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君子は器にあらず

yuē:“jūn 。”

《论语》为政第二-12

素読文:
わく:“くんならず。”

解釈:
器はそれぞれ入れるものによって用途が決まってしまう。花瓶には食べ物を入れられないし、飯茶碗には花を飾れない。君子たるもの単機能人材であってはならない。

子貢は孔子が後輩の子賤を褒めるのを聞いて、自分の評価を訪ねた。
孔子から「お前はれんの器だ」と言われる。琥璉の器は宗廟を祭る時に、供物を盛る器だ。玉などをちりばめた豪華なもので、あらゆる器の中で、最も貴重なものとされている。しかし器は器。孔子の子貢に対する厳しい評価だった。

君子は義を以って上とす

yuē:“jūnshàngyǒng(1)?”
yuē:“jūn(2)wéishàngjūnyǒuyǒngérwéiluànxiǎorényǒuyǒngérwéidào。”

《论语》阳货第十七-23

(1)勇:勇気
(2)义:正義

素読文:
子路しろわく:“くんゆうたっとぶか。”
わく:“くんもっじょうす。くんゆうりてければらんす。しょうじんゆうありければとうす。”

解釈:
子路が「君子は『勇』を尊ぶか?」と孔子に問う。
孔子は答えて曰く「君子は『義』を重視する。君子に『勇』があり『義』がなければ、反乱を起こす。小人に『勇』があり『義』がなければ盗賊になる」

君子たるもの『義』がなければならない。その上で『義』を貫く『勇』が必要。

牛刀割鶏

zhī(1)chéng(2)wénxián(3)zhīshēng(4)wǎněr(5)érxiàoyuē:“yānyòngniúdāo?”
yóu(6)duì(7)yuē:“zhěyǎn(8)wénzhū(9)yuē:‘jūnxuédàoàirénxiǎorénxuédào使shǐ(10)。’”
yuē:“èrsān(11)yǎnzhīyánshìqiányánzhī(12)ěr(13)。”

《论语》阳货第十七-4

(1)之:行く。
(2)武城:魯国の小さな町。子游が武城の宰相を務めていた。
(3)弦歌:琴の音に合わせて歌う。
(4)夫子:孔子に対する尊称。
(5)莞尔:微笑する。
(6)子游:孔門十哲のひとり。姓は言、名は偃、呉の人。
(7)对:(目上の人に対して)答える。
(8)偃:子游の名。
(9)诸:これ。後ろの“君子学道则爱人,小人学道则易使也”を指す。
(10)易使也:従順になりやすい。
(11)二三子:弟子たちに呼びかける言葉。
(12)戏之:冗談を言う。
(13)耳:〜しただけ。

素読文:
子、じょうき、げんこえく。ふうかんとしてわらいてわく、にわとりくに、いずくんぞぎゅうとうもちいん。
ゆうこたえてわく、昔者むかしえんや、これふうく。わく、くんみちまなべばすなわひとあいし、しょうじんみちまなべばすなわ使つかやすし、と。
わく、さんえんげんなり。前言ぜんげんこれたわむれしのみ。

解釈:
武城を歩くと弦歌の声が聞こえる。孔子は、微笑みながら「鶏を割くのに牛刀を使うまでもなかろう」と言われた。
子游は「以前私は、師から「為政者が道を学び民を愛し、民が道を学べば、治めやすい」と学びました」と孔子にいう。
孔子は、門人たちに向かって「子游のいう通りだ。今私が言ったのは冗談だ」と言った。

門人の子游が治めていた武城の街を歩くと、人々の文化の高さや治安の良さを感じた孔子は、嬉しくなり思わず「牛刀割鶏」と言ってしまったのでしょう。

君子に三畏あり 天命、大人、聖者の言

kǒngyuē:“jūnyǒusānwèi(1)wèitiānmìng(2)wèirén(3)wèishèngrénzhīyán(4)xiǎorénzhītiānmìngérwèixiá(5)rén(6)shèngrénzhīyán。”

《论语》季氏第十六章-8

(1)畏:おそれ敬う
(2)天命:天から与えられた使命
(3)大人:高い地位にある人、徳のある人
(4)圣人之言:聖人の言葉
(5)狎:なれなれしくする
(6)侮:あなどる

素読文:
こうわく:“くんさんあり。天命てんめいおそれ、大人たいじんおそれ、聖人せいじんげんおそる。しょうじん天命てんめいらずしておそれざるなり。大人たいじんれ、聖人せいじんげんあなどる。

解釈:
子曰く:“君子には三つのおそれがある。天命を畏れ、目上の者を畏れ、聖人の言葉を畏れる。小人は天命を知らずそれを畏れない。そして目上の者になれなれしくし、聖人の言葉をあなどる。

「畏れる」というのは恐怖により消極的になる、という意味ではないと思っています。「おそれ尊ぶ」という意味と考えれば、天命にも、大人にも、聖人の言葉にも積極的に考えることができるはずです。

小知と大受

yuē:“jūnxiǎozhī(1)érshòu(2)xiǎorénshòuérxiǎozhī。”

《论语》卫灵公篇第十五-34

(1)小知:小事を行う。
(2)大受:責任ある仕事を任せる。

素読文:
わく:“くんしょうせしむべからずして、大受たいじゅせしむべきなり。しょうじん大受たいじゅせしむべからずして、しょうせしむべきなり。”

解釈:
子曰く:“君子には細々した小事を任せるべきではない。責任ある大事を任せるべきだ。小人には大事を任せてはいけない。小事を任せるべきだ。”

君子ならば小事もそつなくこなすことができるだろう。しかし君子に小事を任せてはいけない。
小人には責任ある大事をこなすことはできないかもしれない。しかし小人でも小事をそつなくこなすことはできる。

孔子が言っているのは「君子たる部下に責任ある仕事を任せ、小人の部下には細々した仕事を任せよ」ということではないと思う。
組織内で、職位の低い者に小事ばかり任していれば、いつまで経っても成長しない。上司たる者、失敗の責任を取る覚悟で、大事を任せ部下の成長を促すべきだろう。肝心なことは、君子を目指す部下に大事を与えて育てる、小人のままでいる部下に成長を目指す心を持たせることだ。

君子は自責で考え、小人は他責で考える

yuē:“jūnqiúzhūxiǎorénqiúzhūrén。”

《论语》卫灵公第十五-21

素読文:
わく:“くんこれおのれもとめ、しょうじんこれひともとむ。”

解釈:
君子は何事も自責で考え、小人は何事も他責で考える。
自責で考えるから解決方法が見つかる。他責で考えれば解決方法はなく、己の不運を嘆くだけとなる。

例えば会社の経営がうまくゆかないのは不景気のせい(他責)だと考える経営者(小人)は、自分では景気を改善することはできず、不景気を呪うのみである。
会社の経営がうまくいかないのは、自分の経営方法が悪いから(自責)だと考える経営者(君子)は、経営方法を改善する努力により経営を立て直すことができる。

窮して濫れず

zàichén(1)juéliáng(2)cóngzhěbìng(3)néngxīng(4)yùn(5)jiànyuē:“jūnyǒu?” yuē:“jūn(6)qióng(7)xiǎorénqiónglàn。”

《论语》卫灵公第十五-2

(1)陈:国名。河南省にあった小国。
(2)绝粮:食料が絶える。
(3)病:飢えて疲れ果てる。
(4)莫能兴:立ちあがることができない。
(5)愠:いかる。
(6)固:もとより、元々。
(7)穷:窮する。行き詰まる。

素読文:
ちんりてりょうつ。じゅうしゃみて、つことし。子路しろいかりてまみえてわく:“くんきゅうすることるか。” わく:“くんもとよりきゅうす。しょうじんきゅうすればここみだる。”

解釈:
卫灵公第十五-1で衛の霊公が戦陣について孔子に尋ねている。孔子は戦争が始まると考え、衛の国を逃れる。
陳の国に逃げ延びたあたりで、食料がつき弟子たちも空腹で起き上がることもできなくなった。
子路が憤慨して孔子に問う。「君子も窮することがあるでしょうか」
孔子は答えて曰く「君子とて窮することはある。しかし小人は窮した上に取り乱す」

小人は窮すれば濫れる。君子は窮しても濫れない。

君子は上達、小人は下達

yuē:“jūnshàng(1)xiǎorénxià(2)。”

《论语》宪问第十四-23

(1)上达:深遠な問題を理解できる。
(2)下达:つまらぬこと、身近な問題に通じる。

素読文:
わく:“くんじょうたつし、しょうじんたつす。”

解釈:
子曰く:“君子は上へ上へと進み、小人は下へ下へと進む”

君子たらんと欲するものは、常に己を高めようと精進しなければならない。小人の如く下世話な世事に関わっている暇はない。

君子は泰にして驕らず

yuē:“jūntài(1)érjiāo(2)xiǎorénjiāoértài。”

《论语》子路第十三-26

(1)泰:落ち着きがある。余裕がある。
(2)骄:驕り高ぶる。威張る。

素読文:
わく:“くんたいにしてきょうならず。しょうじんきょうにしてたいならず。

解釈:
子曰く:“君子は泰然としており驕らない。小人は驕り高ぶるが、泰然としたところがない。”

日本では「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」と言います。
充実した稲穂はその重みで垂れ下がる。中身がスカスカの稲穂はまっすぐ空に向かって立っています。

君子に仕えるか、小人に仕えるか

yuē:“jūnshì(1)érnányuè(2)yuèzhīdàoyuè使shǐrénzhī(3)xiǎorénnánshìéryuèyuèzhīsuīdàoyuè使shǐrénqiúbèiyān。”

《论语》子路第十三-25

(1)易事:仕事を共にする。
(2)说:yuèと同じ意味。よろこばせる。
(3)器:才能

素読文:
子曰わく:“君子はつかやすくしてよろこばせがたきなり。これよろこばすにみちもってせざれば、よろこばざるなり。そのひと使つかうにおよびてや、これにす。しょうじんつかがたくしてよろこばせやすきなり。これよろこばすにみちもってせずといえども、よろこぶなり。ひと使つかうにおよびてや、そなわるをもとむ。”

解釈:
子曰く:“君子は仕えやすいが、機嫌はとりにくい。機嫌をとろうとしても、こちらが道にかなっていないと悦ばない。しかし人を使う時には、それぞれの器量に応じて使う。小人は、仕えにくいが機嫌はとりやすい。こちらが道にかなわなくても、機嫌をとろうと思えばわけなくできる。しかし人を使う時には、すべてに完全を求めて無理な要求をする。”

君子たるもの部下の力量を見極め、適切な者に仕事を任せなければなりません。
部下の力量を見誤り、無理な仕事を任せる。そして失敗すれば部下の責任として切り捨てる。こういう人が小人です。