電動パーキングブレーキのリコール
ホンダは12月12日、電動パーキングブレーキの不具合で生産を停止している軽自動車『N-WGN』『N-WGNカスタム』のリコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。
対象となるのは2019年7月4日~8月30日に製造された9437台。不具合箇所は電動パーキングブレーキアクチュエータとスプリングパッケージの2つ。
電動パーキングブレーキアクチュエータについては、モータ配線接続部の圧着端子の加締めが不十分、またはモータのコンミテータおよびブラシの製造が不適切なため、走行振動でモータ内の接触抵抗が一時的に増加するとモータ回路断線検知信号が乱れてVSA(車両挙動安定化制御システム)が異常を検知し、故障と判定することがある。そのため、警告灯、警告表示が点灯して、駐車ブレーキが作動・解除できなくなるおそれがある。
(response.jpより)
ホンダはこの市場不良で、新車の販売も延期している。
公表されている情報から問題を推測し問題を以下のように整理した。
- 圧着(加締め)不良
- モータ内部品(コンミンテータ、ブラシ)の製造不良により、制御システムが故障と判断し、駐車ブレーキの作動・解除ができなくなる。
圧着作業が正しくできたかどうか検査しようとすれば、圧着強度の測定(破壊検査)が必要となり全数検査はできない。正しい工具、作業員の技能(作業法及び目視検査)で品質を保証することになる。このような作業(作業者の技能に品質が依存する作業)工程を「特殊工程」という。
モータ内部品の製造問題は、精度を保証する工程能力(Cpk)が不足していたのだろう。これは製造設備の精度だけでなく、設計時の精度配分の考慮不足もありうる。
この問題を上流工程(設計時)で保証するためには、設計標準を持つべきだ。
もちろん具体的な公差を決定するような標準ではない。可動側、固定側の公差をどう分配するかを標準化する。設計が悪ければ、量産試作時に後戻りが発生。それを「経営判断」で量産開始をすると、工程内不良で悩むことになる。最悪顧客が使用開始した後の環境ファクターのばらつきで市場不良が発生する。
そして量産試作時に工程能力が足りていることを確認する。
手間がかかるようだが、この過程で手を抜くと大きな損失を招くことになる。
本件に戻って考察をすると「電動パーキングブレーキ」は本当に必要な機能なのだろうか?設計より前の商品企画時にどんな議論があったのか、そこから考え直さなければ、問題は形を変えて再発するだろう。
このコラムは、2020年1月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第934号に掲載した記事です。
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