品質保証」カテゴリーアーカイブ

ノートPCバッテリーパックリコール

 エプソンダイレクト株式会社が2008年10月から2010年7月まで販売したノートパソコン「Endeavor NJ3100」に搭載したバッテリーパックの一部製造ロットにおいて、製造上の不具合があり、発火に至る可能性があることが判明いたしました。
 このため、弊社は、当該特定ロットのバッテリーパックの無償交換(リコール)を実施いたします。 交換対象のバッテリーパックが搭載されたノートパソコンをお使いのお客様は、交換が完了するまでの間、バッテリーパックをはずし、ACアダプターを接続した状態でご使用いただきますようお願いいたします。

 ご愛用の皆様には、大変なご迷惑をおかけいたしますことを謹んでお詫び申し上げます。 今後、品質向上・管理に一層努力を重ねてまいりますので、何卒ご理解・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

(エプソンダイレクトホームページより)

 このリコールの説明は非常に明確だ。
エプソン製品登録ユーザへのメールによると、

  • 原因および想定される事故内容
    2008年11月から2009年1月に製造されたバッテリーパックの一部において、
    バッテリーパック内部の制御基板製造時に部品実装の誤りがありました。
    このため、制御基板において異常状態を検出した際に保護機能が正常に機能
    せず、制御基板が発火し、火災に至ります。
  • 対象バッテリーパック
    エプソンダイレクト製ノートパソコンEndeavor NJ3100に搭載された特定
    ロットのバッテリーパックが該当します。
  • 【機種名】
    ノートパソコン Endeavor NJ3100
  • 【交換対象となるバッテリーパックの製造ロット番号】
    847 / 851 / 902 / 903 (対象数 2,009個)

となっている。

ここから推定すると、バッテリー内部に入っている回路(たぶん保護回路)に使用している部品が間違っていた。そしてその対象が2009個となっているので、間違った部品はSMT部品であり、生産中にマウンターマシンに補充したSMT部品1リール分が間違っていたのであろう。

2009個とは半端ではないかと、思われる読者様もあるだろう。
通常1リールに2000個の部品が入っていることになっているが、実際には少しおまけしてあるものだ。そしてこのおまけの数量は、必ずしも同じではない。

以前ツェナーダイオードの誤納入があった。箱の中に間違ったツェナー電圧の部品が入って納入されたのだ。この時は、箱の中に入ったおまけの部品が何個あったかを特定するのに、四苦八苦した。

部品の生産投入は先入れ先出しをしている。マウンターに部品を補充するたびに部品のロットナンバーを生産記録として控えてある。頭で考えるとピタッと不良対象台数を割り出せると思うであろう。しかし現実はそうは甘くない(笑)

使用した部品の外箱に書いてあるデートコードは、何箱も同じ日の生産になっている。仕様書に2000個入りと書いてあっても、おまけが入っていることがある。

往々にして現場は、理屈どおりでは割り切れずに、泥臭いことをしなければならないものだ。今回のリーコールの記事に対象が2009台と書いてあるのを見て、現場の品証エンジニアの泥臭い奮闘を見る思いがした。


このコラムは、2010年10月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第175号に掲載した記事です。

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初代iPodナノ、過熱のけが4人に なおリコールせず

 米アップル製の携帯デジタルプレーヤー「iPodナノ」の初代モデルが充電中に過熱・焼損する問題で、消費者庁は27日、新たな事故が起きてユーザー1人がやけどをしたと発表した。これで事故は27件目、負傷者は計4人になった。経済産業省はリコール(回収・無償修理)するよう再三求めているが、同社は応じていない。

 問題のモデルは「MA004J/A」「MA005J/A」「MA099J/A」「MA107J/A」の4機種で、2006年9月までの1年間に計181万2千台が販売された。これらの一部のバッテリーは製造不良があり、充電中に最高約200度まで過熱する恐れがある。

 消費者庁によると、新たな事故は今月13日、東京都で起きた。充電中に製品から火花が出て破裂音がし、ユーザーが製品に触れた際に指先にやけどを負ったという。

 事故は07年11月から起きており、うち6件は消防機関から火災と認定されている。しかし、同社はリコールという自主的な対応はとらず、実際に過熱などが起きて顧客窓口(0120・27753・5)に連絡してきた人に限り、バッテリー交換に応じている。同社広報部はその理由について、これまでの取材に対しては「重大な人的被害や物的損害は報告されていない」と説明してきた。この日は「対応できる者がいない」としてコメントしなかった。

 経産省製品安全課は「アップル社の対応は十分でないと考えており、注意喚起のやり方も含めて積極的な対応を促していく」と話している。

(asahi.comより)

 アップル社の対応が理解できない。
火傷、火災の危険性があれば、社告、回収修理をするのが常識だ。

アップルのホームページには以下の告知がされている。

弊社は、ごくまれなケースとして2005年9月から2006年12月に販売された第1世代 iPod nanoのバッテリーが過熱を起こし、使用ができなくなったり、変形していることを確認しました。弊社はこのような事故の報告を何件か受けており(すべて第1世代iPod nanoであり、0.001パーセント未満です)、これらは一つのバッテリー・サプライヤーからの供給であることを特定しています。これまで、重大な人的被害や物的損害は報告されておらず、また他のiPod nanoのモデルについてはこうした報告はまったく受けていません。

第1世代のiPod nanoをお使いでバッテリー過熱を感じられたお客さまは、AppleCare(顧客窓口)にて交換いたしますので、ご連絡をお願いいたします。
 また、他の第1世代iPod nanoをお使いのお客さまで少しでもご不安を感じられた方も、AppleCareにご連絡ください。

回収はしないが、交換修理をする。というスタンスだ。

事故発生率が0.001%(10ppm)未満であると言っているが、安全事故の場合は事故発生率はゼロでなければならない。

また事故が製品出荷開始後2年目から始まっている。
事故が「寿命故障モード」で発生している可能性がある。この場合現在の事故発生率は余り重要な意味を持たない。事故発生率は徐々に高くなるはずだ。

iPodの様なコンシューマ製品は、2、3年で使わなくなる。
私は未だに第二世代のiPodを使っているが、そのような消費者は少数派だろう。5年前の製品の回収を告知しても、ほとんど戻って来ないのが実情だろう。

大事になる前に、回収告知をしてしまった方が、良い結果につながるはずだ。

iPodは、簡単には電池を交換できない構造となっている。
新しいiPhoneは内部電池が接着剤で固定されていると、聞いている。同様に初代iPod nanoの電池が交換不可能な実装形態だとすると、本体ごと新品交換をしているはずだ。この場合、既に初代iPod nanoの生産は終了しているので、完成品在庫の数だけしか対応が出来ない。これがアップル社が自主回収を拒んでいる真の原因なのではないだろうか。

過去の製品でも、月産100台でも、生産可能ならば、アップルのピンチを救い、自らの成長のチャンスとすることが出来る。大量にモノを作るだけではなく、この様なモノ造りが出来る企業に、今後成長のチャンスがあると考えているが、いかがだろうか。


このコラムは、2010年8月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第164号に掲載した記事です。

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パナソニックのレンジ、発煙・発火事故

 経済産業省は20日、松下電器産業(現パナソニック)製の電子レンジ(NE―AT80)から煙が出る事故が7日に宮城県で起きたと発表した。
事故の恐れがあるとして同社が07年5月からリコール(部品交換など)しているレンジ12機種のうちの一つ。一連の発煙・発火事故は18件目で、いまだに169万台が部品交換していない。

 7日の事故は、レンジ裏側の吸気口にほこりが詰まったまま使い続けたため、内部のはんだ付け部にひびが入って火花が飛び、周りの樹脂に火がついたとみられる。一連の事故でけが人は出ていないが、リコールの実施率は昨年末時点で12%にとどまり、リコール後も今回を含めて8件の事故が起きている。同社は昨年11月から折り込みチラシを全国で4500万部配って注意を促している。

(asahi.comより)

 エンドユーザでの使用環境はメーカ設計エンジニアの想定を越えてしまう事がままある。
電子レンジでは、シャンプーした猫を乾かそうとして電子レンジに入れて事故が発生した話が有名だ。電子レンジの加熱原理を理解しているメーカ側は、猫を電子レンジに入れるという「動物虐待」までは想定していない。

しかし今回の事故は「冷却システムが初期の能力を発揮しなくなった場合」に対する想定が不足していたように思う。
記事だけでは判断できないが、半田付けポイントに応力がかかったまま内部温度上昇により、半田クリープの発生が加速したと推定している。
半田接合点にかかる応力と温度に関する設計基準を見逃してしまったか、製造時に応力が発生することを見逃してしまったのだろう。

設計審査、試作サンプル、初回量産品の評価でこのような不良を事前に洗い出す力が、メーカの「品質力」だと思う。


このコラムは、2009年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第90号に掲載した記事です。

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FMEAプログラム開発中

 先週は、TWIに関する説明・相談会、第一期QCC道場のキックオフなどあり、少し忙しくしていた。更にその時間の合間を縫って、FMEAの研修資料を作っていた。お客様の自社課題でFMEAの実践をするので、事例を準備する必要は必須ではないが、講義の時に実例があった方が分かりやすいと思い、事前に汎用の事例を作成している。

問題解決手法の研修にPM分析手法(現象を物理メカニズムで定義して故障原因を解析する手法)のプログラムがある。このプログラムでは事例として、使い捨てライターの機能不良をPM分析する演習課題を準備してある。

この課題を設計FMEAの事例に転用しようと、設計FMEAをやってみた。
35年程前に駆け出しの設計者として、工業用コンピュータの設計FMEAを実施したことがある。当時は訳が分からず「やらされている」感が強かった(笑)

その後品質保証部門の仕事をへて、FMEAの意義(故障・不適合の予防保全、潜在故障の発見による未然予防対策など)と効果(設計ノウハウの蓄積)に気がついた。

目的や意義をきちんと理解しないでFMEAを実践した時は、半ば嫌々やっていた。
しかし目的や意義を理解し、それが自組織に貢献すると分かれば、やりがいはあがる。

私は既に設計業務を引退しているが、技術者だった頃を思い出し熱中した(笑)
今まで何度もFMEAを教えて来たが、問題解決手法の一つとして教えていたので、簡単な事例だけだった。今回は、未知の故障・不適合を洗い出す所までやってみた。(私自身は使い捨てライターの設計をした事がないので、全てが未知の故障・不適合だ・笑)

私の仕事は、人を育成する事により組織を育成し、業績を上げる事だ。
この仕事は、やりがいがあり楽しい。しかも準備も熱中出来る。
一粒で二度おいしいキャラメルと同じだ(笑)


このコラムは、2017年5月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第527号に掲載した記事です。

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透ける可能性ある水着、自主回収 アディダス

 アディダス・ジャパンは14日、今年4月以降に全国で販売した女児用の水着が、着用して水にぬれると肌が透ける状態になると発表した。同社は自主回収する。薄いブルーと、薄いピンクの水着で6モデル、10種類が対象。
問い合わせは、同社の製品回収センター(0120・774・435)。

 同社によると、主に小学校高学年までで、身長100~160センチを対象とした「女児用スイムウェア」。これまでに、約4千着を販売した。生地と色の薄さが透ける原因だとしている

(asahi.comより)

 スポーツウェアの業界では、新製品の「設計検証」「製品の妥当性検証」をどのような手順でやっているのだろうか?今回の様な不具合は、出荷後ではなくもっと早くに発見出来たはずだ。

本来この様な問題は、製品に使う材料を決定する段階で、問題に気が付かねばならない。

電気・電子製品の場合、新規に採用する部品・材料は設計の初期段階で、部材及び、それを供給するメーカの評価を実施する。長期信頼性など時間がかかる評価については、評価計画とリスク回避の代替案を初期設計審査で確認する。

今回の様な、透ける素材を使って水着をデザインするということはありえない。初期評価でサンプルを濡らしてみればすぐに分かることだ。

また、万が一不幸にも初期設計の段階で不適合に気が付かなかった場合も、設計検証で洗い出す仕組みになっている。それでも気が付かない場合は、量産開始前の第三者(普通は品質保証部)の製品妥当性検証で気が付く。この妥当性検証は、完全に利用者の立場で評価を実施することになっている。

電気・電子製品の設計者は安全事故を発生させない様に、最大限の注意を払う。水着メーカにとって「透ける」という不適合は、電気・電子メーカの安全事故と同等の致命的不適合だろう。

衣料メーカにとっては、意匠性が重要なのは理解できるが、基本的な機能の評価がおろそかになったり、手薄になると、今回のような回収騒ぎとなる。

「保証」と「補償」は紙一重。品質保証は「先手必勝」だ。


このコラムは、2010年7月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第162号に掲載した記事です。

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のぞみギアケース破損、9年前の類似トラブル生かされず

 山陽新幹線で3日、博多発東京行き「のぞみ56号」(N700系)のギアケースが壊れた問題で、上越新幹線でも2001年に同じようなトラブルが起きていたことが分かった。ともにギアケース内の歯車のベアリングが壊れ、部品がケースを内部から破損させていた。JR西日本の担当者は上越新幹線のトラブルを把握していなかったといい、教訓が生かされなかった。

 JR西によると、のぞみのギアケース破損は、ケース内の小歯車の両側にあるベアリングが壊れ、部品が大歯車とケースの1センチのすき間に挟まったためとみられる。ベアリングが壊れた原因は不明だが、モーターの動力を小歯車に伝える軸が何らかの原因でずれたことなどが考えられるとしている。

 JR東によると、上越新幹線のギアケースが壊れたのは01年4月22日。新潟発東京行き「Maxあさひ」(E1系)が高崎駅(群馬県)―熊谷駅(埼玉県)間を走行中、台車の異常を示す警告ランプが点灯した。列車はそのまま東京駅に到着し、折り返して新潟まで運行した。

 車両基地で点検したところ、ギアケースが割れて潤滑油が漏れていた。
その後の調査で小歯車のベアリングが壊れ、その部品がケースを破損していたことが分かった。JR東は、ベアリングを押さえつけていた部品が不良品で、「遊び」ができていたと断定。改善策を講じたという。

 JR東によると、上越新幹線のトラブルの原因は鉄道総合技術研究所(東京)で究明し、国土交通省に報告した。
 

(asahi.comより)

 「のぞみ」の車内に白煙が立ち込めたと言うニュースの続報だ。
このニュースを読むと、以前発生した上越新幹線での事故では、発煙する前に警告ランプが点灯し、故障が認知されている。しかしのぞみの事故の場合は、警告ランプが点灯せずに発煙が発生したようだ。ギアケースの破損と同時に、警告ランプが点灯しなかった原因も究明・改善しなければならないだろう。

乗り物に限らず、発煙・発火は利用者に多大な恐怖心を持たせる。あってはならない事故だ。予防保全、未然防止に最大限の努力を払わねばならない。

昔から、10年に一回同じような不良が再発されると言われている。
それは不良・事故を経験した現場の記憶が薄れて行き、また同じ事故を引き起こしてしまうためであろう。

不良・事故の経験を現場の記憶として継承してゆくには限界がある。
記憶として残すのではなく、記録に残し更に、組織の暗黙智として仕組み・仕掛けに落とし込まなければならない。

上越新幹線の事故の後に、車両保守点検手順、車両の製造手順、設計基準等が改定されただろうか?基準書、手順書の形で組織の暗黙智を形式智にしておくのが、過去の経験を忘れない方法の一つだ。

以前、積層セラミックチップコンデンサに亀裂が入る不良事故を経験した事がある。当時想定していたよりも、はるかに簡単にチップコンデンサには亀裂が発生することが分かった。そのため設計基準を変え、製造での加工方法も変更した。

しかし2年後、別の事業部で同じ不良が発生した。
当時私は大いに反省をし、毎月定例開催されていた全社QA会議の他に、全事業部の品質エンジニアが情報を共有しあうための月例会議を発足させた。そこで議論された内容は、技術資料・議事録として残り、全社に公開する。

これも組織の暗黙智を継承してゆくための仕組みと仕掛けになるだろう。


このコラムは、2010年3月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第144号に掲載した記事です。

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続・のぞみ34号トラブル

負の連鎖が引き起こした亀裂『偶然発生でない』

 新幹線のぞみの台車に破断寸前の亀裂が見つかった問題で、台車の鋼材が薄く削られた経緯などを検証した川崎重工業の委員会は28日、製造元の同社内のコミュニケーション不足に過度な現場依存が加わる「負の連鎖」が引き起こしたとの結論を明らかにした。新幹線の重大事故に繋がった恐れのある台車の製造不備は、現場任せの企業体質に原因があった。

(以下略)全文

(産経WESTより)

山陽新幹線のぞみ34号の台車に亀裂が入ると言う重大インシデントに関して以前このメルマガでも検討した。

「運行停止判断、なぜ遅れた? 「のぞみ34号」トラブル」
「のぞみ34号トラブル」

調査によって明らかになった経緯詳細については、上記新聞記事をご参照いただきたいが、概略をまとめると以下の通りとなるだろう。

亀裂が入った「側バリ」を製造していたメーカが鉄道用部品の生産から撤退。代替えメーカに対して現場監督職が「台座鋼材を削ってはいけない」と言う注意事項を伝えていなかった。

台座鋼材を削ったため、強度不足となり軸バネの弾性応力により徐々に亀裂が入った。

製造時の注意事項をまとめた「作業指導票」は、強度に影響が及ぶとして台車枠の鋼材を削ってはいけないと規定してあった。しかし仕入先メーカが削ったのが原因と読める。

生産移行前のメーカは同じ問題を起こしていない。と言うことは、代替えメーカにおける問題点は以下の二通りとなるだろう。

  • 代替えメーカに正しく製造仕様が伝わっていなかった。
  • 製造仕様は正しく伝えたが代替えメーカが正しく作業しなかった。

側バリは列車の安全重要部品と思われる。
生産工程の変更という4M変動に対してきちんとレビューができていなかった、というのがJR側の問題点だ。

代替えメーカを指導した現場監督職にとっては「台車鋼材を削ってはいけない」というのは常識であり、伝達する必要を感じなかったかもしれない。
また「作業指導書」の規定も理由が書いてなければ、その重要性は理解されない。

記事によると、メーカ変更時に設計、製造、品証の各部門がレビューをした様だ。しかしそのレビュー内容が生産指導に出かけた現場監督職に伝わっていなかった。初品生産時に生産現場の監査が適切に行われていなかった、などの隠れた問題点がまだありそうだ。

「初品」の検証は出来上がった製品の検証だけでは不十分だ。その後に生産される製品も品質が保証できるかどうかを検証せねばならない。現場作業員が正しく生産方法を理解している。そして作業員が変わってもそれが保証される仕組みがある、ということも検証せねばならない。


このコラムは、2018年10月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第730号に掲載した記事です。

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魂のこもった仕事

 NHKテレビ「仕事学のすすめ」の録画を、まとめ見した。
「建設機械のコマツ会長・坂根正弘氏のダントツ経営」

坂根氏が社長に就任した時に、社内はこんな状況だったそうだ。
販売した建設機械に対する満足度を、毎月社長に報告していた。
そのデータは、サービス部門が顧客に電話を掛け聞き取り調査をしてまとめる。

例えば、自社が販売した建設機械が48時間以上故障で稼動できなかった、など稼働状況も把握していた。しかしこのデータは、経営会議に上げられるだけで、担当営業所、設計部門、製造部門には上がらない。
経営会議で必要だから、データを集め、綺麗なグラフにする。これは「仕事」ではなく「作業」だ。

魂を込めて仕事をするということは、その仕事の意味を理解するところから始めなければならない。

データを集める目的は、顧客満足状況を把握し、顧客満足を高めることのはずだ。経営会議にデータを提供することは、手段であって目的ではない。
このデータを、製品設計の改善に役立てる、生産品質の改善に役立てなければならない。

日々のルーチンワークに陥り、仕事を作業としてしまうと、仕事には魂がこもらない。
コマツといえば、TQM先進企業だ。そのコマツでさえこういう事態に陥っていたのだ。

毎日の生産記録を班長の日報で報告させているが、その記録は誰も見ていない。品質管理部が毎月工程内不良率をまとめて、QA会議で報告するが、製造部門はそれを把握していない。顧客クレーム内容は、製造部門にはフィードバックしているが、設計部門にフードバックしていない。

経営会議、QA会議などでのデータを見ると、きちんと運営できているように見えるが、内実は上記のような事態に陥っているのを見ることがある。

一度ご自分の工場も点検してみてはいかがだろう。


このコラムは、2011年10月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第225号に掲載した記事です。

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中国、牛乳も汚染 粉ミルク混入は行政が隠ぺいか

 【北京=峯村健司】中国の国営中央テレビは18日、国家品質監督検査検疫総局が大手乳業メーカー「蒙牛」「伊利」「光明」の3社の製品サンプルの約1割から、化学物質メラミンが検出されたことを明らかにした。牛乳へのメラミン混入が判明したのは初めて。国民の不信感は乳製品全体に広がり始めた。

(asahi.comより)

 三鹿集団が粉ミルクにメラミンを混入して生産・販売、これにより多くの乳幼児が健康被害にあっている。この事件を受けて中国当局は109社の粉ミルク工場の製品を調査し22社の製品からメラミンを検出している。その中には『蒙牛』『伊利』『光明』など中国最大手のメーカも入っている。

この事件は事故でメラミンが混入してしまったのではなく、水で薄めた原料の蛋白質量を補うためにメラニンを故意に添加したというところに戦慄を感じる。

昨年中国産のペットフードにメラミンを混入させ世界中からたたかれたばかりである。今回は自社の利益のために自国の幼い命を危険にさらした。

四川大地震以来、私は中国人の他人を思いやる心や貢献心を見直していたが、今回の事件は大変失望した。

日本人は一人では何も出来ないが、チームを作ると大きな力を発揮する、といわれている。
中国人は一人ひとりは良い人でも、集団になるととんでもない悪い事をする、ということなのだろうか。

いずれにせよ、近所のスーパーには『蒙牛』『伊利』『光明』の牛乳しか売っていない。今回の事件は私の食生活にも直接影響を与えており、憤りと困惑を禁じえない。


このコラムは、2008年9月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第53号に掲載した記事です。

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介護用電動ベッドから出火?

介護用電動ベッドから出火? 83歳女性重傷

 29日午前5時ごろ、横浜市磯子区滝頭2丁目、無職神鳥ハナイさん(83)方の介護用電動ベッド付近から出火。ベッドに寝ていた神鳥さんが下半身に大やけどを負った。

(asahi.comより)

写真を見るとベッドの下半分が焼失している。
記事には出火原因は書いていなかったが、出火原因を推定してみる。

・モータのレアショートによる過電流。過熱→出火
・AC電源取り入れ部分の接触不良によりスパーク発生。付近の可燃物から出火
・タバコ火による失火

現場検証によりベッド下のモータ付近からの出火と推定しているので、「たばこ火」は否定されるが考えうる原因を全て挙げる。
モータのレアショートに関しても駆動回路に過電流保護があるからと簡単に消去しない。
過電流保護回路も何らかの理由により失効する可能性はあるからだ。

こうして列挙した故障モードを自社製品に当てはめてみる。
これらの潜在故障モードの影響を検討し、対策ができているかどうか検証する。

このようによそで発生した不具合事例から自社製品の「不具合未然防止対策」を検討する。
不具合が発生した時に「再発防止対策」を検討するのは当たり前だが、このようにまだ発生していない不具合に対する予防処置ができれば要らない「授業料」を支払わずに済む。


このコラムは、2007年12月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第14号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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