孔kǒng子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ有yǒu三sān戒jiè。少shào之zhī时shí，血xuè气qì未wèi定dìng，戒jiè之zhī在zài色sè⁽¹⁾；及jí其qí壮zhuàng⁽²⁾也yě，血xuè气qì方fāng⁽³⁾刚gāng， 戒jiè之zhī在zài斗dòu⁽⁴⁾；及jí其qí老lǎo也yě，血xuè 气qì既jì衰shuāi，戒jiè之zhī在zài得dé⁽⁵⁾。”

《论语》季氏第十六-7

⁽¹⁾色：色欲
⁽²⁾壮：壮年
⁽³⁾方：まさに。ちょうど〜の頃合い。
⁽⁴⁾斗：闘い
⁽⁵⁾得：欲得

素読文：

孔こう子し曰いわく：“君くん子しに三戒さんかい有あり。少わかき時ときは、血けっ気き未いまだ定さだまらず。之これを戒いましむること色いろに在あり。其その壮そうなるに及およびてや、血けっ気き方まさに剛ごうなり。之これを戒いましむること闘とうに在あり。其その老おいるに及およびてや、血けっ気き既すでに衰おとろう。之これを戒いましむること得うるに在あり。”

解釈：

孔子曰く：“君子に三戒あり。若い時は血気が定まらず、色欲を戒むべし。壮年時には血気盛んであり、闘を戒むべし。老いては血気が衰え、欲を戒むべし。”

壮年と老年の境がどこなのかはわかりませんが、争いを好まず欲もない自分は何を戒むべきでしょうか。

子zǐ曰yuē：君jūn子zǐ贞zhēn⁽¹⁾而ér不bú谅liàng⁽²⁾。

《论语》卫灵公第十五-38

⁽¹⁾贞：正しいこと
⁽²⁾谅：頑なに信じること

素読文：
子し曰いわく、君くん子しは貞ていにして諒りょうならず。

解釈：
子曰く：“君子は正しいことには心変わりしないが、頑なに信じこむわけではない”

人間は歳を取ると頑固になり自説を振り回す傾向にあるようです。
歳を取ったら、若い頃より更に謙虚でありたいものです。

子zǐ曰yuē：君jūn子zǐ谋móu⁽¹⁾道dào不bù谋móu食shí。耕gēng也yě，馁něi⁽²⁾在zài其qí中zhōng矣yǐ；学xué也yě，禄lù⁽³⁾在zài其qí中zhōng矣yǐ。君jūn子zǐ忧yōu道dào不bù忧yōu贫pín。

《论语》卫灵公第十五-32

⁽¹⁾谋：苦労して求める
⁽²⁾馁：飢える
⁽³⁾禄：官吏として俸禄を得る

素読文：
子曰く：“君子は道みちを謀はかりて食を謀らず。耕たがやすや、餒うえ其その中うちに在り。学まなぶや、禄ろく其その中うちに在り。君子は道を憂うれえて貧ひんを憂うれえず。”

解釈：
子曰く：“君子は道を追究するが、食は追求しない。食うために田を耕す者も飢えることはある。学べば禄を得ることもある。君子は道を修められないことを憂うが食を得られないことは憂えない”

道を謀るというのは、ただ知識を蓄えることではなく、得た知識を活用すること。行動があれば成果はあります。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ不bù以yǐ言yán举jǔ人rén，不bù以yǐ人rén废fèi言yán。”

《论语》卫灵公第十五-23

素読文：
子し曰いわく：“君くん子しは言げんを以もって人ひとを挙あげず。人ひとを以もって言げんを廃はいせず。”

解釈：
子曰く：“君子は言葉だけで人を抜擢しない。人物が劣っていても、その人の良い言葉を廃したりしない”
口先だけの人はダメだが、職位や官位が低くても良い意見は登用する、そういう人が君子だと孔子は言っています。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ矜jīn⁽¹⁾而ér不bù争zhēng，群qún而ér不bù党dǎng。”

《论语》卫灵公第十五-22

⁽¹⁾矜：重々しい、厳粛

素読文：
子し曰いわく：“君くん子しは矜きょうにして争あらそわず、群ぐんして党とうせず。”

解釈：
子曰く：“君子は厳粛にして他人と争わず、人と交流するが群れない”

君子は和して同ぜず。
君子は周して比せず。
孔子は君子の心得として同様なことを何度も語っています。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ疾jí⁽¹⁾没mò世shì⁽²⁾而ér名míng不bù称chēng⁽³⁾焉yān。”

《论语》卫灵公第十五-20

⁽¹⁾疾：恥じる
⁽²⁾没世：死んだ後
⁽³⁾不称：自分の名が世間に評判にならない

素読文：
子し曰いわく：“君くん子しは世よを没ぼっするまで、名なの称しょうせられざるを疾にくむ。”

解釈：
孔子曰く：“君子は死んだ後に、自分の名が称賛されないのを恐れる。”

君子たるもの仁を尽くし、道を極め徳を積むことが本懐です。名前が称賛されることは、結果であって目的ではありません。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ病bìng⁽¹⁾无wú能néng焉yān，不bú 病bìng人rén之zhī不bù己jǐ知zhī也yě。”

《论语》卫灵公第十五-19

⁽¹⁾病：気に病む、心配する。

素読文：
子し曰いわく、君くん子しは能のう無なきを病うれう。人ひとの己おのれを知しらざるを病うれえざるなり。

解釈：
君子たるものは自らが無能であることを憂う。しかし人から認めてもらえないことには憂えない。

子zǐ曰yuē：君jūn子zǐ义yì以yǐ为wéi质zhì⁽¹⁾，礼lǐ以yǐ行xíng之zhī，孙xùn⁽²⁾以yǐ出chū之zhī，信xìn⁽³⁾以yǐ成chéng之zhī，君jūn子zǐ哉zāi。

《论语》卫灵公第十五章-18

⁽¹⁾质：本質
⁽²⁾孙：謙遜
⁽³⁾信：信義

素読文：
子し曰いわく：“君くん子しは義ぎ以もって質しつと為なし、礼れい以もって之これを行おこない、遜そん以もって之これを出いだし、信しん以もって之これを成なす。君くん子しなるかな。”

解釈：
子曰く：“道義をもって本質とし、礼儀に従って行動し、謙虚に発言し、信義を以て成し遂げる。これでこそ君子と言える。”

子zǐ曰yuē：“直zhí哉zāi史shǐ鱼yú⁽¹⁾。邦bāng有yǒu道dào如rú矢shǐ⁽²⁾，邦bāng无wú道dào如rú矢shǐ。君jūn子zǐ哉zāi，蘧qú伯bó玉yù⁽³⁾。邦bāng有yǒu道dào则zé仕shì⁽⁴⁾，邦bāng无wú道dào则zé可kě卷juǎn而ér怀huái之zhī⁽⁵⁾。”

《论语》卫灵公第十五-7

⁽¹⁾史鱼：衛の大夫。名は鰌しゅう。字あざなは子魚
⁽²⁾如矢：矢のようにまっすぐな性格。
⁽³⁾蘧伯玉：衛の大夫。姓は蘧きょ。名は瑗えん。伯玉は字あざな。
⁽⁴⁾仕:士官する。
⁽⁵⁾卷而怀之：才能を隠し世に出ない。

素読文：
子し曰いわく、直ちょくなるかな史し魚ぎょ。邦くにに道みち有あれば矢やのごとく、邦くにに道みち無なきも矢やのごとし。君くん子しなるかな蘧きょ伯はく玉ぎょく、邦くにに道みち有あれば則すなわち仕つかえ、邦くにに道みち無なければ則すなわち巻まきて之これを懐ふところにすべし。

解釈：
孔子曰く：“史魚は真っ直ぐな性格だ。世間に道が有っても無くても矢のように真っ直ぐでいられる。蘧伯玉は君子だ。世間に道があれば世に出て士官する。世間に道がなければ才能を隠し世に出ない。”
ここでいう「道」は道路ではなく道徳とか道理のことと理解しました。
しかし邦に道無くば、出て世を正すのが本物の君子ではないでしょうか。

子zǐ路lù问wèn君jūn子zǐ。子zǐ曰yuē：“修xiū己jǐ以yǐ敬jìng。”　曰yuē：“如rú斯sī而ér已yǐ乎hū？”　曰yuē：“修xiū己jǐ以yǐ安ān人rén⁽¹⁾。”　曰yuē：“如rú斯sī而ér已yǐ乎hū？”　曰yuē：“修xiū己jǐ以yǐ安ān百bǎi姓xìng⁽²⁾。修xiū己jǐ以yǐ安ān百bǎi姓xìng，尧yáo⁽³⁾舜shùn⁽⁴⁾其qí犹yóu病bìng诸zhū？”

《论语》宪问篇第十四-42

⁽¹⁾安人：上層の人を安心させる。
⁽²⁾安百姓：庶民を安心させる。
⁽³⁾尧：中得五帝时代（紀元前3077年〜紀元前2029年）第四代皇帝。
⁽⁴⁾舜：中得五帝时代第五代皇帝。

素読文：
子路しろ君くん子しを問とう。　子し曰いわく：“己おのれを脩おさめて以もって敬けいす。”　曰いわく：“斯かくのごときのみか。”　曰いわく：“己おのれを脩おさめて以もって人ひとを安やすんず。”　曰いわく：“斯かくのごときのみか。”　曰いわく：“己おのれを脩おさめて以もって百ひゃく姓せいを安やすんず。己おのれを脩おさめて以もって百ひゃく姓せいを安やすんずるは、堯舜ぎょうしゅんも其それ猶なお諸これを病やめり。”

解釈：
子路が君子の道をたずねた。
孔子曰く：“慎みをもって修養することだ”
子路問う：“それだけでしょうか”
孔子曰く：“己を修養して人を安んずることだ”
子路問う：“それだけでしょうか”
孔子曰く：“己を修養して天下の民を安んずることだ。天下万民を安んずるのは、堯や舜のような聖天子も心をなやまされたのだ”

堯や舜の時代はどうだったのかわかりませんが、己を脩めた人も立場が変わると民を安んじるよりは、己を安んじることに熱心になるようです。