月別アーカイブ: 2022年9月

着陸するロケット

着陸するロケット、「価格破壊」は日本の論文のおかげ?

発射したロケットが再び基地に戻ってくる――。SF番組「サンダーバード」に登場するようなロケットを開発したのが、米国の宇宙ベンチャー「スペースX」だ。ロケットが、洋上の船に正確無比に着艦する映像はもはやおなじみになり、再使用により打ち上げ費用は安くなった。だが、その「価格破壊」が危ぶまれる「事件」が起きていたことは、あまり知られていない。

(全文)

(朝日新聞より)

「事件」とはジェフベゾスの「ブルーオリジン」が特許申請した宇宙ロケットの採用技術に対し、イーロンマスクの「スペースX」が先行事例を挙げて特許成立を阻んだことを指している。それだけではない。その先行事例として挙げたのが、宇宙開発事業団(現JAXA)と三菱スペース・ソフトの技術者が米航空宇宙学会誌に発表した「垂直着陸型2段式ロケットの再突入と誘導」という論文だったのだ。

今更歯がみをしても始まらないが、学術論文を発表する前に特許出願をしておけば、スペースXから特許使用料が入り、日本の宇宙産業研究資金となっただろう。

日本人はお人好しが過ぎるようである(苦笑)
「無印良品」が中国で商標権訴訟を起こされ敗訴したのは記憶に新しい。


このコラムは、2020年10月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第1051号号に掲載した記事です。

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雍の詩

sānjiā(1)zhěyōng(2)chè(3)yuē:“xiàng(4)wéigōng(5)tiān(6)(7)(8)sānjiāzhītáng。”

《论语》八佾篇第三-2

(1)三家:魯の家老の、孟孫氏・叔孫氏・季孫氏を指す
(2)雍:『詩経』周頌の「雍」の詩
(3)彻:祭祀が済んで供物をさげること
(4)相:助ける
(5)辟公:諸侯
(6)穆穆:威儀正しく奥ゆかしい
(7)奚:どうして~しようか(いや~しない)反語の意
(8)取:用いる

素読文:

さんしゃようもってっす。いわく、たすくるは辟公へきこうてん穆穆ぼくぼくたりと。なんさんどうらん。

解釈:
孟孫氏、叔孫氏、季孫氏の者が、雍の詩を歌って供物を下げた
孔子曰く:“雍の詩は、諸侯が祭りを助け、天子はその座にあって威厳を正しているという意味だ。諸侯三家の祭りなどで歌えるようなものではない。”

孔子はとりわけ祭事に関して厳格だったようです。

脅迫メール

有権者にトランプ氏への投票迫るメール

「米有権者にトランプ氏への投票迫るメール、国外のサーバー経由か」

 米フロリダ、アラスカ両州などで20日、一部の有権者に「トランプに投票せよ」と脅す内容のメールが届いたという通報が相次いだ。
フロリダ州選挙管理当局の報道担当者は、この日に数十件の通報が殺到したため、連邦捜査局(FBI)などに報告したと述べた。
フロリダ大学では学生や職員、卒業生ら183人に同様のメールが届いた。

(CNNより)

 以前頻繁に脅迫メールが私のPCに来た。
「お前のパスワードはこれこれだ。このPCにはマルウェアを仕込んであり、PCで閲覧しているエロサイトの画像とそれを見ているお前の顔を収録した。これをさらされたくなければ、仮想通貨でいくらいくら支払え」という脅迫だ。
同様のメールを多くの人が受け取ったようだ。噂によると老齢の女性にも届いたらしい。

今回の脅迫メールは、金品を要求しているわけではない。報復すると言っている。一種の愉快犯なのだろうか?

メールそのものは米国国外から送られているようだ。
トランプに引き続き大統領を続けてほしい勢力があるのだろうか?
または、犯罪的組織がトランプを応援していると匂わせる、反トランプ勢力の陰謀であろうか。

いずれにせよ、トランプ大統領は4年で終わりだろう。米国国民の良識を信じたい。


このコラムは、2020年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1052号に掲載した記事です。

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続・平均値と中央値

 以前のメールマガジンでコロナウイルス症治療薬の臨床試験で効果の判定は治験薬とプラセボの中央値を比較して行うと解説した。

メルマガ1056号「平均値と中央値」

それに対してこちらのニュースでは平均値で70%の有効性が確認できたと言っている。

「英アストラゼネカ ワクチン臨床試験暫定結果 平均70%の有効性」

中央値と平均値のどちらで評価するのが正しいのか?と疑問に思われた方もあると思う。再度平均値と中央値について解説したい。

治療薬の臨床試験では、治療薬を処方したグループとプラセボ薬(効果のない偽薬)を処方したグループで各々治癒に要した期間を比較評価する。この際、プラセボ群と治験薬群の治癒期間の中央値で比較評価する。これは治癒期間がすごく早い、または遅いという「離れ値」があるため平均値がそれぞれの群の特性を代表しないため、代表値として中央値を使って評価する。

一方、ワクチンは予防薬であり治癒期間を比較できない。ワクチンの効果は抗体ができたか、できなかったかで評価する。ここで平均70%と言っているのは、ワクチンの摂取量を変えて試験したところワクチンの有効性は高いもので90%、低いもので62%、平均で70%という意味だ。

コロナウィルス感染者が急激に増えている。記事によるとアストラゼネカは来年30億回分を生産可能にする、とある。第三波の鎮静化には間に合わないと思われる。


このコラムは、2020年11月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1065号に掲載した記事です。

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改善指導

 ある工場(バスを生産する中国企業)の改善指導が先週終了した。半年余りかけ精益生産項目(リーン・プロダクション・プロジェクト)を指導した。

内陸部にある工場を初めて訪問した時は、寒い寒いを連発していたが、最終回は蒸し風呂のような暑さにばて気味となった(笑)

この工場の経営者からは、精益生産を工場に根付かせるため、プロジェクトチーム(精益生産項目と言う部署を新設していた)を指導して欲しいと依頼を受けた。

実はこの工場の親会社を無料診断で訪問したことがあり、いきなりリーン・プロダクションに取り組めるレベルにないと推定していた。まずはリーン・プロダクションの基本となる5Sの指導から始める事とした。それと平行して、生産現場の作業改善の指導をした。

指導していると、色々な問題点が見えて来て、実はリーン・プロダクションなどと言っているレベルではない事が分かって来る(苦笑)
製品企画から量産に移るまでの、仕組みがきちんと機能する様にする必要がある。更に品質保証システムも脆弱生が見えてくる。

などなど課題が沢山ある工場だ。その分成長機会が沢山ある。
組織改革が必要と判断したが、経営者に「外科手術」を受ける勇気を与えられなかった。

5Sと作業改善の指導をしながら、開発、品証のメンバーの意識を上げる事とし本格的な外科手術は次回のプロジェクトでやろうと言う事で指導をして来た。

こちらの指導がなかなか理解出来ないようで、進歩はかなり遅かった。
しかし最終回の進歩がずば抜けて高かった。今までの分が一気にメンバーの腑に落ちて、オセロの四隅を取ったように、一気に変わった。

どうもこの工場のメンバーは、視覚的に指導するのが合っていた様だ。
ビデオカメラを使った指導を始めたら、一気に理解が深まった様だ。ある作業のビデオを見せて「この作業員を楽にしてやれ」と言ったら、次の日には作業用の治具が出来ていた。現場で指導するより、ビデオ映像の方が効果が高いなんて思っていなかった(笑)
効果があるからには、これからはもっとビデオ改善を取り入れて行く事にした。

この指導先は、最終回の指導以降も改善が継続している。
遅咲きだったが、指導したメンバーが力を発揮する様になって来た。

先週末には、残業をしても一日に3台しか作れなかったのが、定時だけで3.5台作れる様になったと、報告があった。最終回には、目標を定時だけで4台に設定して来た。多分今週中には達成するだろう。

実は指導のあと、経営者、メンバーと一緒に食事会をした。
この席で一月に2,000台作れる様になったら、見に来るからと、約束して来た。一日8台だから今の目標の倍だ。


このコラムは、2013年7月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第318号に掲載した記事に加筆しました。

生産性改善

 20世紀当初、フレデリック・テイラーが「科学的管理」を提唱し作業の標準化がなされる。要素作業を定義して作業を標準化し、作業時間を定義した。ギルブレイスのサーブリック法はこの頃に開発されている。
つまり科学的管理は「いかに作るか」を定義した。

その後ウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で作業効率向上の実験が行われた。この実験に参加したエルトン・メイヨーは生産性の改善は作業環境に依存せず、作業者の心理的要因に依存することを発見している。

これらの研究が役に立ったのは、単純労働であろう。知識労働に同様な手法を用いても生産性は改善しないだろう。従来の科学的管理は作業動作に注目しており、動作を伴わない知識労働には無力だ。

知識労働の最善の改善は「止めること」だ。
もちろん全て止めてしまうわけではない。作業の目的、得たい結果、必要性を理解し、必要ないことをやめる。

例えば、参考資料を探し、コピーを取って、分類別のファイルに格納する、と言う作業があったとする。この作業の目的は、参考資料を閲覧可能にする、と言うことになるだろう。であるならば参考資料はネットで探し、共有ディスクに格納するだけでいい。コピーは止める。分類別のファイルは作らない、検索機能で代用。当然書棚も必要なくなる。

上記の作業で知的作業と言えるのは、参考資料を読んで新しい事を考える時間だけだ。知的作業の改善は、価値を創造する仕事に集中することだ。


このコラムは、2020年11月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1062号に掲載した記事に加筆しました。

改善の効果

 先週は、生産改善の指導をさせていただいているお客様で第三期最終回の訪問指導に伺った。

前回訪問時に、アドバイスした改善点、自主的に取り組んだ改善点の発表を聞くと、改善効果は総額23万元/年となった。この金額は、純粋に改善コストダウン分だけであり、改善の結果スペース削減、不良の減少などの効果は加算されていない。

今回の改善事例発表には、現場の班長、作業員からの提案も2件含まれていた。
今指導しているメンバーが、班長や作業員の改善指導が出来る様になって来たという事だ。

問題を改善出来る能力。
問題を発見して改善出来る能力。
改善が継続される習慣。
という3ステップの最終章まで到達したと言う、達成感を感じた。

メンバーたちは余り実感していないかもしれないが、経営幹部の方から「2年前と比較して、明らかに改善の着眼点に変化が見られる」と評価を受けた。

こういう評価が、メンバーの改善意欲を更にひき出し、より高い挑戦に取り組むことになる。


このコラムは、2013年2月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第295号に掲載した記事に加筆しました。

八佾の舞

kǒngwèishì(1):“(2)tíngshìrěn(3)shúrěn?”。

《论语》八佾第三-1

(1)季氏:魯の国の大夫
(2)八佾:縦横8列の舞い
(3)忍:許す


素読文:

孔子季氏きしう:“八佾はちいつていまわしむ。これしのぶべくんば、いずれをかしのぶべからざらん。”

解釈:

孔子は季氏を評して言った。
“季氏は前庭で八佾はちいつの舞を舞わせた。これが許せたら、世の中に許せないことはないだろう”
縦横八列の舞は、天使、皇帝が許される舞です。大夫である李氏が許されるのは四佾(4×8列)の舞です。

余白が新しいモノを産む

 「余白が新しいモノを産む」私が尊敬する友人・原田遼太郎氏の言葉だ。彼は中国で学生を巻き込んで、元ハンセン氏病患者の隔離村支援を実践してきた人だ。彼の活動はこのメルマガでも何度が紹介した。

「世界を変える」
「モチベーションの高め方」
「高離職率組織の運営」

彼がいう「余白」というのは組織の「余白」のことだ。組織をキチッと定義し、運営をすると組織の活力が失われる。というの彼の言葉の真意だと思う。(オンラインでスピーチした内容なので真意を確かめるチャンスがなかった)

例えば企業の組織で考えてみよう。マーケティング部門が商品企画を考える。開発部門がその企画を製品に落とし込む。生産技術部門は製品の生産工程を作り上げる。製造部門が製品を生産。営業部門が顧客に販売し対価を得る。その他の間接部門も協力して企業活動を行う。

組織とはこの様な形のものだと考える。
このとき組織の境界線をキチッと引いてしまうと画期的なものが生まれない。

それぞれの役割が決まっており互いに干渉しない「硬い組織」よりも決まった役割を逸脱しても互いに議論し合う組織「余白のある組織」の方が活性度が高いはずだ。

世の中の官僚組織と、自由闊達なベンチャー組織を比較してみれば理解できるだろう。

 余白とは境界線にある緩衝地帯の様なものだろう。
地政学的な緩衝地帯は相互に干渉しない領域を指すと思うが、活性化した組織の余白は相互に積極的干渉し合う領域だ。


このコラムは、2022年4月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1275号に掲載した記事に加筆しました。

メモの活用

 先週は偉そうに「メモの効用」などと書いてしまった。
「ワインバーグの文章読本」と言う書籍で著者の「自然石文章術」と言うのを知ったのがきっかけだった。家を作る時は手ごろな石ころを集めそれを適切な部分に当てはめて壁を作る。文章作成も同様な作業だとワインバーグは書いている。

毎週メルマガの原稿を書くのに苦労している私は早速B6サイズのメモ用紙を購入し、思いついたことをメモし透明ビニール袋にため込んだ。アイディアに困った時にビニール袋のメモを机の上に並べて、卦を読む占い師の如く(笑)何かが降りてくるのを待つ、と言う作業をしていた。

しかしメモ用紙(石ころ)は増え続けアイディア降臨の作業はどんどん非効率になっていく。そんな訳でメモ用紙による石ころ収集作業はやめて、Evernoteに蓄積する様に変更した。メモ用紙はキャッシュメモリーの如く、主記憶に入力したらすぐ捨てる方式にした。Evernoteに保管するアイディアはある程度意味のある文章の場合も、単語だけの場合もある。それらを順番に眺める事もあるが、こんなテーマでと思いついた単語で検索する事もある。

先週のメルマガを読まれた読者様からメモ用紙やノートを分けるのは好ましくないと、一冊のノートで会議の議事録や日々思いつくアイディアも記録する方法を教えていただいた。記録は普通にノートを使い、アイディアは後ろのページから使っておられるそうだ。ノートを使い終わったら、アイディアのページは切り離しバインダーに閉じるそうだ。この方法ならば、メモ用紙の様に散逸する心配はないし、いつも一冊のノートを手元に置いておけば良い。
唯一の欠点はアイディアをバインダーに移した時に時系列にならない事だとおっしゃっていた。しかし日々の記録は初ページから横書き、アイディアは後ろページから縦書きにする、方眼ノートを使えばアイディアは後ろから上下反転して使えばいいかもしれない。

こう言うノート術は初めて知った。優れたアイディアだと感心した。
しかし検索ができるのが電子メモの利点だ。これはどうしても紙では太刀打ちできない。


このコラムは、2022年4月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1280号に掲載した記事に加筆しました。