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劣勢ノキア「足場は炎」 打倒アップル、グーグルと火花

劣勢ノキア「足場は炎」 打倒アップル、グーグルと火花

 ますますパソコンに近づくスマートフォン(多機能携帯電話)で米アップルの成功に続くのは、人気の基本ソフトを持つ若い米グーグルか、古兵のノキア(フィンランド)・米マイクロソフト連合か。バルセロナで開催中の世界最大の携帯電話見本市で火花が飛んだ。

(asashi.comより)

 この記事の中で,グーグルの幹部がツイッターで「七面鳥が2羽集まってもワシにはなれない」と発言していることを伝えていた.当然ワシ(イーグル)は,グーグルの事を指している.

グーグル幹部の発言は,グーグル自身は携帯電話を発売したものの,早々に撤退していると言う事実を無視したものだ.

グーグルも1羽で戦っている訳ではない.その点をとりあえず横に置くことにする.
もちろんグーグル対ノキア・MS連合を考えた時,ノキア・MS連合が弱者と言う訳ではないだろう.むしろ後発のグーグルの方が弱者と言ってよい.再びこの点も横に置いて,文字通りワシ対七面鳥の戦いと言う比喩で弱者の戦略を考えてみたい.

さすがに,七面鳥がワシに空中戦で勝利することは,物理的に不可能だ.
ではワシ対ハヤブサの戦いであったらどうだろうか.
2羽のハヤブサは,子供を生んで戦力とすることができる.ハヤブサは一度に3~4個産卵をする.
1羽のワシに対し,5羽のハヤブサファミリィが戦いに挑んだら,ハヤブサ軍が勝利するだろう.

志を同じくする中小企業連合が,大企業に勝利する機会はいくらでもある.

では飛べない七面鳥には勝機がないのだろうか?
七面鳥は一度に8~15個産卵する.10羽の七面鳥ファミリィがワシに地上戦を挑んだら,七面鳥に勝機があるだろう.

つまり,ワシが不得意な土俵で戦うと言うことだ.

しかしワシが「飛ばない」と言うルールを守って,地上で戦うことを期待することはできない.「フェアプレイ」と言うルールはこの戦いには存在しない.
フェアプライのないルールに従って戦えば,必ず七面鳥は負ける.ワシが飛べないルールで戦わねば,七面鳥は勝てない。

中小企業が大企業に勝つには,大企業が勝てないルールを見つける,または大企業が勝てないルールを作り出すことが必要だ.
この「ルール」は,「マーケット」「商品」と言う言葉に置き換えることができる.


このコラムは、2011年2月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第193号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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CT写真の表裏見誤り、手術で頭に穴 名古屋の市立病院

CT写真の表裏見誤り、手術で頭に穴 名古屋の市立病院

 名古屋市立東部医療センター東市民病院(名古屋市千種区)で昨年10月、患者のコンピューター断層撮影(CT)写真の表裏を見誤って、本来とは反対の左側の頭部に穴を開ける手術をしていたことが18日、病院への取材で分かった。病院は患者に謝罪し、同市千種保健所に届け出た。

 病院の説明によると、患者は80代の男性。慢性硬膜下血腫のため、市内の他病院から紹介されて入院した。側頭部の左右両側に血腫があり、脳神経外科の主治医が緊急で手術が必要と判断。入院翌日に手術をした際、前の病院で撮影したCT写真の表裏を見誤り、右側頭部の血腫を取り除くはずが、左側頭部の骨に直径1センチの穴を開けた。左側の血腫が小さかったために誤りに気付き、すぐに穴を閉じ、右側を手術した。患者に手術による後遺症はないといい、すでに退院した。

 同病院管理部は「あってはならないミスで大変申し訳ない。緊急の場合でも、院内の電子カルテに写真を取り込んだ上で、手術室の全員で確認するなどの再発防止策を徹底した」と話している。

(asahi.comより)

 初歩的な医療ミスだと思う.左右非対称な部位ならば,間違うこともなかろう.脳などは左右対称なので,写真の裏表を間違えれば,このような事故につながる.

紙焼きではなくフィルムなので,裏表どちらからでも見えてしまう.医療関係には詳しくないが,当然間違いがないようにフィルムには裏表が分かるようなマークが入っていると推測する.

このような失敗を「ポカミス」と言う.

電子カルテに取り込んでディスプレイで見れば,CT写真を裏から見てしまうことはないだろう.しかし電子カルテに取り込む時に裏表を間違えてスキャンしてしまえば,同じミスが発生する.

従ってこの再発防止対策は,ミスが発生する場所を他に移しただけと言える.

手術には,執刀助手,麻酔医,看護師など複数のスタッフが参加するはずだ.これらの人達が,CT写真を見ながら,事前ミーティングをしていれば,クロスチェックが働き,この様なミスは発生しないだろう.

私の偏見かもしれないが,医療現場というのは主治医・執刀医の独断が通ってしまう様に思える.
高度な専門家ほどこのような状況に陥り,ごく初歩的なミスを犯してしまう事があるのではないだろうか.

リーダであればこそ,部下のミスを叱る前に,自分もミスを犯す可能性があることを認め,部下の意見に耳を傾ける必要がある.これは自分の権威を落とすことにはならない.意見を述べさせることは,部下育成には必要なことだ.

そのためには日頃から「ホウレンソウ」環境を整えておかねばならない.
部下からの意見が上がって来なくなれば,「裸の王様」と同じだ.
部下が上司の意見に異を唱えない環境では「ホウレンソウ」は育たない.

ホウレン草が「酸性土壌」では育たないのと同様に,
ホウレンソウも「賛成土壌」では育たない.


このコラムは、2011年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第189号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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周辺技術の重要性

 メルマガ187号の今週の雑感で,中国人経営者は機を見るに敏で,儲かると思うとすぐに工場を作ってしまう,という事例を紹介させていただいた.

メルマガ187号:LED灯工場訪問

その中国人経営者が作っているLED灯は,LEDチップは買ってくればOKだ.
DC電源回路と,ランプの設計が出来れば,生産できるような気になる.
しかしそのような設計技術だけでは,モノ造りは出来ない.

まず,品質を作りこむモノ造りの技術が必要だ.
更に製品の寿命を保証する信頼性技術.DC電源の設計にも,部品の技術,故障を発生させない予防的設計技術.更に製品を安全に輸送するための,梱包設計技術.
などなど必要な周辺技術が,思いつくままにいくつも上げられる.

当然このような周辺技術だけでは,製品設計は出来ない.製品の機能実現のためのキーとなる設計技術が必要だ.しかし,お客様に安心・満足していただくためには,この様な周辺技術は欠かせない.

今生産している製品がどんなに簡単な部品であっても,その周辺技術が幾つもあるはずだ.華やかな技術ではないかもしれない.しかしそのような地味な技術をしっかり磨くことで,お客様の安心・満足を得られる.

そういう周辺にしっかり目をやる気配りと,その気配りを製品に反映する技術を差別化要因にすることが出来るはずだ.


このコラムは、2011年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第189号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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LED灯工場訪問

 LEDは,高輝度化,青色LEDの開発により多くの分野で応用されている.
自動車のストップランプ,信号灯,屋外灯など今までLEDが使えるとは思っても見なかった分野でも応用されている.

室内照明も,白熱電球→蛍光灯→LED灯の順に進化し省エネに貢献してきた.

省エネの社会的要求の背景もあり,需要は急速に拡大している.それに伴って,中国華南では,どこもかもLED灯の生産を始めている.以前知り合った自動化機械を作っている中国人社長は,工場のすぐ横にLED灯を生産する工場を開いていた.

LED灯を造るだけならば,LED素子を買ってきて,実装しランプに組み立てればよいだけだ.大きな設備投資なしでも生産が開始できる.そういう新興勢力が一斉に,家庭用の室内LED灯を生産する.価格はあっという間に値崩れし40元を切っている.

儲かりそうだと,あっという間に人を集め工場を立ち上げてしまう.中華系工場経営者の決断の早さには脱帽する.
しかし,後発メーカはそれなりの戦略を持たなければ,不毛な価格競争に明け暮れることになる.その結果忙しければ忙しい程,貧乏になる.悪いことに,同業者も貧乏に巻き込んでゆく.

最後には,資本の力で徹底的に機械化し,生産効率を上げかつ,生産物量を確保できたところだけが生き残る.
まるでチキンレースだ.投資が回収できなかったら?と躊躇した瞬間に負ける.

例えば1個40元のLED灯は造らない.400元で売れるLED灯を作る.
月産10万個の製品は作らない.1個ずつ特殊仕様の製品を作る.
そんなことを考えなければ、あっという間に価格競争に巻き込まれる。
営業効率,生産効率は悪くなる.しかしそれは,月産10万個の工場の構えと、生産方法をそのままにしているからだ.多品種少量生産・販売の仕組みを作れば良いのだ.

ネジや梱包用の段ボール箱など,まとめ買いが当たり前だと考えている製品を一個から受注生産することが出来れば,ビジネスのパラダイムシフトが起きるはずだ.


このコラムは、2011年1月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第187号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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生産ラインの構築・改善

先週は友人のコンサル会社オフィスにお邪魔した.
自分たちが中国で工場を設立・操業しており,そのノウハウを提供するコンサル業務をしている.

予定外ではあったが,車で移動しその工場を見せていただいた.
板金加工工場で,メタルフレームの組み立てまで取り込んでおられた.

工程を見ただけで,経験のある日本人が指導した工程だとわかった.
聞くところによると顧客の生産技術者の指導を受けたそうだ.顧客の指導で組み立てラインを立ち上げ,応用できるところは板金加工工程にも展開したと言う.

物を流す方向を変えるだけで組立作業が改善できますよ.と指摘したら「あっ!」と即座に理解された.

外部の人間だと何も思い入れがないので一瞬で見えることが,意外にも自分たちで改善を重ねたラインでも毎日見慣れてしまうと気がつかない事があるものだ.


このコラムは、2008年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第41号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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新幹線方式

 以前勤務していた会社の社長が良く「新幹線方式」という言葉を使っていた.
「新幹線方式」というのは過去の方法を捨てて,新しい発想で物事を始めることである.

新幹線は在来線との互換性を捨てて,軌道の幅を広くしている.
昔は車輪と軌道の間に適度なガタがないと列車は脱線すると思われていた.新幹線はこの通説も否定した.新たな発想で高速走行とゆれの少ない乗り心地を実現している.
こういう発想を「新幹線方式」と呼んでいる.

工場の運営も同様に,従来の常識を超えた高みに到達することにより,更に高い生産性・品質・フレキシビリティを確保できる.業界の常識にとらわれていると,業界レベルのそれしか得られないであろう.

例えば電子部品の業界では,出荷不良20ppm以下が要求される.
この電子部品を組み合わせた電子製品の出荷不良を20ppm以下にしたら,顧客の反応はどうなるであろうか.

もちろん100個も200個も電子部品を組み立ててできる電子製品の不良率を電子部品1個のレベルまで下げることはそうは簡単ではない.
一方自動車産業では出荷不良が20ppmなどと言うのはとんでもない,ということになる.常に不良ゼロである事を要求される.

デリバリィーについても同様である.
業界常識のリードタイム,最小発注量というのがあるが,それを越えてデリバリィーができれば,顧客の利便性は高まる.
例えば今まで1週間かかっていた納期を1日に短縮し,必要な数量だけを納入できたら顧客は部品倉庫がなくてもオペレーションできることになる.

このように業界の常識を超えて,異業種をベストプラクティスとして改善することにより同業者の中で圧倒的に強い競争力を得る事が出来るであろう.

そのためには異業種のベストプラクティスを知り,「新幹線方式」で自社を改善することである.

社長は「新幹線方式」をGEのジャック・ウェルチに話をした事がある.この時ジャック・ウェルチはその日の内にFAXでGEグループの全社長にこの話を伝えたそうだ.さすがはベストプラクティスの本家である.


このコラムは、2008年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第41号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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マニキュアに発がん物質 ダイソー、一部販売を中止

マニキュアに発がん物質 ダイソー、一部販売を中止

 100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業(広島県東広島市)は17日までに、マニキュアの「エスポルールネイル」の一部商品から発がん性物質のホルムアルデヒドが検出されたため、販売を中止したと発表した。健康被害の報告はないとしている。

 同社によると、エスポルールネイルは8月発売で全148商品あり、検出されたのは「5 ビーチピンク」など26商品。自主回収し、購入者には返金する。全商品の検査を月内に終える予定で、検出されなかった商品の販売は続ける。

 大創産業は「直ちに重篤な健康被害が発生する可能性は極めて低いが、敏感な体質の場合、アレルギーのような反応を起こす可能性がある」と説明。混入原因を調べている。商品は大阪市の会社が中国で製造し、発売後の自主検査で発覚。管轄する大阪府に報告した。

(日本経済聞電子版より)

 ダイソーは、生産委託時(又は商品購入契約時)にホルムアルデヒド非含有を確認し、製品仕様に明記しているはずだ。記事には自主検査で発覚とある。定期的に自主検査をしていたが、店頭に並んでからホルムアルデヒドを検出してしまったのだろう。

混入原因は調査中との事だが、いくつかの可能性がある。

  • 4M変更による混入
     通常4M変動は意図的に発生するモノだ。従って変動後の確認を徹底していれば、回収は防げたはずだ。
  • 意図しない事故で混入
     意図しない「変更」が発生する事により混入があったとすると、事前に確認する事は不可能だ。生産ロットごとに非含有を保証する仕組みが必要となる。

4M変動が発生しているのに、変動管理手順が実施されない事もあり得る。この場合も生産ロットごとの保証が必要になる。

生産ロットごとの抜き取り検査もロット保証の手段となるが、以前発生したインスタント焼きそばのゴキブリ混入のような事故は、抜き取り検査では見つからない。

どのようにマニュキュアを生産しているのか分からないが、加工バッチごとに検査する事が可能だと思える。瓶詰め工程後にホルムアルデヒドが混入する事は考えにくいので検査により100%製品保証できるだろう。

納入後の抜き取り検査は100%保証する事は困難だ。しかもコストがかかる。上流で管理するのが品質保証の鉄則だ。

インスタント焼きそばの事故は、幸いにして多くのファンの支持により業績に影響を及ぼすような深刻な事態には発展しなかった。
しかしダイソーの様にいくらでも代替えが効く商品を取り扱っている業態では回収・販売停止は深刻な影響になりかねない。


このコラムは、2015年10月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第446号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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相次ぐ異物混入、マック謝罪 経営不振に追い打ち

相次ぐ異物混入、マック謝罪 経営不振に追い打ち

 チキンマックナゲットなどから異物が見つかったのを受けて、日本マクドナルドは7日、記者会見を開いた。食品への異物混入は最近、他社でも相次いで見つかっており、消費者には不安が広がる。ただ、食べられる物まで廃棄に
追い込まれている面もあり、冷静な対応を呼びかける声も出ている。

 「多くのお客様に多大なご迷惑とご心配をかけ、深くおわび申し上げます」

 日本マクドナルドホールディングスの青木岳彦上席執行役員は東京都内で開いた記者会見で、深々と頭を下げた。

 会見で公表した異物混入4件は、すべて報道が先行した。

全文はこちら(既に記事の公開期限が終了したようです)

(朝日新聞より)

 ソフトクリームからプラスチックの破片、チキンナゲットから青いビニール片、チキンナゲットから白っぽいビニール片、フライポテトから人の歯!。「歯」が食品から出て来たと言うのは、前代未聞だろう。新聞を読んでいて、危うく椅子から転げ落ちそうになった。

日本マクドナルドの基準では、「健康に影響があったり、被害が大きく広がる恐れがあったりするものを公表する」としている。今回発表した4件も社内の公表基準にはあたらない、と言っている。しかしアイスクリームを食べた少女が、プラスチック片で口内を切っているのに、「健康に影響がない」と考えているのだろうか?立派な人身事故だ。

謝罪の記者会見には、執行役員が対応している。
日本人的な感覚では、社長以下上級役員が5、6人並んで頭を下げる、という光景を想像する。たった2人だけ?しかも上級執行役員?と感じた人も多いのではないだろうか。

論理的に考えれば、人数や役職は関係ないだろう。4件の事故に責任を持っている人が出て来て謝罪し、今後の対策を説明し、消費者に安心してもらう、これが出来ていれば、良いはずだ。

しかし、消費者は論理的には考えていない。「社長を出せっ!」と言う事になる。しかも記事を見る限り、消費者が安心出来る材料は何も説明されてない。
(朝日新聞の記事に載っていないだけ、と言う可能性も有るが。)

ペヤングのゴキブリ混入事故の時は、そこまでやるか?と言う対策を宣言した。設備を一新し、清潔に生まれ変わった工場をマスコミに公開すれば、漏泄した汚い生産設備の写真も、帳消しになるだろう。

日本マクドナルド程の「大企業」となると、品質問題で潰れてしまうかも知れないと言う危機意識が低いのかも知れない。どんなに大企業でも、老舗企業であろうと、品質問題を起こし対応を間違えれば、一発退場になりかねない。経営者はその様は危機感を持っていなければならない。

消えたペヤング 虫1匹に払う数十億円の代償

消えたペヤング 虫1匹に払う数十億円の代償

 カップ焼きそば「ペヤングソースやきそば」が全国から一斉に姿を消した。原因は商品混入を指摘された1匹の虫。製造する「まるか食品」は全商品を自主回収し、生産を全面停止。数十億円かけて設備の刷新も検討しており、周囲から「そこまでやるのか」と驚きの声も漏れる。年間売上高約80億円の中堅企業にとって負担は重い。まるか食品はなぜ、これほどの「代償」を払うことにしたのか。そして耐えられるのか。

全文はこちら

(日本経済新聞より)

 虫一匹で、年商80億円の会社が潰れるかも知れない。
市場からの回収費用、生産設備の刷新などで数十億の費用がかかると言う。更に、生産停止による機会損失や、従業員の雇用を考えれば、年商分くらいの金額は吹き飛んでしまうだろう。最も深刻なのは、消費者の信頼を失ってしまった事だ。これは金額では換算出来ない。未来に渡って課せられた負債となる。

品質問題で、企業が丸ごと無くなってしまったのを何度も見て来ている。

品質保証関連の仕事をされている方は、対岸の火災と、高みの見物をしている場合ではない。自社の中を再点検する必要があるだろう。特にB to C製品を扱っている場合、今回の様に一発退場を、食らう事がある。

以前勤務していた会社は、B to B製品を取り扱っていたが、私がいた事業部でB to C製品を、販売したことがある。当時品質保証部長をしていた私は、自社製品の噂がネットに出ていないか、日々検索していたモノだ(苦笑)
幸い、たまに検索に引っかかるのは商品に好意的な書き込みしかなかったが、毎日ヒヤヒヤしていた。当時東芝クレーマー事件が話題になっており、神経を尖らせていたモノだ。

このような問題を回避するためには、潜在的問題を先手で改善しておくしか方法はない。新聞記事には「初動の対応が悪い」と指摘があったが、事が起きてからでは遅いのだ。

例えばペヤングの工場内部の写真(多分工場勤務者からの漏泄だろう)を見ると、お世辞にも奇麗な工場とは言い難い。食品工場としては、かなりお粗末だ。とても顧客に公開出来る工場ではない。設備を更新したとしても、今のままの設備管理では1年で顧客に見せられる工場では無くなるだろう。基礎化粧品のメーカが、毎日生産設備を分解清掃している事を、TVコマーシャルに流した事がある。もし、まるか食品にまだチャンスが有るとすれば、このくらいの事をやらなければ、失われた信頼は取り戻せないだろう。

問題が起きてしまってからでは遅い。
品質保証の本来の仕事とは、発生した問題の後処理ではない。問題が起きない様にする事が、本来の品質保証の仕事だ。


このコラムは、2014年12月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第404号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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作業ミス対策

 単純な作業ミスによる不良の再発防止対策にお困りだったりしないだろうか.
「作業者に注意をした」「作業者に再教育をした」「作業者に罰金を課した」「検査の追加」など,対策の効果が実感できないような再発防止対策が報告されてくる事がままある.

一番驚いたのは掲示板にA4用紙一杯に「作業に注意します」と何度も繰り返し書かれた反省文?が張り出されているのを見たときだ.多分現場の班長さんが,作業者にどう指導してよいかわからず,学校で同じような罰を先生から課せられたのを思い出して,同じ事をしてみたのであろう.

笑ってはいけない,班長さんはこれでも真剣に考えたのであろう.
上位職者がきちんと班長を指導できていないのが問題だ.

まずは作業ミスがどうして発生するのかを分析する必要がある.

  • 疲労による作業ミス
  • ついうっかりミス
  • ついうっかり作業飛ばし

一般に1件の不良が顕在化する影には,工程内で見つける事が出来た不良が29件発生,300件の「ヒヤリ・ハット」する出来事があるといわれている.(ハインリッヒの法則)

顕在化した不良だけを見ていると,なかなか原因が分からない.これらの潜在不良に着目して分析する必要がある.

時系列で,曜日別で,作業員別で,生産機種ごとに,など色々な切り口で見る事が出来る.

こういう分析により作業員の疲労度やぼんやり度に法則が見えれば,対策を打つ事が考えられる.

どんなに注意していても所詮は人間である.ミスは必ずある.
疲労を軽減する作業になっているか.注意力に頼る作業になっていないか.
という着眼点で対策を考える.

またミスが発生しない仕組み,ミスが発生しても流出しない仕組み「ポカよけ・ダブルチェック」を導入する.

それでもどうしても作業者の技量に頼らざるを得ない場合はある.
こういう場合は「作業者の再教育」という対策にならざるを得ない.
「作業者の再教育」という対策が悪いわけではない.

  • 教育効果がきちんと確認できているか.
  • 教育効果が実感できるものか.
  • 新人作業員,別の作業員にも教育が確実に行われる様になっているか.

ということが保証できていれば,対策として合格点がもらえるであろう.


このコラムは、2008年10月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第56号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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