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指差喚呼

 「指差喚呼」とは鉄道の運転手がやっている指差し点呼確認動作のことだ。
例えば列車運転手は出発前に前方にある信号機を指差し「出発進行」と発声。これは出発(信号)進行(緑)という意味だ。出発時の指差喚呼だ。出発信号等が赤色点灯ならば「出発停止」と点呼し発車しない。

運転手、車掌、駅職員皆がこの指差喚呼を行なっている。万が一事故があれば何百人、何千人の命が危うくなる。従って危険なところだけで指差喚呼をするのかというと、そうではない。習慣とするためにあらゆる動作で指差喚呼をしていると思う。

工場でも指差喚呼を取り入れると良い。
プリント基板に部品を挿入する作業員が、一斉に指差喚呼をしていては騒々しくていけない(笑)しかし自分が挿入した部品は指差し心の中で数を数える。

部品の出庫・準備、設備の準備・設定など生産に重大な影響を与える作業は型通りに指差喚呼をした方が良いだろう。

ヒューマンエラーに対して作業者に対し「再指導・注意」などという対策より「指差喚呼」導入のほうが効果がありそうだ。


このコラムは、2022年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1259号に掲載した記事です。

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2009年の自動車不具合による事故・火災情報

国土交通省、2009年の自動車不具合による事故・火災情報をとりまとめ

 発表によると、事故・火災情報の総件数は1138件。内訳は、事故154(13.5%)、火災984件(86.5%)となっている。また、装置別の事故・火災情報の上位は、不明342件(30.1%)、原動機191件(16.8%)、制動装置72件(6.3%)の順となっており、原因別では、点検・整備起因321件(28.2%)、原因特定できず273件(24.0%)、現車確認できず157件(13.8%)が上位。なお、製造設計に起因した事故・火災情報は、すべてリコールの届出がされているとのこと。

(中略)

●エンジンルーム内の可燃物置き忘れなどに関する調査結果概要
 事故・火災情報の中で、エンジンルーム内の可燃物置き忘れなどが原因となった火災が72件あり、火災の分析、可燃物の発火温度、実車によるエンジンルーム内の部位別温度測定及び発火試験などについて調査も行っている。
それによると、車種別では、乗用車32件、軽乗用車19件で、原因別では、可燃物(ウエス等)の置き忘れ56件、枯れ草7件、小動物が持ち込んだ可燃物4件、鳥類が持ち込んだ可燃物4件であり、可燃物(ウエス等)の置き忘れが全体の約8割となっている。ユーザーへの注意事項は下記のとおり。

  • 運行前に、エンジンルーム内に可燃物の置き忘れがないことを確認すること。
  • 車両を長期間使用しなかった場合は、小動物や鳥類に持ち込まれた小枝等がないことを確認すること。
  • 走行中、焦げた臭いを感じたときは、走行を継続しないこと。

(Car Wacthより)

 国土交通省がまとめたこれらの資料は、自動車運送業に関わる者だけではなく、車を運転する者も、参考にすべき内容だと思う。運送業ではなくても社内に運転手を雇っている工場、会社の経営者・経営幹部は是非参考にしていただきたい。

今回は上記のCar Wacthに出ていた事例について考えてみたい。
ボンネットを開けエンジンルームを清掃し、ウェスを取り忘れてボンネットを閉めてしまう。工場でもありそうなミスだ。良かれと思ってやっているメインテナンスの結果事故を起こしてしまう。

枯葉や小動物、鳥類が持ち込んだ可燃物もしばしばエンジンルームを点検していれば見つけることが出来るだろう。しかしその点検で、二次災害が起きてしまう。ならば、いっそメインテナンスを止めてしまったほうが安全だ、などという極論にもなりかねない。

しかしメインテナンス後に問題が発生することは意外と多い。
メインテナンスも一つの変化点として、変化点管理をするよう留意すべきだ。

ところで国土交通量が呼びかけている注意事項は、「確認」だけだ。
いわゆる「ポカよけ」がない。
例えば複写機をメインテナンスして扉を閉めようとしても、レバーを戻し忘れると扉が閉まらないようになっている。こういうのを「ポカよけ」という。

ウェス忘れもポカよけが考えられないだろうか?
複写機と同じ方法はちょっと難しそうだ。
発想を変えて、ウェスを置いたままにしても問題ないように、エンジンの表面温度を下げる。
又は、ウェスが燃えても影響がないようにする。エンジンルーム内全てを、耐燃仕様にするのは大変なので、燃える可能性のある部分(コード類、プラスチックケースなど)のそばにはウェスが置けなくする。

更にもう一度発想を変えて、エンジンルーム内の問題が起きない場所にウェスの置き場所を作っておく。そこにウェスを置けるトレーを用意しておく。

置き忘れのチェック方法も工夫したい。
ウェスの置き場所を決めておく。例えばトランク内の決められた場所に、ウェスをエモン掛けに掛けて吊るして置くようにする。これならば洗車後、洗車道具をトランクにしまう時にウェスがないことにすぐ気が付くだろう。


このコラムは、2010年7月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第161号に掲載した記事です。

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救命胴衣着てエア遊具、危険

東京都練馬区の遊園地「としまえん」のプールで昨年8月、ライフジャケットを着た8歳の女児が水面に浮かべた遊具の下で溺れて死亡した事故を受けて、ライフジャケット着用時の遊具のリスクを調べていた消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は19日、転落状況によっては体が真上に浮上せず、遊具の下に潜り込んで自力脱出できなくなる危険があるとする報告書をまとめた。

(全文)

(朝日新聞電子版)

昨年8月15日に発生した豊島園プールでの女児死亡事故の続報だ。

(注)エア遊具とはとは子供を対象とした、空気で膨らませた大型遊具の総称。本事例ではプールなどの水面に浮かべその上で遊ぶ大型遊具のこと。

この記事は消費者安全委員会が6月19日に発表したとしまえんプールで発生した8歳女児の溺死事故調査報告が元になっている。女児はライフジャケットを着用、プール水面に設置されたエア遊具から転落。エア遊具の下に潜り込んでしまい、ライフジャケットの浮力でエア遊具底面に押しけられ、脱出できず溺死している。

消費者安全調査委員会報告書

事故原因を特定し、再発防止を提案するための調査・再現実験を含む報告書だ。
事故発生から10ヶ月かかっている。公共性の高い報告書だ。何層もの上位者の査読・修正指示があったことは想像にかたくない。としまえんプールでの事故後、同業施設では自主的に再発防止が取られていたと思う。幸い事故後同類の事故はなかったようだが、もう少し早く報告書が公開されても良いのではないかと思う。

死亡事故といえば、我々製造業にとっては「重大不適合」である。再発防止対策を含む原因調査報告書は1週間以内に提出されねばならないだろう。少なくとも即日再検査などの暫定処置を取らねばならない。

ISO/IECガイド51「安全側面-規格への導入指針」では、リスクア セスメントによりリスクを明らかにし、以下の優先順位に基づきリスク低減を行うことを、リスク低減の 基本原則としている。

  1. 設計における本質的安全設計方策(危険源の除去等)
  2. 設計における安全防護及び付加保護方策(ガードの設置等)
  3. 設計における使用上の情報(警告の表示等)
  4. 使用における各種保護方策(監視、保護具の使用、訓練等)

この指針は製品安全の大元締めとなる規格だ。
製品ばかりではなく、オフィス・工場の安全に適用すれば以下のようになる。

  1. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を除去する。
  2. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を緩和する。
  3. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を可視化する。
  4. 作業従事者に注意喚起・教育訓練する。

より上位の対策が有効度は高くなる。


このコラムは、2020年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第997号に掲載した記事です。

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安全事故対策

 工場の中での優先課題は、次の順位だ。1.安全、2.品質、3.効率。
安全を無視して品質を追求することはあり得ないし、品質を無視して効率を追求することもあり得ない。製造業以外でも同様の優先順位だと思う。

その第一優先の安全だが、企業のみならず社会全体でも安全を保証するための予防保全対策がとられている。

曲がりくねった道で事故が多発する。そのため道幅を広くとり見通しの良い直線道路に改修工事をする。
津波による災害を防ぐために防潮堤を高くする。
健康被害を防ぐために、低タール,低ニコチンタバコを販売する。

この様な様々な安全対策が、実は安全を阻害していると言う主旨の本を読んだ。

「事故がなくならない理由」芳賀繁著

著者の芳賀繁氏は、心理学を専攻された方で、ヒューマンエラー、作業安全等の研究をされている。

芳賀氏によると上記に上げた予防対策は以下のようにリスクを増加させる結果となる。
交通事故防止のために道路を拡幅し直線とすると、見通しがよくなりオーバースピードで走る運転手が増え、却って交通事故が増える。
防潮堤を高くすると、油断が生まれ避難行動が遅れる。これは先の3.11東日本震災時に体験したことだ。
タバコを低タール、低ニコチンタイプに換えると喫煙者は、喫煙本数が増える、より深く吸い込む、などの行動変化が起こり却って健康リスクが増える。

予防対策で、増加した「安全」を心の油断により減少させてしまう。むしろリスクを上昇させてしまうこともありうるという。

安全事故予防対策は無意味、もしくは逆効果であるかというと、そうではない。この書籍の主旨を、大雑把にまとめてしまうと次のようになるだろう。
技術的に安全事故予防措置を取っておくことは必要だ。しかしそれよりも重要なことは、全社員の安全意識の向上だ。特定の危険作業をしている作業員だけではない。経営者、幹部を含めた全社員が、安全意識を高めなければならない。

安全意識が低い状態はなぜ発生するのか、まずここを突き詰めて考える。
安全と危険の間に存在するリスクを知らない。
リスクは知っているが、リスクの危険度を正しく認識していない。
そしてそれらについて、どのように対策をすれば良いか全員で考える。
いわゆるKY(危険予知)活動とかKY訓練を呼ばれる活動だ。
朝礼でこのようなことを皆で議論してみてはいかがだろうか。


このコラムは、2017年3月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第520号に掲載した記事です。

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頭と胸挟まれ死亡 立体駐車場の点検中 名古屋

 23日午前10時50分ごろ、名古屋市中村区名駅3丁目の立体駐車場「エムテックサンパーキング」で、設備点検をしていた愛知県蟹江町蟹江本町のビルメンテナンス会社員佐藤洋一さん(49)が自動車運搬用のエレベーターに頭と胸を挟まれ死亡した。中村署は、駐車場の男性アルバイト従業員(51)が過ってエレベーターを作動させたとみて、業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。

(asahi.comより)

 痛ましい事故が発生してしまった.
以前メンテナンス作業によって引き起こされた事故について解説をした.

今回はメンテナンス作業中の事故である.
装置は安全を考慮して設計してあるはずだが,メンテナンス作業中の安全までは考慮してないであろう.そもそも安全装置そのものも点検をしなければならないので,メンテナンス作業に万全の安全性を考慮して設計するということは不可能であろう.

従って現場での作業安全確保のための仕掛けを造りこんでおく必要がある.例えば操作盤に「メンテナンス作業中」などの札を下げ,安易にスイッチ操作しないようなポカ除けを準備しておく.メンテナンス中は操作スイッチにカバーを付けはずさないと操作できないようにする.
などの工夫をしなければならない.

あなたの工場ではメンテナンス中の作業安全をどのように確保されているだろうか.再度点検されることをお勧めする.


このコラムは、2008年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第22号に掲載した記事です。

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朝日新聞ヘリの緊急着陸、部品の摩耗が原因 運輸安全委

 東京都健康長寿医療センター(板橋区)の敷地内にある空き地に4月、朝日新聞のヘリコプターが緊急着陸した原因について、運輸安全委員会は17日、「回転翼を操作するスイッチの部品が摩耗していて操縦に障害が生じた」とする調査報告書を公表した。

 報告書によると、ヘリは4月27日午後、取材から戻る途中に板橋区上空で操縦装置に不具合が生じた。機長は速度を上げようと、回転翼の傾きを操作する「コレクティブスティック」を引き上げようとしたが上がらず、空き地を見つけて着陸した。

 安全委がスティックの摩擦抵抗を緩めるスイッチ部分を調べたところ、ねじが緩んでがたついていた。このため、部品の一部が摩耗し、スイッチを最後まで押し込めない状態になっていたことが分かった。スイッチのねじ部分は覆いがあるため、「目視による点検は不可能だった」と指摘。メーカーに「材質を摩耗しにくいものに変えることが望ましい」とした。

 朝日新聞社広報部の話 予防的に緊急着陸しました。今後も安全運航に一層努めます。

朝日新聞ディジタルより

 私はヘリコプターのメカニズムに関しては,まったくの素人だ.従ってこのコラムは,ヘリコプターの事故を題材にした,メンテナンス,予防保全に関するコラムとして読んでいただきたい.

記事によれば,事故はネジの緩みにより部品が磨耗,コレクティブスティックが操作不能になったということのようだ.運輸安全委員会の報告書には,部品の耐摩耗性をあげることをメーカに推奨しているという.

しかし,部品の磨耗がネジの緩みにより発生したのならば,ここに対策を打たねば事故を未然に防ぐことは出来ないだろう.耐摩耗性の向上だけでは,延命になるだけだ.

常に振動がかかっている部分に使用されるネジは,点検増し締めが必要だ.
しかしこのネジは外部から目視不可能という.ネジの緩みがメンテナンス不良などの人為的原因により発生したのでなければ,ネジは点検増し締めが可能な構造にしなければならないだろう.

操縦不能によって発生するリスクは,乗客,乗務員の生命の危険だ.これはトップクラスのリスクであり,最優先で改善しなければならない.

4月の事故が12月に報告されたのでは,同型ヘリの他の機体に対して点検・予防保全をするのが手遅れになる.

工場の設備も同様だ.
万が一事故があったときは,リスク(生命財産への危険,生産継続への障害など)により優先度,緊急度を決定して,すぐにアクションをとるべきだろう.

設備ばかりではない,車載用の電装モジュールなどは,生産時にモジュール内部のネジ締めは厳重に管理されている.ネジ一点ごとに締め付けトルク,斜行によるネジの浮きがチェックしている.これは抜き取りや目視検査によって行われるのではない.工程内で100%自動検査が行われている.


このコラムは、2010年12月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第184号に掲載した記事に加筆したものです。

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喜ばしい成長、でもヒヤリ 暮らしの中の子どもの安全

 朝日新聞に子供の事故に関する特集記事が掲載されていた。

「小さな命 事故予防を考える」

転落事故。
浴槽の残り湯に落ちて溺死。
異物を飲み込んで窒息死。
ライターによる火災発生。
飲水機によるやけど。

大人にとって何でもない事が、子供には命の危機となりうる。
製品にもそのような危険を回避する工夫がしてある。

使い捨てライターは、子供の力ではレバーを押せない様にデザインする事が義務づけられている。
飲水機のレバーも押しただけでは熱湯が出ない様に設計されている。
車の扉にはチャイルドロックが装備された。
一定以上大きさの包装用ポリ袋は、頭からかぶっても窒息しない様に穴を空けることが義務づけられている。
最近では歯ブラシをくわえたまま転倒しても怪我をしない様に歯ブラシの柄が柔らかい素材で出来ていると記事には出ていた。

しかし考えてみると、私が子供の頃はそのような対策はしてなかった。
おとなしかった(笑)私は、危険な事をして親を驚かせる様な事はなかった。
しかし活発な弟は、さんざん親をはっとさせた。

10円玉を飲み込み、足を持ってぶら下げて吐き出させた。
公団住宅の階段で遊んでいて額を切りしたたか出血をして帰って来た。
近所の犬をからかって股間をかまれる。
三輪車に乗って路地から飛び出し、通りかかった車の後輪にぶつかり転倒。
この時は一歩間違えば命はなかっただろう。
彼は母親が家事をしている最中は廊下の柱に帯ひもでつながれていた(笑)

私が子供の頃は、特に子供の安全を意識して製品開発されていたとは思えない。
当時と現在を比較して子供の怪我が減っているのだろうか?統計データがあるのかどうか分からないが、今の方が子供の命に関わる事故が多い様に思う。

この記事の「子供」を「作業員」に置き換えて読んでみるとどうだろう。
ある工場では頭にガーゼを当てた従業員がいた。この工場では作業員に安全帽の着用を義務づけていない。
他の工場では、安全規則を遵守せず怪我をした従業員に罰金を科したという告知が掲示板に張り出されていた。

記事には、事故予防の「3E」として環境改善(Environment)法規制・基準化(Enforcement)教育(Education)が有効なアプローチだと記してある。

罰金は教育(躾)の一種かも知れないが、それほど効果があるとは思えない。
それよりも「ヒヤリハット事例」を公開し、朝礼などで繰り返し共有する方が有効だと思う。たまたま見つかった安全規則違反に罰金を科料しても、ついてなかったと思うだけだろう。それよりも、管理者が従業員の安全にどれほど心を使っているかと言う、真剣な心配を伝える事の方が大切なのではなかろうか。

私たちの母親は、危ない事をした弟を泣きながら叱った。横で見ていた私の心にも深く刻まれている。私達兄弟が大過なく成長出来たのは、母親の愛情のおかげだと思っている。

事故が起きてから従業員の過失を責めても手遅れだ。ヒヤリハットを起こした従業員を愛情を持って叱るのが、経営者や管理者の役割だと思う。


このコラムは、2016年9月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第493号に掲載した記事に加筆修正しました。

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737MAX8事故原因

 ボーイング737MAX8型機のライオン航空610便、エチオピア航空302便の墜落事故について以前メルマガで取り上げた。

「ボーイング737Max墜落事故」

この時に想定した墜落原因は

  • AOAセンサーの故障
  • AOA警報システムのバグ
  • 操縦システムのバグ

であった。

暫定事故報告書で自動飛行制御システムに問題があったことが判明した。ボーイング社も機体の失速を防ぐ目的で搭載された「MCAS」にバグがあったと公表している。
ボーイング社ではすでにバグ修正を完了している様だ。修正ソフトウエアを導入した機体(737MAX7)の試験飛行を実施している。

日刊工業新聞電子版によると、

ボーイングは「修正版ソフトウエアは設計通りに作動し、操縦士は無事に機体をボーイング・フィールド(シアトル近郊)に着陸させた」と指摘。
「数週間内に関連作業を終え、最新の精査結果を連邦航空局(FAA)に提出する」と説明した。

「試験飛行では乗員がさまざまなシナリオで不具合の有無を調べた」と説明しているが、実地評価で全ての組み合わせを調べることは困難だろう。

以前のメルマガに書いた様に「バグはもう一つある」

その予想外の事態が発生した時に、人の判断が優先する様にしておくことが肝心なのではなかろうか?

別のコラムで、自動飛行制御システムでコンピュータと人の判断に食い違いがあった場合、エアバスのシステムはコンピュータの判断を優先する仕様だった。そのため着陸失敗の事故が発生した事例を紹介した。

「航空機事故から」

上記コラムを書いた時点では、ボーイング社はコンピュータより人の判断を優先させる設計思想だったのだが。設計思想が変わってしまったのか、または単純な設計ミスだったのだろうか?


このコラムは、2019年4月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第808号に掲載した記事に加筆しました。

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ライオンエアの737MAX墜落、迎角センサーに異常か

 インドネシアのLCC大手ライオン・エア(LNI/JT)のジャカルタ発パンカルピナン行きJT610便(ボーイング737 MAX 8、登録番号PK-LQP)が現地時間10月29日に墜落したことを受け、FAA(米国連邦航空局)は同11月7日、737 MAX 8と9に対して機体の安全性を確保するための整備や改修を指示する「耐空性改善
命令(AD)」を発行した。

 ボーイングによると、事故機が機体の姿勢制御時に、翼と対向する空気の流れの角度「迎角」を検出する「AOAセンサー(Angle of Attack sensor)」から入力される値に誤りがあったという。

(以下略)
全文

(Aviation Wireより)

 10月29日に発生したライオンエア・ボーイング737機の墜落事故の続報が入ってきた。

仰角センサー(AOA)の故障により、B737の制御コンピュータが失速を回避するために機首を下げ墜落したようだ。

米国連邦航空局が発行した耐空性改善命令(AD)には、同様の故障が起きた時のために、パイロットの対処手順が書かれているのだろう。

今回の墜落事故の原因は「AOAの故障」だった様だ。
いくつかの記事を参考にすると、この機体は過去に対気速度計が4回故障している。さらに事故の前日にはAOAが故障し交換している。

ここまでの情報で事故原因を推定すると、
対気速度計を修理する際にAOAに損傷を与えてしまった。
前日のAOA交換がうまくいかなかった。

  • 壊れていない方のAOAを交換した。(AOAは機体の左右に2個あるようだ)
  • 交換時に壊した。

その上で、交換後の確認検査がなければ、このミスはそのまま流出する。

以前このメルマガで、エレベータのメンテナンスでどの様に重量制限機能を点検しているのかと疑問を呈したことがある。

「全日空便、パネル2度脱落 成田発着の同じ旅客機」

AOAが正しく交換できたかどうか、飛行してみてわかるというのでは困る。多分シミュレーションによる検査装置があるのだろう。

今回の事故は修理のミスと確認検査で問題があったのではなかろうか?

修理・メンテナンス時に問題を作り込んでしまう事例はよくある。

今回の墜落事故の原因はまだ判明していないが、自社の中を「正しく修理、メンテナンスができたことを正しく確認をする」という観点で見直してみる価値はありそうだ。


このコラムは、2018年11月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第745号に掲載した記事に加筆しました。

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目前に新幹線、恐怖の風圧体験研修 労組「見せしめだ」

目前に新幹線、恐怖の風圧体験研修 労組「見せしめだ」

 JR西日本が新幹線のトンネル内に社員を座らせて、最高時速300キロの車両の通過を間近で体感させる研修をしている。ボルトの締め付けの重要性など安全意識の徹底が目的だという。一部の労働組合は危険だとして、研修の中止を求めている。

 JR西によると、研修は2016年2月から小倉―博多間や広島―新岩国間のトンネル内で月1回ほど実施している。上りと下りの線路の間にある深さと幅がそれぞれ約1メートルの通路内に車両検査担当の社員が並んでうずくまり、間近を通過する新幹線の風圧やスピードを体感する。ヘルメットと防護眼鏡を着け、通常業務で通路に立ち入る保線の担当社員が付き添って安全に配慮しているという。

 この研修は15年8月に福岡県内のトンネルで新幹線からアルミ製のカバーが落下し、衝撃で乗客1人が負傷した事故を受けて始まった。カバーを固定するボルトの締め付けが不十分だったことなどが原因とみられている。

(以下略)
全文

(朝日新聞電子版より)

 「風圧体感研修」実施の発端となったトンネル内でのアルミ製カバー脱落事故に関してこのメルマガで以前取り上げた。

「新幹線緊急停車、1人けが 時速285キロ、部品落ち停電」

労働組合の意見はもっともらしく聞こえる。
しかし保線担当の組合員は毎日線路内を点検して歩いているはずだ。こちらの作業は危険だとは考えないのだろうか?

実は40年ほど前、北陸トンネル13.87kmを歩いたことがある。トンネル内には一定間隔で大人二人程が入れる退避場所が設けられている。トンネル壁に窪みをつけた様な場所で列車をやり過ごす。至近距離を特急列車が通り過ぎる時は思わず息を止めてしまう。万が一怪我でもしようものなら、業者として線路内への立ち入り禁止を食らう。相当緊張する。

車両検査部門の職員に作業に対する緊張感を持たせるためには効果的だろう。
しかしJR労働組合とは別の理由により、この様な研修が本当に有効かどうか疑問に思う。

アルミカバー脱落の原因を車両検査作業員の安全意識の欠落だとすれば、研修体験で作業に対する緊張感を持つことができるかも知れない。しかしこの研修で作業不良がなくなるとは思えない。
体験研修だけで安全意識を継続的に高めておくことは難しいだろう。定期的に研修を繰り返せば、慣れてしまい効果はなくなる。

本当の対策は、安全意識とか緊張感など属人的な要素に頼らずとも効果がある方法にしなければならない。ボルトの閉め付け不足を防止する作業方法なり、ポカ避け治工具などによって対策をする事が必要だ。


このコラムは、2018年10月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第735号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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