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仕事の依頼3ステップ

 部下に仕事を依頼する時にどのようにされているだろうか?
日本の組織では「アレやっといて」で通じてしまう。しかし中国ではこれで上手く行くはずは無い。いや日本で上手く通じると言うのも過去の伝説だろう。仕事を依頼して翌日「アレどうなってる?」と訪ねても、期待通りの返事が返ってくることはまず無い。

「だから中国人は……」とか「今時の若い者は……」と嘆いても、問題は解決しない。問題の原因は自分にあると考えることで初めて解決出来る。

仕事の依頼には3つのステップが有る。
1)仕事の目的を明確にする。
2)仕事のターゲットを明確にする。
3)アウトプットのイメージを明確にする。

ステップ1は今から依頼する仕事は何の為にするのか?と言う目的を知らせると言う意味だ。
仕事を依頼する時に「What」と「How」はきちんと伝えるが、「Why」をきちんと伝えているだろうか?
例えば「生産現場の工具を整頓しておく様に」と指示することは「What」の指示だ。これは「作業」を指示しただけで「仕事」の指示ではない。
例えば自社の存在目的が「生産を通して豊かな社会の実現に貢献する」であることを理解した上で「工具の整頓により工具を探す時間をなくし、生産効率を改善する」ことが目的だと理解すれば、仕事の意義が理解出来る。
又は自社の存在目的が「仕事をとして従業員の成長を計る」であれば、仕事の成果は自分自身の成長となる。
仕事の目的、意義が理解出来れば「やっつけ仕事」ではなく使命感がある仕事となる。

ステップ2は「この仕事の対象は誰か」を明確にすることだ。
先ほどの「生産現場の工具を整理する」と言う仕事の対象は、現場の作業員であり、その結果社会の人々や自分自身が対象となるということだ。
経営会議の資料作成は、仕事を依頼した上司の為にするのではなく、経営会議参加者が対象だ。

ステップ3は、いつまでに、どの程度の品質でと言う仕事の合格基準を明確にすることだ。
「生産現場の工具の整理」がすぐにやらなければならない仕事か、暇を見つけてやっておけば良いのか?現状のまま整頓だけすれば良いのか、より整頓しやすくする改善が必要なのか?と言う合格基準を明確にしなければならない。「どうもウチの部下は気が利かなくて」「いわれたことは出来るが、工夫が出来ない」とこぼしている方は、ステップ3が不十分の可能性がある。「気を利かせること」「工夫すること」が上司の期待であることを明確にすることが必要だ。

上記の3ステップをした上で、以下の3ステップを相手に合わせて実施する。
ステップ1:仕事の手順プロセスを話し合う。
ステップ2:仕事の成果をよりよいモノにする工夫を話し合う。
ステップ3:ホウレンソウのタイミングを決める。
この3ステップは、仕事を依頼する対象の経験や能力に合わせて実施する。
相手が新人であれば、この3ステップは丁寧にやる必要が有る。
しかしベテラン相手にこの3ステップをくどくどやれば、逆効果だろう。


このコラムは、2016年5月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第474号に掲載した記事に加筆修正しました。

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「2億円以上かけて寄付は2千万円」 蓮舫氏が批判

 子どもの貧困対策のために寄付を募る「子供の未来応援基金」をめぐり、民主党の蓮舫代表代行は2日の参院予算委員会で、費用対効果の悪さを指摘した。2億円以上の税金を使って呼びかけているのに、集まった寄付は約2千万円。蓮舫氏は「2億円を基金に入れれば良かった」と訴えた。

 基金は昨年10月に創設。集まった資金を子どもの支援活動をするNPOの支援などに充てる計画だ。政府はポスターの制作やフォーラム開催のほか、インターネット広報関連などで約2億円使ったが、寄付は今年2月現在で
約1949万円しか集まっていない。

 基金を担当する加藤勝信少子化相は委員会で「(2億円は)広報のみではなく、国民運動としての広報・啓発活動として使っている」と釈明した。

(朝日新聞電子版より)

 2億円の設備投資をして2千万円の利益回収しか出来なければ、企業としては投資の失敗と言わざるを得ないだろう。2億円をそのまま基金とすべきという考えは一見合理的の様に見える。

しかし、ビールを飲んでもすぐに小水になるだけだから、ビールを直接小便器に流す、と考える人は誰一人いないだろう。たとえは悪いが、資金の使い方を短絡的にしか考えていない、と私には思える。

2億円が半年で2千万円のリターンになるならば、年20%の利回りとなる。低金利時代に20%の利回りならば、十分効果があったと考える事も出来る。野党として追求すべきは、2億円が特定の団体だけの利益になっているなどの不正に対してだ(そのような事実が有ったかどうかは知らないが)。

子供は国の未来そのものだ。少子化が進む中、社会が子育てを応援するという活動は、国の未来を保証するものであり、政府がその為の投資をするのは当然だと思う。国の投資は10年20年先を見据えてすべきだろう。

民間企業も将来の人口減を見据え、少人数でも効率よく生産する方法を考えなければならない。ロボット技術も、AI技術もその方向で発展をしている。先頃発表された、バス・トラック企業の自動運転技術の共同開発も運転手不足をにらんだ将来投資だ。

「寄付」と言う文化があまりない日本で、出生率の増加が寄付によって達成出来るかどうか疑問があるが、蓮舫氏の批判で国民が逆に奮起すれば、効果が評価出来るかも知れない(笑)

少子化の進行と言う現象の真の原因を捕え、それに対して正しい解決課題を設定しなければならない。子供を作らないと言う理由は、それぞれの家庭で異なるだろう。この様な「複雑系」の問題は最大公約数だけで解決出来るとは思えない。分析と対策の議論をもっとオープンにし、国民の意識を高める事がより重要だと思う。
野党の議論が、少子化関連の寄付は経費として非課税にせよとか、ふるさと納税の様に寄付者に還元する特典をつけようとか、もっと建設的な方向に向くとよいと思う。人口減で売り上げが減る企業は、もっと積極的に寄付をするようになるだろう。

私たちの生産現場で発生している慢性的問題も複雑系であるが故に慢性化している。少子化問題と同様に議論をオープンにして、従業員全体が問題意識を共有し、解決意欲を高める必要があると考えるが、いかがだろう。


このコラムは、2016年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第478号に掲載した記事に加筆修正しました。

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喜ばしい成長、でもヒヤリ 暮らしの中の子どもの安全

 朝日新聞に子供の事故に関する特集記事が掲載されていた。

「小さな命 事故予防を考える」

転落事故。
浴槽の残り湯に落ちて溺死。
異物を飲み込んで窒息死。
ライターによる火災発生。
飲水機によるやけど。

大人にとって何でもない事が、子供には命の危機となりうる。
製品にもそのような危険を回避する工夫がしてある。

使い捨てライターは、子供の力ではレバーを押せない様にデザインする事が義務づけられている。
飲水機のレバーも押しただけでは熱湯が出ない様に設計されている。
車の扉にはチャイルドロックが装備された。
一定以上大きさの包装用ポリ袋は、頭からかぶっても窒息しない様に穴を空けることが義務づけられている。
最近では歯ブラシをくわえたまま転倒しても怪我をしない様に歯ブラシの柄が柔らかい素材で出来ていると記事には出ていた。

しかし考えてみると、私が子供の頃はそのような対策はしてなかった。
おとなしかった(笑)私は、危険な事をして親を驚かせる様な事はなかった。
しかし活発な弟は、さんざん親をはっとさせた。

10円玉を飲み込み、足を持ってぶら下げて吐き出させた。
公団住宅の階段で遊んでいて額を切りしたたか出血をして帰って来た。
近所の犬をからかって股間をかまれる。
三輪車に乗って路地から飛び出し、通りかかった車の後輪にぶつかり転倒。
この時は一歩間違えば命はなかっただろう。
彼は母親が家事をしている最中は廊下の柱に帯ひもでつながれていた(笑)

私が子供の頃は、特に子供の安全を意識して製品開発されていたとは思えない。
当時と現在を比較して子供の怪我が減っているのだろうか?統計データがあるのかどうか分からないが、今の方が子供の命に関わる事故が多い様に思う。

この記事の「子供」を「作業員」に置き換えて読んでみるとどうだろう。
ある工場では頭にガーゼを当てた従業員がいた。この工場では作業員に安全帽の着用を義務づけていない。
他の工場では、安全規則を遵守せず怪我をした従業員に罰金を科したという告知が掲示板に張り出されていた。

記事には、事故予防の「3E」として環境改善(Environment)法規制・基準化(Enforcement)教育(Education)が有効なアプローチだと記してある。

罰金は教育(躾)の一種かも知れないが、それほど効果があるとは思えない。
それよりも「ヒヤリハット事例」を公開し、朝礼などで繰り返し共有する方が有効だと思う。たまたま見つかった安全規則違反に罰金を科料しても、ついてなかったと思うだけだろう。それよりも、管理者が従業員の安全にどれほど心を使っているかと言う、真剣な心配を伝える事の方が大切なのではなかろうか。

私たちの母親は、危ない事をした弟を泣きながら叱った。横で見ていた私の心にも深く刻まれている。私達兄弟が大過なく成長出来たのは、母親の愛情のおかげだと思っている。

事故が起きてから従業員の過失を責めても手遅れだ。ヒヤリハットを起こした従業員を愛情を持って叱るのが、経営者や管理者の役割だと思う。


このコラムは、2016年9月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第493号に掲載した記事に加筆修正しました。

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社会的促進

 先週のメルマガで「相互学習効果」をご紹介した。教師と学習者1対1、教師と学習者1対nよりも、教師と学習者n対nで双方向の学習(インプットとアウトプット)を行う方が学習効率が上がる、という効果だ。

仕事の効率にも似たような効果がある。「社会的促進」という現象だ。社会的促進は心理学者フロイド・ヘンリー・オルポートの実験により明らかにされた。

社会的促進とは、一人で作業するよりも集団で作業をした方が仕事の成果が上がる、または仕事中に周りに人(観察者)がいると仕事の成績が上がる、という理論だ。

一人で作業するよりも、他人と成果を競いながら作業をした方が成果が上がる、というのは理解しやすいだろう。しかし競争環境になくとも複数の人と作業することで成果が増す。作業をしない傍観者がいるだけでも成果が増す。

戸外での農作業など、皆で歌を歌いながら作業することにより疲労を緩和する、そういう効果もあるだろう。

仲間に対する貢献意欲、仲間からの刺激、観察者からの注目などが作用して仕事の成果が上がるのだろう。ホーソン工場の実験では作業環境の優劣よりも、観察者が自分達に注目していることで作業効率が上がってしまった。
これらが「社会的促進」の要因になっているのだろう。

しかし「社会的促進」には「社会的抑制」がセットになっている。
「社会的抑制」は複数で作業すると成果が落ちる。誰かに観察されていると成果が落ちるという現象だ。

全く逆の現象が出てしまう。
「社会的促進」は、単純作業、慣れている作業、好きな作業で発生しやすい。
「社会的抑制」は、複雑な作業、慣れない作業、嫌いな作業で発生しやすい。
と言われている。

21世紀の中国で、未だに金銭で仕事の成果を制御できると考えておられる方を見受ける。社会的促進・抑制、ホーソン工場の実験が行われたのは20世紀前半だ。

精益生産(TPS)などの表層を追いかけるだけでなく、社会学者や心理学者の成果を経営に活かすことを考えてもよかろう。


このコラムは、2017年8月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第546号に掲載した記事に加筆修正しました。

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スピード出すぎる滑り台

スピード出すぎる滑り台、15人がけが…オープン前に使用禁止

 生駒山上遊園地(奈良県生駒市)にある滑り台で6、7両日、子ども約15人が頭に軽いけがを負っていたことがわかった。滑り台は、13日にオープン予定の有料ゾーンに新設され、子どもらはプレオープンに招かれていた。遊園地の運営を手掛ける近鉄は、当面は使用中止にするとしている。

読売新聞オンラインより

 記事によると、滑り台はチューブ形で長さ25メートル、高低差10メートル。負傷した子供達は滑走中に上部に頭をぶつけ、たんこぶや擦り傷ができた。スピードが出すぎて、体が浮き上がるなどしたことが原因と考えている様だ。

更に近くにある別のチューブ形の滑り台では、8日に女性従業員が試験的に滑った際、右足が引っかかるなどして骨折している。

遊具業界での評価手法に関して無知だが、今回の事故を「妥当性評価」で発覚した不適合と考えて見た。

まず安全性を考慮に入れて設計する。体格、体重などにより滑り台の諸元を決定るす。設計結果はシミュレーションや過去の知見などにより問題ない事を設計検証する。
完成した滑り台現物が設計諸元と一致している事を確認するのが、検証評価だ。
そのあと実際に使用して見て、設計時に想定できなかった使用法がないことを確認するのを妥当性評価という。
妥当性評価の最終段階では、実際に子供が滑って想定外の滑り方がないことを確認する。

記事だけでは判然としないが、安全性の検証評価が完了する前に妥当性評価を行ってしまった様に見受ける。

6、7日の事故が発生した時点で安全性検証をやり直すべきだった。しかし8日には女性職員が骨折する事故を発生させている。「骨折」と記事に書いてあるが「全治◯ヶ月の重傷」と表現すべき負傷なのではなかろうか?

13日の営業開始に合わせて、本来行わなければならない確認ステップを省略してスケジュールの遅れを挽回しようとしたのではなかろうかと疑念を感じる。

安全より優先すべきスケジュールなどない。


このコラムは、2019年7月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第850号に掲載した記事に加筆しました。

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機械油漏れ

 中国の工場を見て驚く事がたびたびある。プラスチック成型工場で床に油のしみ込んだウェスが敷き詰めてある。聞くと金型の温度コントロールに使っている油が、温調機から漏れているので広がらない様にウェスで防波堤を作ったと言う。
シリコンラバーの成形工場では、おがくずで漏洩油の防波堤が作ってあった。
日系工場でも温調機の下にオイルパンをしいて漏洩油が床に広がるのを防いでいるのを見た事がある。

こういう応急処置をそのまま放置するのは大変危険だ。
油が漏れているのだから、油漏れを止めるのが修理だ。
そして油漏れの原因を突き止め、油漏れの再発を止めて初めて改善と言える。
油が広がるのを防ぐ(ウェスやおがくずを防波堤にする、オイルパンをしく)のは応急処置でしかない。放置すればウェスやおがくずの交換、オイルパンの油を捨てる、等のムダな作業が発生する。

最悪の場合おがくずやウェスに火の粉が入れば工場が火事となる。

そんな事はないだろうと言う油断が、災害を招く事になる。
全く同様の事例もある。
「失敗百選」の著者である中尾教授は、ご自身の研究室でのボヤ事件を書籍の中で紹介されている。上記の事例と全く同様におがくずで漏洩油の堤防を作り、そのおがくずに溶接の火花が入ってぼやが発生。消化器で消し止めた。その後研究室の学生はそのまま帰宅した。しかしおがくずの中でまだ火種が残っていれば、翌日研究室に出勤した時は全て消失と言う事もあり得る。

「失敗百選」中尾政之著

おがくずは、油がなくても爆発する事があり得る。
おがくずが舞っている室内で、静電気放電や、電動機、スイッチから発生する火花により爆発する事がある。「粉塵爆発」だ。
粉塵爆発は2014年7月28日配信のメルマガ第373号でご紹介した。アルミニウム、小麦粉、綿、紙粉でも粉塵爆発は発生する。

5Sの基本は、汚れをきれいにする事ではない。汚れない様にする事だ。


このコラムは、2017年8月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第547号に掲載した記事に加筆しました。

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粉じん引火か、幹部ら拘束 中国工場爆発、死者69人に

 中国江蘇省昆山市の経済開発区にある「中栄金属製品」の工場で2日朝に起きた爆発による死者は69人にのぼり、約190人が負傷した。工場で、これだけ大規模な惨事が起きることは中国でも珍しく、事態を重くみた習近平(シーチンピン)指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。

 国営新華社通信などによると、爆発は自動車のホイールの研磨をする作業場で起きた。工場内の粉じんに引火したのが原因とみられる。当局は同社の幹部ら5人の身柄を拘束し、安全管理などに問題がなかったか事情を聴いている。

 爆発があった工場に通じる道路は2日、警察官らが封鎖した。出入りができなくなったものの、多くの人たちが集まっていた。

 隣の工場の男性工員(24)は「大砲のような、ものすごく大きな音がした。働いている工場のガラスが割れた」。近くの工場に勤務する趙東舟さん(28)は、けが人を運ぶなど救援活動に参加。「全身がやけどで真っ黒になった人たちが次々と出てきた。焼けてしまって、服も身につけていなかった」と興奮気味に話した。

 姉が爆発のあった工場で働いているという許雨朋さん(32)はネットで事故を知って駆けつけた。「何が起きたのか、まったくわからない。姉の携帯電話もつながらない。心配でたまらない」と顔をゆがめた。

 ホームページなどによると、同社は1998年に設立された台湾企業。従業員は約450人で、アルミニウムのめっき加工などを手がけている。中国メディアは、同社が米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に部品を供給していると伝えた。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、同開発区には昨年7月時点で、200社以上の日本企業のほか、約2千社の台湾企業などが入居している。

 日本企業の駐在員らでつくる昆山市日本人同郷会は、日本企業への被害は確認していないという。

(朝日新聞電子版より)

 爆発と言うと、引火性の高い物質が原因と考えがちだが、引火性の無い物質が爆発を起こすことがある。それが「粉塵爆発」だ。

引火性が全くない綿や小麦粉でも爆発は発生する。粉塵爆発の条件は、

  1. 空気中に一定の割合で微粒子粉塵が存在する。
  2. 発火エネルギー
  3. 酸素

この3点が揃うと粉塵爆発を起こす。

アルミニウムは引火性も燃焼性も無い。しかしアルミニウムの微粒子が空気中に一定の割合で存在すると、爆発を起こすことがある。

爆発の引き金となる発火エネルギーは、開閉器や電動機からのスパーク、稼働部分の摩擦熱が原因となる。また静電気放電によるスパークですら原因となる。

小さな発火エネルギーでも、局所的に空気中の浮遊微粒子が加熱され、そのエネルギーが近隣の浮遊微粒子に一気に連鎖し、爆発が起きる。

アルミ粉は、水と激しく反応し水素を放出する。放水消化をすると、二次爆発が発生する可能性もある。作業現場に消化スプリンクラーが設置されていると更に被害を拡大することになる。

綿や小麦粉の粉塵で爆発が起きた事例もある。粉塵が発生する現場は注意が必要だ。

対策は、
清掃、排気により空気中の粉塵を減らす。
粉塵環境の電設設備は、防爆対応品とする。
静電気の発生を抑える。(アイオナイザーはコロナ放電によりイオンを作っているので、逆に発火エネルギーを与えることになるかもしれない)

あなたの工場は大丈夫だろうか?
アルミニウムと言うキーワードではなく、粉塵と言うキーワドに着目すれば、金属加工だけではなく、木工、紙、粉体製品にも、適用範囲が広がる。


このコラムは、2014年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第373号に掲載した記事に加筆しました。

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責任を負う自由

「責任を負う自由を与えれば、人は内に秘めている能力を発揮する」
スカンジナビア航空の社長カール・ヤンソンの言葉だ。
出典:「コーチングの技術」菅原 裕子著

「責任を負う自由」と言う言葉に違和感を持たれるかも知れない。
例えば、新製品の立ち上げに失敗したら責任を取って辞職する、と言うのは責任を負っているとは言えない。リーダが会社を辞めても、新製品の生産はスタートしない。

新製品立ち上げプロジェクトで「責任を負う自由」は次の様になるだろう。
新製品の立ち上げにコミットし、そのために必要な事柄に裁量権を与えられた状態。
例えば、
・必要なだけ残業しても良い(笑)
・必要な情報が手に入る。
・必要なリソースを使う事が出来る。
・アイディアを否定されない。
こういう状況に置かれれば、内に秘めている能力を発揮出来るだろう。

経営者として、いきなり若手の部下にこのような自由を与える事は勇気が必要だろう。しかし責任を取る自由を与えずに、能力を120%引き出す事は困難だ。

私はQCC活動が、「責任を負う自由」を体験する機会であり、訓練課程になると考えている。

前職時代に、設計、営業、生産管理、品証だけの事業部でQCC活動の推進役を担当していた。製造部門などはQCC活動に積極的に取り組むが、間接部門ばかりの事業部では、QCC活動の年間完結テーマ件数のノルマ達成にしか興味がない状態だった(苦笑)
この様な状況を払拭するため、「責任を負う自由」として活動資金を提供する活動テーマを募集した事がある。

数件活動テーマの応募が有った。しかしどのテーマも金のかかる活動内容ではなかった。彼らに取って「責任を負う自由」は金銭の問題ではなかった様だ。就業時間中に活動する価値のあるテーマだと認められた事が「責任を負う自由」と感じられたのだろう。

弊社は、複数の企業合同でQCC活動を実践する「QCC道場」を開催している。第一期QCC道場でに参加いただいた経営者様は、参加理由をメンバーに改善活動の楽しさを体験させたかった、と語ってくださった。参加された4サークルは、短期間の活動にも関わらず、年間効果金額10数万元から300数十万元の成果をあげた。彼らは「責任を負う自由」を体感出来たと思う。そしてその後もQCC活動を継続しておられる。


このコラムは、2017年8月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第549号に掲載した記事に加筆しました。

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孫子の兵法

 「百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するが善の善なるものなり」有名な孫子の兵法の一節だ。戦に百戦百勝するのが最善ではない、戦う前に勝敗を決するのが最善の戦略だ、という意味だ。

「失敗から学ぶ」というコラムで、人様の失敗を題材として未然防止対策を毎週検討している私としては、無視できない言葉だ。争いを好まない性格なので兵法とは距離を置いていたが、ちょっと勉強してみようと書籍を開いてみた。

超訳 孫子の兵法 「最後に勝つ人」の絶対ルール

なんだか安直なタイトルだが(笑)漢文読み下しの本を訳が分からず読んで眠くなるよりは良さそうだ。

「五事を整え、七計によって自他の実力を比較することで、実情をつかむ」
五事とは、道・天・地・将・法のことだ。
ちなみにソフトバンク孫正義の「孫の二乗の法則」 は、この五文字に更に20文字を足して5×5=25(5の二乗)文字で成功哲学を語っている。

「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」

その五事の意味は
道:道徳、道理
天:天命、タイミング
地:地の利
将:リーダー
法:制度

これらの五つが整っていなければ戦いに勝つことはできない。

七計とは
主:主君が道に適っているか
将:将が優れているか
天地:タイミング、地の利があるか
法:組織の制度が整っているか
兵衆:兵卒の力量
士卒:将校の統率力
賞罰:将校、兵卒の働きが適正に評価できているか

これらの七つの観点で敵方と比較し勝算の有り無しを判断する。

勝算がなければ戦わない。五事を徹底的に磨き相手方の戦意を喪失させる。こういう戦い方ができれば、無駄な消耗戦や負け戦に巻き込まれることはない。

書籍にはこんな例が出ていた。
英文科を卒業した若者が、翻訳や通訳の会社に就職すると、同じような経歴の人が大勢いて頭角を表すことができない。しかし興味を持っている服飾業界に就職すると、英語能力が武器となり同期との差別化ができる。
漢文読み下しの書籍にはこういう事例はないだろう(笑)

中国には2500年も前からこういうことを考える人がいた、ということだ。
縁があり中国で仕事をさせていただいている我々も、こういう教えを吸収したいものだ。


このコラムは、2017年8月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第551号に掲載した記事に加筆しました。

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現地経営

 中国に現地法人を立ち上げて経営している日系企業を観察すると、大手企業と中小企業で大きな違いがあるような気がする。

大手企業の場合、経営トップは3年~5年で赴任交代。
中小企業の場合、経営トップが長期間赴任。

もちろんこの分類が全部ではない。例外も多く見聞きする。
しかし大方が上記のようなイメージではなかろうか?
大企業は、人材が豊富で現地経営者の交代要員がたくさんいる。
中小企業は、人材的制約により簡単には現地経営者を変えられない。
そんな事情も垣間見える。

ところで、中国における日系企業と欧米企業の違いも考えてみたい。
私の知見では、欧米系中国企業のトップは中国人。本社からの赴任者もいるが、部門トップのサポート役という印象だ。欧米グルーバル企業は、立ち上げ時には本社の社員が来るが、立ち上げが完了するとさっさと引き上げる、そんな印象を持っている。

たまに長らく中国に住み着いている欧米人にも出会うが、奥さんが中国人だ。(私の知るサンプル数が少ないので、これが一般的かどうかはわからない)

これは製造業ばかりではない。
例えば、カルフール、ウォールマートでは欧米人の社員を見かけたことはない。しかしイオンではたまに日本人と思われる方を見かけることがある。

欧米:現地経営に任せる。
日系:現地経営を信じておらず任せられない。
こんな図式を感じてしまう。

しかし「任せる」が丸投げになっているようでは、企業のブランドイメージが損なわれる場合があるはずだ。

例えば、カルフールやウォールマートで買い物をしていると、店員の対応で不愉快になることがままある。

  • 混雑時に商品展示の入れ替えをする。
  • レジで長らく並んだ挙句、商品のバーコードが読めず『買不了(買えません)』と言い放つ。
    (店側の責任なのに、謝罪は一切なし)
  • 混雑時に店内掃除係と荷出し係が客の前で喧嘩をする。
  • 混雑時に床清掃機に搭乗し顧客を蹴散らして床掃除をする。

イオンが最高とは言わないが、上記のような場面に出会ったことはない。

  • 職員はバックヤードから売り場に入る時一礼する。
  • レジ係は必ず同じ態度で接客する。

など教育が行き届いているように感じる。

この違いは、日本と欧米企業の「経営」に対する取り組みの違いにあるような気がする。
製造業で例えれば以下のようになるのではなかろうか。
工程内不良率が目標を達成すれば改善活動を止めるのが欧米流。
工程内不良率が目標を達成しても、更に目標をあげて改善するのが日本流。

経営効率を考えれば、欧米流の方が優れているのだろう。
しかし個人的には日本流に組したいと考えている。
そういう考えの日系企業が多いので、なかなか日本人赴任者が引き上げられないのだろう。


このコラムは、2018年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第671号に掲載した記事に加筆しました。

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