コラム」カテゴリーアーカイブ

相関関係と因果関係

 先週は散布図と相関係数を解説する動画をyoutubeに投稿した。

「QC七つ道具:散布図 相関係数」

散布図の書き方と相関係数の計算方法を解説した。
動画投稿後に大切なことを言い忘れていることに気がついた(苦笑)
因果関係にある事象は相関があるが、相関関係にある事象は因果関係がある訳ではないと言うことだ。

相関関係:二つの事象の増減の関係
因果関係:原因と結果の関係

因果関係があれば相関関係がある。
しかし相関関係があっても因果関係があるとは限らない。

相関関係があるが因果関係がない場合は次の例が有名だ。

統計データでは、アイスクリームの売り上げと森林火災件数に相関関係がある。
すなわちアイスクリームの売り上げが上がると森林火災の件数も増える。
アイスクリームの売り上げと森林火災を因果関係の文脈で言い換えると以下の様になる。
「アイスクリームの売り上げが上がったから森林火災が増えた」
「森林火災が増えたからアイスクリームの売り上げが上がった」
明らかにおかしい。

この事例ではそれぞれ別の因果関係があり、相関関係が発生している。

  • 気温が高いとアイスクリームの売り上げが上がる。
  • 夏季は気温が高く、乾燥しているので森林火災が発生しやすい。

例えば、国ごとのスマホ決済の普及率と財布の売り上げは相関がありそうだ。
スマホ決済が普及したので、現金が不要となり財布の売り上げが下がる。
因果関係もありそうだ。

中国では鉄道、タクシーなどの交通機関、町の定食屋、屋台の果物売りまでスマホ決済が可能だ。そして財布を持っている人もほとんどいない。
相関関係も因果関係もありそうだ。
しかし中国では、スマホ決済が一般的になる前から財布を持っている人は殆どいなかった。


このコラムは、2020年7月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1007号に掲載した記事に加筆しました。

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長目飛耳

 幕末の教育者・吉田松陰は松下村塾で明治維新の志士、明治政府の政治家を育成している。松田松陰は「飛耳長目」と題したノートをいつも携えていたと言われている。

「飛耳長目」は春秋時代の思想家・管仲の言葉から出ていると知り調べてみた。管仲の言葉を弟子が編纂した「管子」の九守が原点のようだ。

『一曰長目,二曰飛耳,三曰樹明;明知千里之外,隠微之中,曰動姦,姦動則変更矣。』
中国では『長目飛耳』というようだ。

一に長目、二に飛耳、三に明察、千里の外に隠れたるわずかな邪悪を洞察し、動乱を阻止する。という意味になるだろう。

これは治世のみならず、我々製造業に携わる者にとっても示唆のある言葉のように思える。

僅かな変化に目を凝らし、微かな異音に耳を凝らす。そして異常の兆候を知る。
それにより不良の発生を事前に察知し、問題が起きる前に手を打つ。

千里眼の能力がなくても、変化に気付く感性があれば可能だ。

例えば組み立て工程で不良部品を入れる箱に、規格外のネジを見つけた時に作業者が規格外のネジに気がついて除去したと安心してはいけない。すでに組み立て終わった製品に規格外のネジが使用されていないか?と心配する。そしてなぜ規格外のネジが混入していたのか原因を調べる。このような感性が「長目飛耳」だと言えるだろう。


このコラムは、2019年5月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第822号に掲載した記事に加筆しました。

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減収減益のボーイング、生産体制のずさんさが明らかに

 米ボーイングは24日、2019年1~3月期の決算を発表した。売上高は前年同期比2%減の229億ドル(約2兆5600億円)で、純利益は同13%減の21億4900万ドルの減収減益だった。

 減収減益の主因は3月10日に発生したエチオピア航空の事故以来、新型機「737MAX」の出荷を停止していることにある。同日のカンファレンスコールでデニス・ミューレンバーグCEOは「社員全員で737MAXの提供を早急に再開できるよう全力を尽くす」と話した。だが、問題解決には経営陣が考えているより長い時間がかかりそう。米国で同社の機体生産体制のずさんさがあばかれ、注目を集めているからだ。

 きっかけは20日に公開されたニューヨーク・タイムズの記事。記事によると、米サウスカロライナ州のノースチャールストン工場では、工具やとがった金属片などを機体の内部に残したまま顧客に引き渡すことがあり、複数回にわたり従業員が管理者に状況を報告していた。物が放置された場所の中には、コック
ピット下の重要機器類の配線が行き交う場所もあったという。十数人以上の従業員らの証言と数百ページに及ぶ社内メールなどを検証した結果、明らかになったとしている。

 同工場が生産しているのは、長距離飛行を可能にして売れ筋となった旅客機「787」。問題の737MAXが生産されているのは同工場ではなく米ワシントン州のレントン工場だが、こうした品質問題が「社風」となっている可能性はある。ここ数年、日本の生産現場でも数多くの品質不正が問題になっているが、そのほとんどで、1工場で発覚した不正は別の工場でも起きていた。

 「品質よりも業績を優先した結果だ」と記事は指摘している。
チャールストンの工場では今年初めから、月間の生産機数を従来の12機から14機に増やし、一方で品質関連の職員を約100人削減していたという。

 品質の改善には従業員の意識や風土の改革が必要になるため、相応の時間がかかる。ボーイングの苦難は、これから長期にわたって続くことになりそうだ。

(日経ビジネスより)

 ボーイング社の737Max機の墜落事故に関しては、本メルマガでも注視した。

大きな墜落事故を立て続けに2件も発生させたのだから、減収減益も当然だ。売り上げが前年同期比2%減、純利益同13%減という程度で済んだと言った方がよかろう。

更に追い打ちをかけるように、787機の生産工場で工具や金属片などが機内に残った状態で納品するという事故を起こしている。これらの残留異物が機内の配線、配管などを損傷すれば即重大事故が発生する。

アパレル関連の工場では、針やカッターナイフの混入は重大事故となる。電気・電子部品、製品でも梱包箱にカッターナイフの折れ刃が混入すれば重クレームとなる。

生産量が17%増えたからとか、品質担当が100人減ったからというのが言い訳となるようでは、重大事故を防ぐ仕組みが不十分であるとしか言いようがない。

マネジメントが現場から全く遊離してしまっているように感じる。
十数人の従業員を会議室に呼びつけて事情聴取をする、何百ページもの社内メールを読む、こんなことをしても現場を理解することはできない。自ら足を運んで現場を見れば、一目で重大な問題が潜んでいることがわかるはずだ。

現場の幹部・監督職にはそれが見えていたのではなかろうか?
金勘定しかできない経営幹部にそれが伝わっていなかったのか?伝えても無駄という諦観が現場にあったのか?

何れにせよモノ造りの企業としては重篤な病に冒されている状態と言わざるを得ない。


このコラムは、2019年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第817号に掲載した記事に加筆しました。

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日替わりヒーロー

 プロ野球は今週末日本シリーズが始まるらしい。中日ドラゴンズファンの私は、2019年シーズンも早々にペナントレースへの興味を失った。

今季は3季連続優勝の広島カープが散々の成績となり、読売ジャイアンツが5季ぶりのリーグ優勝となった。両チームの躍進と蹉跌の原因を考えてみたい。

両軍の監督の違いを考えると、
 原監督:10季中6季リーグ優勝
 緒方監督:5季中3季リーグ優勝
両軍互角だ。

やはり選手の戦力差のように思われる。
象徴的なのは、昨シーズンまで広島で主力選手として活躍した丸選手が巨人に移籍している。
ということは、今期限りで丸選手を手放す巨人は来季のリーグ優勝は危ういかもしれない。アンチジャイアンツの個人的たわごととお許しいただきたい。

本日のメルマガで言いたかったことは、ヒーローが固定化している組織は脆弱性を内包している、という仮説だ。ここまで長い前置きを置かずとも、普通に考えてもこの仮説は真実のように思える。

会社という組織も同じだろう。
経営トップのカリスマ性、有能な幹部のずば抜けた能力だけでは、限界がある。
毎日ヒーローが入れ替わるような組織の方が強いはずだ。
こういう組織は、常に2番手3番手が競い合っており相互成長がある。同様に部門間でも相互成長があるはずだ。

もちろん日替わりヒーローが互いに競争相手を潰し合うような競争関係であれば、組織力が上がるはずはない。


このコラムは、2019年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第888号に掲載した記事に加筆したものです。

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医療事故

 航空機は一番安全な乗り物だ。空を飛ぶという危なげな航空機の方が地上を走る列車、自動車と比べても安全だ。それは、事故や重大インシデントを徹底的に業界全体で共有し、再発防止・未然防止を図っているからだ。

その対極にあるのが医療業界だろう。
医療事故が公表され業界で事例共有されることはほとんどない。

厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長・白鳥圭輔、愁訴外来科医師・田口公平が活躍する小説「チーム・バチスタの栄光」が発表されたのが2006年。2008年には映画化され、TVドラマも放映されている。
現実には2014年の医療法改正により医療事故調査委員会が設置されている。
よほど医療業界の抵抗が大きかったのだろう(苦笑)

「失敗の科学」という書籍には、2005年米国で発生した医療事故を紹介している。

「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」

副鼻腔炎の手術で入院した患者を医療ミスで死亡させてしまった事例だ。
手術の前に麻酔技師が麻酔をかけ、酸素吸入のため気管挿管をしようとするが、うまくゆかない。執刀医、麻酔主任が集まって気管挿管を試みるが、うまくできない。気管挿管に手こずったまま時間が経ち患者は脳死状態となった、という事故だ。気管切開によって気道確保すれば事故には至らなかったはずだ。実際看護師は気管切開のための準備を完了していた。

医師たちは目の前の問題に囚われ、別の解決方法が見えなくなっていた。チームの上下関係により看護婦は代替え解決案を発言できなかった。チームが自由闊達な組織文化を持っていれば、このような視野狭窄を防ぐことができたはずだ。医療界そのものがこういう組織文化を持っているのではなかろうか?

コミュニケーション、上下関係が硬直した組織では、事故事例の共有・再発防止は難しい。


このコラムは、2020年7月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1000号に掲載した記事に加筆したものです。

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ポカミス

 以前作業ミスに関する記事を書いた.

「作業ミス対策」

作業ミスの中でも「ポカミス」分かっているけどついうっかりやってしまうミスについて今回は考えてみたい.

ポカミスが発生する原因として

  • 疲労によるミス
  • 注意力散漫に夜ミス
  • 非熟練によるミス

などが考えられる.

人が作業をすれば必ず疲労やそれに伴う注意力の散漫が発生しうる.また作業環境によっては注意力が散漫になることもありうる.

そのため作業のムダ取りをして作業者の疲労を軽減する.
職場環境を整え,集中力が落ちないようにする.
といったことは必須であるが,これだけでは十分では無い.

ポカミスが発生しないようにする.万が一発生しても次工程に抜けてゆかないようにする.いわゆる「ポカよけ」と「ダブルチェック」が必要だ.

「ポカよけ」というのはミスができないようにすることだ.
例えば取り付け方向を間違えないように,取り付けネジ位置を非対称にする.こうしておけば反対方向に取り付けようと思っても組み付かない.

コピー機を開けるとやたらレバーがあり,それを解除しないと感光ドラムやトナーを交換できないようになっている.このレバーを戻し忘れると扉にぶつかって閉まらないように設計されている.これもポカよけだ.

「ダブルチェック」というのは文字通り2回チェックすること.
作業をした本人がチェックをし次工程の作業者がもう一度チェックする.一人だけでもダブルチェックは出来る.しかし単純に2回見ただけでは「ダブルチェック」にはならない.

例えばネジ締めをする場合,必要なネジをあらかじめ取りおいて作業完了後にネジの過不足が無いことをチェックする.こういう確認が「ダブルチェック」になる.

旅客機に乗ると駐機スポットから切り離される際に「乗務員はドアをオートモードにして相互確認してください」という機内放送が流れる.これが「ポカよけ」と「ダブルチェック」だ.

旅客機は万が一の際に扉を開けると脱出用のシューターが飛び出してくることになっている.しかし駐機スポットで扉を開けるたびにシュータが飛び出すとちょっと厄介だ.
そのためマニュアルモードというのが設けてあり,通常時扉を開けるときはマニュアルモードにしておく.飛行中はオートモードにし万が一に備えている.

このモード切替レバーにポカよけピンがあり,オートモードにしなければこのピンが取り付けられないようにしてある.駐機時扉が開いているときはこのポカよけピンを開閉レバーにタスキ掛けにかかっている帯にくるみこまれている.扉を閉めるためにはこのタスキを取らなければならない.タスキを取るとポカよけピンがでてくるという仕掛けだ.

更に乗務員は一連の動作が終わると,自己確認後別の乗務員と立てた親指を見せ合う.これが「ダブルチェック」だ.

もちろん全ての作業に「ポカよけ」「ダブルチェック」を入れているわけではなく,ポカミスが発生すると安全運行に重大な支障がある作業だけだろう.

非熟練によるミスは作業訓練で補えばよいのだが,それでもしばしばミスが発生する.

ある方から製品ラベルが傾いて貼られるというミスがなかなか無くならないというご相談を受けた.
この場合はラベルが傾いているという不良が工程内で見つかっているので「ダブルチェック」はできていると考えて良いだろう.(理想はラベル貼り工程で「ダブルチェック」がかかること)

またラベルを貼る位置には目印枠をつけてある.不完全だが「ポカよけ」もあるといってよいだろう.

それでもミスが発生する.
いくら作業訓練をしても発生する.
中にはものすごく不器用な人がいて,いくら練習しても上手にならない人はいる.こういう人を作業員として採用するのが間違いだが,まずは教え方を見直してみる必要があるだろう.

こういう作業の下手な人と上手な人(早くしかも正確に貼れる)との差を良く観察すると作業方法の違いが分かる.下手な人は目印線を水平または垂直にして非常にぎこちなく貼る.
上手な人は貼り付けるモノを少しナナメに置いて,目線も真上からではなく少し傾けて目標を見ている.

ただまっすぐ貼りなさいと言うだけではなく,上手くできる人のやり方を教える.それでもだめなら仕事を変わってもらうしかないだろう.


このコラムは、2009年7月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第105号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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人材の下には人材が隠れていても育たない

人材の下には人材が隠れていても育たない

一倉定

「社長の教祖」と呼ばれる経営コンサルタント一倉定の言葉である.

実は年末から年始にかけて今春創刊される雑誌のための原稿を書いていた.私に与えられたテーマは「人材育成」そんなわけでこんな言葉を思い出した.

トップから外に出しなさいと,私もよく言っている.
トップを外に出すとその組織の二番手三番手にチャンスが回ってくる.彼らはチャンスをつかもうとモチベーションを上げてがんばる.これで組織が活性化し成長パワーを発揮する.

トップが居座っていると二番手三番手が上に行くチャンスがなくなる.こういう状態の組織は閉塞感が漂い停滞するものだ.

組織のトップを移動させるのは大変勇気のいることだろう.
トップを動かす(または離職する)ことを恐れて組織を停滞させてしまっては元も子もない.それよりは勇気を持って組織を活性化させたほうが良い結果につながるはずだ.


このコラムは、2008年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第15号に掲載した記事に加筆したものです。

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モノ造りの心

 先月無料工場診断でヨーロッパ資本の中国工場を訪問した.
ヨーロッパから経営幹部が何人も駐在しておられた.しかし驚いたことに殆ど現場を見ていないように思える.

品証担当のドイツ人と話をしたが,どうも我々と論点がずれている.
顧客から作業ミスの不良が多いとクレームを受けているのに,現場には作業指導書もない.
この点を指摘すると,作業指導書はあるといって,秘書に持ってこさせて見せてくれた.作業指導書は現場ではなく彼のオフィスにあったのだ.

ヨーロッパ資本の中国工場を訪問するのは初めてだったので面食らった.

日本の企業は「現場起点」で物事を考えていると思う.
そういう言い方をすれば,米国の企業は「マーケット起点」だろうか.
ヨーロッパの国々は古くからマイスター(職人)を大事にする文化があると思っていた.日本よりも職人に対する評価は高いように思う.

職人が現場から離れてしまっては,陸に上がった河童のようなものだ.

いずれにせよ,この工場の中国人社長さんは危機感を持っておられるようで再度打ち合わせに呼ばれた.社長さんには改善活動を通して改善リーダの育成をしましょうと提案してきた.


このコラムは、2008年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第61号に掲載した記事に加筆したものです。

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明治乳業のビン牛乳、さび混入 159万本回収

 明治乳業(本社・東京都江東区)は25日、大阪府貝塚市の関西工場で製造された瓶入りの牛乳とヨーグルトに赤さびが混入していたとして、関西2府4県の宅配用の5商品計約159万本を自主回収すると発表した。混入は微量で、健康への影響はないとしている。

 22日に顧客から指摘があり、関西工場を調べたところ、回収した瓶を洗浄する作業で、仕上げのすすぎに使う水のタンク内で赤さびが見つかったという。

(asahi.comより)

この手の事故の報道を見るたびに,どうして未然に防げなかったのかと思う.

生産設備は毎日点検しているはずだ.
すすぎ水のタンクの点検が行われていなかった.
または点検は行っていたが,赤錆を見逃した.

すすぎ水のタンクが点検項目から漏れていたのならば,点検項目に追加をすれば良い.
しかしそれだけでは不十分だ.製品に影響を与える可能性のある潜在事故を洗い出して,見直しをする必要がある.

点検項目に入っているが見逃した,この場合の対策はどうすれば良いであろうか.
「作業員に対して点検作業の教育訓練をする」という対策では不十分である.点検の基準はきちんとしていたのか,点検方法に問題はなかったのか,見逃した原因をきちんと解析をして対策を打たなければならない.

作業者が不慣れなためのミスだったとしても「教育をする」で十分とはいえない.
教育方法・資料,教育の時期・頻度について改善すべき事がないか検討しなくてはならない.

以上の対策が出来てもまだ不十分である.
これらは錆の発生を見逃すという流出に対する対策でしかない.
錆が発生するという原因に対する対策が足りていない.

あなたの工場では同様の問題が発生するリスクがないだろうか.
一度こういう問題を出してしまうと,回収のための費用損失が発生するばかりか,顧客の信頼を失うという致命的なダメージを受ける.

致命的な品質不良が発生する可能性のある事故を洗い出してFMEAなどを活用してあらかじめ対策を打っておく必要がある.
業種が違ってもこのような事故は社内を再点検する良いチャンスである.


このコラムは、4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第31号に掲載した記事に加筆したものです。

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顧客クレーム(傷)

 先週に引き続きお客様からのクレームを紹介しよう.
顧客クレーム(誤出荷)

お客様から返却された製品は,プラスチックケースにカッターナイフで付けられたと思われる傷が一直線についていた.これが梱包箱に2,3個ずつ見つかるという.

製造工程の中ではカッターナイフを使う工程はない.
従って製造工程内で傷をつけていることはありえない.

梱包箱に付き2,3個ずつ見つかっていると言う状況から,開梱時にカッターナイフを使い誤って中の製品に傷をつけたと推定した.一直線の傷跡とも一致する.

工場の中で開梱するチャンスは,出荷抜き取り検査(OQA)だけである.
出荷抜き取り検査では製品に傷をつけないように,カッターナイフの使用を禁止している.カッターナイフの変わりにPWBの切れ端を少し尖らせた物を使用している.

これは以前,プリント基板(購入品)の梱包箱を開梱する際にカッターナイフで傷をつけてしまった経験から,全工場に水平展開した対策である.

さらに箱ごとに2,3個ずつ不良があるというのも,OQAで傷を付けたのを否定する要因である.なぜならOQAの抜き取り数量から言えば,一ロットに一箱分検査すれば十分だからである.

以上の検討から,傷はお客様で開梱する際につけたものと判断.
そのように報告書を作成し,報告した.

再発防止対策はお客様に要求しても良かったのだが,こちらは梱包箱の中に一枚ボール紙を追加して梱包するよう梱包仕様を変更した.身銭を切って再発防止をする必要はなかったかもしれないが,その方がお互いのためと判断した.

以降このお客様から同様の不良返却は一切なくなった.


このコラムは、2007年11月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第7号に掲載した記事です。

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