コラム」カテゴリーアーカイブ

顧客満足vs顧客感動

 以前CMでカスタマーデライトというキャッチコピーが使われていた。
顧客満足より顧客感動(カスタマーデライト)という意味を表現しようと考えたのだろう。しかしそのキャッチコピーは煙草の宣伝に使われていた(苦笑)

一昔前は「品質が良い」というのは「不良がない」という意味で使われた。
中国の商店では、購入前に不良でない事を確認してから買うのが常識だった。ランプひとつ買うときも、必ず店先で点灯検査をしてから買う。
しかし「不良がない」というのは「当たり前品質」だ。

当たり前品質が満たされても「満足」は感じない。ただ「不満」を回避するだけだ。顧客が買いたいと思うのは「魅力的品質」だ。持っている事で、周囲から羨ましがられる、自己満足できる。そんな製品が魅力的品質を持つ。

高品質の製品を作っても売れるとは限らない。魅力的品質の製品ならば顧客は競うように買うだろう。すでに我々の周りは、高品質製品は当たり前品質となっている。魅力的品質を製品に作り込まねば売れない。

我々は当たり前品質の製品を作る製造業から、魅力的品質を作り出す創造業に転換しなければならない。


このコラムは、2021年3月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1106号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

20世紀型モノ造り

 先週は久しぶりに「無料工場診断」で中国民営企業を訪問した。
昨年は大きなプロジェクトが2件入っており、無料工場診断に出かける時間が取れなかった。そんな訳で久しぶりの無料工場診断訪問となった。

この企業は、新興市場向けの電子製品を大量に生産している。
ベルトコンベアに大量の作業員を配置し生産する方式を「20世紀型モノ造り」と呼んでいる。名称は私の勝手な定義なので、一般的に通用するかどうかは分からないが、同一機種を大量に生産する方式と考えていただければ良い。

それに対して「21世紀型モノ造り」は、多品種少量生産に適応したモノ造りだ。
2001年から切り替わったと言う意味ではないが、顧客の要求が多様化した時代に適応するために進化して来た生産方式だ。日本では20世紀末から「21世紀型モノ造り」に替わって来ている。

この企業の経営陣は、次の問題を抱えていると認識している。

  • 離職率が高く作業者が定着しない。
  • 現場監督者の能力が足りない。

解決策として「現場監督者研修」を研修企業に依頼して来た。たまたまこの研修企業が我々のパートナーだったので、研修講師と一緒に我々も工場診断に立ち会う事になった。しかしこの企業の問題は監督者の研修だけでは解決困難だろう。監督者の研修で作業員の離職率を下げられるとは思えない。

現場診断により、以下の点を確認した。

  • 離職率は1年で現場作業者全員が入れ替わる高水準。
  • 月例の品質会議の資料を見ると、重大不良発生の原因が「作業不良」であり、その対策は「作業者の再指導」「該当作業者に罰金」となっている。

では21世紀型モノ造りを導入すれば問題が解決するかと言うと、多分無理だ。
高離職率のまま21世紀型モノ造りを導入すれば、更に混乱するだけだろう。
作業者は、採用条件の月給がそこそこ良いので応募して来る。しかし給与条件は毎日10時間労働の残業代が含まれている。新規採用者は1週間程働いてそれに気がつく。短期間で離職する者が多い。

この企業に問題解決の方策がないかと言うとそうではない。
多くの日系企業は、20世紀型モノ造りでも結果を出して来ている。離職率が高いので、作業工程を分割し短期間で作業習熟出来る様にする。20世紀型モノ造りはこのような活用が可能だ。

この企業には以下のアドバイスをした。

  • 生産効率を上げて残業時間を減らす。
     具体的には、50人1ラインの編成を30人1ラインとする。現在7ラインの稼働を10ラインとすれば、現状の生産量はほぼ確保出来る。
     その上で作業改善をして編成効率を上げれば生産効率が上がる。人数が少ない方が、編成効率を上げやすくなる。
    生産効率が上がれば、残業なしでも同じ給与を払えるだろう。
  • 直行率(現状96%)を上げる。
     電子製品の組み立てでは初回量産時に直行率95%程度は達成可能だ。この状況から、改善を継続し3ヶ月以内に直行率99%以上になる様に初期流動管理をする。改善のコツは高速で改善を回す事だ。不良品を放置し、まとめて不良解析・対策をするのではなく、不良発生時に即解析・対策を繰り返す。
  • 不良解析の能力を上げる。
     不良解析を「作業ミス」で終わりにしない。なぜ作業ミスが発生するのか原因を突き止めなければ有効な対策は打てない。
  • 新人作業員の作業訓練効率を上げる。
     TWI(企業内訓練)を活用すれば、作業訓練効率を上げるだけではなく、監督者と作業員の信頼関係が出来、離職率も下がるはずだ。

以上を3ヶ月程度繰り返せば、生産効率は1.6倍以上になると試算した。
ここからまとめ造りを止めるなど、全体のレイアウト変更を含む大掛かりな改善をして行けば21世紀型生産方式に近づいて行くはずだ。

今回の工場診断では、「枯れた製品」を新興市場向けに再活用する、という気付きを得る事が出来た。まだ物が十分行き渡っていない新興市場に対し既に原価償却が終わっている製品を生産すれば、そこそこ利益が得られるだろう。今までは、中国で生産した物を日本を初めとした先進国に輸出する、中国市場で販売する、という戦略の日系企業が多かったと思う。アフリカ、南米などの新興市場向けに、過去の製品を再活用する事を検討するのも良いかも知れない。


このコラムは、2017年5月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第529号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

スイッチ接点不良

タイホンダおよびホンダは7月8日、『レブル250』など8車種について、ヘッドライトが点かなくなるおそれがあるとして、リコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。

対象となるのは(中略)8車種で、2014年3月19日~2021年4月28日に製造された4万3387台。

対象車両はハイビーム/ロービーム切換えスイッチの接点構造が不適切なため、はんだフラックスが接点表面に残留するものがある。そのため、そのまま使用を続けると、切換えスイッチが接触不良となり、最悪の場合、ヘッドライトが点かなくなるおそれがある。

改善措置として、全車両、対策品の切換えスイッチを組付けたウィンカスイッチアッセンブリと交換する。

不具合は104件発生、事故は起きていない。市場からの情報によりリコールを届け出た。

Responseより)

 「ハイビーム/ロービームの接点構造が不適切」としか表記されていないので何が問題なのか判断できない。普通に考えるとスイッチの端子はスイッチ筐体の外側にあり、筐体内側のスイッチ接点にフラックスが侵入するような構造になっていないはずだ。

半田付けによりフラックスがスイッチ内部の接点まで侵入するのであれば、部品選定時の評価不足と言わざるを得ない。

前職時代に新規部品登録委員会の主査をしていた。機構部品は分解して内部観察、スイッチ、コネクタ類は硫化水素による腐食試験を実施していた。
ただ分解するだけでは何も判断できないかもしれないが、継続することによりどういう構造でフラックスの侵入を防いでいるのかわかるはずだ。

またこのような事故が、経験値を積み上げる。流石にどこのメーカのどの型番のスイッチかを公表はしないだろう。しかしその気になれば道はある(笑)

以前回収対象になっていたPC電源をジャンク屋を回って探した事がある。分解し、中を調べてみたが原因は分からなかった。しかしこの話を他社の品質担当者にしたら、それはこういう不良なのだよ、教えてくれた。熱意があれば道は開けるものだ(笑)


このコラムは、2021年7月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1165号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

米国製造業の国内回帰

コロナ禍で製造業の国内回帰が進んだ米国で、浮き彫りになった「現実」

ワイヤードの記事だ。もともと製造業の街だったミネソタ州ダルースでマスクの生産をしようと中国から設備を購入。生産を開始するが、センサーの故障でセンサーを中国から取り寄せる時間は操業ができなくなる。中国と米国の労働安全の認識の違いにより、危険なメンテナンス作業を強いられる。など多くの問題を克服しなければならなかったそうだ。

一度失われたものづくりの文化は、一社が努力しても簡単には復活できない。ということだろう。日本には伝統的にものづくりの技術を尊重する文化があるなどと安心できるだろうか?

経営効率を高めるために、現場作業者を派遣社員にして現場のものづくり技術を霧散させてしまったことは記憶に新しい。最近でもマスク不足のため中国のマスク生産設備を輸入した、というニュースを聞いて驚きと失望を感じた。

日本には創業1500年の企業がある。伊勢神宮の20年おきの遷宮を支えるため燕三条の企業が「和釘」を復活させた。など古来からものづくりの技術を守る文化はある。しかし伝統的建築に関する分野だけでは安心できない。

痛くない注射針の岡野雅行さんの岡野工業は引き継ぐ者がなく廃業したと聞いている。日本のものづくり文化が危機に直面しているのではなかろうか?


このコラムは、2021年7月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1167号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

 

自律型人財

自律型人財とは

  • 自分でやることを決められる人財
  • 決めたことを実践できる人財
  • 仲間を巻き込みチームとして働くことができる人財

という定義で考えてみた。

自律型人財を社内に育成できれば、まずは業務効率が上がるはずだ。
つまり指示をしなくても、組織の目的、方針、目標から自らの役割、仕事を決定する能力がある。
そしてそれを実践する能力があり、定型業務を担う人材を巻き込んで成果を上げることができる。従って自律型人財のn倍の成果を上げるはずだ。

その能力をさらにブレイクダウンすると、組織の方針・目標から解決課題を列挙し、優先順位を決定。現状を把握し課題解決の達成目標を設定。
仲間を巻き込んで課題達成を阻害している原因を解明、原因を除去する対策、直接課題達成する方法を検討。この過程を巻き込んだメンバーと一緒に実施。目標を達成するまで、改善を繰り返す。

この様な活動を通して、巻き込んだメンバーの能力を上げ、定型業務人材を自律型人財に変換していく。定型業務人材は、この過程で自己成長・問題解決の達成感を得て定型業務人材から自律型人財に成長する。

この様な正帰還が働くと組織の力はあっという間に増強されるはずだ。

私たちが実践しているQCC道場は自律型人間を増やし、組織力を上げるのを目的としている。


このコラムは、2021年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1182号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

派遣をきるな!

 82号のコラム「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るあるメーカーOB」にご感想をいただいた。

Z様からのご投稿
 「『うちは派遣を切りません』と言え」には、反論、大いにあります。派遣社員とは、本来、景気が悪くなるなど、生産を縮小するときには、きれるもの、きられるものだと思います。そういった正社員とは異なるポジション(雇用形態)として存在価値があるものです。
会社のために派遣社員も貢献してきたのも事実です。しかし会社のために貢献しているのは、社員だけでなく取引先(様々なサプライヤー、販売代理店・・・・・)も同じことです。
正規社員と派遣社員では、雇用体系が違うように給与体系も違います。高校新卒の場合、短期的には派遣社員の方が高収入であることは、少なくありません。多くの場合、結果として低賃金なだけで、本来は正規社員と同じ能力、同じ仕事であれば、リスク分高給でなくてはならないのです。
 多くの派遣社員は言います。「本当は正社員になりたい。」その気持ちはわかります。しかし、それと派遣社員の雇用が不安定であると言う処遇は別物です。これを取り違えると「派遣切り=悪」の図式になってしまいます。
「××の正社員になりたい。」と言う気持ちだけに肩入れしすぎると、多分優良企業は、数年すると過剰雇用のため没落する図式ができてしまいます。
 「ものづくり」に関して現実的に考えると、派遣社員の比率を上げるということは、それだけ正社員への負担は重く、正直なところ正社員は誰でも務まる職種でなくなります。
 以前工業高校を卒業して、現業に配属になった新入社員に話したことがあります。「以前なら君らの内のひとりが班長になればよかった。あとのメンバーは班長の指示通り、まじめに仕事してくれればよかった。しかしこれからは違うよ、全員が班長になって、指導や監督をする立場になってもらわなければならない。ただまじめに黙々と仕事するだけの人材を正社員として置いておけない時代になったんだよ。」と。
 かなり冷徹な意見ととられるかもしれません。君はバイヤーとして、ものを買うように人を扱おうとしていると批判されるかもしれません。しかし、僕の反論は、人を扱うようにものを買っています、と。(まったく屁理屈ですね。)
 それであっても、「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るOBのような方を僕は敬愛します。本文を読みましたが、一本筋が通っていますよね。このような方とは、意見が食い違ってもいっしょに仕事できると楽しいですし、勉強になります。

再びZ様からのご投稿だ。

バブル崩壊後に経営者が日本的な経営(長期安定雇用による現場力の向上を目指す)に自信をなくし、アメリカ流の経営手法に盲目的に飛びついたのが、元凶だと思う。

現場の人員を変動経費型にするため、派遣社員、契約社員という需要ができた。需要があるからそれを商売にする会社ができる。と言う訳だ。

派遣会社は安直に人さえ集めれば即経営が成り立つということで、志のない経営者がどんどんそういう商売に参入する。言ってみれば、人を集めて顧客企業に派遣すればそこで現場教育も経験も与えてくれるわけだから、自分達は
人をぐるぐる回しているだけで利益が出る。「モノ造りはヒト造り」の基本が忘れ去られた状態が続いていたわけだ。

またそういう働きかたを選んだ人たちにも責任はあるはずだ。背に腹を変えられなかった人たちもあるだろうが、特に若い人たちが刹那的にその日暮の仕事として派遣労働者というスタイルをとった人たちも有るだろう。

3者共に責任のあることを、人道的な切り口だけで批判したり同情したりするのは意味がない。むしろ口当たりの良い言葉だけで現実を覆い隠す結果になる。


このコラムは、2009年2月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第83号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るあるメーカーOB

 「バカ野郎! なんで派遣社員を切るんだ」。
あるメーカーA社で長年技術者を務めたOBの方が、取材の冒頭で怒り始めた。
取材のテーマは派遣社員に関するものではなかったのだが、たまたまそうした話に及んだのだ。

というのも、A社は2008年後半に派遣社員の雇い止めをすると発表したからだ。
その決定について、このOBの方は非常に不満に感じていたからである。
「X社長は分かっていない」と強い口調だ。
  

(日経ものづくりのコラムより)

こういう時期に痛快なコメントだ。しかもA社は消費者向けの製品を生産している。派遣社員も顧客の一人だ。派遣社員の雇用を守りロイヤリティの高い顧客を確保すると言う考え方もあるだろう。

しかし経営者は別の考え方をしているに違いない。
90年代のバブル崩壊後、経営者はこぞって従来の経営方針に自信をなくし、米国流の経営手法を取り入れていった。
成果主義。株主優先の短期利益主義。そのため現場の固定経費を変動経費化するために正社員を契約社員、派遣社員に置き換えていった。
その結果、現場の力が衰えなかなか立ち直れなかったところへ米国発の金融危機である。

米国流経営手法の表面だけを真似た結果だ。

米国は70年代から日本の追い上げを受け次々と力を落とし始めた。実はこの時米国は、戦後急速に力をつけモノ造り日本の経営手法を研究したのだ。その際に日本に品質管理を伝えたデミング博士の存在が再評価されている。
米国の多くの経営者は、日本に品質管理を導入し日本式経営を熟知したデミング博士の教えを受けたのだ。

米国は製造業のみならず、政府、行政、教育、サービス業などあらゆる業界がデミング博士の教えを受けて国力を回復した。

バブル崩壊後90年代に日本が見た強い米国は、実は日本式の「競争と調和」を取り入れた企業だったはずだ。
そのもっとも日本的な「調和」の部分には目が行かず「競争」の部分のみを取り入れてしまったのではないだろうか。

日本の経営者はもっと自信を持ってよいのだと思っている。


このコラムは、2009年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第82号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

パナソニックのレンジ、発煙・発火事故18件

 経済産業省は20日、松下電器産業(現パナソニック)製の電子レンジ(NE―AT80)から煙が出る事故が7日に宮城県で起きたと発表した。事故の恐れがあるとして同社が07年5月からリコール(部品交換など)しているレンジ12機種のうちの一つ。一連の発煙・発火事故は18件目で、いまだに169万台が部品交換していない。

 7日の事故は、レンジ裏側の吸気口にほこりが詰まったまま使い続けたため、内部のはんだ付け部にひびが入って火花が飛び、周りの樹脂に火がついたとみられる。一連の事故でけが人は出ていないが、リコールの実施率は昨年末
時点で12%にとどまり、リコール後も今回を含めて8件の事故が起きている。同社は昨年11月から折り込みチラシを全国で4500万部配って注意を促している。

(asashi.comより)

半田クリープによる事故であろう。
半田クリープと言うのは、半田結合点に機械的ストレスがかかった状態で長期間の間に半田がひび割れてしまう現象だ。温度、機械ストレスの大きさが加速要因となる。

半田クリープが発生した場所が高電圧回路だと今回のようにスパークが発生し、発煙事故につながることもある。

重量部品のリード、半田付け後の機械ストレスなどに気をつけないといけない。

特にPC電源のようにトランス、コイルなどの重量部品があり、かつ部品がプリント基板にぶら下がる形でPCに組み込まれていると、簡単に発生する。リードをクリンチして半田結合点に直接機械ストレスがかからないようにする。重量部品はリードを増やし、リード一本あたりの重量を減らす。ハトメを使い半田接合強度を上げる(片面プリント基板の場合)
半田盛をする。などの対策で半田クリープ発生を回避しておかなければならない。

また作業で、半田付け後に半田結合点に機械ストレスをかけることは禁物だ。

半田クリープこちらも参照ください


このコラムは、2009年1月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第80号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ココロの授業

 久々に日本に戻ってきている。
中国工場で生産をされている会社に連日出かけ打ち合わせをしている。
移動の時間は読書時間だ。2日間で3冊の本を読んだ。

その中の1冊
「私が一番受けたいココロの授業」を紹介したい。
上田情報ビジネス専門学校で教鞭をとる比田井和孝、比田井美恵夫妻による新刊だ。

比田井氏は上田情報ビジネス専門学校で就職指導の授業を持っておられる。
この授業は学生に就職合格させるための授業ではない。学生たちが仕事を通じ成長し幸せな人生が送れる様にするためにどういうココロのあり方を持たねばならないかを教えているのだ。

職業人としてのココロのあり方をきちんと教えることにより仕事へのモチベーションを高める事が出来る。これは日本も中国も同じである。

授業の内容を再現する体裁になっているが、教え子との交流など思わず落涙するくらい感動をした。
この本を読む方は電車の中で読まないことをお勧めする。


このコラムは、2008年9月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第52号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

顧客満足

「顧客満足」という言葉が当たり前になっている。顧客とは次工程であり、その顧客の顧客も顧客だ。最終的には市場で製品を購入していただいた消費者も顧客である。次々と顧客満足を鎖の輪のように繋いでいくことで顧客満足のリンクが完成する。その顧客満足チェーンの一つのリンクが壊れても顧客満足は達成できなくなる。

今更当たり前のことを書いたが、実は信じられない最悪の事例を体験した。

顧客満足の反対は顧客不満足である。顧客満足は顧客満足チェーンの一つ一つの努力の上に成り立っている。しかし顧客不満足はそのチェーンの一つでも機能しなければ、すべてのチェーンの努力は水泡に帰す。

日本で購入したブルートゥース・イヤホンが故障したため近所の電気店でブルートゥース・イヤホンを購入した。有名ブランドの製品だが割引で格安になっていた。通勤時にオーディオブックやPodcast、ランニング中に音楽を聴くために使っている。音質に対する要求は高くない。要求はただ耐久性のみ。

しかし、一週間もしないうちに大音量の雑音を発して壊れた。
当然このような顧客不満足を解消するために初期不良品の無償交換を保証している。しかしこれは「顧客満足」ではなく「顧客不満の解消」でしかない。
もしアフターサービスを顧客満足に繋げようとするならば、顧客の使用状況を尋ね、故障原因を特定し、製品設計・製造方法の改善をしなければならない。

しかし不良品を工場に返却し代替え品を受け取っても、故障原因の報告はない。
まぁ、通常の消費者がそのようなことに興味を持っているとは思えないので、そこは許容範囲としなけらばならないだろう。しかし送られてきた交換品は充電もできないし、最初のペアリングもできない不良品だった。

返却の際に取扱説明書を同梱するのを忘れたら、代替え品には、丁寧にも、取扱説明書は添付されていなかった。わざわざ取説を取り除き代替え品を発送したとしか思えない。

今回の事例で「顧客不満の解消」どころか「顧客不満の増長」となり、結果として「ブランド不信」という最悪の結果となった。

正しいクレーム対応で「顧客不満の解消」だけでなく「顧客支持」が得られた事例もある。

相次ぐ異物混入、マック謝罪 経営不振に追い打ち

消えたペヤング 虫1匹に払う数十億円の代償

少なくとも今回の事例で、私は今回購入したブルートゥース・イヤホンメーカの製品は二度と買うことはないだろう。


このコラムは、2021年8月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1176号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】