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注意喚起と再発防止徹底

 名古屋市は24日、昨年5月に病死した同市中村区の男性(63)について、区役所職員が遺族への連絡を怠り、遺体が半年以上引き渡されずに放置されていたと発表した。職員が男性の遺品を無断で廃棄していたことも判明、市は職員の処分を検討している。

 発表によると、連絡を怠るなどしたのは、同区保健福祉センター民生子ども課の男性職員(40)。昨年5月25日、生活保護受給者の男性が病院で死亡した際、戸籍を調べて速やかに遺族に連絡すべきだったのに、放置。同12月10日になって大阪府に住む遺族に手紙で連絡し、遺族によって葬儀が行われた。市によると、親族と連絡が付かない場合、生活保護受給者の遺体は、生活保護法に基づき自治体が埋葬することになっており、遺体はこの間、葬儀業者が冷凍保管していた。

 また、職員は今年3月、病院から預かった男性のスマートフォンや車検証などを、市の規定に反し、遺族の了承を得ずに廃棄していた。8月に遺族からの問い合わせで判明した。

 職員は連絡の遅れについて「他の仕事で忙しかった」とし、遺品は「家族と話す機会がなく、処分に困って廃棄した」と話したという。同課は「重大なミスで心からおわびする。職員全員に注意喚起し、再発防止を徹底する」としている。

(読売新聞オンラインより)

 「ミス」などという言葉で済ませているが、信じられない仰天事件だ。
当然葬儀業者から遺体の保管料金を毎月請求されていたはずだ。担当者が忘れていても、経理担当者は気がつかなかったのだろうか?数ヶ月間も遺体保管費の支払いが続いたところで、おかしいと気がつくのが普通だろう。不明な請求が半年以上続いていても疑問を持たない。言い換えると税金で運用されている組織にありがちなコスト意識の欠落だ。

他部門の仕事には口を挟まない、仕事ではなく作業をこなしているだけ。
金曜日配信の連載小説「山本品管部長奮闘記」に出てくる経理部、人事部の中国人幹部と同じレベルではないか(笑)
(注)上記の中国人幹部は、その後の展開で大きく成長しています。

区役所は「職員全員に注意喚起し、再発防止を徹底する」と釈明しているが、「注意喚起」では再発防止の効果は期待できない。

根本的には部署間の敷居を下げ、相互にコミュニケーションしながら仕事を進める組織文化を作るべきだ。しかしこれには、働く人々の意識変革が必要であり、時間がかかる。まず即効性のある対策を考えねばならない。

まずは進行中の仕事をすべて可視化する。
すべての仕事の進捗を計画、実績が目に見えるようにすることだ。これを全員が見られるようにする。この予定・実績を全部署全員が閲覧できるようにする。こういう仕組みを作っておけば、止まっている仕事は一目瞭然となる。

部門リーダは、この予定・実績ボードで部門の進捗状況、他部門との協調が確認でき適切な指示、支援ができるはずだ。
各作業に担当者が割り振られており、毎朝自分の仕事を確認することができる。計画が遅れていれば担当者宛にアラートが出る仕組みも簡単だろう。


このコラムは、2019年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第895号に掲載した記事に加筆しました。

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認識力

 知識を学習するだけでは不足だ。知識を能力に変換し、能力により行動を起こすことで、初めて価値を生む。と何度かメールマガジンに書いた。

第382号「知識より経験」

第460号「知識より体験」

第683号「知識より行動」

最近中村天風師の言葉を写経のように書き写している。写経といっても墨と筆を使って書いているわけではない。キーボードを叩いてクラウドに文章を保存している。何らかの意義や価値を感じているわけではなく何となく始めた(笑)
本日は「知識より認識力を鍛えよ」という天風師の言葉を書き写した。

知識を持たなくて良い、というわけではない。しかし知識を増やすことに拘泥していては豊かな人生は送れない。物知りは一目置かれるかもしれない。しかし物知りと認めれれても、浅薄な虚栄心を満たすだけだ。

知識は知れば知るほどさらに奥深くキリがない。知識そのものは能力ではない。知識を極めたところで何も起きない。学者も研究で得られた知識を応用する事で初めて成果が得られる。

認識力が高まれば、経験・体験を知識として認識できるようになる。
状況を認識できれば、行動を起こせるだろう。


このコラムは、2019年11月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第900号に掲載した記事に加筆しました。

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状態の見える化

「ベビーベッドに挟まれ乳児死亡 消費者庁が注意喚起」

 消費者庁は15日、木製ベビーベッドの側面にある収納部分の扉が開き、そこから落ちた乳児が頭部を挟まれるなどして死亡する事故があったとして注意を呼びかけた。収納部分の扉のロックが完全にかかっていなかったことが原因とみられる。

 消費者庁によると、今年6月に生後8カ月の乳児が死亡する事故が発生。9月にも生後9カ月の乳児が重症を負ったという。

 消費者庁はベッド側面にある下部収納の扉が開き、そこから落ちたとみられる乳児の頭部が顔を寝具に押さえつけられるように挟まり、乳児は息ができなくなったと推定。扉のロックが完全にかかっておらず、乳児が寝返りなどで接触した拍子に開いたとみられる。

 いずれも保護者が目を離した際に起きていた。

 2件のメーカーは異なっているが、扉はピンを穴に差し込んでロックする形式だった。国民生活センターが再現テストを実施したところ、ピンが穴に入っていなくても扉が止まることがあり、ロックがかかっていないことに気づきにくい構造だった。

(日経新聞より)

 2008年に配信したメールマガジンでベビーベッドの事故をご紹介した。
「中国製ベビーベッドを米国で回収 乳幼児2人死亡」

こちらの事故はベビーベッドを固定しているピンが外れているのに気がつかず、柵が落ちて乳幼児が挟まれて亡くなっている。
今回とほぼ同じ事故原因だ。2008年の事故ではピンを目立つ色としロック状態・アンロック状態を可視化する、という対策だった。

今回の事故も同様に、ロック・アンロック状態を可視化する工夫で事故は防ぐことができたのではないだろうか?

時が経つと忘れてしまうのだろうか?約十年に同様の原因で死亡事故が起きている。今回事故を起こしたベビーベッドの設計者が、私のメールマガジンを読んでいてくれたら、このように事故は発生しなかっただろうと残念に思う。

製造作業での工程飛ばしも「可視化」で対策できるはずだ。
コンベア作業で、休憩後の作業再開時に未作業のワークを次の工程から作業を開始してしまうという事故は容易に想像がつく。作業員毎に作業完了・未完了を「可視化」することで対策が可能となる。

FMEAは自動車関連企業の専売特許ではない。他業種の事故や不良も潜在故障の事例として、自社製品、工程で同様の故障・問題が起きないか、その未然対策を検討する。こういう取り組みはどの業種にも役に立つはずだ。


このコラムは、2019年11月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第904号に掲載した記事に加筆しました。

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リチウム電池の評価

 先週のメルマガでリチウムイオン電池の研究でノーベル賞を受賞された吉野教授の言葉「失敗しないとダメ」をご紹介した。

「失敗しないとダメ」

実は40年近く前にリチウム電池の評価をしたことがある。リチウムイオン電池ではなく、充電ができない一次電池・リチウム電池だ。当時私が所属していた設計チームは新規に開発する電子計装装置のバックアップ電源としてリチウム電池を使うことを検討していた。

当時の電子回路は消費電力が大きく、小さなボタン電池では短時間しかバックアップできない。工場のオートメーションに使う製品なので、長期休暇や保守点検期間などを考えると、最低でも一週間はバップアップする必要がある。

そこでリチウム電池を採用することを設計チームのリーダが検討していた。単三サイズのリチウム電池ならば、バックアップ時間は問題ない。しかしまだリチウム電池は日本での市場実績がない。イスラエルのタディラン社くらいしか扱っていなかった。

重厚長大・信頼性第一主義のプロセスオートメーション業界にはなじまない部品だった。当時20代だった私にリチウム電池を評価をするよう指示された。電池の評価などしたことがなかった。会社の図書室や近隣の公共図書館でリチウム電池に関する論文を探し回るところからスタートした。

いくつも文献を見つけた。その全てが英文で読解に時間を要した(苦笑)
その中に、そのものズバリ、リチウム電池の評価に関する論文を発見。英和辞典片手に読解した。「ショットガンテスト」という項目があった。初めは意味がわからなかったが、評価手順を読んで驚いた。

ショットガンにリチウム電池を装填し、厚さ○インチの樫の板に向かって射つという試験だった。当然電池は壊れてしまうが、試験によって爆発・炎上などの危険な状態にならないことが評価条件だ。

耐衝撃性を勘案するならば、70cm(机からの落下)かせいぜい2m位からの自然落下を考えれば良かろう。爆薬の力で樫の板に打ち付けるという評価が何を想定しているのか理解できなかった。しかしそのくらいの厳しい条件で評価をしなければならない部品だということと理解した。

さすがにショットガンテストは自分ではやらなかった(笑)
評価試験は全項目合格し、私たちの製品に採用することになった。幸いな事に40年近く経った今でも、このリチウム電池に起因する事故は聞いたことがない。

しかしリチウムイオン電池の事故は度々市場を騒がせている。

このメルマガでも幾度となく取り上げた。
リチウムイオン電池の事故

リチウムイオン電池では、「ショットガンテスト」のような気迫の評価は実施されなかったのだろうか。

■□ 閑話休題 □■
上述のリチウム電池評価報告書は発行後、規定に従って回覧ののち戻って来た。表紙に赤ボールペンで「よく書けてる」と開発担当専務のコメントがあった。
当時ものすごく嬉しかったのを今でも鮮明に覚えている。


このコラムは、2019年11月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第901号に掲載した記事に加筆しました。

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続・働かせ方と働き方

 先週の雑感で取り上げた「働かせ方と働き方」に読者様からメッセージをいただいた。

※Z様のコメント

本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。
そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

まさにおっしゃられる通りだと思います。
経営側に近い与党の発想だと、こうなっちゃうんでしょうが、
その視点の誤りに対して、何も言わない野党も野党ですね。
ハイスペック人材の時間外労働時間制限の撤廃といった類の話じゃないですね。
今後とも宜しくお願い致します。

コメントありがとうございます。
確かに与党の政治姿勢は経営者よりかもしれない。しかしそれは景気をよくし国民の生活をよくするための手段として、企業が利益を上げるように政策の舵を取っているからだろう。
最近は経営者vs労働者というステロタイプな対立関係で情勢を理解できなくなっていると認識している。例えば私の世代は学生が最も急進的な左翼だったが、今では求人率の高まりを歓迎して、自民党支持の学生が増えていると聞く。

「働き方改革」の迷走は政府・与党ばかりの責任ではないと思う。非本質的議論ばかり繰り返す野党にも責任はある。最大のガンは、デタラメなデータを上げてくる役所ではなかろうか?

残業時間等に関するいい加減なデータを上げて役人がどういうメリットがあるのか不明だが、ひょっとして役所も「働き方改革」を阻止しようと考えているのだろうか(苦笑)

財務省などは「財政健全化」「国の赤字を子孫に回すのな!」などのお題目で消費税アップを狙っている。

確かに我々の家計で借金があれば問題だ。
しかし銀行融資ゼロという企業は、真面目に発展を考えているのだろうか?
ゼロ金利の時代に銀行から金を借りて将来のために投資をしようと考えるのがまともな経営者だ。バブル期に土地やゴルフ会員権を買いあさって失敗した経営者も多くいたが、これは投資ではなく投機だ。

国の借金が「悪」であると考えるのはおかしい。誰に借りているのかを考えれば自明だ。
例えば生活費が足りなくて借金をする。高利の街金融から借りるのなら問題だ。
奥さんが旦那に生活費を借りる。しかも旦那はお金を稼げる。これならなんら問題にはならない。

今の財政赤字は、政府(妻)が日銀(旦那)に生活費を借りているだけだ。日銀(旦那)は余分にお金を刷って国債を(妻から)買えばいいだけだ。

ちょっと本論から外れてしまった(苦笑)が、役人が政治を歪めているように思える。

ところで役人の「働き方改革」を阻害しているのが国会である、というのも笑えない事実だ。国会答弁の質問は、本来前々日までに提出する約束になっているそうだ。それは関連省庁から事実関係のレクチャーを受け国会で答弁するための準備時間を見込んでいる。しかし与党からの質問は、前日の夕方にしか出てこないそうだ。当然役人は徹夜で答弁原稿を作成することになる。


このコラムは、2018年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第695号に掲載した記事に加筆しました。

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働かせ方と働き方

 先週の編集後記で、製造現場の監督職を平日の研修に参加させるのに消極的な中国人経営幹部をご紹介した。

班長の能力を上げ、生産品質を安定させたい、生産効率を上げたい、という欲求は当然だ。先週ご紹介した経営幹部もそれを理解しているから、私の話を聴きに来たのだろう。しかし目の前の納期に間に合わせ得るため、生産は止められない。班長不在のまま生産するのは不安だ。

そんな気持ちは理解できるが、目前の短期課題を満足させるために長期課題に目をつむる状態になっている。

班長の代理が出来る人材を育成しておく必要があるはずだ。
班長が研修を受けている間は、班長代理が現場を取り仕切る。そして実力がつけば班長は昇格。代理経験を積んだ班長代理はすんなり昇格出来る。
そして、次の班長代理候補が作業者から選ばれる。このようなキャリアパスが出来ていれば、意欲のある作業者はさらに意欲を上げるだろう。
このように予備軍が順次育つ環境を作っておかねば、突然班長が離職すると大混乱になるはずだ。

経営幹部もこれを自分のことに当てはめて考えれば理解できるはずだ。
課長の仕事をいつまでも自分がやっていれば部長にはなれない。部下が課長の仕事ができるようになって初めて自分が部長になれるのだ。

日本で議論が迷走している「働き方改革」は、如何に長時間労働を減らすかという「働かせ改革」にすり替わっているような気がする。本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

くだんの経営幹部も班長の「働かせ方」ではなく自分自身の「働き方」に着目すれば、班長の育成にもっと積極的になるのではなかろうか?


このコラムは、2018年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第692号に掲載した記事に加筆しました。

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学ばざるもの食うべからず

 以前このメルマガで、二宮尊徳の言葉をご紹介した。

「遠きを見て計る」

本日ご紹介するのは二宮尊徳翁の遺訓だ。

人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。
学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。
知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。
故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。
学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。
道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

僭越ながら解釈すると、
人として生まれたからには、学ばねばならない。
学んだからには、道理を知らねばならない。
道理を知り行うことができねば、知らぬと同じ。
ゆえに、人として生まれたからには学ばざるべからず。
学を志す者、道理を知らざるべからず。
道理を知る者、道理を実践せざるべからず。

「道」は老子が説いた「道(タオ)」のことだと思う。道理と訳すのは安直かも知れないが、「宇宙の理り」とでも解釈したらいいだろう。無限の広がりと過去から未来の無限の時間における「絶対真理」と私は解釈している。

「学ぶ」とは学校での勉強はほんの入門であり、学校では学ぶ方法を教わるだけだ。ほとんどのことは社会に出てから学ぶことになる。

「働かざる者食うべからず」とともに「学ばざる者食うべからず」だ。

そして私たちは学習者であるとともに教育者でもある。道を知り行うことの一部は、部下や後進の育成だ。


このコラムは、2018年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第668号に掲載した記事に加筆しました。

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孔子

学びて思わざれば則ち罔し

yuē:“xuéérwǎngérxuédài。”
子曰く:“学びて思わざれば則ちくらし。思いて学ばざれば即ちあやううし。”

論語《為政二ー十五》にある一節だ。
書を読み学んでも、自ら考えなければはっきり理解できない。
考えるだけで先人の知恵を学ばなければ、その知恵は危うい。
と言う意味だ。つまり書物や他人から学ぶ、自分の経験に照らして考える、この両面を通して初めて役立つ生きた知恵になる、と理解したらよかろう。

『学』書籍や他人から理論を学ぶこと。
『思』自ら考えること。
と解釈するのが普通だろう。

しかし私はここで珍説を唱えたい(笑)

書を読み学んでも、自ら実践しなければはっきり理解できない。
実践するばかりで、先人の知恵を学ばなければ得られる成果は危うい。

『思』を実践と解釈してみた。
知識を蓄えることができても実践しなければ、成果を生む知恵とはならない。
理論や先人の知恵を無視して手当たり次第に実践しても、うまくはゆかない。

生産現場の改善活動を見ていてこのように感じる。

理屈ばかりこねていて行動しない。
できない理由ばかり並べる。
聡明で理論肌だが行動しない。こう言う人が『学而不思』だ。

闇雲にやってみる。
失敗した時に失敗原因を究明せずにトライアンドエラーを繰り返す。
行動力はあるが論理立てて考えるのが苦手。こう言う人が『思而不学』だ。

学而不思派の人は指導するのが骨が折れる。
自分は頭がいいと言う自覚がある。しかもチャレンジをしないので失敗しない(苦笑)
従って自分の足りていないところになかなか気がつかない。

逆に思而不学派はちょっとしたきっかけで成長する。
闇雲に挑戦するので失敗が多い。
従って失敗の原因を考えさせる、成功事例を教えることができる。こう言う人には、ちょっと立ち止まらせてヒントを与えることで伸びる。


このコラムは、2018年5月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第666号に掲載した記事に加筆しました。

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ペットを飼う理由

 メールマガジンを斜め読みしていて「なぜ、人間はペットを飼うのか? その理由が納得すぎて笑った!」という気になるタイトルを見つけた。

「まんしょんオタクのマンションこぼれ話」

NHKのバラエティ番組で、人がペットを飼う理由を解説していたという。
多くの人はペットに対して「癒し」を求めているという。東日本震災でペットと離れ離れになっている人々も、涙ながらに再会を喜び、災害の苦難をペットにより支えられているという。

ではなぜペットに対して癒しを感じ、苦難の支えになっているのか?
それは、人が原始時代から群れで生活をして来たDNAの記憶によるという。天候や天災などの自然や、外敵から身を守るために人は群れを作って暮らしていた。群れの生活で「弱いものを守る」という本能が深く刷り込まれている。個を守ることにより、群れが滅びることなく繁栄した。

弱いものに餌を分け与え、世話をする。それによって群れを守る。ヒトという種が滅亡せずに繁栄できたのは、弱いものに心から愛情を与えることがDNAに刷り込まれているからだろう。

犬や猫も元はと言えば、群れで暮らした動物だ。彼らもまた命を守るため群れの中で庇護を得る代償として、癒しを与えることがDNAに刷り込まれているのだろう。

企業も同じではなかろうか?
経営者と従業員、上司と部下。報酬を与える見返りに労働を提供するという利害関係だけではなく、同じ群に属するものとして、互いに与え、与えられるものがあるような気がする。

経営者や上司は、部下に成長のチャンスを与えることにより、業績を上げる。
従業員や部下は、与えられたチャンスに応え自己成長により、業績に貢献する。
このようなギブアンドテイクの関係と考えたらよかろう。


このコラムは、2018年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第665号に掲載した記事に加筆しました。

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四川省大地震

 日本でも報道されているが,5月12日14時28分に発生した四川省汶川のマグニチュード7.8の大地震は救助活動が進むにつれ死者の数が増加している.ほぼ3万人の死者が出ているようだ.山間部などまだ救助が進んでいない被害地での状況が判明してくると更にたくさんの方が犠牲になっている事がわかってくるだろう.

連日TVで報道されている被災地の救助活動を見ていると,大変悲惨なモノであり,心が痛む.

中国指導部の対応は大変すばやかった.
温家宝首相は12日夕方には現地に入って陣頭指揮をしていた.被害に遭った人たちの間に入って,語りかけ勇気付けている.多分家族を全て失ってしまい泣きじゃくっている女の子の手をとり,「泣かないで.君の生活は中国政府が保証するから」と慰めているのが印象的であった.

それにも増して感動的なのは,被災者を助けようとする動きが中国全土に瞬く間に広がったことだ.

12日当日は成都の市民が夜遅くまで献血の列を作っていた.
被災地の近所の住民は炊き出しをして被災者に食事を運んでいる.
企業からの義捐金だけではなく,個人で100元札を何枚も献金しているのがTVで報道されていた.街中の市民も募金箱に長蛇の列を作って募金をしている.

今まで中国人は個人主義的な人が多く,他人のことよりも自分の利益を優先する人が多いと感じていた.今回の地震で中国人も条件さえそろえば我々日本人と同じように他人を思いやり,他人に尽くす事が出来る心を持っていると再認識できた.


このコラムは、2008年5月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第34号に掲載した記事に加筆しました。

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