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生産委託先指導

 住友ゴム工業は30日、加古川工場(兵庫県加古川市)で生産する防舷材と、南アフリカ子会社で生産するタイヤにおいて、品質管理の不正があったと発表した。タイヤでは顧客仕様と異なる製品を最大40万本出荷していた。防舷材では定められたガイドラインとは異なる試験方法の実施やデータ変更を500物件(5389基)で行っていた。発覚後に社内で検証し、安全性には問題はないという。

 品質管理のばらつきや管理体制が孤立していたことで不正が発生したとしている。南ア子会社で1月に品質調査を実施したところ、不正が発覚。対象は2017年8月~21年5月までに出荷していたタイヤで、寸法や重量、剛性などの均一性、一部製品のビード部形状が顧客と取り決めた仕様と異なった状態で出荷していた。

 南ア子会社は、13年にアポロタイヤ南アフリカを買収して子会社化したため、品質管理をアポロ社のシステムのまま継続していた。今回対象の製品は南アフリカ製の新車向けへの供給分で、車両8万台分に相当する。

 防舷材は、港湾岸壁用ゴム防舷材で不正が発覚した。船舶接岸時に発生する防舷材の圧縮状態を再現して圧縮性能を確認する試験で、国際航路協会の定めたガイドラインとは異なる試験方法の実施やデータの変更を行っていた。同製品はハイブリッド事業本部が手がけており、同事業本部以外から品質チェックできる体制がなく、今回の不適切事案につながったとしている。

(YAHOOニュースより)

 なんともお粗末な事件だ。
南アフリカの子会社を買収する際に、社内の管理体制や品質保証システムを監査しなかったのだろうか?さらに買収後も現地のマネジメントのまま放置、ということのようだ。

買収した工場とは言え、自社工場と同等の品質管理システムを運用し、同等の品質水準を持たねばならない。加古川の自社工場ですら適切に管理できないのでは無理もないかもしれない。

前職時、電源装置の品質保証を担当していた時、生産コスト的に国内生産が維持できなくなり、マレーシア、中国、メキシコ、インドネシアに生産委託をしていた。インドネシア工場は自社の孫工場だったので、我々の生産技術・品賞メンバーが立ち上げからサポートした。

その他のマレーシア、中国(4社)、メキシコは事前に生産委託先の採用監査を行い。生産立ち上げの支援・初ロットの生産確認をし出荷可否を判定する。生産開始後も工程内品質の日報・週報の報告を受けるほか、年間計画を立てて委託先工場の指導訪問をしていた。

採用監査では、特殊工程に従事する従業員の教育・技能認定制度をはじめ、品質管理・保証の仕組み、実施状況、生産現場の管理状況まで監査して、生産委託先の採用可否を判断していた。
もちろん監査で見抜けず後で苦労したことはあったが、本日の事例のような事は採用監査時に採用可否判断できることだ。監査時に品質管理システムに不足があれば、生産開始前に補わなければならない。

たかだか単価3US$の電源ユニットでも、愚直に同様の品質保証体制を構築した。
当然コストもかかる。しかしこういう泥臭い努力を重ねた結果、中国の生産委託先工場で、新機種生産開始3ヶ月以内で直行率99.99%以上を達成することができた。上述の3US$の電源ユニットだ。かかった間接コストは、不良損失コストの削減でカバーできたはずだ。


このコラムは、2021年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1174号に掲載した記事に加筆しました。

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新規・珍奇技術

 以前ご紹介したプラスチック製インペラの燃料ポンプのリコールが拡大している。

「デンソーの燃料ポンプ」

通常はプラスチック材料をグリースなどの油脂が付着する環境では使用しない。ガソリンもプラスチック材料を侵し、膨潤、破断などの不具合を発生させる。
今回の回収の燃料ポンプはインペラに耐油脂製プラスチック材料の強化・ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用している。ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有しガソリンが付着しても問題はないはずだ。だが、成形時の温度が低いと、樹脂密度が低くなりガソリンにより膨潤する。

市場不良発生により、初めてこの現象に気がついたというのではお粗末だ。当然新規材料なので分からなかったということはありうるだろう。

燃料ポンプに使用することを決定した時点で、使用環境で変形などの変化が発生しないことを確認すべきだ。なぜなら燃料ポンプのインペラに関して過去から、燃料ポンプの寸法制度、ゴミの巻き込みなどで回収騒ぎを起こして
いる。このことに着目すれば、「プラスチック・インペラの寸法精度」というキーワードが出てくるはずだ。もちろん加工精度には問題は無かろう。
しかし使用中の変動も考えるのが設計者の役割だ。

新規・珍奇技術を採用する時は十分な検討が必要だ。
新規技術を採用すれば、同業者の一歩前に出られる。この誘惑に勝つのは困難だろう。
珍奇技術を採用してしまうと業界標準とはならず、供給性や価格で不利になる。

しかしナーバスになるだけでは、競争力のある製品は作れない。事前に想定できる事態を列挙し、事前に対策することで問題を回避したい。

8年前の若者は今?

 先週の編集後記に、昔一緒に仕事をした中国人が8年ぶりに電話をくれたと書いた。早速読者様からメールをいただいた。

※G様のメッセージ
 編集後記の話をもう少し聞きたかった。
 8年ぶりの彼がどう変わっていたのでしょうか。
 それとも変わっていなかったのでしょうか。

お言葉に甘えて、昔話をば。
彼は、生産委託先の工場で品質保証部のQCエンジニアとして働いてた。少し英語が話たので、我々日本の顧客が出張に来ると、サポートしてくれていた。

利発そうな面構えをしていたので、現場でいろいろ教えてみたら飲み込みが早い。そんなことがあり、出張のたびに何かと目をかけていた。

製品立ち上げの時に、本社から来た変更指示のFAXを彼に渡し、コピーを取って生産技術のリーダに渡すよう指示をした。
しかし彼は、指示を理解できなかったようで、コピーを取らずにFAX原紙を生産技術に渡してしまった。

変更指示として文件中心に渡し正式に配付してもらうため、FAXを持って来るように言うと、一言「無い」という。
無いはずがないだろう、渡したじゃないかと何度も確認して、コピーを取らずに原紙を渡してしまったことが漸く判明。じゃすぐ生産技に行って取り返して来いと言っても、何やらゴチャゴチャ言って腰を上げようとしない。

そこまでのやり取りで既にうんざりしていた私は、大きな声ですぐ取りに行って来いと叱ってしまった。
驚いたことに、彼は泣き出してしまった。
父親にも大きな声を出されたことが無かったそうだ。

そのころはまだ一人っ子世代(80后)が、とやかく言われる前だ。彼は70年代生まれのはずだが、兄弟はいなかった。きっと大事に育てられたのだろう。

その後フォックスコンに転職して行った。
2、3年間連絡もなくなったが、8年前突然電話がかかってきた。日本に出張に来ていると言う。会って見ると、日本の顧客に納品している製品の品質が悪く、不良品の選別に来ているところだった。

その日は自宅に招いて、夕食を食べさせた。
ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「なぜ前の会社を辞めたの?」
「あの会社には夢想が無かった」
私は、彼のこの言葉を聞くまでは中国の若者は給与が少しでも良いところがあれば、すぐに転職して行くと思い込んでいた。
仕事を通して自らの夢を実現したい。自分のキャリアアップのために転職をする。そういう中国人がいることに気付かせてくれた。

そしてそういう目で周りを見てみると、実は殆どの若者がそういう思いで仕事に取り組んでいるのだと気が付いた。

別に特別かわいがったわけでもない。一緒に仕事をしたのは1年足らずだ。それでも私を覚えていて電話をくれた。嬉しくないはずは無い。

まだG様の質問に答えていないが、実は電話で話をしただけで、まだ会っていない。8年でどう変わっているかは、まだしばらくお預けだ。
いずれにせよ、彼のおかげで私の中国人の若者に対する見方・接し方が変わったのは事実だ。


このコラムは、2010年11月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第177号に掲載した記事に加筆しました。

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データは現場・現物で理解する

 先日ある工場経営者から、部門ごとの生産効率のデータを見せられ「ウチの工場の問題点はどこにあり、どう改善したらよいか」と質問された。

エクセルに整理されたデータは、4つの生産部門ごとに毎日の生産数量、累計標準時間、投入工数が記録されている。生産効率は累計標準時間/投入工数で計算してある。

このデータを見せていただいて、データの取り方に問題があるのは分かるが、どこに問題があるかはこのデータからでは分からない

まず生産効率が100%を超えてる日がたくさんある。この工場が生産効率といっているのは「可動率」と同じ考え方であり、100%を超えるはずはない。
組立部門は毎日の生産効率が、20%から200%の間で変動している。ありえない。

また投入工数がゼロなのに生産出来高に数字が入っている日がある。

このようなデータを見ただけで、生産効率を阻害している問題点がどこにあり、どう改善すべきか分かれば天才を通り越して「神」である。

現場を熟知していれば、
部材欠品(たとえば梱包材料欠品)があり前日までの完成品は生産工程にうずたかく積み上げられている。梱包材料が手に入ると作業員全員で梱包だけして、ありえない数量の生産が1日だけで完了してしまう。
という現場の状況が推測でき、可動率が100%を超えるという信じられないデータが事実であるが、役に立つ真実ではないことが分かる。

部門全体のデータをまとてみていると、現場の各ラインで起こったことは見えてこない。インプットとアウトプットだけ見て現場を理解しようとすることに無理がある。

まずは層別をして改善に役立つデータに加工すべきである。
せめて生産ライン単位、生産機種単位に層別しなければデータは何も語りかけてこない。

層別したデータで、どこから改善するか当たりをつける。
現場で生産性を阻害する要因を洗い出して改善する。
という手順が必要だ。


このコラムは、2009年9月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第116号に掲載した記事に加筆しました。

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続々・道具に神が宿る

 99号の「道具に神が宿る」に対するS様のメッセージから引き続き話題を広げたいと思う。
99号:道具に神が宿る
100号:続・道具に神が宿る

私は日本人の勤勉さの根底に「道具に神が宿る」という精神性があると、考えている。道具に感謝する、道具を大事にする気持ちが日本人の勤勉さの基本であり、工業立国を支えた精神性だと考えている。

中国の生産現場を見ると残念ながらそういう気質は感じられない。
ペンチをハンマー代わりにする。エアードライバーをリュータの代わりにしてネジ穴周りの塗装を剥がす。こんなことを平気でやる。

仕上がりだけを見ても道具に対する愛情・尊敬の念が感じられない。
私の住んでいるアパートの扉についている蝶番を止めるネジは2/3がネジ頭のプラス溝が潰れてしまっている。

同じようにNC加工機を使っても、日本のように機械に名前をつけて可愛がるという発想は世界的に見てもまれなのではないだろうか?愛情を持った扱いが、徹底的なメインテナンスや加工機を自らの工夫で進化させようという意欲につながると考えている。

欧米では「一神教」をベースとした宗教観により機械を擬人化する事が宗教的忌避となる。
中国にも道具に対する愛着は長い歴史の中にあったはずだと思う。
しかし現代中国は職人の腕を育てるよりは新しい加工機を買うと言う即効性重視に陥っている。

私はNC加工機などの設備も「道具」と位置づけている。
定義の違いを考えると、実はS様の考えと私の考えには共通性があるのではないだろうか。

☆S様のメッセージ

ちなみに、上記のマシニング加工機などマザーマシンと呼ばれる加工機も日本は物真似から始めました。弊社の自動旋盤も、今は日本製が世界の主流ですが、50年前はスイスのトルノス社のコピーでした。
 自動車も然り。その他の家電製品類も舶来と呼んで輸入品が最高だといわれた時代もありました。でも工作機械でも自動車産業でも、コピーから創めた産業が、世界一と呼ばれるまでになった。
 そこにあるものは、職人気質ではなく、「先生に追いつきたい!」との日本人の勤勉性だったと思います。

その日本人の特性が裏目に出た産業が時計産業ではないでしょうか?
生産数量は世界一!機能だって、時を刻むという性能だって世界一です。SEIKO、CITIZEN、CASIO…これらのメーカーに勝る海外企業はありません。
でも、クォーツでもなく、時を刻む精度もそれほどでもないスイス製のほうが、今でも相変わらず高級品です。

 安くて良いものを大量に生産する。そんな「効率的モノづくり」を成熟させすぎた結果でしょうか…
今の時代は半導体産業と民生商品では携帯電話が、そんな道を歩んでいるように小生には見えます。

  • 安くするために、大量生産を続ける
  • 不良品を防ぐために、標準化された生産ライン=誰でも同じ品質=職人の排除
  • ハードウエアではなくソフトウエアで機能を構成する。=簡単なモノ造り

そんな構成の産業は、いずれ中国に持って行かれるでしょう。そうなった時に、時計産業のように高付加価値のモノづくりをどのように見出すか?

日本企業の命題は非常に大きいと思います。

(林のコメント)「効率的モノ造り」の功罪

セイコーは世界で初のクウォーツ腕時計を商品化している。
これも物真似と揶揄されるかもしれないが、他の発明品を1/1000の大きさにするのも一つの発明だ。

ところがS様がおっしゃるとおり、廉価品を大量生産したところに今日本が弱体化してしまった遠因がある。もちろん当時はモノが行き渡ってなく、廉価なモノを大量に要求している市場があったので、当時の考え方が間違っていたとは思わない。

生産の効率と品質を上げどんどんコストダウンをしてモノ造りをした。
その結果モノと一緒に「貧乏」も量産してしまった。

今はマーケットのあり方が変わってしまった。
規格大量生産品は作れば作るほど「貧乏」になる。
顧客が欲しがるモノを少しだけ造る時代だ。
スイスの高級時計路線はこれを頑なに守っているのではないだろうか。

コストダウンばかり考えるのではなく、顧客が価値を感じるところには思い切ってコストをかけてゆく,という発想の転換が必要だと考えている。


このコラムは、2009年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第101号に掲載した記事に加筆しました。

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歩留まり率と直行率

85号のコラム「歩留まり率と直行率」について読者様からご投稿をいただいた。

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歩留まり率と直行率については、林様の考え方は、まさに正論です。そして「ものづくり」は正論を目指さなくてはなりません。(あたりまえのことを愚鈍なまでに実行する)しかし現実は必ずしも正論一筋では立ち行かないこともあると思います。

中国のサプライヤーの中には技術レベルが低く、はじめから直行率の向上を目標にすると頓挫してしまうところが多々あります。具体的には以前メルマガでも紹介いたしましたように、アナ(メス)は公差の下限(小さいほう)を狙い、オスは公差の上限を狙うと言う公差を外しても手直しの効く作り方です。

なぜこのような発想になるかと言うと、材料費に比較して人件費が安いと言うことが根本にあります。そのことは、歩留まり率が悪いと損益が悪化し、経営的にその仕事を請ける価値がなくなってしまうこと。また林様のメルマガに記述されていますように、納期に発注数量の出荷を確保させる必要性というものがあります。

このようなケースの場合は、第一段階では歩留まり率向上(直行率を下げても)を目標にしなくてはなりません。そしてあるレベルに達したら、目標を直行率向上に切替えなくてはなりません。しかし、この切替えのタイミングと経営層の意識の切り替えが難しいです。つまり経営的に一定の利益をあげてしまっていると、更に上への向上心が欠如してしまっているうえ、過渡期は一時的に歩留まり率の低下もあります。この辺で苦労されている技術者は、以外に多いのではないでしょうか。僕も苦労した経験があります。
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Zhen様ありがとうございます。
(Zhen様のメルマガはこちらhttps://www.mag2.com/m/0000241825)

私は電子部品・製品生産の経験が多いので、Zhen様のように機械加工部品を主に取り扱っておられる方と単純には比較はできない。例えば再生不可能な原料を投入して製品を生産するような場合は、歩留まり率で管理しても直行率で管理しても殆ど同じ結果になるだろう。

私たちには最初から歩留まり率という発想はなかった。
修理・手直しをするのだが歩留まり率で管理していると、不良の発生は無視されてしまう。

各検査ステーションでの不良率を掛け合わせたモノを総合不良率として考えていた。各ステーションで不良と判定された製品はすぐに修理してラインに再投入されるので、この総合不良率を直行率に変換しても正しい直行率にはならない。これを補正するために不良率の分母・総検査台数は、前工程で不良になった台数を差し引いて計算していた。

確かに人件費が安いので、修理にかかる工数はたいしたことはない。しかしここ数年毎年最低賃金が十数%上がり続けている。例えば15%毎年上がったとしても3年で1.5倍、5年で2倍の給与となる。
そろそろ人海戦術に頼った生産は限界だと考えている。


このコラムは、2009年3月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第86号に掲載した記事です。

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全日空系機長、客室乗務員らを操縦席に 操縦桿触らせる

 全日空グループのエアーセントラルの機長(51)が飛行中2度にわたり、客室乗務員ら計3人の女性を操縦席に座らせていたとして、国土交通省は4日、口頭で再発防止を指導した。うち2人は操縦桿(かん)も触っていたという。
同社は記者会見し「信じられない事態で遺憾」と謝罪した。

(asahi.comより)

 勉強のために運行支援者、客室乗務員を副機長席、機長席に座らせたという。
この機長さんは教官の資格を持っており、普段から教育熱心であったのだろう。
しかし乗員・乗客の生命安全、会社の資産安全に責任を持つ機長が規則に違反してまで行う行為ではない。

これをあなたの工場に当てはめて考えてみよう。OJT(現場教育)の名の下に未熟な作業者を工程に投入していないだろうか?
ライン外で十分に教育・訓練しても実ラインでのOJTは必ず必要である。
ライン外と違い実ラインでは、タクトタイムのプレッシャーの中で部材の欠品、不良の発生などなどさまざまな事が発生する。これらの実経験を経て一人前の作業者になる。

しかしお客様(または次工程)に対する品質責任はきちんと保証しなければならない。上記のニュースのような品質の危機が発生しないように手を打つ必要がある。

OJT期間中の作業者の作業品質をどう保証するか一度見直されてはどうだろうか。
事前のライン外教育・訓練の効果確認方法。ベテラン作業員とOJT作業員を組み合わせて作業品質を保証する。などいくつも考えるべきテーマがある。


このコラムは、2008年4月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第28号に掲載した記事に加筆しました。

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サービス業の業務標準化

 中国では、稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶ者が多い様だ。書店に行くと、稲盛氏の著書が平積みされている。中国の盛和塾活動も盛んであり、勉強会や、セミナーの案内が良く来る。

去年成都で、稲盛氏をお呼びして大々的な盛和塾塾生の大会があった。
この様子はテレビ東京の「未来世紀ジパング」で紹介されたので、ご存知の方も多かろう。会場に到着した稲盛氏はまるでアイドルスターのようだった(笑)

その番組では、稲盛経営哲学を実践する中国人経営者として、不動産業経営者と深センで美容院経営者の二人が紹介されていた。

以前東莞にある京セラ中国工場に勤める若い中国人から、社内文化につい話を聞いて感服したことがある。

番組で紹介された2人の中国人経営者は直接稲盛氏とつながりがなく、しかも製造業ではない組織で、稲盛経営哲学がどのように企業文化に取り入れられているのかものすごく興味を持った。

そこで番組で紹介された、経営者の名前と深センの美容院の名前を手がかりに、連絡先を突き止め、訪問のアポをいただき先週末に会って来た。

2時間の予定で、社長室に経営幹部二人が同席していただき、色々話を伺った。
時間が足りなくなり、そのまま社長室で昼食をしながら話を聞き、午後はテレビ東京が取材に来たと言う店舗に案内してもらい、現場も拝見した。

美容院と言うと、我々日本人は「髪結い」を想像するが、いわゆるSPAと言うエステサロンの様なモノだ。(SPAもエステも行った事がないので正しいかどうかは分からないが)

彼らのビジネスでもっとも重要な資源は、人でありその能力をどう高めるかが課題と理解している様だ。本社には、研修用の学校も併設してある。その他にも施術能力を高めるための制度を設けている。

その施術の流れも、技術も標準化してあるが、そのレベルをもっと高めたい、と言うのが経営者・経営幹部が考えている課題だ。
製造業は、工程フローや作業手順の標準化や教育訓練方式に関して長い経験と実績を持っている。
しかし私が彼らに伝えたのは、標準化の方法ではなく、如何に標準を越えるかと言う話をした。

標準化の目的は、下側のレベルを合わせる事だ。つまり誰がやっても、最低限のレベルを保証するに過ぎない。
モノ造りの現場に居る作業者であれば、それで問題はない。一人ひとりが作業標準を守れば、QCDを保証出来る様にシステム化する事が可能だ。それにより、顧客満足を達成することができる。

ここで言う顧客満足は、「顧客要求を理解しそれに過不足なく答える」と言う意味だ。しかしサービス業が目指すゴールは「顧客満足」ではない。
サービス業が目指すべきゴールは「顧客感動」だ。
顧客感動によってお客様は「信者」になり儲かるのだ。「儲」の字を良く見ていただければ理解出来るだろう(笑)信者になればリーピート顧客になる。

従って彼らに必要なのは、標準化の上に作るべき「感動共有のしかけ」とでも呼ぶモノだ。つまり最低限のレベルは保証しなければならないが、その上で現場の従業員がお客様に感動を与える事を競い合う様な環境を作る事だ。

サービス業は、人の質が直接サービスの質を決定する。
私自身も製造業の質を上げるためにサービス業の仕組みを勉強した。
特にディズニーランドの手法は、アルバイト職員が90%であり年間離職率が50%に達する条件で素晴らしい業績を上げている。出稼ぎ労働者を採用し工場経営している経営者に大変参考になるはずだ。

「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」

そして、稲盛経営哲学を実践しようとしている中国人の若手経営者に製造業のノウハウを伝えることは異業種間の大きな交流の流れになるだろう。


このコラムは、2014年3月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第355号に掲載した記事に加筆しました。

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管理監督職のレベルアップ

 生産現場の管理監督者のレベルを上げたいと言うご相談を受けた。

【ご相談内容】
製造部門の管理監督者の品質意識が低い。工程内不良が一向に減らない。
彼らの答えの多くは「作業者が悪い」「言う事を聞かない」で自分自身の指導や改善が不促していると言う認識がない。
製造現場の管理監督者のレベルアップをしたいが、どこから手を付けてよいか分からない。

【私の答え】
まず、現場の監督者に「指導」「改善」が自分の仕事だと明確に知らせる必要がある。これが自分の仕事だと分かれば、「作業者が悪い」「言う事を聞かない」は自分の責任だと分かるはずだ。

今迄色々な生産現場を見て来た。そこで感じるのは、多くの中国人現場監督者が「改善」を自分の仕事と認識していないようだ。自分は作業者に指示をして、生産させるのが仕事。改善は上位職や生産技術の仕事、としっかり分けている様だ。
本来監督者の仕事は、作業者に作業が出来る様に教育指導をし、作業環境や方法を改善することだ。こういうことを自分のミッションだと考えていない人が多い様に感じる。

次に、監督職としての知識、技能を与えなければならない。

現場監督者の多くが、作業者の中から選ばれ昇格した者だ。
班長の腕章を渡しただけでは、班長にはならない。彼らにもきちんとした指導が必要だ。

作業員に対する教育が自分のミッションだと理解しても、どうすれば良いのか知らなければ、やりようがない。

以前指導していた工場で、「注意して作業します」とA4の紙いっぱいに何度も書いた物が掲示してあるのを見たことがある。何度注意してもミスが減らない作業者に班長が罰として書かせた物だと言う。どうしてミスが出るのか、そのミスをなくすにはどうすれば良いのか、そう言う事を教えられていないから、子供の頃先生から受けた罰を思い出してやったのだろう。漢字を間違える子供に何度も書かせるのには効果があるが、ミスをする作業員に効果があるとは思えない。

なぜミスが出るのか分析する方法、その原因を改善する方法を教えなければ出来るはずもないだろう。

この様な現場監督職としての知識・技術を教え、現場で実践させるOJTをする必要があるだろう。

品質改善のOJTとして、私は次の様な活動をしていた。
毎朝現場の監督職、生産技術、品証(場合によっては設計、購買、生産管理等)を集め、現場脇の会議卓で前日発生した工程内不良に付いて原因分析と対策の実施状況を確かめる会議を開いていた。
さすがに工程内で不良となった物を全てやる訳には行かないので、多発した不良とFQCで発見した不良について実施した。FQCで発生した不良は、不良流出も加わっているので1件でも取り上げる。

始めた当初は、話にならなかった(苦笑)こちらが一つ一つ分析し、対策を見せて教えた。しかし1,2ヶ月継続すると、自分たちでできる様になり、6ヶ月もすれば、私が参加しなくても会議が回る様になった。

こういう活動を通して、現場監督職が自己成長を実感すると、意欲が出て来て更に好転することになる。


このコラムは、2014年2月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第350号に掲載した記事に加筆しました。

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日本人部下への不満

 春節休暇で日本に戻って来ている。
先週は、新宿まで出かけ小学校時代の同級生と会った。

彼は定年後も嘱託で仕事をしている。部下はほとんど派遣社員であり、やる気が感じられない、すぐに辞めてしまうなどの悩みが有る様だ。突然休むことも有り、仕事のやりくりが間に合わない時もあるそうだ。

何処かで聞いた話だなぁと、話を聞きながら感じた(笑)
中国工場の経営者と同じ様な悩みだ。
翌朝彼との会話を思い出しながら、朝刊を見ていたらこんな書籍の広告が出ていた。

「あ、『やりがい』とかいらないんで、とりあえず残業代ください」

思わず吹き出した。(この書籍をお薦めしている訳ではないので宜しく・笑)
こういう書籍が出ていると言う事は、中国の方がやり易いと感じた。

中国では、離職率が月当たり10%になると言う工場も珍しくはない。仕事を教えても教えても、また新しい従業員を雇わねばならない。
それでも日本よりやり易いと感じるのは、中国の若者の方が自己成長意欲が高いからだ。自己成長意欲を仕事のやりがいに変容させるのは難しくはない。会社に対する帰属意識(愛社精神)などなくても、自己成長意欲を求心力とすることができる。

日本の若者に愛社精神を期待するのは時代錯誤だろう。しかもシャイな(笑)彼らは自己成長意欲を真っすぐ出したりしない。

幼なじみとの飲み会で、余り無粋な話もアレなので(笑)友人にはこんな本を薦めておいた。

「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」
「9割がバイトでも最高の成果を生み出す ディズニーのリーダー」


このコラムは、2014年2月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第347号に掲載した記事に加筆しました。

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