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トヨタの強み

 トヨタ生産方式(TPS)は中国では『精益生産系統』と呼ばれ、有難がれている。トヨタ系の自動車工場(中国企業)を指導したことがある。トヨタの指導が入っているのだろう、現場のレイアウトや物の流し方は他の中国企業と比較すると優れているように思う。しかし見かけだけであり、これがTPSであるとは言い難い。TPSの外形を真似ただけであり、TPSのココロが宿っていないと言えばいいだろうか。

ではTPSのココロとは何か。
「問題を顕在化し解決を繰り返すうちに、問題がなくなってしまい不安になり、皆で一生懸命問題を探し始める」という組織の心理状態だ。

カンバン方式、リーン生産方式は表層の技術的な競争優位性であり、その気になれば簡単に真似ができる。しかしTPSの深層にあるココロがなければ、表層的な競争優位は維持できない。

本当の競争優位は、従業員全員の改善能力向上意欲、改善を渇望する組織文化だ。この組織文化がTPSのココロであり、競争力の深層を支える組織力だ。

多くの中国企業が『人本主義』という言葉を使ってる。資本ではなく人財が企業にとって重要な資産である、と言いたいのだろう。

本当の人本主義はこんな会社だと思う。
「リストラなしの年輪経営」塚越寛著
「末広がりのいい会社をつくる」塚越寛著


このコラムは、2020年6月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第998号に掲載した記事です。

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野鴨

 IBMには創業以来「Think」というスローガンがあるそうだ。人から指示されるのではなく自ら考えて行動せよ、という意味だ。
IBMからPC事業を買い取った聯想(レノボ)の社名は「Think」から来ていると思っていた。調べて見ると、IBMの創業者・トーマス・J・ワトソンはIBMの前身CTRを創業(1914年)以来「Think」をモットーとしていたそうだ。聯想創業時(1984年)に創業者柳伝志がIBM創業者の伝記を読んでいた可能性はある(笑)

IBMには創業以来のモットーがもう一つある。「ジーランドの野鴨」だ。
これは、デンマークの哲学者キュルケゴールが残した逸話である。
毎年やって来る渡り鳥に老人が餌を与えた。何年も継続するうち鴨たちは定住するようになってしまった。野鴨は家鴨(アヒル)のように太り、羽ばたく事もできなくなる。老人の死後、餌を与える者がいなくなり、飼い慣らされた鴨は絶滅してしまう。

野鴨を飼いならしてはいけない、というのが「ジーランドの野鴨」の意味だ。

金平糖のように尖った人が、尖った発想をする。そこから新しい製品や革新が発生する。金平糖の棘がなくなれば、丸い飴玉となる。飴玉同士の摩擦は減る。安定はするが革新は遠くなる。

調和を重視する日本の伝統的組織経営は「野鴨型」ではなく「家鴨型」ではなかろうか。家鴨型組織は改善には向いているが革新には向かない。革新と調和、野鴨と家鴨、それぞれ異なるものを止揚したところに目指すべき組織文化があるのだろうか。


このコラムは、2020年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1001号に掲載した記事です。

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日替わりヒーロー

 プロ野球は今週末日本シリーズが始まるらしい。中日ドラゴンズファンの私は、2019年シーズンも早々にペナントレースへの興味を失った。

今季は3季連続優勝の広島カープが散々の成績となり、読売ジャイアンツが5季ぶりのリーグ優勝となった。両チームの躍進と蹉跌の原因を考えてみたい。

両軍の監督の違いを考えると、
 原監督:10季中6季リーグ優勝
 緒方監督:5季中3季リーグ優勝
両軍互角だ。

やはり選手の戦力差のように思われる。
象徴的なのは、昨シーズンまで広島で主力選手として活躍した丸選手が巨人に移籍している。
ということは、今期限りで丸選手を手放す巨人は来季のリーグ優勝は危ういかもしれない。アンチジャイアンツの個人的たわごととお許しいただきたい。

本日のメルマガで言いたかったことは、ヒーローが固定化している組織は脆弱性を内包している、という仮説だ。ここまで長い前置きを置かずとも、普通に考えてもこの仮説は真実のように思える。

会社という組織も同じだろう。
経営トップのカリスマ性、有能な幹部のずば抜けた能力だけでは、限界がある。
毎日ヒーローが入れ替わるような組織の方が強いはずだ。
こういう組織は、常に2番手3番手が競い合っており相互成長がある。同様に部門間でも相互成長があるはずだ。

もちろん日替わりヒーローが互いに競争相手を潰し合うような競争関係であれば、組織力が上がるはずはない。


このコラムは、2019年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第888号に掲載した記事に加筆したものです。

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続・チームビルディング

 先週に引き続きチームビルディングについて考える。先週はチームメンバーの選定に関して愚考した。

「チームビルディング」

本日はチームの文化について考えたい。
「チーム文化」というとちょっと大げさだが、チームリーダのリーダシップのあり方、もしくはチームの統治スタイルといったほうが良いかもしれない。

古典的チーム文化は命令・服従型チーム。リーダが指示を出しメンバーが従う。古典的と書いたが、今でも主流のスタイルだろう。強いリーダシップでチームを引っ張ってゆくスタイルだ。

リーダがメンバーを説得し、メンバーが納得して行動するのが「説得・納得型チーム」

リーダが活動目的をメンバーに提示し、メンバーが共感して自主的に行動するのが「感動・共感型チーム」

  • 命令・服従型チーム:単純明快な統治スタイルだが、成果はリーダの個人的資質(能力、人柄など)に依存する。リーダの魅力がチームのパフォーマンスを決定する。最悪メンバーの方向性がバラバラになると成果は期待できない。
  • 説得・納得型チーム:リーダがメンバーに活動内容を説得しメンバーの協力を得るスタイル。チームに強権的な雰囲気は発生しないが、納得出来ない者があるとパフォーマンスは低下する。チームの成果はリーダの力量を超えない。
  • 感動・共感型チーム:リーダの活動に対する目的に共感したメンバーが自主的に活動する。リーダがメンバーに対して感動を与えることができれば共感が強化される。感動と共感を共有するチームはパフォーマンスが上がる。

命令・服従型のチームがパフォーマンスを発揮するのは限られた状況でのみだ。

例えば火事が発生している現場で消火活動の重要性を説得するリーダはいない。「消化器持って来い!」「火を消せ!」これでチームがきちんと機能するのは、リーダの力ではない。危機的状況によりチームの使命が共有されるからだ。

説得・納得で得た納得は「認識」のレベルだ。
「認識」が変わっても「行動」は変わらない。

感動・共感は直接「意識」の共有に働きかける。
「意識」が変われば「行動」も変わる。


このコラムは、2019年7月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第852号に掲載した記事です。

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警官が勤務改ざん

警官が勤務改ざん、不正受給の疑い「雑用ばかりで不満」

 勤務実績を改ざんし、超過勤務などの手当を不正受給したとして、警視庁は20日、同庁サイバー犯罪対策課の男性巡査部長(40)を電子計算機使用詐欺や公電磁的記録不正作出・同供用などの疑いで書類送検し、同日付で懲戒免職処分とした、と発表した。容疑を認め「雑用を自分ばかりが頼まれる不満を発散させるためだった」と説明しているという。
 人事1課によると、巡査部長は、課員の勤務実績のシステム入力担当だった2018年5月~今年6月、自身の超過勤務などを406時間分水増しして入力し、125万7513円の手当を不正に受給した疑いがある。同庁は監督責任で、男性警視ら当時の上司4人についても訓戒や所属長注意とした。

(朝日新聞ディジタル 2019年12月20日)

 40歳で巡査部長ということはノンキャリアの警察官だろう。工場の職位でいえば、現場作業員の班長、組長クラスだと思う。この問題を不正を働いた警察官の問題ではなく、警察官に不正を働かせてしまった組織の問題として考えみよう。

「雑用を自分ばかりが頼まれる不満を発散させるため」不正を働いたと被疑者は供述している。警視庁サイバー犯罪対策課にどんな雑用があるのかは分からないが、例えば、上司や同僚のためにお茶汲みなどの仕事をさせられていたとすれば、同情の余地はあるかもしれない。

課員の業務実績のシステム入力を「雑用」と感じていたのだとすると、明らかに仕事を割り振った上司の責任だ。きちんとその仕事の重要性を説明する必要がある。実際に課員の収入に関わる重要業務のはずだ。
業務実績のシステム入力作業内容が、課員ごとのタイムカードからキーボードを使って入力するような仕事であれば「雑用」と感じるのも無理はないだろう。改善する必要がある。

そのような「雑用」を改善するために改善提案を出したが、提案賞の500円をもらっただけで、何の変化もフィードバックもなければより不満をつのらせる結果になる。
工場の班長・組長が被疑者と同様の気持ちになり不正を働く、作業員へ負の影響を与える、離職する、などは容易に想像がつく。

その結果の影響は、班長・組長個人より組織側の方が深刻だ。

まずは、公平公正に互いに助け合う組織文化を持たねばダメだろう。上位職の指示命令が絶対で、下からの提案がないような組織文化では「不正」「欺瞞」が唯一の不満解決手段になりうる。

そして「雑用」や「つまらない仕事」などないこと、それらの仕事の意義を理解してもらう。「雑用」「つまらない仕事」と感じるのであれば、それを改善する。
「改善提案」と「不満」は表裏の関係であることもある。改善提案制度は報奨金を与えるのが目的ではない。職場の問題に気付き、それを改善することが目的のはずだ。

提案が採用される・されないの判断をきちんとフィードバックしなければ、だれも提案しなくなるか、最悪不満か拡大することもありうる。


このコラムは、2019年12月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第919号に掲載した記事です。

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スノーブラインドネス

 改革・変革行動を起こすためにはエネルギーが必要だ。それは

現状に対する認識。
現状維持に対する危機意識。
そして行動するための能力・意欲。

になる。

これらが欠落していると「茹でガエル」状態となる。
ぬるま湯に浸かっていると、少しずつ温度が上がっていることが認識できず、このままでは茹で上がってしまうという危機感が持てない、最終的には、熱湯から飛び出す行動能力まで奪われる。

ジェームズ・オトゥールの変革を拒む33の臆見の中に「スノーブラインドネス」がある。スノーブラインドネスとは「雪目」と訳したらいいだろうか?

ジェームズ・オトゥールの変革を阻む33の臆見は以下の書籍を参照。
「組織変革のビジョン」金井壽宏著

晴天のゲレンデでゴーグルやサングラスで目を保護していないと、紫外線でやられてしまう。若い頃に何度か経験がある。涙が止まらず目を開けていられないほど痛い。ここまで酷い状態となると、目が開けられないので現状認識はできない。これほど酷い状態でなくとも、白一色の世界でわずかな変化を認識することは難しいだろう。

白一色の世界に赤色があれば一目でわかる。しかしビジネスの世界でそのような変化は、同業他社にも一目瞭然となり競争優位を導く要因とはならない。
実はこのように考えることそのものが「集団浅慮」を招くことになる。

集団浅慮とは、自分たちの能力を過信する、外部状況を過小評価する、集団内の画一性や同調圧力により、誤った判断を下してしまうことだ。

今自分たちはスノーブラインドになっていないか、自問することが必要だ。


このコラムは、2020年1月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第933号に掲載した記事です。

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職位が人を育てる

 よく職位が人を育てるという言い方をすることがある.まだ能力不足と思いながらも一つ上の職位につけると,本人のモチベーションも上がるが,それ以上にその職位に見合った自覚が生まれる.このモチベーションと自覚が成長の助けをしているはずだ.

以前お手伝いしていた工場に若い班長さんがいた.彼は人柄はよさそうだが,あまりぱっとしない人物だった.ミーティングに出席しても何も発言しない.
ある時などは筆記用具を持たずに会議に参加して日本人上司にこっぴどく叱られていた.そして何よりも話をするときの声の小ささが,リーダとして致命的な欠点だと思っていた.

しかしここの経営者はその彼を課長に抜擢した.
他になり手がいなくて苦汁の選択だったのかも知れないが,私には能力不足に思えた.作業員を集めたミーティングでも,声が小さくて何を言っているのかわからない.かなり心配をした.

しかし1ヵ月後に訪問したときにはすっかり変わっていた.
朝礼をしているのを横で聞いたが,しっかりと声が出るようになっていた.

職位を与えられたことにより自覚が出たのと,毎朝の朝礼で訓練されたのだろう.「職位が人を育てる」「仕事が人を育てる」の好例だ.

これを人材育成の仕掛けにしてしまってはどうだろうか.
職位を同じままにして一クラス上の職位の仕事を一定期間代行させる.この期間に能力やモチベーションのアップが見られれば本当に昇進させる.今までと変わらなければ,昇進は取り止めで次の人にチャンスを回す.

昇進をさせていないので「職位が人を育てる」という効果が少し薄いが,うまく能力が発揮できなかったときの「降格」によるマイナス効果を考慮してみた.

組織の中で「降格」がマイナスに受け取られない,敗者復活の道がきちんと用意されている,という組織文化があれば職位も上げてしまった方が効果が高いだろう.
定期的にこのような「役割の変更」が行われていれば,「昇進」も「降格」も単なる役割の変更という組織文化も生まれてくると思うがいかがだろうか.

「昇進」をすると自分が偉くなったと勘違いする人間が多くいる.昇進はただ単にそういう職務を与えられたというだけだ.


このコラムは、2009年11月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第127号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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記録する文化

 中国の工場で指導をしていてしばしば感じるのは,一部の人間に指導した内容がなかなか全体に伝わらないということだ.これでは指導が,個人の知恵になるだけで,組織の知恵にはならない.

個人の知恵(暗黙智)を組織の形式智とし,それを個人に対して形式智として再教育できるようにしておく.こういう循環を作っておくことが,成長する組織の暗黙智だ.

そのためには,指導した内容を記録として残しす.
例えば先週の「作業に計画性を与える」に書いたような指導をいちいち記録し蓄積しておく.

倉庫で指導した内容を,オフィスに帰って記録する.これは忙しい指導者にとってなかなか出来ることではない.これを自動化する仕組みを作れば良いのだ.

職員全員に,受けた指導を記録させる.その記録を公開,蓄積してゆけば,指導を受けた者が記録をしてゆくことになる.

これをうまく機能させるためには,従業員に対し記録の意義をしっかり理解させる必要がある.
「組織の成長のため」という管理者目線で意義を理解させようと思っても難しい.なぜなら従業員には自分のメリットが感じられないからだ.

従業員目線で教えなければならない.記録するのは自己成長のため.
教えられたこと(インプット)は実践する,人に教えること(アウトプット)によって初めて,知識は能力に変換される.こういうことを,事前にしっかり理解させておく.

そして記録をたくさん残した者が,評価されるようにしておく.言ってみれば,たくさん叱られた者が成長度合いが大きいという共通認識を作る.

こういう記録する文化を作り上げれば,組織の成長速度は加速する.

「原田指導語録」はこうした記録する文化から生まれたものだ.原田氏の秘書が,現場での指導を記録し,まとめたものが「原田指導語録」だ.この記録を読むと,原田氏の指導方法だけではなく,経営哲学を理解できる.
原田氏が世を去られた後も,次の世代がその考えを継承することが出来る.


このコラムは、2010年3月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第146号に掲載した記事に加筆しました。

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細部にこだわる

 あなたは,QC七つ道具の一つ,パレート図をExcelを使って正しく描くことが出来るだろうか?

パレート図を普通にExcelでグラフにすると,累積比率を表す折れ線グラフが,左端の棒グラフの上辺真ん中からスタートする.

正しいパレート図では,累積比率を示す折れ線グラフは,原点から出発し,左端の棒グラフ右肩を通らねばならない.

実はこれをどう実現するか,ずっと悩んでいた.
Excelで描いたパレート図が,少しくらいおかしくても役には立つ.ただ累積比率の折れ線グラフが,少しずれているだけだ.しかしパレート図を描くたびにすっきりしない気分を持っていた.

細部にこだわることに,どれほどの意味があるのか議論はあろうが,私は細部にこだわり続けた.そして昨年ついに,Excelで正しいパレート図を描く方法を考えついた.

こだわりを持っていなければ,この方法は見つけられなかったろう.

モノ造りも同じだ.
梱包は,お客様の工場に入れば捨てられてしまう.しかしここにも,きちんとこだわりを持つ.例えば,段ボール箱を封止している透明テープの長さが,皆揃っている.製品が入れてあるポリ袋が,直角並行にきちんとたたまれている.こういうこだわりを持ちたい.

品質は細部に宿る.
一見製品の品質とは関係ないようだが,こういうところにこだわりが持てる工場は製品の品質も良いはずだ.

これは品質だけではない.コストにも影響を与える.
前述の透明テープの長さが揃っていれば,余分な材料を使っていないということだ.

また,細部にこだわる文化があれば,従業員の態度も変わる.
あるベンダーから納入された部品の梱包箱に,足跡が付いていたことがある.足跡が製品を梱包した後に付いたのか,梱包箱を組み立てる前に付いたのか不明だが,細部にこだわる心があれば,梱包箱に足跡が付いていることはありえない.


このコラムは、2010年8月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第164号に掲載した記事に加筆しました。

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組織の使命・任務

 先週のメルマガで,「組織の壁」に関して書いた.
組織の壁がない企業文化は,一夜にして完成しない.まずは組織の壁を低くする仕組みを持つ.その仕組みの一つが,各組織,各個人の職務分掌をオーバーラップさせておくという趣旨だった.

しかし職務分掌が拡大することになり,従業員の不満又は給与アップの要求が出ないかという心配もあろう.私は,職務分掌を決める前に,組織の使命・任務を職員自身で決めてもらうという方法を取っている.
今まで何例か試してみたが,全ての例で従業員のモチベーションは上がった.

「職場の使命・任務をお前たちで考えろ」と丸投げしても,結果は出ない.今まで与えられた職務分掌で仕事をしてきた人に,いきなり180度異なる成果を求めても,どうすればよいか戸惑うだけだ.

まずは経営者が,会社の使命・任務を明確にする.
経営理念に基づいて,従業員・顧客・仕入先などパートナー・社会・株主など会社の利害関係者に対して,会社はどういう使命を持ち,どういう任務を果たしているのかを明確にするのだ.

その会社の使命・任務を決めた過程を従業員に明確に示す.
その上で,組織単位ごとにリーダ,志願者でチームを作り,各組織の使命・任務を決定する.これも○○日までに提出するように,と指示をするのではなく1,2日経営者,経営幹部も一緒に缶詰になって決める.

これをやって従業員のモチベーションが下がった事例は,今のところ一例もない.
与えられた職務分掌に従って仕事をするより,自ら自分の仕事のあり方から考えた方が,モチベーションが上がる.
これでモチベーションが下がってしまう幹部職員は,本当に会社にとって価値のある人材かどうか再考した方がよいだろう.


このコラムは、2010年7月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第161号に掲載した記事に加筆しました。

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