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続・京急脱線事故

 昨年9月5日、横浜市神奈川区の踏切内で京急電鉄の電車とトラックが衝突。電車は脱線横転。死者1名、重軽傷者30名の大事故が発生した。

京急脱線事故

本件に関して、運輸安全委員会は調査継続中であり2020年10月4日現在まだ事故原因報告書は公開されていない。

事故発生経緯は以下の通り。
道に迷った大型トラックが狭い道から右折して踏切に進入。曲がりきれずに、踏切から脱出するため切り返しを繰り返しているうちに列車と衝突した。列車は前方3両目まで脱線横転した。

この事例の根本原因は大型トラックが線路脇の細い道に迷い込んだ、という事だ。運輸安全委員会は調査で、トラック運転手から聞き取りをしているはずだ。非常に興味があり、いろいろ調べてみた。ネットを検索してわかったことは、横浜の人たちは道路名を次のように略称で呼ぶそうだ。
「イチコク」:国道15号線(第一京浜道路)
「ニコク」 :国道1号線
トラック運転手は、積み荷を受け取った(または降ろした)後次の目的地に行くために、倉庫の人に道を聞いたのではなかろうか?そこで「イチコク」に出て〇〇方面に……と教えらる。本来国道15号線に向かわなくてなならないところを国道1号線方面に行ってしまった。ということではなかろうか?

運輸安全委員会の報告書が出れば、仔細は判明するだろう。
しかしこのミスは我々にも無関係ではない。聞き間違いや部署内の符牒が原因となり思わぬミスが発生する可能性はある。

以前イチョウの実(銀杏に果肉がまだついている状態)を拾った人に「かぶれますよ」と注意したら、イチョウの実をかぶりついたことがある。関西弁では「かぶる」は「かじる」の意味だとその事件で知った。
落語にも、客と見習い古物商のやりとりで「その股引ちょっと見せてくれ」という客に対して「これはションベンできないよ」と答えるくだりがある。
ものづくりの現場でも色々な符牒、隠語がある。「ネジの頭なめちゃった」「ネジをかじった」などと言われて驚く人もいるだろう。

【注】
落語の「ションベン」は返品の意味です。
「最後はちょっとケツをまくっといてくれ」と女性に言ったら気分を害されるに違いありません。


このコラムは、2020年7月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1012号に掲載した記事です。

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バスケットシューズ

 スポーツ用品大手ナイキの「大失態」が米メディアをにぎわせている。米大学バスケットボール界のスーパースターが20日の試合で、履いていた同社製シューズが壊れたため膝を痛めて負傷退場。全米に衝撃を与えた影響で同社の株価が急落し、ロイター通信は21日の時価総額への影響を約14億6千万ドル(約1621億円)とまで算出した。

 負傷したのは男子の全米大学体育協会(NCAA)1部デューク大のエースで、プロのNBAで抜群の人気を誇るレブロン・ジェームズ選手の再来との呼び声も高いザイオン・ウィリアムソン選手。有名校との黄金カードで、靴底がはがれたために足を滑らせて転倒した。

(共同通信)

 バスケットの試合中にシューズの靴底が剥がれ、転倒。選手が怪我をした、というニュースだ。記事ではナイキの株価が急落したとあるが、2月27日には終値で86.17USDを付け2月の高値を更新している。

事故の翌日の終値は83.95USD前日の終値84.84USDから1.1%下落したが、27日の終値で2.6%上げている。市場は報道より冷静の様だ。

ナイキは過去にタイ工場で若年労働者を雇用し不祥事を起こしている。
おかげで当時顧客から中国工場の安全衛生管理監査を受ける事となった(苦笑)
その監査で工場玄関に掲げた「女工募集」の横断幕が、男女雇用均等の精神に反していると指摘を受けた(苦笑)

すでに10年ほど前になるが、スポーツシューズはナイキだろうがNBだろうが1足60元程度だった。もちろん中国製の偽物だ(笑)
エアークッションがついたナイキもどきのランニングシューズを使っていた。エアークッションに穴があきエアーが抜けた。そして程なく靴底がパックリと剥がれた。ランニングマシンで躓いた程度で怪我などしなかったが、相当恥ずかしかった(笑)

スポーツシューズメーカの大方は、すでに中国での生産を撤退しているだろう。ニュースの当該シューズはベトナム生産ということだ。

ネットの情報を見ると、怪我をした選手よりナイキに同情的な論調だ。

  • トップ選手なのに1万5千円程度のシューズを履いていた。
  • 身長、体重ともに大きな選手なので靴に負荷がかかりすぎた。
  • 三週間も同じ靴を履くなんて非常識。

どうも私の常識とは別世界の様だ。バスケットシューズを履く選手の体格が大きいことは想定範囲だろう。もしプロユースに使って欲しくないのならば、それなりに機能・性能を加減して設計し、その様に宣伝すべきではなかろうか。もちろん「アマチュア仕様」などとうたって宣伝することはない。逆に高機能モデルに「プロ仕様」と宣伝すれば良いだけだ。
こうしておけば、プロ選手がヤワな靴を選ばなくなるし、マニアがプロ仕様を喜んで買うのではなかろうか?


このコラムは、2019年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第793号に掲載した記事です。

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地下鉄脱線事故

 6月1日夜に発生した横浜市シーサイドライン自動運転列車逆走事故を先週配信のメールマガジン835号「列車逆走事故」で取り上げた。

「列車逆走事故」

6月6日早朝に横浜市地下鉄ブルーラインで脱線事故が発生した。
新聞記事に事故原因が公表されている

「点検作業、手順書なし ブルーライン脱線事故」
  横浜市営地下鉄ブルーラインの脱線事故で、横浜市交通局は近く事故調査委員会を局内に立ち上げる。保守作業員が「横取り装置」と呼ばれる器具を点検した後、線路上に置き忘れた初歩的ミスが原因とみられるが、現場ではこの器具の点検に関する手順書がなく、作業時の役割分担があいまいなことも判明。組織や職員の意識の問題点を洗い出し、再発防止につなげる。
 (以下略)
全文

朝日新聞ディジタルより

記事によると、夜間保線作業に使った「横取り装置」を本線上に置き忘れた。そのため、始発列車が横取り装置に乗り上げ脱線した。という経緯の様だ。

横取り装置とは、工事用車両が側線から本線に乗り入れるための分岐装置だ。レール脇に設置されており、使用時には固定ピンを外し本線側に接続する。固定ピンを外すと回転灯とブザーが警報を発生する仕組みになっている。

本来横取り装置が本線につながっている間は、固定ピンを外したままにする様設計されていたのであろう。しかしこの作業時には固定ピンを戻し警報を止め、作業終了後も横取り装置の撤去を忘れてしまった。

固定ピンは、横取り装置の外し忘れ防止の「ポカ避け」として設計したのだと思われる。しかしその設計意図が現場に伝わっていなかった。もしくは警報音がうるさいので故意に固定ピンを戻した。といういわゆる「人為ミス」だ。

新聞記事には保守管理所は3ヶ所あり、事故を起こした保守管理所だけが作業手順書を作っていなかった、と書いてある。しかし「作業手順書」がないのが原因ではなく「標準作業」を決めてないのが原因と考えるべきだろう。

通常生産現場では、設備治具の設計者が標準作業を決めているだろう。従ってポカ避けの設計思想がきちんと現場に反映される。さらに標準作業が遵守され、それを確認する作業を織り込んで作業手順書を作成する。作業手順書は実際に作業をする側で作成するのが通常だろう。

今回の事例では横取り装置の標準作業は装置の設計部門で作成。その手順書は保守作業部門で作成する。とするのが合理的の様に思う。標準作業には固定ピンの役割(ポカよけ)が明示してあり、固定ピン脱着のタイミングが明確に規定してある。
手順書には、標準作業に従った作業の手順と確認方法が規定してある。

生産現場でも、生産技術が開発した設備・治具に関する標準作業は生産技術が作成。その作業手順書は製造部門が作成。標準作業と作業手順書に矛盾がない事を品質保証部門が確認。

煩雑な役割分担の様に見えるが、設計思想をきちんと現場に伝え、現場は自分たちがやりやすい作業手順を決めることができる。


このコラムは、2019年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第838号に掲載した記事です。

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旅客機滑走路逸脱事故

 4月23日に山形空港で名古屋行きフジドリームエアラインズ(FDA)386便が離陸時に滑走路を逸脱した事故があった。

運輸安全委員会の事故調査は、2020年9月時点で調査中のままだ。

「滑走路逸脱のFDA機、車輪操作装置に不具合 山形空港」

 山形空港で4月、フジドリームエアラインズ(FDA)の旅客機が離陸走行中に滑走路を逸脱した重大インシデントで、国の運輸安全委員会は28日、旅客機の車輪を操作するステアリング装置の一部に不具合が見つかったと明らかにした。

 FDAの聞き取りでも、機長は「機体が左にそれたので戻そうとしたが、(車輪を操作する)フットペダルを踏んでも戻らなかった」などと話していた。原因を特定するため、運輸安全委は飛行データや機体を詳細に調べるという。

 インシデントがあったのは4月23日夕。名古屋行きのエンブラエル175型機(乗客・乗員計64人)が離陸走行中、全長2千メートルの滑走路の途中で左にそれて草地で止まった。けが人はいなかった。運輸安全委によると、直後の初期調査でステアリングの不具合が見つかったという。

朝日新聞 DIGITALより)

事故機はエンブラエル社製ERJ175。エンブラエル社(ブラジル)はあまり耳にしないが、エアバス、ボーイングに次ぐ世界第3位の航空機メーカだ。カナダのボンバルディアより売り上げ規模が大きいらしい。

実はERJ175より一回り小さいERJ145を、広西省出張時にしばしば利用した。左1列、右2列という変則的な座席レイアウト。搭乗ドアがタラップになっており、ボーディングブリッジには接続できず沖スポからの搭乗。ひょいと離陸する軽やかさなど印象のある機体だ。

事故機は2016年6月製造、2019年1月に「重整備」が行われている。おそらく何も問題はなかったのだろう。

記事にある「旅客機の車輪を操作するステアリング装置」とは航行中方向舵を操作するフットペダルだ。地上でタキシングする際には前輪の向きを変える役割を持つ。

ここまでの情報で大胆にも「素人考え」で事故原因を推測してみた(笑)

事故機は駐機位置から誘導をを通って滑走路までタクシング出来た。従って離陸開始までは前輪操舵機能には問題がなかったはずだ。離陸後はフットペダルは方向舵の制御に使う。離陸後のタイミングで、手動または自動で前輪/方向舵の制御が切り替わるはずだ。

離陸開始後から離陸前にこの切り替わりが発生すれば、前輪の方向を制御しようとフットペダルを操作しても、虚しく方向舵の角度が変化するだけとなる。

従って今回の事故は、前輪/方向舵の切り替えに何らかの人為ミスまたは故障があったと推定してみた。

多分新聞記事になった時点(5月28日)で、事故調査官はすでに答えを知っているだろう。本当の事故原因はわからないし、今後公表されないかも知れない。それでも、原因を考えてみるのは「頭の体操」だけではない。以下の様な効果がある。
今回の事例では「モード切り替え」「タイミング」をキーワードと考えることが出来る。

  • モード切り替えができない。
  • 予期せぬタイミングでモード切り替えが発生する。

という潜在要因の引き出しが増えるはずだ。
これは自社の製品設計、工程設計の時の潜在不具合要因となる。
同様に問題原因解析時に挙げることができる問題要因が豊富になる。


このコラムは、2019年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第832号に掲載した記事に追記しました。

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人工知能は万能か?

 3月9日付の朝日新聞に興味深い記事が出ていた。
「AIが男女格差を広げる?」

IBMのAIコンピュータ・ワトソンの開発者・村上明子氏は、AIを使って人材採用システムを開発したが、女性の応募者を低く評価することが分かったという。
適用しようとした米国の企業は男性中心の職場が多い。その様な状況をAIにディープラーニングさせれば、男性尊重、女性軽視となるだろう。結局、この人材採用システムは運用されることはなかった。

日本では、大学医学部入試に関連して男女不平等がいまだに根深く残っていることが明らかとなってしまった。その様な社会が吐き出すビッグデータからAIが学び取ることは、不平等社会・格差社会の拡大再生産となりかねない。

従来の計算機支援は、コンピュータの思考過程はプログラムという形で開発者が制御し、可視化が可能だった。しかしディープラーニングによる計算機支援はAIがどの様な思考過程を経たのかブラックボックスだ。

「標準」「規則」に盲目的に従うことも同様だ。
標準や規則はそれを制定した時には、最高の方法であり合理性を備えていた。しかしその時点で最高の方法が、今でも最高であるとは限らない。「標準」「規則」に縛られることと、過去のデータを解析して得た人工知能は同じ構造の問題ではなかろうか。


このコラムは、2019年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第796号に掲載した記事です。

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責任と裁量

 仕事の責任を果たすためにはそれに見合った裁量が必要である、という考え方は合理的な様に思える。部長の責任を果たすためには部長の裁量が必要、と言い換えれば当然の様に思える。

逆に新卒社員が事業戦略を考えるのに忙しいといって、コピー作業を断る事はできないだろう。

しかし「仕事」とは本来その様なものなのだろうか?

能力がある者に裁量が与えられ、仕事を完結させる責任を持つ、という考え方は、固定化された階層組織的考え方だ。大企業、官僚組織などはこの様な考え方をしなければ組織を維持できないのかもしれない。

しかし勢いのあるベンチャー企業は、逆の考え方をしているのではなかろうか?
逆の考え方とは、能力がある者が裁量を獲得し、仕事を完結させる責任を持つ。

裁量は上から与えられるモノではなく、自分から獲得するモノであり、責任を果たすのは義務ではなく自らの喜びである。


このコラムは、2019年2月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第786号に掲載した記事です。

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中国でのビジネスは“潮時”

 ダイアモンドオンラインに「中国でのビジネスは“潮時”引き際でも悶絶する日系企業」と言う特集コラムがあった。
長文なので引用をしないが、ご興味がある方はご覧いただきたい。

「中国でのビジネスは“潮時”引き際でも悶絶する日系企業」

ローコスト生産国ではなくなった中国で生産を継続する意義がなくなった工場が、中国を撤退する際に、多くの困難に出会っていると言う。法人格を持たない来料加工だった頃は、工場設備などが地方政府の財産と見なされ、設備の引き上げに苦労させられた、と言う話を良く耳にした。

このコラムでは、工場をたたむ時に従業員に支払う経済補償金問題について、「撤退は中国人従業員の暴挙・暴動と背中合わせ」と触れている。つまり法定の経済補償金額に「色づけ」する金額の多少により、従業員が暴徒となる、と言っている。

対策として、法律家のアドバイスを紹介している。

  1. 日本企業のような民主的解決は避ける。
  2. 計画・時期・金額は秘密裏に決める。
  3. 一度、案を示したらそれを曲げない。
  4. 提示から合意まで一気呵成に行う。
  5. 従業員を団結させずできるだけ分散させる。

もし今済々と中国工場を経営している経営者がこのアドバイスを聞いたらどう感じるか大変興味がある。

この様な考えでは、撤退時に従業員から突き上げを食らうだろう。
工場を閉鎖する、しないに関わらず、従業員がいつかは退職する事は、初めから分かっている。それのための資金を内部留保として積み立てておくのが、普通の感覚だ。

上記5項のアドバイスには、従業員を信じる姿勢が欠落している。
会社経営は、経営者と従業員の信頼関係の上に成り立つ。経営者は、仕事を通して従業員が成長し、仕合せになる事を目的とする。従業員はそれに応えて能力を上げ、業績に貢献する。この様な信頼関係の下で経営をすれば、従業員は、常日頃から経営者に対して感謝の気持ちを持つはずだ。

経営の成果は、従業員の感謝の気持ちに比例する。

ローコスト生産国中国で「中国人を使ってやる」と言う上から目線の経営では、世界の市場に変わった中国で「顧客(中国人)にモノを売る」と言う変化に対応出来ず、撤退することになる。

中国でのビジネスには確かに「潮時」が来ている。
それは、ホンモノだけが残って行くと言う流れだ。残ったモノの価値は上がる。


このコラムは、2014年3月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第353号に掲載した記事です。

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知っている事、知らない事、知らない事すら知らない事

 先週のメルマガにこんな事を書いた。
「チャンスを逃したと知っている人はまだいい、次のチャンスのために準備すれば良いのだ。しかしチャンスを逃した事すら知らない人は、改善することは難しい。」

これを書いた時に、世の中には「知っている事」と「知らない事」があり、更に「知らない事すら知らない事」がある事に気がついた。言葉遊びの様で恐縮だが、「知らない事を知っている人」は調べることができる。しかし「知らない事を知らない人」は調べる事すら出来ない。

例えば、日本国内で使用する電源プラグコードは全て電気用品安全法と言う法規に適合していなければならない事を知っていれば、電気用品安全法適合マーク(PSEマーク)が入った電源プラグコードを購入することができる。しかし電源プラグコードが電気用品安全法の適用を受ける事を知らないと、安全規格に適合していれば大丈夫と考えてしまう。

以前日本の大手電気メーカが、自社製品にPSEマークのない電源プラグコードを添付して販売してしまったことがある。このプラグコードはUL/CSA安全規格に適合しており、問題ないと判断してしまったのだろう。

ミスを犯した人間の上司は、当然確認義務があったはずだが、部下が知らない事を知らなかったため、チェックが出来なかった。

後半は私の想像だが、部下が知らない事を知らなかったために「安規は大丈夫か(PSEマークはあるか)?」と確認したが、部下は「ハイ。(UL/CSA)規格適合品です」と答えたのだろう。

本当は括弧の部分が重要なのだが、相手が知っていると油断している場合は、この様な事が発生しそうだ。

新人の場合は、知らない事を知っているので問題は起きない。
中堅の部下、中途採用の経験者などは「知らない前提」で対応した方が安全だろう。
ミスはミスを犯した者の責任と考えている上司にはこういう発想は出来ない。


このコラムは、2014年3月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第354号に掲載した記事です。

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過去は道しるべにはならない

 ジャック・ウェルチは「過去は道しるべにはならない」と言っている.

参考書籍:「ウェルチ―リーダーシップ・31の秘訣」

過ぎ去ってしまった事はもう変える事は出来ない.正しかろうと,間違っていようと,もうどうにもならない.過去から学ぶ事はあるが,大して役には立たない.それよりも,明日を変えるために今日を懸命に生きる事が大切だ.

朝日新聞の電子版に,「第8回中国人の日本語作文コンクール」で最優秀賞を取った湖北大学外国語学院日本語学科4年の李欣晨さんの,文章が出ていた.ちょっと長いが,全文を引用する.

 幼い頃から夜空に対して特別な感情を抱いている。私の心に焼き付いているのは、夜空の下で昔の物語を話してくれた、穏やかで優しい顔つきの祖父である。物語の細部はもうはっきり覚えていないが、主人公が苦難辛苦の後、ついに幸せを手に入れた、と結末を語る時の祖父の口元に浮かぶかすかなほほ笑みはまだ記憶に新しい。

 月日が流れ、幼い私も成長するにつれて様々なことが分かるようになった。祖父はもともと軍人であり、朝鮮戦争に出たことや、功績によって勲章を与えられたことも知ったのである。しかし、日ごろ優しく穏やかな祖父と、生臭い戦争とはどうしてもつながらなかった。

 中学生の時のある夏休み、腰の持病が再発した祖父を見舞いに行った。マッサージをしてあげた時、背中の目立つ傷痕が目に入ったのである。「おじいさん、背中の傷痕はずいぶんひどいね」と思わず言った。「ああ、それは戦争の時、炸裂(さくれつ)した砲弾の破片に傷つけられたんだよ」と祖父は答えた。「痛かったでしょう」と私が言うと、「ま、あの時はこれぐらいの傷は気にもしなかったよ」と祖父は言ったのである。聞きたいことがたくさん湧いてきたが、言い出せなかった。それは苦しい記憶を思い出させたくないと思ったからである。

 その後、祖父から戦争の話を聞く機会があった。さっきまでぴんぴんしていた友人が、あっという間に目の前で亡くなったことや、すぐそばで砲弾が炸裂したことや、銃弾の雨あられを冒して進んだことなどを語ってくれた。戦争の残酷さや恐ろしさが身に沁(し)みる。安心して眠ることさえできず、毎日不安と恐怖にさらされていたそうだ。いつ、どこで自分の命を失うかもわからない。それでも、祖父は戦い抜いた。そして、祖父は話の最後にこう言った。「今のような生活を過ごせるのは決して容易なことではない。大切に
すべきだ」と。祖父の一言は私の胸に深く響いた。

 世界の長い歴史において、戦争はつねに消そうにも消せない影としてある。戦争のせいで、無辜(むこ)の民は辛酸をなめ尽くし、飢餓や病魔にたえて、希望の見えない未来に臨んだ。ある雑誌でこんな話を知った。第2次世界大戦が終結して間もなく、アメリカの婦人たちがドイツ兵士の墓に花を捧げたのである。どうしてかつての敵国の兵士にそんなことをするのかと尋ねたら、「彼らも私たちのような母の子です」と答えた。別れの苦しみに耐えて、息子を戦場に送った母親たちは、前線にいる息子の安否を気遣ってやまなかった。だが、最後に待ちに待った団欒(だんらん)の代わりに、戦死の知らせが届いたのである。そういう苦痛を同じく味わった母親たちだからこそ、敵味方の分け隔てなく生命の貴重さが感じ取れるのだろう。

 中日両国間にもかつて戦争があった。そのせいか、両国民は先入観をもってお互いに悪いレッテルを張り合っている。このようなマイナスの雰囲気に直面する度に、祖父の一言が常に思い出される。「今の生活を大切にすべきだ」。ごく平凡な一言だが、そこに含まれた重みをつくづく感じさせる。人間というものは欲張りなもので、現在享受している、身の回りに溢(あふれ)れている幸せを軽んじがちである。過去の戦争で無数の人々が命を投げ出したのは、「平和な生活を過ごすために」という願いのためだったはずだ。現在、この願いは中日両国ではすでに実現されている。それなのに、過去の影に縛られて
互いに罵(ののし)り合い、頭上の明るい光に気づかないとは、なんと嘆かわしいことであろうか。それより、憂えなく、昇った朝日の光を浴びることや、家族団欒で食事することなどの日常生活の潤いに感謝すべきだ。地下で永遠の眠りにつく犠牲者が望んだのは、戦争から悪いレッテルを張り合うことではないだろう。

この作文コンクールを主催している日本僑報社から,
「中国人がいつも大声で喋るのはなんでなのか?」という作品集が出ている.


このコラムは、2013年3月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第301号に掲載した記事です。

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宇宙産業

 日経新聞の記事で、アストロスケールの岡田光信氏を知った。彼は、地球の周りに周回している宇宙ゴミ(デブリ)を除去する為の衛星を打ち上げようとしている。

日経新聞記事『NASAも注目、「門外漢」が挑む宇宙の大掃除』

用途済みとなった衛星やその破片をデブリと言う。ソフトボール以上の大きさのデブリは2万個強有ると言われている。それらが秒速8kmで地球の周回軌道を飛び回っている。現役の静止衛星に激突すれば、太陽電池パネルを損傷する位の被害は簡単に与えてしまう。誰も言わないが実は深刻な問題なのだ。

デブリを放置すれば、世界の通信インフラは早晩壊滅する。
衛星TVが見れなくなるくらいならば、我慢出来るだろうが、GPSが機能しなくなる、気象衛星が機能しなくなる、など当たり前になっている社会インフラがなくなるのだ。

地球を周回しているデブリの9割は、ロシア、米国、中国の物だそうだ。寿命の来た衛星を放棄するたびにデブリは増える。そして新たに上げた衛星にデブリが激突する確率は指数関数的に増加する。当然米露中の三国が責任を持って宇宙空間の清掃をすべきだ。しかし今の所宇宙空間を清掃する効果的な方法が開発されていない。

この課題を解決する為に、宇宙産業と全く関係がなかった岡田氏が乗り出した。デブリに抱きついて、大気圏に落ち燃え尽きる、と言う無理心中方式でデブリを片付けて行こうと言う作戦だ。デブリに抱きつく子機を衛星に仕込んで、ゴミだらけの宇宙空間に衛星を打ち上げる為に、日本の中小企業の力を結集しようとしている。

一回衛星を打ち上げれば10億円程の費用がかかる。これらの費用を回収して利益を出す収益モデルは新聞記事からは読み取れなかった。この様な事業をボランティアでやる訳には行かない。ゴミ大国米露中からきちんと費用を回収出来るビジネスモデルが構築出来ることを切に願う。

きちんと収益を上げられる様になったら、責任の所在が不明確な破片デブリを回収する為に、折りたたみ式の粘着版を展開し、小型デブリを一網打尽で処理する「デブリホイホイ」の開発もしてもらいたい。

岡田氏のすごい所は、門外漢でありながらその業界の課題を見つけ、その課題を解決する情熱を持っていることだ。
例えば原子力業界の人達は、使用済み核燃料の処理を諦め、未来に先送りしている(まだ注目されていないが、研究が進んでいると、個人的には信じたいが)そういう業界に向って、いきなり使用済み核燃料処理に取り組む様なモノだ。豆腐業界のオカラ処理とは桁違いの難易度だ。

門外漢の岡田氏には技術力は無い。しかし彼の志しに意義を感じる仲間は、手弁当で集まって来るだろう。このブロジェクトが、ビジネス的にも地球環境整備的にも成功することを切に願っている。


このコラムは、2015年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第427号に掲載した記事です。

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