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KI法

 どこで見かけたのか記憶にないが「KI法」という言葉を知った。
「KJ法」ならば、新QC七つ道具・親和図法として親しまれている川喜田二郎博士が開発された手法だが「KI法」は浅学・短才にして初めて聞く言葉だった。

幸いにしてコロナ禍のため日本で、隠棲生活中である。有り余る時間があり早速Google先生に質問して見た。磯部邦夫氏が開発した問題解決手法であり、考案者の姓名から「KI法」と命名されていると判明した。著書を検索すると「問題解決・自己啓発の手引き」(日本規格協会)が地元の図書館にあることが判明。2日間で読了した。

以下の点が参考になった。

  • 工程(時間・場所)を遡って問題が発生した場所を特定しデータを調べる。
  • 現象・データから問題の要因を見つける。

経験や知識に頼るのではなく、現場のデータ・事象から学ぶということだ。

問題解決には知識や経験が必要であるが、それが思い込みとなれば、真因は見つからない。問題の答えは、問題が発生している現場にある。現場から離れた机上の議論では問題を解決できない。

大切なことを思い出させてくれた書籍だ。事例も豊富に紹介されている。
しかし残念ながら、事例の説明がよく理解できず解決方法に納得がいかず消化不良だった。


このコラムは、2020年8月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1021号に掲載した記事です。

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トラブルは繰り返す

 潜在不適合のキーワードをリストアップしようと思い、過去の不具合事例を調べてみた。こういう調査には、製品評価技術基盤機構の事故情報のデータ
ベースが役に立つ。

独立行政法人・製品評価技術基盤機構:ホームページ

昨年の第四四半期の事故情報レポートには233件の事故情報が報告されている。
このうち難燃材料・赤リンによる事故が41件ある。電気製品の事故件数は119件なので、電気製品の事故の40%は難燃材料・赤リンによる事故だ。

プラスチックに添加した難燃剤・赤リンによる金属マイグレーションで電極間短絡が発生し、発煙事故に至っている。

実は赤リンによる発煙事故は、随分前から断続的に発生していた。
TV受像機、コンピュータのCRTディスプレイモニターには2万ボルト前後の電圧を使っている。高電圧の発生にはフライバックトランスという昇圧トランスを使用する。フライバックトランスは絶縁のためにエポキシ樹脂を充填する。エポキシ樹脂の難燃性を上げるために、赤リンを使用していた。

赤リンが吸湿すると、巻線の絶縁を劣化させ高電圧がショートする。
通常フライバックトランスがショートすれば、保護回路が働き火災などの事故には至らないが、TV受像機内に堆積した埃などに類焼し火災になることもある。火災にならなくとも発煙などがあり、大問題となる。

1980年代にはこの問題を解決するために、各メーカは難燃剤を赤リンから臭素に変更した。しかしその後、環境規制(RoHS規制)により臭素が使えなくなり、赤リンが復活する。さすがに昔と同じように赤リンを使ったわけではない。赤リンをアルミ化合物でコーティングし、吸湿を防いでいる。

絶縁特性を要求しない用途には、このような処置は不要であり、従来通りの赤リン難燃剤もまだ生産している。従来通りの赤リン難燃剤を誤用した最初の大トラブルは、富士通製HDDの事故だろう。HDDに内蔵した制御用のLSIの封止材料に通常の赤リン難燃剤を使用し、回収事故を起こしている。2002年の事だ。

10年スパンで、同じ問題を起こしているような気がする。
「ほとんどの問題は再発問題だ」と言った人がいたが、なかなか失敗から学ぶことができないようだ。


このコラムは、2017年6月26日配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第534号に掲載した記事です。

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頭の体操

 中国に帰還後、現在広州のホテルで2週間+1日のコロナ隔離生活中である。三食打包弁当が配給される。ありがたいことだ(チャント料金は取られているが・笑)打包弁当には、箸のセットがついてくる。割り箸、小さなプラスチックレンゲ、爪楊枝、紙ナプキンが入っている。

今の隔離ホテルに移動してからわずか3日間9回の給食で2度箸セットの不良を発見した。
1回目:すでに割れた割り箸(片側だけ)が入っていた。
2回目:爪楊枝の一部が箸セットの袋の封止部分に入っていた。

作業現場を見ていないが、相当改善のやりがいがある現場のようだ。
退屈しのぎに、どんな事故が起きてどう改善すべきか頭の体操をしてみた。現場も見ずに何を考えても無駄かもしれないが原因探求、対策検討の道筋の参考になればと思う。

1回目の不良品:
片側だけの割り箸の元々つながっている部分の破断面を観察すると、引きちぎられた痕跡がある。ということは、割り箸の加工時に発生した問題ではなく、何らかの問題により割ってしまった箸が袋詰め工程に混入した。と考えるのが妥当だろう。
自然に割れるものではない。故意に割ったと推測した。割り箸の受入検査(自社加工ならば初物検査)で割れる事を確認した箸が最終工程に回ってしまった、と推測した。
流出原因は、袋詰め作業員、最終検査員が気が付かなかった。または気が付いたが、もう一本割れた箸の片われがあるかもしれない、という想像力が足りなかったのかもしれない。
この推理に従うと、工程内で行う破壊試験サンプルの扱い(確実な廃棄と確認)のルールを明確にし、徹底するべきだ。

2回目の不良品:
現物を見ると、爪楊枝(透明袋入り)の一部が箸セットの封止部分に融着されており、先端部分のみが袋に残っている。観察により推測される原因は、融着作業が水平の場合、爪楊枝が袋下部まで落ちていない状態で融着してしまった。
融着作業が垂直の場合、爪楊枝は下まで落ちるかもしれないが、袋(爪楊枝と外装袋)が帯電していれば袋の途中で静電気吸着するかもしれない。
融着作業者の自主検査で気がついて欲しいが、原因除去の対策を打つべきと思う。
対策は、融着作業を垂直にしアイオナイザーで除電する。さらに確実にするため、袋詰め手順を決める。爪楊枝を先に入れ紙ナプキン、割り箸、レンゲで爪楊枝を下に押しやるように挿入すれば良さそうだ。

このコラムはあくまで頭の体操です。本来の原因追求、対策立案は5ゲン主義でやるべきです。


このコラムは、2021年1月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1087号に掲載した記事です。

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経営戦略

 日本のモノ造り産業について考えてみた。
敗戦後壊滅的なダメージを得た日本のモノ造り産業が急速に発展した要因は優秀な人財が生産現場で必死に働いたからだと思う。何もかもを失った国民は、「豊かな生活を手に入れる」と言う渇望に突き動かされ、「会社人間」となり昼を夜に次いで働いた。

明治維新後「欧米列強に追いつけ追い越せ」と言う命題が国民を動かした様に戦後も「復興」と言う命題を国民が共有していた。当時は既に「手本」があり、それを真似すれば良かった。需要が供給を上回り、作れば売れる状態だった。

「安かろう悪かろう」と先進国から蔑まれた品質も、デミング博士の指導で飛躍的に改善。モノ造り日本、品質の日本と言う称号を得るまでになった。
米国から「不当競争」とされ、不公正な関税をかけられる。世界中から日本人は働き過ぎだと非難され、国は祭日をむやみに増やした。豊かになった国民は「ゆとり」に向かう事で、「渇望」は消滅。日本の復興を支えた「企業戦士」達は若者世代から「社畜」と蔑まれ、政府は労働時間の短縮に加速をかけている。

「追いつけ追い越せ」と一生懸命働いていたが、いつの間にか先頭を走っており、真似をする手本が無くなっていた。独自のモノを開発する気運が高まる。そしてPCに代表される同一規格大量生産品では台湾、中国に負ける。
独自の価値を提供するAppleに代表される企業には全くかなわない。日本の独自規格製品群はいつの間にか「パラカゴス製品」となる。

こういう状況を経営戦略の「失敗」と定義するのは行き過ぎかもしれない。
しかし我々の働き方を改革しなければ、このままではじり貧になるのは見えている。「働き方改革」は労働時間の短縮ではない。新たな創造するために働き方を改革すする、と言う事だと考えている。

命令服従型の組織で忍耐力を持って働く時代ではない。
説得納得型の組織で問題解決能力を発揮して来た時代もそろそろ終わりだろう。
新たな価値を創造する課題発見能力を磨く時代だと思っている。
横並び主義の日本の社会では、他人と違う考えを持っている人財をつぶす傾向がある。我々「昭和世代」が頼りなげに感じている「ゆとり世代」の多様な考えを活かす、そんな組織を作らねばならないだろう。

エイベックスが考える“ポジティブ”な働き方改革–未来を語る人事制度」と言う記事を読んでそんな事を考えた。


このコラムは、2017年12月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第604号に掲載した記事です。

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台湾脱線事故の車両に設計ミス 製造元の日本企業が発表

 台湾東部の宜蘭県で先月起きた脱線事故で、事故を起こした「プユマ号」をつくった日本車両製造(名古屋市)は1日、車両の安全装置「自動列車防護装置」に設計ミスがあったと発表した。本来は運転士が装置を切ると、その情報が運行を管理する指令員に自動で伝わるはずだったが設計ミスが原因で伝わらないようになっていたという。

(以下略)

全文

(朝日新聞デジタルより)

 10月21日に発生した脱線事故の映像を何度も見た。福知山線の脱線事故を思い起こされた方も多かったのではなかろうか。

福知山線脱線事故

ウィキペディアにはすでに本件の情報が上がっている。
(タイトルは変更提案が出ているらしいので、URLは変更になる可能性あり)

新聞の報道やウィキペディアの記事を参考にすると、事故列車は度々ブレーキがかかり予定時刻より運行が遅れていた。ブレーキがかかる原因は不明だが、自動列車防護装置 (ATP) をオフにすることによりブレーキがかかる不具合は解消された。しかし速度オーバでも自動ブレーキは効かない状態となり、速度オーバーで事故現場のカーブを曲がりきれず脱線した。

本来ATPを解除すると運行指令で把握できる仕様になっていた。しかし朝日新聞の報道では、日本車両製造の設計ミスにより通知機能が実装されていなかった。
しかしウィキペディアの記事には、2010年に全列車に通知機能が取り付けられていたが、実装段階で指令員に使い勝手の悪さを指摘され、当時入札中だったプユマ号のTEMU2000型には搭載しなかった。という記述がある。

ATPを切ってでも運行を継続していたことについては、故障が常態化していた。
遅延時には指令から運転手に対しATPを切ることも含めた回復運転を図るよう日常的に要請されていた、という元運転手の証言があるそうだ。

いずれにせよ、本事故の根本原因はATPオフのまま運転をしたことではない。しばしばATPが(誤動作により?)作動しブレーキがかかったことだ。故障原因を特定しないまま、対処療法としてATPをオフにしたため速度オーバでカーブに突入してしまった。

その上、台湾鉄道の組織文化が誘因になったと思われる。
台湾鉄道では、2018年より列車の遅延が30分以上となった場合運賃全額を払い戻すことになっている。(日本の場合は2時間以上遅延で特急・急行料金のみ返却)

また運転手は、乗務時間と運行距離は点数として累積され、一定点数に達すると報奨金が与えられるが、一度の遅延で点数はリセットされる、という評価をうける。

安全運転より定刻運転を優先する組織文化が今回の事故誘因となったのではなかろうか?

組織事故


このコラムは、2018年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第742号に掲載したコラムです。

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姥捨思想

 【ロンドン時事】新型コロナウイルスの感染が深刻化し、多くの国がロックダウン(都市封鎖)状態にある欧州で、封鎖をしない北欧スウェーデンの
「独自路線」が注目を浴びている。ソフト対策の背景には、強制より個人の自主性を尊重する伝統が根強いほか、医療制度が充実し医療崩壊の懸念が少な
いことなどがある。さらに多数が自然感染して免疫を持つことでウイルスを抑制する「集団免疫」の形成も念頭にあるとされる。

jiji.comより

 このニュースを見て驚愕した。現代にこのような考え方をする国が有るとは信じられない思いだ。確かに新型コロナウィルスに感染しても発症しない人はいる。発症しても治癒する人もいる。新型コロナウィルスに感染し死亡する人より、新型コロナウィルスに感染しても発症しない人、発症後治癒する人の方が多分多いだろう。それらの人々は新型コロナウィルスに対する免疫ができている。
であれば、無理やり都市封鎖をして国民に不便を強い、経済活動を停滞させるより、普通の生活を継続し免疫を持つ人を増やした方がいい。合理的な発想であるように思える。

しかしよく考えて見たい。
この政策で命を落とす者は、高齢者、病弱な者だ。弱者を切り捨て全体を守る「姥捨思想」だ。

村落を守るために、足手まといとなった老人を切り捨てる。
神の怒り(天災)を鎮めるために、少女を生贄とする。

しかし今、新型コロナウィルス禍との我々の戦いは「ホモサピエンスの保護」ではない。
我々が守らなくてはならないのは、種の存続ではなく、感情を持った家族、隣人だ。


このコラムは、2020年4月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第973号に掲載したコラムです。

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Oリングの劣化

 石油給湯機を使用中に異音がし、確認すると、当該製品から発煙・発火していた。

(NITE事故情報より)

 NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報によると、2008年から12件の同様な事故が発生している。

事故調査によると、灯油を燃焼室に供給制御する電磁弁のゴム製Oリングが、経年変化により劣化し灯油が燃焼室近辺に漏れたことによる引火が原因だ。

ゴムは経年変化により、硬化したりひび割れたりする。そのためOリングとしての機能を果たさなくなる。設計者はゴムが劣化することを知っていたはずだ。
更に真因を探れば、Oリング寿命の見積もりを誤った、または材料不良により設計どおりの寿命がなかった、と言うことだろう。

ゴムの寿命は、添加剤により大きくばらつく。しかも事前に評価確認することが困難だ。原料ゴムをロットごとに、寿命評価をしてから製品組み立てに使用することは可能だが、経済的に困難だろう。

安全性と経済性をトレードオフすることは出来ない。ロットごとに寿命評価をするという対策を取れば、安全性と経済性はトレードオフ関係になる。

Oリングが劣化しても火災にならないフェールセイフ設計が必要だ。
制御電磁弁を燃焼室から離し、灯油が漏れても発火しないようにする。または漏れた灯油は密閉容器に溜まるようにしておき、漏れを検出したら燃焼をシャットダウンするように設計しておけば、事故は発生しないだろう。

製品の安全性だけではない。あなたの工場では設備からの油漏れをきちんと管理できているだろうか?
床に油だまりが出来ている。設備の下にウェスがたくさん突っ込んである。
こんな状況はイエローサインだ。もちろん機械油は、灯油より引火温度が高い。
簡単に火災が発生することはないかもしれない。しかし火災に準じる深刻な不具合が発生する可能性はあるはずだ。


このコラムは、2011年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第196号に掲載した記事です。

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笹子トンネル事故から6年

 中央高速笹子トンネルの天井板崩落事故が発生したのは2012年12月2日。先週日曜日には現地で遺族らが慰霊式典を開催した。

6年経った今もまだ事故原因が明確になっていないようだ。

事故を契機にNHKの取材斑が5年間かけて、日本全国のトンネルや橋梁などの安全性を取材している。

笹子事故5年 インフラは安全になったのか?

しかしこの記事は「老朽化」がキーワードとなっている。
重大災害につながりかねない交通インフラの老朽化を取材し明らかにする事に異議はないが、笹子トンネル事故は「老朽化」が原因ではないはずだ。当時の記事からは、不適切な施工が原因と思われる。

ボルト、引き抜ける状態 笹子トンネル、6割が強度不足

笹子トンネル天井崩落事故

当時の調査では、引き抜かれたボルトには先端の一部にしか接着剤が付着していなかったものが多数あった事がわかっている。老朽化により接着剤の強度が劣化することはあるかもしれない。しかし硬化した接着剤の量が、経年変化で少なくなるとは思えない。

NHKの取材そのものは意味があるにせよ、記事タイトルに「笹子トンネル」を入れることにある種の「作為」を感じるのは私だけだろうか?どこかに真実を隠蔽する力が働いていると言う疑惑を感じざるを得ない。


このコラムは、2018年12月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第754号に掲載した記事です。

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リアサス連結プレート誤装着

 ホンダは4月8日、『CBR1000RR-R』のリアサスペンションについて、不適切に組付けたものがあるとして、リコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。対象となるのは2020年3月31日~7月23日に製造された439台。

今回、リヤクッションアームとスイングアームを連結するクッションコネクティングプレートの表裏を逆向きに組付けたものがあることが判明。そのため、凹凸路面等を繰り返し走行するとプレートが折損し、最悪の場合、走行安定性が損なわれるおそれがある。

改善措置として、全車両、クッションコネクティングプレートの組付け状態を点検し、該当するものはクッションコネクティングプレートとダストシールを新品と交換する。

不具合は2件発生、事故は起きていない。市場からの情報によりリコールを届け出た。
                        

carview.yahoo.co.jp/news/より)

 リヤクッションアームとスイングアームを連結するプレートの裏表を逆に取り付けてしまったという不良だ。
不具合を二件発見している、と記事にある。このような作業ミスの対象範囲を約4ヶ月、439台とどうやって特定したのだろうか?同じ作業員がプレートの組み付け作業した製品を全て回収対象としたのだろうか?
それにしても、回収対象範囲を特定するのは相当困難だっただろう。

この手の作業ミスによる不具合は、何度も発生する。裏表を勘違いしていたらその作業者が作業した分は全て対象となる。しかし「うっかり」間違えたのならば問題のない製品まで回収し確認をしなければならなくなる。非常に厄介な問題だ。従ってこの手の不良を「作業ミス」と考えるべきでない。

設計ミスと言ってしまうと設計者に気の毒かもしれないが、設計配慮が足りていなかったと考えるべきだ。今回の事例を設計FMEAの潜在故障モードに追加し、「裏表のない設計」「裏表逆には取り付かない設計」となるようにしなければならない。

「失敗から学ぶ」という事は知識を増やすことではなく、失敗が二度と発生しないように標準を作る(または変える)ということだ。

回収対象製品を知らないので「プレートを逆に付けるとプレートが破損する」という故障モードのメカニズムが理解できない。しかし裏表が逆だと取り付かない構造にする事は可能だろう。


このコラムは、2021年4月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1123号に掲載した記事です。(タイトルを変更しました)

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エア・ドゥ機長ら3人、飲酒検査せず乗務 「失念した」

 エア・ドゥは16日、40代の機長ら3人のパイロットが、社内規定で定めたアルコール検知器を使った飲酒検査をせずに14日午前8時25分新千歳発中部行きに乗務したと発表した。機長は「検査を失念していた」と話しているという。
 (中略)
 同社では、パイロットの飲酒問題が相次いだことを受け、昨年12月18日から検知器での検査を義務化。社内規定で乗務前12時間以内の飲酒も禁止しており、副操縦士と訓練生は前日に飲酒していたが、いずれも違反はなかったという。

(朝日新聞デジタルより)

 「失念した」という記述に驚いた。さらに記事にはエア・ドゥでは、飲酒検査を昨年12月18日から開始しているとあり、二度驚いた。日航パイロットが英国で逮捕されたのは昨年10月だ。あれほど大騒ぎになっていたのに飲酒検査を始めたのがひと月半後だ。

他にも、空港まで車で来ているのだから操縦には問題ない、とか呼気検査装置の使い方がわからなかった、などという緊張感がない記事が散見される。

呼気1l中アルコール濃度0.1mg(車の場合は0.15mg)という基準が厳しすぎるという認識なのだろうか?(0.1mg/lは英国の基準と同じレベル)

検査を始めてひと月半、パイロットがアルコール検査を失念したというのはありそうに思える。しかし「ありそうだ」というのと「あってはならない」というのは全く別の話だ。

いずれにせよ、失念したり偽装したり出来ないように仕組みを作るべきだ。
エア・ドゥはLCCなので「コスト負担が…」という議論は成り立たない。コストが安全に優先するなどあってはならない。


このコラムは、2019年1月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第775号に掲載した記事です。

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