生産改善」カテゴリーアーカイブ

問題解決の第一歩・認識

 先週のコラムでは、問題解決の第一歩は問題を正しく定義する事だ、と書かせていただいた。

完成品倉庫が狭いのが問題ではない。問題を正しく定義すれば、出荷量より多く生産する事である。

完成品倉庫が狭いという「現象」は簡単に認識出来る。
従って、完成品倉庫が狭いという解決課題を定義しがちだ。解決課題が間違っていれば、問題は解決しない。

しかし実際の生産現場では、問題を認識出来ていない事が多い。
認識は出来ていても、「こんなモノだ」という現実受け入れ型の「諦め」が改善のチャンスをつぶすことになる。

例えば、エンジンのクランクシャフトを鍛造加工して、要求精度に仕上げる。
この方法では歩留まりは70%ほどだそうだ。従って後工程で切削加工をする。これが「諦め」だ。

歩留まり70%を受け入れてしまうと、削り代(けずりしろ)をみこんで鍛造加工し切削加工を追加することになる。材料も追加加工もムダだ。

歩留まり70%を諦めなければ、方法を考えることになる。
鍛造加工前に、たたいてあらかた形を作る。これだけで歩留まりは90%になったそうだ。

ダイキャスト成形をする時は、金型を交換して数ショットはきちんとした製品が出来ない。これを「試し打ち」として諦めてしまえば、改善はない。
試し打ちがムダであるという認識を持つことにより、改善が出来る。

試し打ちがムダだという認識を持てば、なぜ金型交換後のショットがうまく行かないか考える。金型の温度が上がっていないから、材料が金型の隅まで回らない。では金型の温度を上げれば良いだけだ。
金型の温度を上げる方法はいくらでも思いつくはずだ。


このコラムは、2012年8月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第270号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩

 問題解決の手法は沢山ある。
問題解決の一番重要なステップは、まず始めに課題を正しく定義する事だ。

例えば、
「受注が多くて出荷が間に合わない」というのは課題ではなく、現象だ。
正しい課題は「生産能力がなりない」ということだ。

同様な例を挙げると、
「製品倉庫が狭い」というのは課題ではなく「出荷より沢山生産してしまう」
ことが課題だ。

出荷不良を「検査をしているのに不良が顧客に流出する」と課題定義してしまうと「検査を強化する」という不毛な解決案が出て来る。
正しい課題は「工程内で不良が発生する」という事であり、これに対策をすれば「工程内不良をなくす」という本質解決を目指すことになる。
もちろん一足飛びに、工程内不良をなくす事はなかなか難しい。暫定的に検査強化をする事もあるだろう。しかしあくまでも「暫定対策」であることを明確にしておかなければならない。

問題の表層を見入るのではなく、本質を見て課題を定義しなければならない。

もう一つ重要なのは、課題を「自責」で定義する事だ。

上述の「出荷が間に合わない」を、顧客の注文が多い(他責)とすれば自分たちでは解決が出来ない。生産能力不足(自責)と課題を定義するから改善が出来る。

極端な例を挙げたが、意外とこの落とし穴にはまっている例を良く見る。

従業員の能力が足りないから、単純作業だけさせる。というのは、課題を従業員の問題(他責)として定義しているから、効果的な問題解決が出来ない。
従業員の育成が不足している(自責)と課題を定義すれば、いくつも解決案が出て来るはずだ。

「他責」は愚痴やあきらめしか生まない。
「自責」が工夫と改善を生む。


このコラムは、2012年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第269号に掲載した記事に加筆したものです。

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作業者は先生です

 もう10年近く前になるが、当時改善のお手伝いをしている工場でこんな話を伺た。
ある作業者が決められた作業標準に従っていなかった。現場監督者が注意しても、作業者はこの方が効率がよいと主張して言うことを聞かない。現場監督者は彼女に残業を与えないことにし、辞職させてしまった。

この一件を辞職願いにサインをする際に経営者が気がついた。辞職願いに書かれている文章も文字もきちんとしたものだったので事情を聞いてみて分かったそうだ。

この時の訪問指導では改善チームのメンバーに、作業者は先生なんだからその作業動作をよく見なければいけない、という話をもう一度した

作業標準を守らせることは重要だが、守らない作業者の動作をよく観察すべきである。毎日何千回と同じ作業を繰り返しているのだから、体でもっとよい作業方法を体得している可能性もある。それをいきなり叱ってしまっては改善のチャンスを失ってしまう。つまり、作業者は改善のヒントを教えてくれる先生なのだ。

作業を標準化するということは作業のばらつきを押さえるために必要である。
しかしその標準は、標準を作った時点で最良の作業方法かもしれないが、明日も最良であるという保証はない。標準化というのは進歩を止めてしまうことだ。標準をそのままにしておくということは世間の進歩に対して相対的に「退歩」することになる。

標準を決めたその日から改訂(改善)することを考えなければならない。

新規現場指導案件

 2年前に、四川省の中国企業を半年指導したことがある。
QCC活動を通して、現場の生産性を上げるプロジェクトを指導した。活動中に設計部門を改革すれば、生産性は劇的に上がると確信した。私に言わせれば、試作設計が終わった段階で量産を開始している様なモノだ。全ての作業が、現場の作業員による「現物合わせ」作業が必要になっていた。
これを改めるだけで、生産性は3倍4倍になるだろう。
しかし設計部門を統括している老副総経理は、ウチの製品は少量生産なので、この設計がベストだ、と言って譲らない(苦笑)

総経理とは、次のプロジェクトで設計部門の改革をしましょう、と話していたが、総経理は本社に帰任となり次のプロジェクトは無くなった。

プロジェクト終了後1ヶ月程経った頃、突然工場から電話があり生産性が3.5倍になったと報告があった。指導する時は、プロジェクトメンバーの改善能力を高める事に注力しているので、指導終了後にも改善が続いているのを知らせてもらえると非常に嬉しい。
設計部門の改革も出来れいれば、生産性は10倍以上にはなっていただろうと、若干残念な思いもあった。

その企業と同じく四川省にある同業の中国企業から、現場指導をして欲しいと連絡があった。いつの間にか四川省でも有名になったのだと喜んだ(笑)
しかし事実は、以前指導した工場の総経理が、広東省の本社に帰任後、同業の会社に転職したのだと分かった。
新規顧客ではあるが、リピート顧客でもあった訳だ(笑)

どちらにせよ、私の指導を覚えていてくれて、また依頼していただいた。
大変嬉しい事だ。


このコラムは、2015年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第416号に掲載した記事に加筆したものです。

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続・百聞は一見に如かず

 先週のコラムで、他社の現場を見る事ことにより、5S活動のモチベーションが上がった事例をご紹介した。
今週は別の企業の事例をご紹介したい。

5S交流会で中国人幹部に火がつき、自主的に5S活動を始めた日系刺繍工場だ。
日本本社社長が、出張で来るたびに現場がキレイになっているとおっしゃっている。

5Sがうまくいっている企業とそうでもない企業の違いを考えてみた。
5Sがうまくいっている企業は、以下の3点に特徴が有りそうだ。
・トップが率先して取り組んでいる。
・全従業員が参加している。
・楽しくやっている。

上述の刺繍工場では、日本人総経理が率先して5Sに取り組んだ訳ではない。
日本人総経理は「みんなに任せてあります」とおっしゃっている。
今までの経験では、こういう工場は5Sは盛り上がらない。
しかし経営者の指示ではなく、自主的に活動を始めて既に3ヶ月。大変興味が有り、先日工場を訪問して来た。経営者や幹部の話を聞いて理由が分かった。
中国人副総経理が本気で取り組んでいる。彼曰く「5Sが上手く行かなかったら、責任を取って会社を辞める覚悟です」。日本人総経理も日本本社社長も彼を全面的に支援している。

5Sが上手く行く理由「トップが率先して取り組んでいる。」は「経営幹部が率先して取り組んでおり、トップが全面的に支援している。」に変更する必要があるかもしれない(笑)

もう一つ5Sが上手く行く理由を挙げるとすると、活動の中心となるメンバーが、5Sがうまくいっている状態をイメージ出来ている、を追加すべきだろう。
他社との交流会により、5Sが素晴らしい職場を具体的にイメージ出来る事が大きいと考えている。


このコラムは、2015年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第437号に掲載した記事に加筆したものです。

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究極の教え方

 先週土曜日に第一期TWI導入サポート企業様のキックオフミーティングを開催した。何度でも再現できる教え方を習得し、教え方を標準化することにより、指導者が変わっても、作業員が変わっても、作業がバラつかない様にする。これがTWI-JIの目指すところだ。「科学的職業訓練」と言う名前を付けてみた。
これと対極の位置に有るのが「伝統的職業訓練」だと考えている。伝統的職業訓練とは「徒弟制度」の事だ。

TWIの導入を推薦している私は、徒弟制度を否定しているかと言うと、実は逆で徒弟制度は究極の職業訓練だと考えている。師匠の元に住み込み、弟子として、便所掃除からお茶汲みまで仕事と関係のない事から叩き込まれる。効率は非常に悪い。しかし徒弟制度で受継がれるのは、仕事の技術ではなく「魂」なのだ。師匠の命は限りが有る。いつかは亡くなる。しかし師匠の魂は弟子達によって次の世代へと受継がれる。そしてそのまた次世代の弟子へと受継がれて行く。

徒弟制度は、師匠の「業」をその魂と一緒に、大河の如く未来に受継いで行くためのシステムなのだ。

しかし我々の様に、工場でのモノ造りに関わっている者にとっては、徒弟制度は効率が悪すぎる。ほとんどの従業員が出稼ぎであり、3年で全員入れ替わる様な職場で「匠の業」を人生をかけて受継いで行く訳にはいかない。科学的職業訓練に頼ることになる。

私には、中国人の弟子がある。さすがに寝起きまで共にする訳には行かないが、そういう人達には、自分の全てを伝えたいと考えている。そうすれば、私が死んだ後も、私が先輩から受継いだ経験や考え方が人々の役に立つはずだ。

こちらの本は、家具職人の秋山利輝氏の弟子の育て方が書いてある。
「一流を育てる 秋山木工の職人心得」秋山利輝著

書籍中にある秋山氏の言葉を以下に紹介する。
「技術がいくら一流でも、技術だけではすぐ追いつかれてしまいます。でも 心はすぐには真似できません。……
 感動してもらうモノ造りは、心が一流でないと出来ないのです。……
 「できる職人」ではなく、一流の心と技術を持った「できた職人」を育てたいのです。」


このコラムは、2015年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第414号に掲載した記事です。

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TQCを捨てたツケ

 

TQCを捨てたツケ

日本メーカーの高品質を支えてきたTQC(統合的品質管理)や、TQCに欧米のマネジメント要素を取り込んだTQM(総合的品質管理)をやめてしまったからでしょう。1990年代、いわゆる「バブル景気」の崩壊により、日本メーカーは全体的に自信を失いました。そこから脱するために、米国式の経営管理手法を日本メーカーは積極的に導入しました。MRP(資材所要量計画)やERP(統合業務パッケージ)、SCM(サプライチェーン・マネジメント)といったものです。
ところが、これらは主に財務管理を強化するためのもので、品質については後回しになってしまった。そして結果的に、多くの日本メーカーはTQCやTQMをやめてしまったのです。実際、この頃、日科技連などでも品質関連の講座の受講者が大幅に減ったと聞いています。

(以下略)

 自動車業界で大規模リコールが何件も発生している。日本メーカの品質力は落ちてしまったのだろうか?と言う問いに対し、日野三十四氏(モノづくり経営研究所イマジン所長)は、品質が落ちていると言うよりも停滞しているとしながら、その原因をバブル崩壊以降自信をなくした日本人経営者が安直に、米国の合理的経営手法を真似したために、手を広げ過ぎ忙しくなりすぎたからと分析しておられる。

私も、バブル崩壊後に米国式経営に飛びついたのが、日本の品質力を落とした原因と考えている。しかし日野先生の分析とは少し違っている。

米国式の株主至上主義経営が、短期の利益を追求するあまり「現場力」を落としてしまったため、日本の品質力が落ちたと考えている。つまり現場の作業者を、派遣要員、契約社員に置き換えることにより短期的な経営数字改善を狙う経営をした。その結果現場にあった「暗黙智」が霧散してしまったのだ。

米国式のMRP、ERP、SCMを導入すれば、導入当初は手が回らなくなるのは理解できる。しかしこれらのツールは、オフィスワーカの生産性を上げる物であり、程なく余裕が出て来るはずだ。
現場力が失われたと言う私の分析の方が、的を射ている様に思うがいかがだろうか。

現場力が失われた結果TQC、TQMなど現場改善の活動が下火になって来た。
TQC、TQM活動の総本山である日本科学連盟(日科技連)に登録されているQCサークル数が年々減少傾向にある。以前は登録QCサークル数の年間推移グラフが公表されていたが、それが「累積登録数」となり、最近は日科技連のHPを探しても、単年度の登録QCサークル数しか見当たらなくなった(苦笑)

もう一度「現場力」を取り戻すためにQCサークル活動を活性化すべきだと考えている。QCサークル活動停滞の歴史を教訓とすれば、以下の様な活動方針に変えてゆくのがよいと思う。

・管理職が積極的に参加する。
 QCサークル活動は「ボトムアップ」活動として、一般従業員の自主性に任せられていた。自主性に任せる、と言えば聞こえはよいが、現実には「丸投げ」状態となっており、業務からかけ離れた活動となってしまった。活動はサークルメンバーの自主性に任せるが、活動テーマ選定時には、経営幹部、管理職も一緒に議論する。活動の成果が業務に直結すれば、サークルメンバーの達成感も経営側の満足度も上がる。

・QCサークルメンバーの自己実現の場とする。
 QCサークル活動による、メンバー個人の知識・経験の成長実感、達成感を重視する。チームワークを通して感動共有を計る。

・楽しくやる
 QCサークル活動を通して、仕事の楽しさを実感する。

この様な方針で活動をすれば、QCサークル活動がまた活性化すると考えている。社内のQCサークル活動の成果発表会や、他社との成果発表交流会がより活性化を高めるだろう。


このコラムは、2015年9月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第442号に掲載した記事です。

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TWI工場見学会

 2014年の2月に、主催している東莞和僑会の定例会で工場見学・交流会を開催した。
訪問した工場は、光センサーを応用した製品を生産する日系工場だ。

こちらの工場は、2007年に一度訪問したことがある。当時指導していた工場の幹部を数名連れて、工場見学をさせていただいた。全く違う業種だが何かしら得るモノがあるはずだが、ただ見ただけでは何も分からないだろう、と言う経営者の意向により、私が引率することになった。
当時から、コンジットパイプで作った作業ステーションを組み合わせた、フレキシブルな工程を作っておられた。

その後もご縁があり、同社の人事部長さんと知り合いになった。
社内にTWIを導入しようとしている彼女に、人財育成勉強会でスピーチしていただいた事もある。

TWIとはTraining within Industryの略で、仕事の教え方・指導方法を体系化したものだ。この手法は特に製造業の方々の参考になると思い、実際にTWIを実践しておられる現場での見学・交流会を開催することにした。

導入のきっかけは、離職率の上昇により、新人作業者が増え、生産性や品質が不安定になってしまった。新人に対する作業指導を改善し、品質、生産性を安定させるのが動機だった。そのために、現場の班長さんクラスにTWI手法を習得させることになった。これにより誰が指導しても同じレベルに教えることができる様になった。その結果、作業者が変わっても作業のバラツキが発生しない。従って品質が安定し、生産性は向上した。

離職率が高くても、問題がない体制を構築出来たが、実は離職率も半分近くに下がっている。

新しい事に取り組み、成果を出し継続する事は、多くの困難を伴うものだ。
ここ迄成果を出し、継続発展出来ている理由を自分なりに考えてみた。

◆幹部への権限委譲
TWI導入のアイディアは、日本人総経理が出している。しかし彼は「TWIという手法があるらしいよ」と言っただけだ。後は幹部が自ら調べ、導入を決めた。総経理があれこれ指示を出した訳ではない、部下を信じて任せた。
当然幹部達は、自分で考え自分で行動することになる。これが活動の意欲を上げる元になったと考えている。

◆人事部門の参与
TWI導入の鍵となったのは、人事部門だ。通常ならば、製造部門、生産技術部門が中心となってもおかしくはないはずだ。
人間は、変化に対して抵抗感を感じる傾向にある。新しい手法を制度として導入する場合、抵抗勢力が生まれる事がままある。人の心のマネジメントは、人事部門が一番良く知っている、だから人事部が中心となって進めました、と導入時の人事部長が語ってくれた。
TWI導入によって、給与制度や監督職・管理職の昇進要件も変更している。
導入後1年近くは、人事部門のスタッフが現場に入り込んで活動をした。

◆企業文化
上記の2点はともに「人」のモチベーションに関わる問題だ。
この工場には、人を育てて幸せにする、自己成長を目指す、と言う経営者と従業員間に共通した企業文化がある様に感じる。
この企業文化がTWI導入により更に強化されたのだろう。

その他に生産現場の見学で、以下の点に感銘を受けた。
◆新人ライン
新人だけで実生産ラインを組んでいる。通常導入時の研修をするとすぐに実生産ラインに新人を投入してしまうだろう。しかしこの工場は新人ばかりのラインを持っている。簡単な機種、ダブル品質検査をすることにより、リスク管理をしつつ新人の熟練度を上げることができる。

◆作業OJT
ネジ締め、リードカットのOJT実習をやっている。
通常半田付け、圧着作業などの特殊工程に関しては、OJT実習と資格制度を設けている工場は多い。特殊工程とは、品質検査をする事が不可能、又はコスト的に不合理な作業工程であり、品質保証が作業者のスキルに依存する工程を言う。
従ってネジ締め、リードカット作業も特殊工程であると言うのが私の持論だ。

東莞和僑会では、異業種との交流、工場見学により、経営者・経営幹部の気付き、成長が得られる様な定例会を開催している。


このコラムは、2014年2月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第349号に掲載した記事です。

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仕事の教え方

 指導先の工場は生産量が倍増し、作業員を大量に増員している。その結果、作業効率が大幅に低下する。工程内不良が激増する。という結果を招いている。製造担当の副総経理は、安定するまでに2週間はかかる、と諦め顔だ。

人がばらつけば、効率も品質もばらつく。作業手順を標準化しても、作業指導の手順を標準化してなければ、上記の様な結果となる。作業指導手順を標準化し、誰が指導しても、誰に指導しても、いつ教えても、同じ指導効果が得られる様にする。これがTWI-JI(企業内訓練・作業の教え方)の考え方だ。

通常作業指導法の研修には10時間かけている。指導人数も8人を超えない様にして、研修の効果を保証する様にしている。今回は顧客副総経理の希望により、2時間で50名弱の職場管理職、監督職に導入研修をした。初めてやる作業を、『教三連四』(三回教え、四回練習させる)を実演してみせた。仕上がりだけ見ても、どのような作業をすれば良いのか分からない。しかし『教三連四』の結果正確に、かつ同じ効率で作業出来る様になった。

本格的に導入するためには、更に多くの課題を実習し実践練習する必要があるが、作業員を直接指導している現場の監督者達、その上の管理職に学習意欲を持ってもらう事が出来た。

当初中途半端な指導をしても効果はないだろうと懐疑的であったが、対象者の学習意欲を高めると言う点で成果があったと考えている。
無理難題を克服し、成果を上げた助手を褒めてやりたい。


このコラムは、2016年10月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第500号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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まとめ生産と平準化生産

 以前「まとめ造りvs一個流し」と題したコラムをこのメルマガに書いた。
このコラムで、まとめ造りをするより、一個ずつ造った方が効率が良いと言う実験を紹介した。

「まとめ造りvs一個流し」

この例では、一個ずつ造れば、まとめ造りをするより30%近く作業時間を短縮出来る事を示した。

今回はまとめ生産と平準化生産について考えてみたい。

平準化生産は、まとめ生産より中間在庫が減り、出荷のフレキシビリティが上がる。

例えば、1工程、2工程で生産した部品を3工程で組み立てると言う製品Aが有ったとしよう。1工程、2工程は設備で加工、3工程は手作業で組み立て。
1工程、2工程の生産能力は、3工程の組み立て能力の3倍有る。
この場合、1工程、2工程は製品Aと同様の製品B、製品Cの部品も加工することになる。

1工程、2工程は1日で製品Aの3日分の部品、翌日製品Bの部品3日分、3日目に製品Cの部品3日分を生産する。これをまとめ造り生産と言う。

平準化生産は、一日に1工程、2工程は製品A、製品B、製品Cの部品を一日分ずつ生産する。

まとめ生産の場合は、中間在庫は製品ごとに1~3日分(全体で6日分)となる。全製品が出荷可能になるのは部品生産開始から4日目だ。
一方1、2工程で毎日1日分ずつ3種類の部品を生産すれば、中間在庫は各製品1日分(全体で3日分)となる。しかも部品の生産開始から2日目に全製品が出荷可能になる。

この様にメリットが有るが、まとめ生産を変えない工場が多い。
それは1工程、2工程の生産設備の段取り替えに時間がかかるため、なるべくまとめて生産した方が効率が良いと考えているからだ。

設備の「可動率」を上げる事は重要だが、全体で調和がとれていなければ意味はない。
まとめ造りはしないと決め、平準化生産を阻害する要因の改善(例えば段取り替え時間を短縮する)を考える方が健全だと考えるが、いかがだろうか?


このコラムは、2015年8月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第438号に掲載した記事です。

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