経営」カテゴリーアーカイブ

現実的とは

 「現実的」という言葉を辞書で調べてみると、

  1. 考え方などが現実に即している様。
  2. 理想や夢がなくて、実際の利害にのみさといさま。
    (大辞林)

と出ている。あまりポジティブな言葉ではなさそうだ。

言ってみれば「その時に感じている限界」に即して考える、行動することが現実的な考え方、現実的な行動ということになる。

例えば「地域社会から愛される商店になる」という理想を持った小売業者があるとする。
経営者はどうすれば地域社会から愛される商店になれるか考えてみるが、良い考えが浮かばない。従業員にも声をかけ一緒に考える。皆良い考えがないようで沈黙が続く。古参の経営幹部が「とりあえずお客様に感謝の意味を込めて割引セールでもしますか?」

こういうのが現実的な意見、現実的な解決策だ。

「お客様に愛される商店」という理想を実現したいと考えた背景には「永続的な繁栄」を手に入れたいという思いがあるはずだ。「安売り」で愛される商店では永続的繁栄はおぼつかない。

「とりあえず」という言葉が現実的であろうとする姿勢の表れであり、本来の可能性を制限している。
「地域社会から愛される商店」という理想の背景にある本当に望んでいる事は何かに焦点を当て、可能性を作り出す事に集中すべきだ。

「現実的に」とか「とりあえず」という言葉を聞いた時には注意が必要だ。


このコラムは、2018年11月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第749号号に掲載した記事に加筆・修正したものです。

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熟練工

 日本の中小企業の事例だ。この工場は精密部品の挽き物加工、直径1.0~10mmといった小径の部品加工を得意とする工場。製品は弱電用機構部品だ。この工場では常時4、5名の検査員が、顕微鏡で製品検査作業を行っている。

仕上がり寸法などは、AOI(自動光学検査)で自動化できるだろう。しかし熟練検査員の目視検査が必要不可欠だという。

検査員は顕微鏡をのぞいて、部品の雰囲気の変化を感じとる。「雰囲気」とはあいまいな表現だが、光の反射が違うなど「いつもと何かが違う」といったレベルの些細な差異だ。不良品とはいえないが、製造セクションにその感触を伝えることで不良が出る前に改善できると言う。

その「雰囲気の変化」が使用材料の間違いとか、熱処理工程の異常など、目視検査基準には書いてない不良や異常であったりするのだろう。

自動検査装置ではこの様な「雰囲気の変化」を見つけることは出来ないだろう。検査装置に人工知能を搭載すれば可能となるかもしれないが、熟練工達の暗黙智がなければ、計算機は学習出来ない。

日本と中国(もしくは途上国)に工場がある方は、ご経験があると思うが、日本工場の目視検査員は消費者リスクギリギリで検査するが、中国工場の目視検査員は生産者リスクを食いつぶして検査する。つまり、日本の目視検査員は顧客の受け入れ検査ギリギリの線で合格判定し、中国の目視検査員はオーバーキル気味で検査する、ということだ。

日本人検査員が年齢が高めで、良い具合に視力が衰えているとか、中国人検査員が職業的使命感に燃え、寸分の不良も許さない、などの理由があるかも知れない。しかしこれは真因ではないだろう。

この違いを生むのは、日本には長期安定雇用(企業側だけではなく従業員側も)の傾向があるためではないだろうか?この道何十年の熟練工がいる日本の工場と、離職率が月当たり二桁にならんとする中国工場では熟練工の暗黙智に大いに差があるだろう。

この差を埋めるには、日本の熟練工の暗黙智を彼らが定年になる前にAI化する。又は中国工場の企業文化を日本の企業文化に近づけ、中国人従業員の安定雇用を進める。この二つしか選択肢がないと思うが、あなたはどう思われるだろう。


このコラムは、2019年3月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第792号に掲載した記事に加筆しました。

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教育投資

 日本の製造業の力が徐々に落ちているのではないかという漠然とした不安がある。ラジオ番組で、企業の教育投資を日米で比較しているのを聞いた。
日本:GDP比0.1%
米国:GDP比2.0%
なんと20倍もの差がある。

他にも資料を調べてみた。

「生産性向上につながる 人材投資・人事改革」日本総合研究所によると、米国、スウェーデン、フランス、ドイツ、日本の時間当たり労働生産性伸び率1970~1990年:日本は9%。スウェーデンに次いで2位。2010~2015年:日本は0.4%程度。5カ国中最下位。4%近くある米国の1/10。

経済産業省の『「雇用関係によらない働き方」に関する 研究会・報告書』によると、OJT以外の人材育成投資をGDP比でイタリア、フランス、ドイツ、英国、米国、日本を比較すると2001年~2010年のデータで日本は最下位0.2%程度、一位のフランス1.8%と比較すると9倍の差がある。
さらに悪いことに、日本は1995年~2000年と比較すれば2001年~2010年の人材育成投資が半減している。その他の国は微減のドイツを除く4カ国は皆増加だ。

教育投資の低さと減少が、労働生産性伸び率の低下と順位後退につながっているのではないだろうか?

さらに従業員教育の内容に踏み込むと、階層別の教育に取り組んでいる企業の割合は以下の様になる。

  • 新入社員教育:93.5%
  • 新入社員フォロー教育:77.5%
  • 中級管理者教育:59.8%
  • 上級管理者教育:56.8%
  • 経営幹部教育:28.4%
    (「2016年度 教育研修費用の実態調査」産業総合研究所)

新入社員教育はほとんどの企業が取り組んでいるが、職位が上がるほど教育が行われていない。職位が上がるほど管理能力も上げなければならない。経験智だけで補えということなのか。

あなたの会社では、教育投資に対する目標があるだろうか?
もちろん教育にかける経費が目標であるはずはない。教育による従業員の能力向上、その結果得られる企業の成長を示す指標を目標にしなければならない。
利益の1%を教育投資に使って、利益が10%上がれば投資効率10倍という事になる。


このコラムは、2019年4月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第805号に掲載した記事に加筆しました。

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社内研修

 11月は品質月間だった。社内で品質に関する研修などを開催された方もあるだろう。我々も11月に品質関係の社内研修をしてほしいと依頼されることがある。

品質月間に合わせて、品質に関する社内研修をしよう、という発想だと思う。
しかし「品質月間だから」というのは社内研修をする理由にはならない。
研修は重要度は高いが、緊急度が低い。したがって先に計画を立てておかねば忙しくて実施できなくなってしまった、ということになりかねない。そのため計画を立てて品質月間に実施するという考え方は正しいと思う。

しかし目的が「年度計画達成」であるはずはない。

中国の古典にこんな言葉がある。
「不聞不若聞之、聞之不若見之、見之不若知之、知之不若行之、学至于行之而止矣。」(荀子・儒效篇)

聞かないことは聞くことに及ばず、聞くことは見ることに及ばず、見ることは知ることに及ばず、知ることは行うことに及ばない。学ぶこととは、そのことを行うことまでやって、そこでようやく終わりとなるのである。という意味だ。

知識があっても、知識が能力にならなければ意味がない。
能力があっても、能力を使わなければ意味がない。
能力を行動に移して初めて成果が得られる。

つまり研修の目的は、研修によって得られた知識を行動することによって成果を出すことだ。

自部門で仕事をするのにどんな能力がいるのかまず定義する。
そしてメンバー一人一人が現在それらの能力がどのレベルにあるのか調べ、スキルマップを作る。1年間でどこまで成長して欲しいのかを話し合い、教育計画を作る。教育計画には、ON-JT(仕事の経験で学ぶ)OFF-JT(研修などで学ぶ)の二通りがある。中間レビューで進捗をチェックしながら、年度末に達成度を評価する。

このような方法で、上司の期待を部下に理解してもらい、部下の成長にどう支援するか計画を作る。

そろそろ来年の計画を考える頃だと思う。
来年の年度計画には、間違っても「品質研修:年1回」と書かないように(笑)


このコラムは、2019年12月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第909号に掲載した記事に加筆しました。

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学習する組織

 人間は本来「学習する動物」だ。子供の成長を見れば明確だ。子供は旺盛な好奇心と学習意欲を発揮して、社会生活に必要な知識や知恵を学んでいく。しかし残念ながら、子供の頃に発揮された学習意欲は年齢とともに衰える。

学習意欲を減退させる典型的要因は、所属する組織が慣例重視で保守的であるということだ。慣例重視・保守的な組織で働くうちに、子供の頃に発揮できた学習意欲は減退する。
「仕事の効率を上げる」「顧客に喜んでもらう」という動機に支えられた提案が先輩や上司の保守的な慣例主義に否定され、提案する気力がなくなる。
新しい知識を取得しても仕方がないとメンバーが感じてしまう。提案するための学習意欲は無くなる。

逆に学習する組織の顕著な特徴は「組織が創造的かつ革新的である」ことだ。
「組織の創造性と革新性」と「メンバーの学習意欲」は互いに因果関係を伴う強い相関関係にある。

つまり「メンバーの学習意欲が高い」から「組織の創造性と革新性は高まる」そして「組織の創造性と革新性が高い」から「メンバーの学習意欲は高まる」ということだ。


このコラムは、2020年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1010号に掲載した記事に加筆しました。

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新千歳空港、雪で欠航相次ぐ

新千歳空港、雪で欠航相次ぐ Uターンの帰省客足止め
 北海道の新千歳空港が5日、大雪に見舞われ、午後11時半現在で発着する105便が欠航、114便に遅れが出た。年末年始を故郷や行楽地で過ごした人たちのUターンラッシュがピークを迎えており、航空各社のカウンターの前には長い列ができた。

 国土交通省新千歳空港事務所によると、5日夕方以降、急な降雪で2本の滑走路のうち1本ずつを一時閉鎖して除雪作業をした。航空各社によると、5日は多くの便が予約で満席となっていた。札幌管区気象台によると、新千歳空港の午後8時現在の積雪量は22センチ。空港がある千歳市には同日午前6時50分ごろから大雪注意報が出ていた。

 足止めされた帰省客らは大きな荷物を抱えて疲れた様子で、航空会社職員に「早く対応して」と詰め寄る人もいた。札幌市に観光に来ていた静岡県磐田市の会社員、牧野遼さん(27)は、羽田行きの便が欠航になり「今後どうするかを考えなければいけない」と肩を落とした。

(日本経済新聞より)

 大型連休の前後はこの手の報道が多くなる。
大渋滞で高速道路が駐車場化する。降雪で列車や航空機が遅延する。こういう事態は当然想定内だ。巻き込まれた方には気の毒だが、自己責任と考えるしかないだろう。必死に作業をしている職員に対し「早くしろ」などとクレームをつけるのも大人気ない。

40年ほど昔、金沢から東京に出かける用事ができた。折悪く大雪で国道、鉄道共に止まっていた。唯一小松空港だけが東京への道だった。小松空港は自衛隊と共用であり、どんなに積雪があってもスクランブルに備えて離陸可能にしている。
実はこの時、転職の面接試験を受けるため大雪の金沢を出て冬晴れの東京に出かけた。小松空港が積雪のため閉鎖となっていれば、今の自分はない。金沢の零細企業で定年を迎えていたかもしれない。逆に金沢で起業して、林屋亀次郎のような実業家になっていたかもしれない(笑)

自分で制御できない出来事に対して一喜一憂しても始まらない。
目の前に起きた出来事は失敗でもなんでもない。出来事に負けて諦めた時に失敗となる。


このコラムは、2019年1月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第769号に掲載した記事に加筆しました。

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鉄道輸出の誤算

“日本の技術の粋を集めた鉄道車両。国内需要は鈍り、車両メーカーは海外展開に力を入れる。だが最近は苦戦が目立つ。”

朝日新聞「経済+」の記事だ。
鉄道輸出の誤算:上 「あうんの呼吸」日本流通用せず
鉄道輸出の誤算:下 車両も保守も、総合力に課題

世界の列車メーカのシェアは以下のようになっている。
1位:中国中車(中国)
2位:シーメンス(ドイツ)
3位:ボンバルディア(カナダ)
4位:アルストム(フランス)
5位:ゼネラル・エレクトリック(アメリカ)
6位:日立製作所(日本)
7位:現代ロテム(韓国)
8位:シュタッドラー・レール(スイス)
9位:トランスマッシュ(ロシア)
10位:CAF(スペイン)
11位:川崎重工業(日本)

中国は中国国内のシェアが大きく、輸出は10%程度のようだ。

日本は国内市場が限られており、事業を維持・拡大するためには海外市場に出なければならないが、苦戦が続いているようだ。

川崎重工業は採算悪化に苦しんでおり、今後米国で取引の経験のある顧客向けに集中する。
日本車両製造は昨年、米国工場を閉鎖した。赤字の要因となっていた米国案件は独大手シーメンスが引き継いだ。
日立製作所は欧州での受注を広げてきた。今後は米国事業も強化する。

日本勢が振るわないのは、海外顧客との仕様の取り決めに遺漏がある。海外の仕入先、工事業者との意思疎通が不十分。などが大きな原因のようだ。

日本の製造業の強みは「すり合わせ」であると言われてきた。設計と製造、製造部門内あるいは顧客、仕入先、工事業者などとの協業が相互の溝を埋めるように出来ていた。ところが海外に出ると、言語的な障壁以上に「阿吽の呼吸」とも言える「すり合わせ」がうまくゆかず、手戻りによるコストロスや納期の遅延が発生し収益性が悪化しているようだ。

日本という国は「均一性」で調和するように出来ている。
「アレをいつもの様に」というだけで話がついてしまう。

しかし世界は「多様性」の中で調和しなければならない。
何ページもの詳細な仕様書で顧客の要求を確認しなければならない。
詳細な作業指示書がなければ、製造品質は保証できない。

残念ながら世界のやり方が標準であり、日本だけが特殊だ。
日本国内の市場は、どんどん小さくなっていく。その環境で成長するためには世界に出るしかない。日本の「特殊能力」を捨てることはないと思うが、世界標準で戦えるようにならなければならない。


このコラムは、2019年7月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第856号に掲載した記事です。

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相関関係と因果関係

 先週は散布図と相関係数を解説する動画をyoutubeに投稿した。

QC七つ道具:散布図 相関係数

散布図の書き方と相関係数の計算方法を解説した。
動画投稿後に大切なことを言い忘れていることに気がついた(苦笑)
因果関係にある事象は相関があるが、相関関係にある事象は因果関係がある訳ではないと言うことだ。

相関関係:二つの事象の増減の関係
因果関係:原因と結果の関係

因果関係があれば相関関係がある。
しかし相関関係があっても因果関係があるとは限らない。

相関関係があるが因果関係がない場合は次の例が有名だ。

統計データでは、アイスクリームの売り上げと森林火災件数に相関関係がある。すなわちアイスクリームの売り上げが上がると森林火災の件数も増える。アイスクリームの売り上げと森林火災を因果関係の文脈で言い換えると以下の様になる。
「アイスクリームの売り上げが上がったから森林火災が増えた」
「森林火災が増えたからアイスクリームの売り上げが上がった」
明らかにおかしい。

この事例ではそれぞれ別の因果関係があり、相関関係が発生している。

  • 気温が高いとアイスクリームの売り上げが上がる。
  • 夏季は気温が高く、乾燥しているので森林火災が発生しやすい。

例えば、国ごとのスマホ決済の普及率と財布の売り上げは相関がありそうだ。
スマホ決済が普及したので、現金が不要となり財布の売り上げが下がる。因果関係もありそうだ。

中国では鉄道、タクシーなどの交通機関、町の定食屋、屋台の果物売りまでスマホ決済が可能だ。そして財布を持っている人もほとんどいない。
相関関係も因果関係もありそうだ。
しかし中国では、スマホ決済が一般的になる前から財布を持っている人は殆どいなかった。


このコラムは、2020年7月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1004号に掲載した記事です。

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続・那覇空港ヒヤリハット事故

 2015年6月3日那覇空港で発生した自衛隊ヘリコプター、ANA、JTAの旅客機の重大インシデントを2015年6月15日配信のメルマガ第428号で取り上げた。

那覇空狐ヒヤリハット事故

離陸のため滑走路をタクシング中だったANA機の前方を、自衛隊ヘリコプダーが横切り、ANA機が緊急停止。ANA機離陸後に着陸予定だったJTA旅客機が、ANA機の前方に着陸した重大インシデントだ。一歩間違えればJTA機、ANA機が激突という大惨事となるところだった。

たまたま過去の記事を見ていて、本件に対し運輸省事故調査委員会はどの様に事故原因を特定したのか興味を持ち事故調査委員会の報告書を探して見た。2017年4月27日発行の「航空重大インシデント調査報告書」(AI2017-1)が見つかった。

重大インシデント発生の直接原因となったのは、

  • 自衛隊機はANA機への離陸許可を自機への許可と取り違えた。
  • 管制塔と航空機間のVHS無線通信のAGC(自動倍率制御)機能により自衛隊機の復唱が管制官に聞こえなかった。
  • 自衛隊機がタクシング中のANA機を発見するのが遅れた。
  • 管制官のJTA着陸機へのやり直し指示が遅れた。

その背景に、新人管制官の指導中だった管制官がギリギリの管制を新人に体験させたいと考えていたことを挙げている。またJTAでは着陸やり直しのシミュレーション訓練が行われていなかったことも機長が着陸復行ができなかった要因として挙げている。
根本的な原因として那覇空港が、民間航空会社と自衛隊の共用であるるため、離着陸の頻度が高いことが挙げられるだろう。

私たちがこの事例から学ぶことは

  • 安全が最優先されるべき。
  • 指示復唱の徹底。

復唱は「了解」「わかりました」の類では不十分だ。指示の内容を理解していること(重要度、緊急性、方法など)を確認しなければならない。したがって指示を出す側も、上記の点を明確に指示しなければならない。


このコラムは、2020年8月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1015号に掲載した記事です。

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続・京急脱線事故

 昨年9月5日、横浜市神奈川区の踏切内で京急電鉄の電車とトラックが衝突。電車は脱線横転。死者1名、重軽傷者30名の大事故が発生した。

京急脱線事故

本件に関して、運輸安全委員会は調査継続中であり2020年10月4日現在まだ事故原因報告書は公開されていない。

事故発生経緯は以下の通り。
道に迷った大型トラックが狭い道から右折して踏切に進入。曲がりきれずに、踏切から脱出するため切り返しを繰り返しているうちに列車と衝突した。列車は前方3両目まで脱線横転した。

この事例の根本原因は大型トラックが線路脇の細い道に迷い込んだ、という事だ。運輸安全委員会は調査で、トラック運転手から聞き取りをしているはずだ。非常に興味があり、いろいろ調べてみた。ネットを検索してわかったことは、横浜の人たちは道路名を次のように略称で呼ぶそうだ。
「イチコク」:国道15号線(第一京浜道路)
「ニコク」 :国道1号線
トラック運転手は、積み荷を受け取った(または降ろした)後次の目的地に行くために、倉庫の人に道を聞いたのではなかろうか?そこで「イチコク」に出て〇〇方面に……と教えらる。本来国道15号線に向かわなくてなならないところを国道1号線方面に行ってしまった。ということではなかろうか?

運輸安全委員会の報告書が出れば、仔細は判明するだろう。
しかしこのミスは我々にも無関係ではない。聞き間違いや部署内の符牒が原因となり思わぬミスが発生する可能性はある。

以前イチョウの実(銀杏に果肉がまだついている状態)を拾った人に「かぶれますよ」と注意したら、イチョウの実をかぶりついたことがある。関西弁では「かぶる」は「かじる」の意味だとその事件で知った。
落語にも、客と見習い古物商のやりとりで「その股引ちょっと見せてくれ」という客に対して「これはションベンできないよ」と答えるくだりがある。
ものづくりの現場でも色々な符牒、隠語がある。「ネジの頭なめちゃった」「ネジをかじった」などと言われて驚く人もいるだろう。

【注】
落語の「ションベン」は返品の意味です。
「最後はちょっとケツをまくっといてくれ」と女性に言ったら気分を害されるに違いありません。


このコラムは、2020年7月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1012号に掲載した記事です。

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