同じバスに乗車した人が発病したら、同乗者は全員隔離できることになる。

食事のために街に出るが、飲食店は全て店内での営業を停止している。食事はウーバーイーツと同様の宅配バイクで届けられる。配達員はマンションの敷地内には入れず、ゲート前に置かれたテーブルまで届ける。
「新年会」など中国ではあり得ない。

食料を買い込むため近所のスーパーに出かけた。ここでも体温測定と、手の消毒をしてから店内に入る。買い物客は全員マスクをしている。(マスクを着用せず外出すると捕まる)その上防護メガネをし、ゴム手袋に透明な雨合羽まで着用している人も見かける。

日本より中国の方が安全ではないかとさえ思える。

さらにすごいのは、当局は人の動線を携帯しているスマホのGPS機能を使い補足しているようだ。知り合いの工場に突然係官が来て、帰省先から戻ったばかりの従業員2名を隔離施設に連行した。この従業員2名は湖北省に滞在していた訳ではない。湖北省内の高速道路を通過しただけだ。

別の工場では、従業員に支給するマスクが足りないと嘆いている。毎日係官がマスクの在庫をチェックしにくる。誤魔化すこともできない。

日本で同じことができるとは思えないが、中国政府の本気度が伺える。


このコラムは、2020年2月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第943号に掲載した記事です。

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失敗を恐れない勇気

軽装の女性客、行き先は冬山 決意したタクシー運転手

 奈良県宇陀市の近鉄榛原(はいばら)駅前で1月中旬、タクシー運転手の森田義彦さん(68)はひとりの中年の女性を乗せた。女性が告げた行き先は東吉野村の高見山の登山口。標高1248メートル、冬場は登山客に人気の山だ。

(以下略)

(朝日新聞デジタルより)

 女性乗客の様子がおかしい。タクシー運転手は気がつき女性に話しかけるが、女性は上の空。運転手・森田さんは意を決して車を止め「命を絶とうとしてるんと違う?」と問いかけ、榛原駅まで戻り交番に女性を預けた。

初めて会った人に「自殺しようとしてないか?」と問いかけるには相当の勇気が必要だっただろう。その勇気が一人の命を救った。

我々の生産現場でも同様なことはある。
改善のアイディアを思いついたが上手くいかなかったらどうしようと、躊躇する事があるだろう。ここで勇気を出して行動しなければ、進歩はない。

「駄目元改善」という言葉がある。
「ダメでもともと」上手くいかなくても、命まで取られるわけではない。
「ダメなら元に戻すだけ」今まで問題はあっても生産できていたので、改善できなくても、元に戻せばいいだけ。
「駄目元改善」はこの二つの意味を持っている。

駄目元改善の極意は「金をかけない」だ。
改善のために立派な生産設備を導入してしまうと、元に戻せなくなってしまう。極力LCA(ローコストオートメーション)を目指す。設備を作る前に効果を検証する。

以前リードタイム短縮のためにインライン乾燥炉を検討した。半田付け部分に絶縁材料を塗布し、まとめてラインアウトし自然乾燥後に次工程に投入していた。この工程だけで2時間停滞時間が必要だった。生産スペースの都合上インライン乾燥炉は1m以下にする必要がある。ここでいきなり乾燥炉を作ってしまうと乾燥が不完全となる可能性がある。
ここでエイやっと設備発注するのは「勇気」ではなく「蛮勇」だ。

小型のコンベアを段ボールで覆い布団乾燥機を使って温風を吹き込んで実験。コンベアのスピード、温風の温度設定を確認してからインライン乾燥炉を発注した。
この改善だけでリードタイムが2時間短縮できた。

失敗を恐れない勇気に必要なのは、とりあえずやってみる、駄目元の組織文化だと思う。試しにやって見てダメならば、別のアイディアを考えれば良いだけだ。


このコラムは、2020年2月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第940号に掲載した記事です。

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原因と言い訳

 発生してしまった失敗の原因を探求し、再発を防止する。類似の失敗が発生しないように水平展開をする。さらに失敗を抽象化しまだ発生しない問題を未然防止する。

ここで重要なことは、正しく不良原因を見極めることだ。

例えば、100台生産ロットの部材発注時に1台2個使いの部品を100個しか発注しなかった、という問題を考えよう。業務システムを使っていれば、この様な問題は発生しないだろう。例題と思ってお付き合い願いたい。
発注担当者はExcelの部品表を確かめながら、発注伝票を作成。その際にミスが発生した。発注伝票はリーダが確認するが、見逃してしまった。

ここでその発生原因(間違った伝票を作成した原因)と流失原因(間違った伝票を見逃した原因)を分析し対策をすることになる。

発注担当者は「風邪気味でぼんやりしていた」
リーダは「仕事が忙しく焦っておりチェックが不十分だった」
発生原因、流出原因に、体調や心理状況などの人為的要素を入れてしまうと、「体調が悪くならない様に健康管理を徹底する」「体調が悪い時は休む」「忙しくても焦らない様に精神強化する」「リーダを増員する」などという、実現不可能または困難な対策しか考えつかない。

「ぼんやりしていた」「忙しかった」というのは原因ではなく「言い訳」だ。
言い訳に対して対策を考えても現実的な効果のある対策は出てこない。
ぼんやりしていると間違ってしまう、ということは「難しい」「複雑」「煩雑」などの原因があるはずだ。したがって、ぼんやりしていても問題が発生しない様にするのが本当の対策だ。
忙しいとチェックの時間がなくなる、という言い訳は作業改善で時間確保する方向に改善しなければならない。

例題は、業務システムの活用や、Excelのマクロなどで自動チェックができる様になるはずだ。
より複雑な問題でも、原因分析の結果が「言い訳」になっていないかどうか見極める。言い訳は、「ぼんやりしていた」「忙しくて焦っていた」の様に個人的な体調、心理的状況に依存している場合が多い。


このコラムは、2020年2月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第937号に掲載した記事です。

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完結編・もち吉

今週のメルマガでは,もち吉の従業員が製品に殺虫剤を混ぜてしまった事件を取り上げた.

従業員が自分の仕事に誇りを持っていれば,この様な事件は発生しないはずだ.意識や心のケアが重要である.
しかしちょっとした出来心で,ノイローゼ気味で魔が差した,などというのはきちんとした安全の仕組みと仕掛けで十分防げるはずだ.

と記事に書かせていただいた.

【今週のお題】
 あなたが「もち吉」の製造責任者だとして,どのような再発防止対策を 打ちますか?

 従業員に対する心のケアは別に実施するとして,職場にてこのような事故が発生しないための対策をお考えください.

【私のアイディア】
整理整頓を徹底し,職場には要らないモノをおかない,いつもと違うモノがあればすぐに気が付くようにしておくのがまず基本だ.

作業服のポケットをなくしてしまうなどの工夫により,職場に不要な物を持ち込めないようにする.

工程の「間締め」をして隣同士の作業者の顔が常に見えるようにしておく.
同僚の目が抑止力になりうると考える.
更に生産性の改善にも役に立つ.同僚同士声をかけながら遅れている工程を助けるなど職場内の関係も良くなるだろう.

職場への出入りの際に,持ち物チェックをする,という案もあるが,これは善良な人のモチベーションを下げないように工夫が必要だ.

【H様のアイディア】

  • 制服の確認・改良:異物混入防止のために、ポケットのない制服へ
  • 私物の持ち込み禁止:私物は監督者の目の届く場所に一括で施錠して保管
  • 薬剤保管方法:薬剤はかぎ付き保管倉で。鍵は工場事務所の管理者層が保管。
    使用者はその都度、使用する理由等を告げ鍵を借りる。(貸したものは誰が借りたかを記録)使用者は使用した量と残量を書き実地棚卸をしたうえで、差異がないか確認、上長のダブルチェックをうける。
  • PCO業者:持ち込んだ薬剤、使用した薬剤の名前・量を提出させる。

以上の内容は、現在食品工場ではあたりまえに行われていることだと思いますが、きっとできてない事があったのでしょうね。

従業員以外にも出入りの業者さんも管理をしなければならない.
このあたりのご指摘はさすが専門家だ.
H様は食品業界の専門家だ.食品の安全問題にも造詣が深い.

【S様のアイディア】
今回のお題は難しいです。

問題点が明確にならない(予想出来ない)ことが、問題?です。

  • 従業員が異物を入れてしまう。
  • 心身喪失者の作業許可  異物が作業現場に持ち込める。
  • 現場リーダの目が届かない  作業に入る前にチェックが無い。

対策は、

  • 従業員教育の再構築・日ごろの健康管理・リーダの意識向上
  • 朝礼等での活動フォロー
  • 作業服への着替え時に持ち物チェックする
  • 啓蒙活動(ポスタなど)

でしょうか?
あまり、具体的にはありませんが・・・

違う業界の問題を考えるのはなかなか難しいものだ.
しかし業界を越えて色々な問題点を考える習慣を持っていると,問題が発生したときに解決のための引出しをたくさん持っていることになる.
毎回お題に投稿いただいているS様もそういう習慣をもたれた方だと思う.

【osmiwk様のアイディア】
 一人作業を止め、複数で作業し、お互いに監視できるようにする。
というのが一番良いと思います。
 作業場に私物持ち込み禁止といっても、毎日持ち物検査をするのも大変です。
また、確実に行なえる方法はないと思います。

同僚同士でお互いに監視しあう方法です.
私もこの方法が有効だと思っています.特に今回事件を起こしてしまった人物は職場での孤独感により精神に変調をきたしていたと思われる.
作業が仲間同士でやっていると言う感覚があれば事件そのものが発生しなかったかもしれない.

【O様のアイディア】
従業員に毎月、その家族・友人も利用できる自社商品券を配る。少額でよい。
自分が製造した商品を身近な人も購入している事を常に意識してもらう為です。
出来心、魔が差すなどの「故意」の事故は防げるのではないでしょうか。

すばらしいアイディアだ.
自分が毒を混ぜてしまった物を親類縁者が食べてしまう危険性があれば,めったなことは出来ないわけだ.


このコラムは、2008年11月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第65号に掲載した記事です。

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餅菓子から基準の7千倍の殺虫剤成分 福岡の「もち吉」

 福岡県は17日、和菓子メーカー「もち吉」(本社・同県直方市)が10月末に販売した餅菓子「えん餅」の小倉あん入りのものから、最大で基準値(0.001ppm)の7千倍の有機リン系殺虫剤フェニトロチオンが検出されたと発表した。健康被害は確認されていないという。
県は食品衛生法に基づき、同社に製品の回収と原因究明を指示している。

(asahi.comより)

 この事件は作業員が故意に殺虫剤を混入させた事が判明している.
この作業員は職場での不満などにより精神的な変調をきたしていたのだろう.事件発覚後自殺をしている.

この会社の幹部は「大切な仲間を失ったのは断腸の思い」と悔やんでいるが,職場での彼の変調を把握できるすべはなかったのだろうか.

自らの希望で配置転換をしてもらった後に事件を発生させている.
常日頃から職場でのコミュニケーション(上司・部下,先輩・後輩,同僚同士)がきちんと出来ていれば,仕事で悩むこともなかったであろう.

人間は機械と違い心を持っている.そのため機械に出来ない仕事も出来る.
一方で心に変調が発生すれば機械がやらないような事をしてしまうのである.

社員全員に企業理念を浸透させ,職場でのコミュニケーションを十分に図る必要がある.

以前に不祥事を発生した不二家は事件後企業理念に「お母さんの気持ち」が追加されている.従来の企業理念と他は殆ど変わっていないのだが,全員が子供を思うお母さんの気持ちで仕事をすれば,期限切れの材料を使う事を現場が許さなかったのではなかろうか.

従業員の仕事に対する誇りを高めなければ,このような事故は完全には防げないだろう.

しかしちょっとした出来心で,ノイローゼ気味で魔が差した,などというのはきちんとした安全の仕組みと仕掛けで十分防げるはずだ.

食品工場に限らず,不良品が出荷品に混入される,という事故は発生しうる.

今回の事例をもとに皆さんの工場でどのような対策が事前に打てるのか検討してみる良い機会だろう.

では今週のお題(笑)
あなたが「もち吉」の製造責任者だとして,どのような再発防止対策を打ちますか?

従業員に対する心のケアは別に実施するとして,職場にてこのような事故が発生しないための対策をお考えください.


このコラムは、2008年11月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第64号に掲載した記事です。

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空港でカートが暴走、係員が別車両で突っ込み阻止

 米シカゴのオヘア国際空港で9月30日、ケータリング用のカートが制御不能になって暴走する騒ぎがあった。カートは駐機場にあった機体に衝突する目前で、アメリカン航空の誘導員が暴走を食い止めた。

 (中略)

カートは円を描いて暴走しながら、近くにあった航空機の機首の方へと徐々に近づいていた。そこへアメリカン航空の誘導員が別の車両に乗って現れ、カートに突っ込んで暴走を食い止めた。

 (中略)

アメリカン航空は声明を発表し、カートを止めた従業員の素早い行動を評価した。暴走したカートはアクセルが引っかかって制御不能になっていたことが判明。同航空の従業員にけがはなかったが、便の出発には10分の遅れが出た。

(CNN.co.jpより)

 詳細は報道されていない。推測すると、旅客機に機内食を積み込む作業中にカートのアクセルペダルが戻らなくなり、制御できなくなった。カートに搭乗していた作業員は危険を感じて飛び降りた?飛び降りる際にハンドルを切り速度を落とそうとしたのではなかろうか。
ハンドルが切ってあった事が幸いし、別の車両でカートを停止させる事ができた。またはハンドルから手を離すと、ハンドルが片側にロックし同じ場所を旋回するように安全設計がされていたのかもしれない。

根本原因に対する対策を考えると、アクセルペダルが引っかからないように設計する。引っかかった場合安全側に停止する仕組みを入れる、などが思いつく。
しかし「引っかかったことを検出して…」と考えると、複雑になってしまう。
こう言う仕組みは単純なほど良い。今回の事例では、主電源を落とす非常停止ボタンをつければ良いだろう。

工場の設備も問題が発生した場合、安全側に停止する仕組みを組み込んでおくべきだ。


このコラムは、2019年10月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第886号に掲載した記事に修正加筆しました。

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不良対策

 不良が発生したら、再発防止対策を検討する。当たり前のように聞こえる。
しかし「不良が発生したら再発防止対策を検討する」この様な姿勢だから不良がなくならない、と私は考えている。

例えば、家庭では散らかったり汚れたりすると整頓や掃除をする。しかし工場の5Sは散らかる前に整頓し、汚れる前に清掃をする。だから散らからないし、汚れないのだ。

不良も同様だ、不良が発生してから対策をするのでは遅い。不良が発生する前に対策をすれば、不良は発生しない。

詭弁の様に聞こえるかもしれない。しかし市場回収をしなければならない不良、従業員・工場設備の安全に関わる事故が発生すれば、企業の存続に即影響する。

不良が発生する前に行う対策を「未然防止対策」という。
他社事例、他業種・他業界事例を自社に適用し、同様な問題が発生しない様に対策を検討する。こういう活動が不良が発生する前の不良対策活動だ。

例えば、アルミ製品の加工工場で粉塵爆発が起きたら、製粉工場、木工工場等も対策を検討し、未然に対策を実施しておくという具合だ。

毎週水曜日配信の「失敗から学ぶ」のコラムはそういう趣旨で書いている。
先週のアエロフロート機着陸失敗事故では、操縦室内のリーダシップについて考えたが、どの様な組織・チームでも同じことが起きうるだろう。

つい先日発生した伊丹空港での保安検査ミスによる大混乱も、製造業にとって参考事例になるはずだ。


このコラムは、2019年9月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第882号号に掲載した記事です。

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