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ココロの授業

 久々に日本に戻ってきている。
中国工場で生産をされている会社に連日出かけ打ち合わせをしている。
移動の時間は読書時間だ。2日間で3冊の本を読んだ。

その中の1冊
「私が一番受けたいココロの授業」を紹介したい。
上田情報ビジネス専門学校で教鞭をとる比田井和孝、比田井美恵夫妻による新刊だ。

比田井氏は上田情報ビジネス専門学校で就職指導の授業を持っておられる。
この授業は学生に就職合格させるための授業ではない。学生たちが仕事を通じ成長し幸せな人生が送れる様にするためにどういうココロのあり方を持たねばならないかを教えているのだ。

職業人としてのココロのあり方をきちんと教えることにより仕事へのモチベーションを高める事が出来る。これは日本も中国も同じである。

授業の内容を再現する体裁になっているが、教え子との交流など思わず落涙するくらい感動をした。
この本を読む方は電車の中で読まないことをお勧めする。


このコラムは、2008年9月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第52号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

教育投資

 日本の製造業の力が徐々に落ちているのではないかという漠然とした不安がある。ラジオ番組で、企業の教育投資を日米で比較しているのを聞いた。
日本:GDP比0.1%
米国:GDP比2.0%
なんと20倍もの差がある。

他にも資料を調べてみた。

「生産性向上につながる 人材投資・人事改革」日本総合研究所によると、米国、スウェーデン、フランス、ドイツ、日本の時間当たり労働生産性伸び率1970~1990年:日本は9%。スウェーデンに次いで2位。2010~2015年:日本は0.4%程度。5カ国中最下位。4%近くある米国の1/10。

経済産業省の『「雇用関係によらない働き方」に関する 研究会・報告書』によると、OJT以外の人材育成投資をGDP比でイタリア、フランス、ドイツ、英国、米国、日本を比較すると2001年~2010年のデータで日本は最下位0.2%程度、一位のフランス1.8%と比較すると9倍の差がある。
さらに悪いことに、日本は1995年~2000年と比較すれば2001年~2010年の人材育成投資が半減している。その他の国は微減のドイツを除く4カ国は皆増加だ。

教育投資の低さと減少が、労働生産性伸び率の低下と順位後退につながっているのではないだろうか?

さらに従業員教育の内容に踏み込むと、階層別の教育に取り組んでいる企業の割合は以下の様になる。

  • 新入社員教育:93.5%
  • 新入社員フォロー教育:77.5%
  • 中級管理者教育:59.8%
  • 上級管理者教育:56.8%
  • 経営幹部教育:28.4%
    (「2016年度 教育研修費用の実態調査」産業総合研究所)

新入社員教育はほとんどの企業が取り組んでいるが、職位が上がるほど教育が行われていない。職位が上がるほど管理能力も上げなければならない。経験智だけで補えということなのか。

あなたの会社では、教育投資に対する目標があるだろうか?
もちろん教育にかける経費が目標であるはずはない。教育による従業員の能力向上、その結果得られる企業の成長を示す指標を目標にしなければならない。
利益の1%を教育投資に使って、利益が10%上がれば投資効率10倍という事になる。


このコラムは、2019年4月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第805号に掲載した記事に加筆しました。

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社内研修

 11月は品質月間だった。社内で品質に関する研修などを開催された方もあるだろう。我々も11月に品質関係の社内研修をしてほしいと依頼されることがある。

品質月間に合わせて、品質に関する社内研修をしよう、という発想だと思う。
しかし「品質月間だから」というのは社内研修をする理由にはならない。
研修は重要度は高いが、緊急度が低い。したがって先に計画を立てておかねば忙しくて実施できなくなってしまった、ということになりかねない。そのため計画を立てて品質月間に実施するという考え方は正しいと思う。

しかし目的が「年度計画達成」であるはずはない。

中国の古典にこんな言葉がある。
「不聞不若聞之、聞之不若見之、見之不若知之、知之不若行之、学至于行之而止矣。」(荀子・儒效篇)

聞かないことは聞くことに及ばず、聞くことは見ることに及ばず、見ることは知ることに及ばず、知ることは行うことに及ばない。学ぶこととは、そのことを行うことまでやって、そこでようやく終わりとなるのである。という意味だ。

知識があっても、知識が能力にならなければ意味がない。
能力があっても、能力を使わなければ意味がない。
能力を行動に移して初めて成果が得られる。

つまり研修の目的は、研修によって得られた知識を行動することによって成果を出すことだ。

自部門で仕事をするのにどんな能力がいるのかまず定義する。
そしてメンバー一人一人が現在それらの能力がどのレベルにあるのか調べ、スキルマップを作る。1年間でどこまで成長して欲しいのかを話し合い、教育計画を作る。教育計画には、ON-JT(仕事の経験で学ぶ)OFF-JT(研修などで学ぶ)の二通りがある。中間レビューで進捗をチェックしながら、年度末に達成度を評価する。

このような方法で、上司の期待を部下に理解してもらい、部下の成長にどう支援するか計画を作る。

そろそろ来年の計画を考える頃だと思う。
来年の年度計画には、間違っても「品質研修:年1回」と書かないように(笑)


このコラムは、2019年12月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第909号に掲載した記事に加筆しました。

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学習する組織

 人間は本来「学習する動物」だ。子供の成長を見れば明確だ。子供は旺盛な好奇心と学習意欲を発揮して、社会生活に必要な知識や知恵を学んでいく。しかし残念ながら、子供の頃に発揮された学習意欲は年齢とともに衰える。

学習意欲を減退させる典型的要因は、所属する組織が慣例重視で保守的であるということだ。慣例重視・保守的な組織で働くうちに、子供の頃に発揮できた学習意欲は減退する。
「仕事の効率を上げる」「顧客に喜んでもらう」という動機に支えられた提案が先輩や上司の保守的な慣例主義に否定され、提案する気力がなくなる。
新しい知識を取得しても仕方がないとメンバーが感じてしまう。提案するための学習意欲は無くなる。

逆に学習する組織の顕著な特徴は「組織が創造的かつ革新的である」ことだ。
「組織の創造性と革新性」と「メンバーの学習意欲」は互いに因果関係を伴う強い相関関係にある。

つまり「メンバーの学習意欲が高い」から「組織の創造性と革新性は高まる」そして「組織の創造性と革新性が高い」から「メンバーの学習意欲は高まる」ということだ。


このコラムは、2020年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1010号に掲載した記事に加筆しました。

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続・若手中国人リーダ

 先週紹介したC君と同じ工場で働く製造部長さんを紹介したい。彼も30代の有望な若手中国人リーダだ.

彼の職場の改善指導をした時に、物のおき方を変えるともっと効率よく作業できますよ。という話をした。

次の回に訪問した時に、彼から加工前の部材置き場を変えたら生産性が17%上がったと報告を受けた。きちんと作業員の歩行時間を評価して立派な報告であった。

自分でちゃんと考え実行に移す。それを相手に分かるようにプレゼンする。簡単そうだが、これがきちんとできる人はそうは多くはない。

しかし私にはちょっと物足りない。
実はこの歩行時間は「外段取り」にできるはずなのだ。彼は私のヒントだけで改善はできたのだが、改善効果は明らかに「机上計算」だけだ。そして歩行時間を「外段取り」にすることに気がつかなかった。

彼にはもっと現場でモノを考えるように指導する必要がある。


このコラムは、2009年4月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第94号に掲載した記事です。

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若手中国人リーダ

 大手日本企業の中国工場で働くC君は、会社の現地化政策によりこの4月から副工場長に昇格した。

初めて彼と会ったとき生産現場の指導で「ここはこうしたらどう?」と質問をしたら「実は同じことを上司に提案しました」と切り替えされた。よくいる口先だけは立派な事が言えるが、行動が伴わないタイプかなと思ってしまったが、どうも違ったようだ。その後彼と一緒に現場で指導をしていて分かった。

訪問指導日の朝、ミーティングの時に「今日の課題」を彼から言って来る。簡単なことのようだが、これができる中国人若手リーダはそうはいない。与えられた課題をこなす事が出来る人はいくらでもいるがいつも物足りなく感じていた。

自ら課題が提起できるのはリーダとして重要な資質だ。

またC君は全く遠慮なく私をこき使ってくれる(笑)
今まで指導した工場で中国人リーダから直接質問や依頼のメールを受けることはなかった。彼は「○○をコストダウンしたいが、良い方法(材料)はないか」とどんどん私に仕事をくれる。

他部署の力をうまく借りる人間性も備えているようだ。

職場では部下の作業員を集めてしょっちゅうミーティングをしている。面白いのはミーティングが終わるときに、自分がポンと一つ手を叩くと参加者が「了解」の合図のように全員でポンと手を叩くようにしている。まるで決起集会のあとの一本締めのようだ。

C君は自分の部下ではないが、このような人材と一緒に仕事が出来て彼の成長の手助けができれば、こんな光栄なことはない。


このコラムは、2009年4月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第93号に掲載した記事です。

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行動評価

 毎月1回中国でがんばっている日本人経営者・経営幹部の皆さんと集まって「人財育成勉強会」をしている。
「人材」を「人財」に変えるために、具体的なワークをしたり事例研究をしている。

6ヶ月間「従業員のモチベーションを上げる」をテーマとして取り組んできた。

この勉強会メンバーが基本的に合意している認識は、福利厚生、給与は不満の解消にはなるが、モチベーションを上げるには効果が薄いと言うことだ。一方「公平な評価」はモチベーションを上げる効果があると認識している。

評価において数値評価ができるもの、例えば営業職ならば売り上げ目標に対する達成度などは具体的に数値で評価できる。こういう評価は公平感を維持するのは比較的たやすい。
しかし勤務態度とか勤務意欲などは定量評価が難しい。無理やり点数をつけたとしても、評価者によって大きく異なってしまう。こういう場合は公平感を保証するのは困難となる。

例えばこんな事例もある。
上級管理職で中国人管理職を一人ひとり評価をしていると、人によって大きく評価が変わってしまう。
理由は簡単だ。直属の上司に対しては非常に協力的だが、他部署の上司に対しては何かと理由をつけて仕事を断ってくる。こういう人間に対しては直属の上司の評価は高いが、他の部署の管理職から見ると仕事ができない人間に見えてしまう。

これは評価すべき態度・意欲のありかたとその基準が不明確であるためだ。

そこで期待される勤務態度・意欲を持った人間はどのような行動をとるかを定義する。そしてその行動が取れれば加点する「行動評価主義」を採用すればよいと考えている。

勉強会ではこのテーマに時間を割き、リーダとしての「行動評価基準」を作成した。

これを評価者だけの秘密の評価基準にするのではなく、基準をオープンにする。オープンになっていれば、全ての従業員が会社が期待する行動がどういうものか理解できる。その期待に沿えば給与も上がることが理解できれば、正しい方向に努力するだろう。

上記の例では「部門間協力」「全社的立場での視点」について経営者がどのような行動を期待しているかを明確にしておけば良いわけだ。

いくら機械化を進めて人を減らしても最終的には「人質」が経営に大きな影響を与える。むしろ機械化を進めてゆけば、作業者よりも中間管理職以上の職位の重要性が増す。この人たちの「人質」を上げないことには、機械化投資の負担ばかり増えて業績は上がらないだろう。


このコラムは、2009年11月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第125号に掲載した記事です。

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人材の下には人材が隠れていても育たない

人材の下には人材が隠れていても育たない

一倉定

「社長の教祖」と呼ばれる経営コンサルタント一倉定の言葉である.

実は年末から年始にかけて今春創刊される雑誌のための原稿を書いていた.私に与えられたテーマは「人材育成」そんなわけでこんな言葉を思い出した.

トップから外に出しなさいと,私もよく言っている.
トップを外に出すとその組織の二番手三番手にチャンスが回ってくる.彼らはチャンスをつかもうとモチベーションを上げてがんばる.これで組織が活性化し成長パワーを発揮する.

トップが居座っていると二番手三番手が上に行くチャンスがなくなる.こういう状態の組織は閉塞感が漂い停滞するものだ.

組織のトップを移動させるのは大変勇気のいることだろう.
トップを動かす(または離職する)ことを恐れて組織を停滞させてしまっては元も子もない.それよりは勇気を持って組織を活性化させたほうが良い結果につながるはずだ.


このコラムは、2008年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第15号に掲載した記事に加筆したものです。

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高離職率組織の運営

 たった7人(内日本人2人)の幹部で、2,000~2,500人の組織を運営している。しかも2,000人超の実動部隊は無給だ。無給どころかプロジェクトの活動費は、彼ら自身で調達してくる。

このメルマガで何度か紹介した原田燎太郎さんが率いるハンセン病元患者支援の学生ボランティア組織「家-JIA-」の事だ。

メルマガ過去記事
世界を変える
モチベーションの高め方

学生なので、卒業し社会人となれば、ボランティア活動も卒業だ。従って最長4年で組織を離れて行く。つまり年間離職率は最低でも25%だと言う事だ。
このような組織で、成果を出し続けている。
学生ボランティアは、高い貢献意欲を持ち、無給でも喜んでプロジェクトに参加してくる。この秘密を理解できれば、企業経営役立てる事が出来るだろうと考え、東莞和僑会に「家」の原田さん、菅野さんを招き、参加者と共に議論した。

原田さんや菅野さんにとって当たり前に出来ている事は、我々には「奇跡」と言って良いレベルだ。東莞和僑会定例会では出し尽くせなかった秘密を探ろうと、有志メンバーで更に議論を重ねている。

「家」の学生ボランティアは、ボランティア活動の計画、実行、総括のPDCAをまわす事が出来る。大卒新人に社内プロジェクトを任せる事が出来るだろうか?多分そのような無謀なチャレンジをする企業はないだろう。これが出来るのは「家」の教育システムに有る事は分かっている。後は、ボランディアのモチベーションを上げる、場のエネルギーを上げる方法を理解できれば、企業経営にも応用可能だと考えている。

これを体系的に整理し、経営者や経営幹部に対して教育訓練するプログラムを開発すれば「家」の慢性的資金難は解決できると期待している。

しかし事態は急を要するようだ。
最近原田さんから、緊急メッセージが来た。円安により日本の財団からの支援金が目減り、中国財団からの支援も期間短縮で目減りしている。その結果「家」運営事務局の維持が困難になっている。学生ボランティアを育成・支援している母体が無くなってしまえば、ハンセン病支援ボランティアはなくなってしまう。それよりも彼らが、排出し続けているボランティア経験を持つ優秀な新社会人が無くなる。これは大きな社会損失だ。

私個人が出来る支援では、焼け石に水だろう。
このメルマガを読んでおられる方々の支援を是非お願いしたい。

企業として支援、個人として定期的に支援、単発で支援、いろいろな方法が選べる様になっている。

「家」ホームページから支援が出来る様になっている。

ホームページの「サポートする」と言うタグをクリックすると、支援方法の説明が有る。
日本の郵便振替以外にも、中国工商銀行、香港HSBCへの振込が可能だ


このコラムは、2015年12月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第456号に掲載した記事に加筆修正しました。

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何を学ぶか、子どもが決める

 「君は今年、何を学ぶの?」。新学年が始まる2月初め、ニュージーランドの高校では教師が生徒によく、こんな質問をします。40以上の科目から、生徒自身が、興味や将来の進路に合わせて選ぶためです。授業も講義がメイン
ではなく、生徒が自らテーマを決めて課題に取り組み、教師はサポートに回るスタイルです。

(朝日新聞電子版より)

 ニュージーランドの公立高校では、教師から「教わる」のではなく、自ら「学ぶ」方式がとられている。
日本では、子供に必要な教科を国が準備して教育をする方式だ。この記事を読んで、日本方式は教える側の都合ではないかと言う疑念を感じた。

確かに、読み書き計算の基礎的な能力は等しく教えなければならないだろうが、高校生に画一的な教育をする必要があるだろうか?日本の高校は大学予備校の位置づけになっており、大学受験に合格する「学力」を身につけることが目的化してしまっているのではないだろうか?

そう簡単には解決できる問題ではなさそうだ。
しかし企業の中で行われる人材教育は、大学受験を考慮する必要はない。

宇宙産業に取り組む中小企業・カムイスペースワークスの植松社長は「教育とは死に至らない失敗を安全に経験させるためのモノです」と言い切っている。

「思うは招く~自分たちの力で最高のロケットを作る!」植松努著

会社が無くなってしまう様な失敗は経験させることは出来ないが、仕事で失敗することで得られる学びは大きいはずだ。
「学び」とは「体験」と言い換えることが出来そうだ。
良き指導者は、部下に体験を通して成長支援ができる人だ。


このコラムは、2016年2月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第464号に掲載した記事です。

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