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実験計画法

 毎月定期的に開催している「品質道場」で、統計的品質管理もテーマとして取り上げている。そこで分散分析も教えている。随分前になるが、工程改善を指導していた工場で、実験計画法を教えようとしたことがある。分散分析が理解出来れば、その延長で実験計画法も使える様になるはずだと考えた。

しかし日本から赴任しておられた経営幹部から、実験計画法はハードルが高い、と辞退された(苦笑)その時は諦めたが、計算式を埋め込んだワークシートを用意し、実験計画法の意味と使い方を理解してもらえば応用出来るはずだと、チャンスを待っていた。

たまたまQCC活動を指導しているお客様工場で、現状の加工技術を別の技術に置き換えて圧倒的なコストダウンを目指すサークルが出て来た。加工条件を決めるために実験計画法を応用するチャンスが来た。満を持して先週末に半日かけて実験計画法の研修をした。

間接部門を含めて十人前後の中国人幹部に実験計画法を教えた。
本来応用して欲しいサークルのリーダは、全く違うアプローチを考えていた様で、余り熱心に研修を聞いていなかった(苦笑)研修の終盤になって、この研修は自分のためにやってくれたんだと気が付いた様だ(笑)

更に数学とは縁がなさそうな製造部門の女性管理者も非常に興味を持ち、研修後に質問で食いついて来た。数式は理解出来ないが、意味は理解出来た様だ。

途中で気が付いたリーダと、女性管理者の二人が実験計画法を応用して成果を出せば、この会社では普通に実験計画法を使う様になるだろう。今週は全力でフォローする予定だ。


このコラムは、2015年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第424号に掲載した記事です。

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1円玉から1万円金貨まで…重さチェック 貨幣大試験

 貨幣の重さが規定通りになっているかどうかをチェックする恒例の「貨幣大試験」が22日、大阪市北区の独立行政法人・造幣局であった。貨幣への信頼を維持するために1872(明治5)年に始まり、今年で139回目。

 桜井充・財務副大臣ら約80人が出席。今年度に造られた1円(1枚1グラム)▽5円(同3.75グラム)▽10円(同4.5グラム)▽50円(同4グラム)▽100円(同4.8グラム)▽500円(同7グラム)――や天皇陛下在位20年記念の1万円金貨幣(同20グラム)など計21種類の貨幣を電子てんびんなどで計量し、基準を満たしていることを確認した。

(asahi.comより)

 新聞の記事なのでこれでよいのだが、科学や工学を勉強した人は、こういうレポートを書いてはいけない。

どこがまずいかお分かりだろうか?

重さが規定どおりになっているかどうかチェックする、と言う目的で「貨幣大試験」を行った。そしてその結果は、基準を満たしていることを確認した。とあるが、その基準がどこにも明記されていない。

つまり1円玉が1gと決めてあるが、測定値がいくらならば、基準どおりと判定してよい、と言う基準が明記されていない。

全てのモノにはバラツキがある。
1円玉を作って1gにせよ。と言う製造指示をもらっても、これを達成するのは不可能だ。公差を入れてもらわなければ、モノ造りはできない。

例えば重量1g±0.01gと書いてあれば、造ったモノの内99.9gから1.01gの間に入っているものが合格品だ。

公差が指定してない場合は、有効数字を明確にしておけば、どれだけばらついてもよいと言うことは類推できる。

硬貨の重量の例では、各硬貨の製造工程は完成品の重量の工程管理能力が同じだとすれば、小数点第二位の精度で作れるはずだ。(5円玉:3.75g)
従って各硬貨の重さはそれぞれ、
1円:1.00g
5円玉:3.75g
10円:4.50g
50円:4.00g
100円:4.80g
500円:7.00g
と表記しなければならない。
つまり有効数字が小数点下二桁であることを明記しなさいと言うことだ。

この場合小数点第三位まで測定できる測定器を用い、1円玉であれば0.995g~1.005gまでの製品が合格となる。

ところで、賢明な読者様は測定にもバラツキがあるのがお分かりだろう。
同じモノを同じ人が測定しても測定値が、違う値になる。その測定のバラツキを評価したものを「ゲージR&R」と呼んでいる。

通常は測定のばらつき(σ)は、測定の公差範囲より一桁精度が高くなくてはならない。3σが公差範囲と同じくらいになってしまうと、1000回測定して3回ほど公差ぎりぎりのものを誤判定することになる。


このコラムは、2010年11月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第181号に掲載した記事です。

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「印影を間違えたから」94万人の通知再送付 年金機構

 国から公的年金の運営業務を委託されている日本年金機構が、間違った印影が印刷された国民年金保険料の通知を年金加入者に送っていたことが分かった。千葉、新潟、長野の3県在住の約94万人分に上り、訂正版を再送付した。受注業者のミスのため、再送付にかかった費用は業者負担となったが、同機構は「不手際で迷惑をかけ、大変申し訳ない」としている。

 印影が間違っていたのは、国民年金保険料の控除証明書(10月1日付発行)で、所得税の確定申告などをする際に添付する書類だ。証明書は「歳入徴収官 厚生労働省年金局事業管理課長」名で出されるが、別の役職者の「支出官厚生労働省年金局事業企画課長」と記された印影が印刷されていた。確定申告などで証明書を提出すれば、その年に支払った国民年金保険料の全額を所得控除できるが、印影が間違っていると証明書としての効力がないという。

 同機構によると、3県分を受注した業者が、別の受注業務のために保管していた印影を印刷した。機構は送付前に確認したが、気づかなかったという。証明書は10月下旬~11月初めに発送され、誤りに気づいた年金加入者から
の連絡で判明した。

(asahi.comより)

 なんともお粗末なミスだ。
実は私も以前同様な不具合に直面したことがある。

製品に貼り付ける主銘板ラベルの安全規格ファイル番号が間違っていたのだ。ラベルはこちらでデザインしており、ラベル業者には版下データで渡しているのでこのような不良が発生するはずが無い。

調査の結果、その業者はこちらが渡したガーバーデータが読めずに、確認用のPDF図面から自分達で版下データを起こした。この時に安全規格ファイル番号を間違えて転記してしまった。ということが分かった。

中国では、しばしばこういうことが起きる。
データフォーマットが読めないと分かった時点で、連絡・相談してくれれば何事も発生しなかったはずだ。

勿論この事故はラベル業者の責任である。しかしラベル業者の責任として片付けてしまえば、再発防止ができない。この様な場合も、自己責任と考え再発防止を検討する。

データ出図時のチェックリストに、データファイルタイプの確認を追加し、設計作業者と購買担当者が確認をすることとした。

上記のニュース記事によれば、年金機構には責任が無いような書き方がしてあるが、業者のミスをそのまま顧客に流出させた責任はある。

私の事例では、工場の受け入れ検査で間違いを見つけており、生産現場、顧客には一切迷惑をかけることは無かった。

ところで今回と類似の事故を想定してみよう。
ありがちなのが、設計変更前の部材が誤納入される事故だ。
発注側も、業者も設計変更直後は「変化点管理」で十分注意しており、事故は発生しにくい。しかし設計変更後2回目、3回目の発注で、レビジョンの古い物が納入されると言う事故はありがちだ。

これを防止するために、図面は発注・納入ごとに出図・返却するようにしておくのが効果的だ。

社内においてはISO9001の仕組みにより、図面の最新版が閲覧されるように保障されているはずだ。しかし業者における外部図面の最新版管理を保障するのは容易ではない。
勿論、仕入先を選定する際に、それが保障できるかどうかを監査しているはずだが、それが維持できていることを保証することはそれほどたやすくは無い。

発注時に加工図面を渡し、納品時に図面を回収する。こうすることにより、業者側で旧図面に従って生産をしてしまう事故は防げる。


このコラムは、2010年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第182号に掲載した記事です。

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キックオフミーティング

 先週は東莞の家具工場を訪問した。この工場は欧米、日本、国内向けに中級以上の家具を生産している。開業して10年ほどの工場だ。中国人若手経営者が次のステップを目指し、私に指導依頼をしてきた。

初回は経営者・経営幹部に集まってもらいキックオフミーティングを実施した。
このミーティングの狙いは、活動の方向性を共有し、メンバー各自の役割をコミットメントしてもらうことだ。

会議室には16人もメンバーが集まっており、ちょっと当惑した。経営判断をしている人たちとミーティングをするつもりだった。想定していたのは5、6人。
この会社では製造部門が、工程ごとに分かれており、それぞれの部門の主管が会議室に集まっていた。いきなり現場リーダを交えたキックオフとなった。

彼らと一緒に2時間かけて、活動の目的・目標を決定した。
その目的・目標は、
「華南で最初に日系顧客から全数検品を免除される家具工場になる」

日本の家具業界では、中国の委託先工場で生産した家具は100%検品するのが常識となっているらしい。それらの顧客から、品質に関する信頼を勝ち取り検品を免除してもらおうというのが目標だ。

プロジェクトが解決しなければならない重要課題を8個決め、3つの戦略的取り組みに対する全員の役割を決定。その活動に対するコミットメントを得た。

最後にプロジェクトの名称を皆で考え『百分百』とした。
100%良品を生産する、と言う意図がこめられている。

そして最後に総経理の音頭で、『百分百』を3回シュプレヒコールして会議を終了した。この会議で参加者16人のうち15人の思いはひとつになったようだ。

一人だけ、白けた小母さんがおり、会議中ずっと気になっていた。
彼女は財務担当だと後で分かった。きっと総経理が、いかさまなコンサル会社にだまされてムダ金を使わないか監視に来ていたのだろう(笑)

彼女が会議室を出るときの表情を見る限り、ムダ金ではなさそうだと理解してくれたように思う。


このコラムは、2010年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第182号に掲載した記事です。

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働きがい

 とんでもない本と出会ってしまった、そんな予感がしている。
「生きがいの創造」飯田史彦著
(現在はkindle unlimitedで読むことができる)

なぜ「予感」などともったいぶった言い方をしているかというと、まだ読んで
ないからだ(笑)友人から読んでおくべき三大書籍の一つとして紹介された。
早速アマゾンで飯田文彦氏の著作を立ち読みをしてみた。その結果次回日本に
帰国したおりに、購入する書籍リストの筆頭になった。

著者は、我々に見えないモノや聞こえないモノを感じ取る能力があるようだ。
私は科学技術を勉強して来た人間であるが、今の科学で説明がつかない能力に
対しても、寛容な態度を取っている。
私の義兄にもそのような能力があり、時々私を驚かす様な発言をしたが、そう
いう能力もあり得るだろうなぁ、というのが私の認識だ。

人間の意識(魂)は、時間とか空間という「次元」の概念を越えた所に、存在
しており、どういう人生を送るのか計画を立てて現世におりて来る。
それは、人間の体という不自由な乗り物に乗り、地球という不便な空間で、
修行をするという事だ。
修行であるから、楽しいことばかりではない。「大病を患う」「事故に遭う」
「事業に失敗する」「愛する人との別離」などという過酷な計画を魂たちは、
喜んで選択する。

大部分の魂は、人間の体に宿ると自分自身で立てた修行計画を忘れてしまう。

その計画通りに人生を送れた魂も、うまく行かなかった魂も、自分が宿った
肉体の寿命が来ると、「天」に帰って行く。そして次の修行のために、ある者
は達成出来なかった計画に再チャレンジ、ある者は新しい経験にチャレンジ
するために次なる計画を持って、また現世に降りて行く。
魂はこの様な繰り返しを何億年も続けることにより成長している。

この説の真偽を証明する事は、多分不可能だろう。
しかしこの説は、私たちに生きる自信と勇気を与えてくれる。

どんなに困難な状況に追い込まれても、それが自ら計画した困難だと思えば、
絶望する事はない。それは絶望的な「壁」ではなく、自分を成長させる「扉」
だからだ。
つまり「思い通りにならないこと」は、現世の最大の価値であり、魂はその
環境で自分を磨くために現世におりて来ているのだ。

こういう考え方は、どんな困難に遇ってもココロの拠り所になるはずだ。

この様な考え方を、宗教的で胡散臭いと思われる方もあるかもしれない。
しかしこれは宗教ではなく、信仰だと思う。より価値のある人生を創造すると
いう意志を持つことであり、それが生きがいだ。

生きがいを持っている人は、容易に働きがいを持てる。働きがいの源泉は
生きがいだからだ。

この会社で働けて楽しい。
この仕事を任されて幸せ。
この人たちと一緒に仕事ができて幸せ。

こうした働きがいが持てる人は「なぜ仕事をするのか」を正しく理解している
人であり、それは「なぜ自分は生きているのか」という生きがいに直結して
いる。

働く事が苦役であったり、別にある生きがいのための資金稼ぎであれば、働く
事に対するコミットメントは弱くなる。つまりより効率的な仕事さえあれば、
簡単に転職する。

しかし働きがいが生きがいに直結していれば、コミットメントは高くなる。

従業員が生きがいを持つ、その生きがいと直結した働きがいを持つことを支援
することができれば、組織のパフォーマンスは高まるだろう。

あなたも従業員や部下の生きがいについて考えてみてはいかがだろうか。


このコラムは、2012年9月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第275号に掲載した記事です。

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5S回帰

 自分の専門性はどこにあるのか考えてみた。
超がつく多品種少量生産のモノ造りをしているメーカで、開発設計をしていた。
その後大量生産製品の品質保証責任者として、国内、海外の子会社や生産委託先で生産・品質指導をしてきた。

独立してからはバネからバスまで、月産数百万台の大量生産から、単品生産の工場まで指導した。少品種大量生産の工場に、1台ずつ生産する生産方式を導入したこともある。

少量生産、大量生産の枠では、自分の専門性を定義することは出来そうもない。

元々電源関連の生産メーカの指導が中心であった。20社近く指導をしたが、今は全くない。民生用、産業用の電子応用製品の組み立て、電気・電子部品の生産、金属製品、プラスチック部品の生産、玩具、衣類の縫製、表面処理などの指導をしており、自分の専門業種を語ることも難しい。

従来は電気電子業界の仕事が多かったが、最近は自動車業界の比率が上がっている。業界も私の専門性を絞ることは出来ない。

いわゆる「現場の改善屋」として仕事をしているが、改善を達成し、それを定着させるためには、企業文化の構築や、リーダの育成も必要になる。幹部やリーダの育成も仕事だが、経営者へのコンサルもやらなければならない。
仕事の対象でも、専門性が絞れない。

ムリに専門性を絞る必要はないのだろうが、「現場の改善屋」という看板では、何が得意なのかぼんやりしてしまうと考えたのだ。

考えが煮詰まって、気分転換に外に出てみた。
夜半の街を歩いているうちに閃いた。自分は「5S」が専門ではないだろうか。検証してみると、顧客から5Sの指導を依頼されたのは10社しかなかった(笑)10社程度では、ダントツの5S専門コンサルトは言い難いだろう。

しかしよく考えてみると、あらゆる仕事の基本は5Sに始まる。
現場の改善指導の仕事を受けても、5Sを指導することになる。そうなると今まで70社近くの企業に5Sを指導したことになる。

前職時に指導した中国電源工場(広東省に4社)では、日本人監査官の監査を受けて、ここまで5Sが出来ていれば安心ですと言っていただいた。今まで日本企業18社、欧米、台湾、韓国。中国企業13社の監査を受けたことがあるが、5Sについて問題指摘を受けたことは一度もない。

中国で発行されている日本語ビジネス雑誌2誌に1年間5S啓蒙のコラムを寄稿したこともある。

2011年12月には、北京の商社経営者(中国人)が5S修行をさせて欲しいと来社され1ヶ月居候をしていった。

これならば、世界一とは言えなくても、華南一くらいにはなれるだろう(笑)

正直に告白をすると、5Sを指導しても結果に納得出来なかった工場が2社だけある。指導先からクレームを付けられた訳ではないが、自分自身が満足できなかった。
私が経営者や経営幹部の「本気」を引き出せなかったのが原因だと考えている。
この経験のおかげで、指導の方法を変更することができた。


このコラムは、2012年9月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第275号に掲載した記事です。

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航空機事故

 このメルマガでしばしば航空機事故をとりあげている。数えてみると10件ほどあった。

過去記事「航空機事故」

航空機事故はほとんどの場合死亡事故につながる。一度の事故で多数の死亡者がでる。印象としては、航空機は危険な乗り物という印象がある。しかし自動車と比較しみると、航空機の方が桁違いに安全だ。

日本国内の交通事故死亡者数と全世界の航空機事故死亡者数を比較してみる。
比較できるデータ(平成26年~28年)を対比してみると

  • 日本国内、自動車事故死亡者数:12,134人
  • 全世界、航空機事故死亡者数:58人

なんと200倍以上の差がある。
航空機事故による死亡者数は全世界、自動車事故死亡者数は日本国内だけであることを考えると、その差はさらに大きくなるだろう。

自動車は簡単に運転免許が取れる。しかも運転免許は特別な訓練を受けずとも終身継続可能だ。しかし旅客機のパイロットは定期的に訓練がある。
最も大きいのは、航空機事故が発生すると専門家の徹底的な調査と、調査結果を共有されることだろう。

我々の製造現場でも日々いろいろな「事故」が起きている。死亡にいたる事故はあまりないと思う。しかし安全、品質に関わる事故は発生するだろう。

「ヒヤリハット」段階で徹底的に再発防止対策をする。
そのためにはきちんと「ヒヤリハット」が上がる仕組みと風土を確立し、徹底的に改善対策をしなければならない。自社事例のみならず、他社事例も積極的に自社展開する。


このコラムは、2022年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1252号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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東方航空公司MU5735墜落事故

昆明から広州に向かった東方航空公司MU5735航班の波音737機が広西省梧州市の山中に墜落する事故が発生しました。

捜索隊が墜落現場に入りましたが、生存者は発見できていません。
乗客123人、乗組員9人は全員死亡した様です。

事故原因は今のところ不明です。地上を走行していた車のドライブレコーダの映像と思われる動画が公開されていますが、ほぼ垂直に落下しています。
フライトレーダには約2万フィートを2分15秒で墜落。

普通では考えられない墜落です。操縦士が故意に墜落させた可能性もあると思えます。黒匣子(ブラックボックス)が回収できた様なので、原因調査結果が公表されることを期待したいと思います。

(メルマガ・【技術者のための中国語講座】より)

事故の一報は『南方時報』で読んだ。

ブラックボックスの解析により中国で3月、132人が乗った旅客機が墜落した事故で、米紙ウォールストリート・ジャーナルは17日、「コックピット内の誰かが意図的に墜落させた」可能性があると報じた。事故に関連して、米側の調査に詳しい関係者への取材でわかったという。

 同紙によると、関係者はブラックボックスのデータなどから、「飛行機はコックピットにいた誰かに指示された通りに動いた」と指摘。操縦システムへの操作によって、機体が急降下したとの見解を示したという。米国の当局はパイロットの行動に注目しているが、機内にいた別の人がコックピットに侵入し、墜落させた可能性もある、としている。

 米ABCテレビによると、当局はパイロットの1人の私生活についても調べており、事故の直前に問題を抱えて苦しんでいた可能性があるとみている。
 事故は3月21日、中国広西チワン族自治区梧州市で起きた。中国東方航空の米ボーイング737―800型旅客機が雲南省昆明市から広東省広州市に向かっていたが、高度約9千メートルから2分余りで8千メートル近く急降下して墜落した。事故の調査は、中国民用航空局に加え、米当局やボーイングなども加わっている。

(朝日新聞の記事より)

 「コックピットの誰か」というのが謎であるが、B737の場合、通常であればコックピットには機長と副操縦士の二人しかいないはずだ。また飛行中はコックピットに部外者は入れないはずだ。

記事には「パイロットの1人の私生活についても調べている」とあるので、機長もしくは副操縦士が精神的に異常をきたし故意に墜落させた、という事故の様だ。メルマガ第1274号の推測は当たってしまった様だ。

1982年に羽田沖で着陸滑走路に入る手前で逆噴射をして、墜落させた事故があった。機長の精神分裂病を原因とする異常行動による事故と判断された。その後、操縦士の精神状態を確認することが航空会社に義務付けられたと記憶している。今回事故を起こした東方航空では精神状態胃の確認は実施されていなかったのだろうか?

羽田沖事故では機長のパイロット資格は取り消されたはずだ。
今回の事故では、機長の健康状態検査を怠った航空会社が営業免許を取り消されるのだろうか?


このコラムは、2022年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1297号に掲載した記事です。

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シカゴ条約

 3月21日午後、昆明から広州に向かった東方航空のB737機が広西省梧州市の山中に墜落する事故が発生した。墜落現場は広西省梧州市の山中であり救援隊は徒歩で現場に出かけた。機首からほぼ垂直に墜落しており、全員死亡したと見られている。

航空機事故に関して何度かこのメルマガに書いた。航空機事故が発生するとほぼ間違いなく大勢の死者が出る。そのため世界の国々が再発防止のため、事故の原因調査を徹底的に実施している。

その元になったのが1944年に締結された国際民間航空条約(通称シカゴ条約)だ。事故原因解析のため航空機の運行状況を記録するブラックボックス、操縦席の録音装置の搭載が義務付けられている。これらを回収することにより、事故発生時の機体の状態、操縦席での会話が再現できる。

東方航空の事故現場からブラックボックスが回収できている。
ジェット旅客機のエンジンが停止しても垂直に墜落したりはしない。
操縦士の精神状態に何かあったのかもしれない。

・日本航空350便墜落事故の機長の錯乱。
・副操縦士の精神失調で山に激突したルフトハンザ機
をこのメルマガでも紹介している。


このコラムは、2022年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1274号に掲載した記事です。

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続・旅客機滑走路逸脱事故

 2019年6月5日配信のメールマガジン832号で、山形空港で発生した旅客機が滑走路を逸脱する事故をご紹介した。

「旅客機滑走路逸脱事故」

当時のメルマガで、事故原因を推察してみた。
運輸安全委員会の正式調査結果が既に出ているのを発見し、答え合わせ(笑)をしてみた。

運輸安全委員会の事故調査結果↓
「エンブラエル式ERJ170-200STD型JA11FJ滑走路からの逸脱」

調査報告書をざっくりまとめると、地上走行時の操舵方式には二種類ある。
左操縦席の左側のハンドルを手で操作する「ハンドルモード」
左右のラダーペダルを足で操舵する「ペダルモード」

「ハンドルモード」はハンドルを押し込むことにより、左右に回すことで操舵が可能となる。低速でタクシングするときに使う。
「ペダルモード」は離陸時など高速で真っ直ぐ走行するときに使用する。
ハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチが働き、ペダルモードに切り替わる。

今回の事故原因はハンドルモードからペダルモードに切り替わらずラダー操作ができなかったことによる。その原因はハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチがONにならず、ペダルモードに切り替わらなかった。(マイクロスイッチの不良原因は不明)

現在の操舵が、ハンドルモードかペダルモードかを表示されていれば事故は避けられたと思われる。

製造現場の設備も現在の「モード」を表示する機能を追加すると同様の問題を回避する事ができる。

例えば製品検査でX線を使用する装置はX線が外部に漏れない様になっている。
しかし装置内のメンテナンス中はX線が出ない様にしたい。同時に点検時は装置内のX線強度を測定したい。これらの相反する目的のために暫定的にX線をON/OFFする必要が発生する。これを作業後元に戻すのを忘れるとX線に被曝することになったり、検査ができていなかったりする。点検・運用のモードを表示すれば、事故は防げるだろう。


このコラムは、2022年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1264号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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