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働かせ方と働き方

 先週の編集後記で、製造現場の監督職を平日の研修に参加させるのに消極的な中国人経営幹部をご紹介した。

班長の能力を上げ、生産品質を安定させたい、生産効率を上げたい、という欲求は当然だ。先週ご紹介した経営幹部もそれを理解しているから、私の話を聴きに来たのだろう。しかし目の前の納期に間に合わせ得るため、生産は止められない。班長不在のまま生産するのは不安だ。

そんな気持ちは理解できるが、目前の短期課題を満足させるために長期課題に目をつむる状態になっている。

班長の代理が出来る人材を育成しておく必要があるはずだ。
班長が研修を受けている間は、班長代理が現場を取り仕切る。そして実力がつけば班長は昇格。代理経験を積んだ班長代理はすんなり昇格出来る。
そして、次の班長代理候補が作業者から選ばれる。このようなキャリアパスが出来ていれば、意欲のある作業者はさらに意欲を上げるだろう。
このように予備軍が順次育つ環境を作っておかねば、突然班長が離職すると大混乱になるはずだ。

経営幹部もこれを自分のことに当てはめて考えれば理解できるはずだ。
課長の仕事をいつまでも自分がやっていれば部長にはなれない。部下が課長の仕事ができるようになって初めて自分が部長になれるのだ。

日本で議論が迷走している「働き方改革」は、如何に長時間労働を減らすかという「働かせ改革」にすり替わっているような気がする。本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

くだんの経営幹部も班長の「働かせ方」ではなく自分自身の「働き方」に着目すれば、班長の育成にもっと積極的になるのではなかろうか?


このコラムは、2018年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第692号に掲載した記事に加筆しました。

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学ばざるもの食うべからず

 以前このメルマガで、二宮尊徳の言葉をご紹介した。

「遠きを見て計る」

本日ご紹介するのは二宮尊徳翁の遺訓だ。

人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。
学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。
知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。
故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。
学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。
道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

僭越ながら解釈すると、
人として生まれたからには、学ばねばならない。
学んだからには、道理を知らねばならない。
道理を知り行うことができねば、知らぬと同じ。
ゆえに、人として生まれたからには学ばざるべからず。
学を志す者、道理を知らざるべからず。
道理を知る者、道理を実践せざるべからず。

「道」は老子が説いた「道(タオ)」のことだと思う。道理と訳すのは安直かも知れないが、「宇宙の理り」とでも解釈したらいいだろう。無限の広がりと過去から未来の無限の時間における「絶対真理」と私は解釈している。

「学ぶ」とは学校での勉強はほんの入門であり、学校では学ぶ方法を教わるだけだ。ほとんどのことは社会に出てから学ぶことになる。

「働かざる者食うべからず」とともに「学ばざる者食うべからず」だ。

そして私たちは学習者であるとともに教育者でもある。道を知り行うことの一部は、部下や後進の育成だ。


このコラムは、2018年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第668号に掲載した記事に加筆しました。

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ペットを飼う理由

 メールマガジンを斜め読みしていて「なぜ、人間はペットを飼うのか? その理由が納得すぎて笑った!」という気になるタイトルを見つけた。

「まんしょんオタクのマンションこぼれ話」

NHKのバラエティ番組で、人がペットを飼う理由を解説していたという。
多くの人はペットに対して「癒し」を求めているという。東日本震災でペットと離れ離れになっている人々も、涙ながらに再会を喜び、災害の苦難をペットにより支えられているという。

ではなぜペットに対して癒しを感じ、苦難の支えになっているのか?
それは、人が原始時代から群れで生活をして来たDNAの記憶によるという。天候や天災などの自然や、外敵から身を守るために人は群れを作って暮らしていた。群れの生活で「弱いものを守る」という本能が深く刷り込まれている。個を守ることにより、群れが滅びることなく繁栄した。

弱いものに餌を分け与え、世話をする。それによって群れを守る。ヒトという種が滅亡せずに繁栄できたのは、弱いものに心から愛情を与えることがDNAに刷り込まれているからだろう。

犬や猫も元はと言えば、群れで暮らした動物だ。彼らもまた命を守るため群れの中で庇護を得る代償として、癒しを与えることがDNAに刷り込まれているのだろう。

企業も同じではなかろうか?
経営者と従業員、上司と部下。報酬を与える見返りに労働を提供するという利害関係だけではなく、同じ群に属するものとして、互いに与え、与えられるものがあるような気がする。

経営者や上司は、部下に成長のチャンスを与えることにより、業績を上げる。
従業員や部下は、与えられたチャンスに応え自己成長により、業績に貢献する。
このようなギブアンドテイクの関係と考えたらよかろう。


このコラムは、2018年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第665号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗を糧に 疲れたときにこそ技術は身につく

 中国で仕事をする様になってプロ野球を見る事は無くなってしまった。もうじきWBCが始まるらしい、という程度であり野球ファンとは言えない状態だ。本日のタイトルは、日経新聞に出ていたキャンプ中のバッファローズ二軍監督田口壮さんの記事だ。

失敗を糧に 疲れたときにこそ技術は身につく

グランドで実践練習中にミスをすると、反復練習をすると言う。例えば、送りバントを失敗すると、屋内練習場に移動しバントだけを練習する。その練習が5時間に及ぶと言う。さすがに職業野球選手の世界だ。手を抜けば収入が無くなる。そう言う覚悟が出来ている人だけが生き残れるのだろう。

実は若い頃職場のメンバーと草野球チームを作り、地域のリーグ戦に参加していた。普段練習などしない。いきなり集合して試合をする。そんなチームだ。
多分私が一番練習量が多かっただろう。土日に近所のバッティングセンターで練習をしていた。外角の球を右方向に流し打ちをする、などとテーマを決めてバッティング練習をしていた。他の人たちは、バットを長く持ち思いっきりスイングをして長打を狙う。流し打ちばかりしている人は異様に見えたかも知れない。テニスの練習マシンで守備練習もした(笑)
しかし練習量はせいぜい30分。5時間もバント練習だけをやるというのは想像すら出来ない。そのくらい練習をしなければ、プロとして満足のゆくプレーは出来ないのだろう。

さて、我々製造業の職場での仕事の練習はどうだろう。
作業ミスをしたら、5時間作業訓練をさせる。こんな事をしたら作業員は一人もいなくなるだろう(笑)第一それでは生産効率が悪くて会社がつぶれる。そんな練習をしなくても、仕事ができる様に生産方法や製造工程を設計する。効率よく作業訓練が出来る様に、作業指導方法を考える。

我々の場合は、選手一人ひとりが激しい訓練をするのではなく、経営者や幹部が従業員一人ひとりが成果を上げられる様に考え抜く、という事になるだろう。会社にいる8時間だけではない。四六時中考えていなければならない。夢の中で改善のアイディアがひらめく様になれば、一人前だ(笑)


このコラムは、2017年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第518号に掲載した記事に加筆しました。

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知識を行動に

 先週末は、方針管理勉強会に出席した。方針管理勉強会とは東莞和僑会で開催している勉強会だ。1年間かけて経営者・中国人経営幹部と一緒に方針管理・目標管理を勉強している。二期目の今年は6社が参加。メンバー企業を会場とし、相互交流をしながら勉強会を開催している。12月16日開催予定の最終回で次年度の事業計画を開催する事になっている。

勉強会事務局が精力的に運営しくれているので、私の出番は殆どない(笑)
今回は珍しく懇親会の後にスピーチをする事になった。「お疲れ様でした」と簡単に挨拶したら、事務局や参加しているメンバーからもっとしゃべれと叱られてしまった(笑)

そこで勉強会や研修について普段思っている事を短く話した。
30名程の参加者はほとんどが中国人であり、日本人経営者も中国語がわかるので中国語でスピーチをした。

『知識不如能力、能力不如行動、行動才有成果』
研修や勉強会で知識だけを覚えても、頭でっかちになるだけで役には立たない。
知識を実践する事で能力に変換する。ここまでは、研修や勉強会で達成出来る。
そして研修や勉強会の後に能力を活かして行動する事により成果が生まれる。
成果は知識や能力からは生まれない。行動によってのみ成果が生まれる。
と言う事を伝えたかった。

日系企業に勤務する中国人は、日本人が話す中国語に慣れているのだろう、私のいい加減な中国語でも理解出来た様だ(笑)

研修で達成出来るのは、知識を与え実践練習で能力に変換する。そして行動したくなる様に、学習者の意欲を高める所までだ。成果は学習者一人一人の行動によってしか生まれない。

参加者の中に以前私の研修を受けた中国人がおり、彼は他の参加者に『主動一点』(積極的に行動する)だと説明している。実は以前彼に『玉』の意味を尋ねた事が有る。当然何の事か分かるはずはない。これは中国語のなぞなぞだ。『玉』一字で四文字の言葉を推測する。答えは『主動一点』。

日本語で言えば以下の様になる。
玉とかけて、主動一点と解く。その心は「玉」の点を動かせば、「主」となる。

こんなくだらない駄洒落を彼は覚えていてくれて、以来自分の信条として部下にも教えている、と言ってくれた。
こういう事を言ってくれる弟子がいると本当に嬉しい。分不相応にも、孔子になった様な気がして有頂天になってしまった(笑)孔子の様な仁者であれば、にこりと微笑むだけであろう。しかし小人の私は、帰宅し床に入るまで嬉しさで心が満たされた。


このコラムは、2017年11月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第591号に掲載した記事に加筆しました。

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不立文字

 りゅうもんとは禅宗の教義を表す言葉で、文字や言葉による教義の伝達のほかに、体験によって伝えるものこそ真髄であるという意味。

通常私たちは,文字や言葉を使って他人とコミュニケーションをしている。
しかし相手に伝わる情報は言葉よりも、表情、仕草などの言葉以外の要素によるところが多いと言われている。口角を上げる、ウィンクをする、親指を立てる。こういった仕草が言葉以上の情報を相手に伝えることもある。

しかし不立文字で得る情報は,相手の感情ではなく禅宗の教義だ。単純な事柄ではない。言葉を使わずに禅宗の教義を理解することができるのだろうか?

禅宗には「只管打坐」という言葉がある。真理を会得するためには教えを請うのではなくひたすら坐禅をせよ、という意味だ。

真理とは何かを百言を費やしても理解できないであろう。だからこそ不立文字であり只管打坐なのではなかろうか?

百言を費やして説き教えるよりは、自ら体験することで理解させる。
このように簡単に言葉にしてしまうと、ありがたみがなくなるが(笑)
「教える」とは、体験を通して自ら理解させることではないだろうか。


このコラムは、2019年9月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第870号に掲載した記事に加筆したものです。

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リーダの育成

今週配信のメルマガ第543号「相互学習支援」に読者様からメッセージをいただいた。

※K様のメッセージ
 私も改善コンサルタントを行なっており、同様の悩みを日々感じています。
過去に質問術とか色々と考えてもらう指導を経験して来ましたが、これもあるレベルの到達していないと難しいことも教えられました。
お客さんのレベル(自分のレベル)をあげていただけるためにどうしたらいいのか悩む日々を送っています。
今後も勉強させていただきます。

同業者様からのメッセージだ。
指導対象のレベルを上げるためには、指導者自身のレベルを上げなければならない。非常に真っ当なお考えだと思う。

まれに「うちの従業員はレベルが低くて」とこぼされる経営幹部がおられる。「レベルが低い」というのは従業員の問題ではなく、経営幹部の課題である事に気がつかれると良いと思う。

質問(以前メルマガで書いたが「発問」といったほうがいいだろう)によって相手に気づきを与えるためには、指導者は「発問能力」を高める訓練を積む必要がある。

以前のメルマガ記事「答えのない質問」

同様に相互学習支援が発生するように「場のエネルギー」を高める必要がある。

コンサルタントのように、外部の人間が顧客企業の従業員を動かして、成果を出すためには何をしなければならないか?どうやれば上手くゆくのか?
私は日々こういうことを考えている。多分K様も同様なのだろう。


このコラムは、2017年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第545号に掲載した記事に加筆したものです。

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人財育成

 先週人事系コンサルをされている方の講演に出かけた。多くの経営者が人財育成に関して「モヤモヤ」しているというのだ。人財育成はやらなければならないと分かっているのだが、費用対効果を考えるとモヤモヤする。その証拠に売り上げが下がると真っ先に削るのが教育経費だ。

「モヤモヤ」の原因を自分なりに考えて見た。
企業が人財育成をする目的、達成すべき目標が明確になっていないのが原因と考え至った。

例えばISO9001で定められている年度品質目標に「□□研修◯回開催」などと書かれてはいないだろうか?研修をすることが目標ではないはずだ。研修により何を達成したいのかが目的であり、その達成度合いが目標であるべきだと思う。研修そのものは手段に過ぎない。

例えば、品質不良を半減するため(目的)に改善活動研修を開催(手段)する。
この時の目標は「不良率〇〇%削減」となるはずだ。
又は、作業員の離職率を下げるため(目標)にTWI-JR研修に参加(手段)する。
この時の目標は「作業員の離職率〇〇%減」だ。

人財育成の目的・目標が明確であれば、モヤモヤすることはないはずだ。更に目標を達成した時の費用対効果を考えれば、売り上げが下がる時にこそ研修をやらねばならないこともあるだろう。


このコラムは、2019年3月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第797号に掲載した記事に加筆したものです。

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知識より行動

 私の仕事は、顧客の生産現場を改善することにより、生産性改善、品質改善を通して業績に貢献することだ。この仕事を達成するためには、顧客のリーダを育成する必要がある。

育成とは、知識を能力に変える、能力を行動に移す意欲をあげる、事だと理解している。

ではそれをどうやって実現するか、自分なりに考え続けている。

「知識より経験」
「答えのない質問」
「答えを教えない指導法」
「答えを教えない教え方」

中国人リーダを育てやる気にさせる。異文化の中で民族性の違いを超えて指導するのは困難だと考えておられる方もあろう。しかし私は困難でも不可能ではないと考えている。

なぜなら「人は皆人間だから」だ。

中国人であろうと日本人であろうと皆人間だ。人間の根源的欲求は変わらないはずだ。文化、生活環境、教育レベルが違えば考え方も行動も違ってくる。しかし根源的欲求は同じだと思う。自己成長、自己実現、その先の相互依存(相互貢献と言った方が良いかもしれないが、マズローの第六段階「自己超越」と考えていただけば良い)を満足させてあげれば良いはずだ。

人に教えられたことは身につかない。
人に指示された行動はモチベーションが上がらない。
それより、
自分で調べて理解する。
自分の考えで行動する。
という主体的体行動が理解を深め、行動意欲を高めるはずだ。
そして結果に対する責任感が高まる。


このコラムは、2018年6月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第683号に掲載した記事に加筆しました。

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違いを認識する

 先週の「ニュースから」の記事に,中国にお住まいのN様からメッセージをいただいた.

メルマガ171号ニュースから:「北京で18日、大規模反日デモか 公安当局、異例の警戒」

※N様のメッセージ

私も中国に住んでいます。漁船の衝突事件はCCTVの1チャンネルだけの放映で他のチャンネルでは放送されていません。インターネットでは北京、上海、広州の反日デモは香港系及び台湾系の反日活動家の雇われデモ隊と言われています。ただ気になるのは日本政府が中国の間違った圧力に応じることです。法治国家の手本を中国に示してください。現在、私の勤務する会社の従業員も中国政府と同じ事をします。要求が通らないと、直ぐに職場放棄をします。中国の常識は日本や世界の非常識。困ったものです。

18日には大々的にデモが予定されていたようだが,新聞,TVでは全く報道されなかった.マスコミ関係の情報通に聞いてみたところ,この件に関しては報道管制がしかれているようだ.

ここ最近の漁船事故の報道を見ていると,中国政府の路線変更があった様だ.

今回の事件を契機に,日本の外交について考えてみた.

以前日本の政府筋から「相手に問題を突きつけても,どうにもならない問題は,あえて指摘しない」という趣旨の発言があった.記憶が定かではないが,対中国の問題で,麻生首相の発言だったと思う.

こういう外交術は非常に日本的だと感じる.
つまり相手の事情を汲み取って,相手が困るようなことは要求しない,面と向かって指摘することも避ける.これは相手の気持ちを思いやる日本人の美点だと思っている.しかしこれが通用するのは,「均一性」が保証されている日本の社会内だけでの話しだろう.

多様性が前提の国際社会では,このような論理は通用しない.
お互いが違っていることをまず認識しあう必要がある.そう考えると前述の日本人の美点は,国際社会の中では,コミュニケーション上の大いなる欠陥になる恐れがある.

あなたの工場でも,同じような事例はないだろうか.
中国人に言っても理解してもらえないからと,諦めている事はないだろうか.
相手を変えることは,非常に困難だ.しかし自分を変えることは出来る.
日本人と違うのだから理解できない,駄目だ,と考えるのではなく,その違いをまず認めてみてはどうだろうか.「駄目だ」と考えれば,その時点でThe ENDだ.違うという事実を認識した上で,どうするかを考える.

相手が困ることは言わないようにしている日本人に対して,解決不可能な要求をしてくる中国人の認識を理解する.
例えば,受注が減って経営が困難なときに,残業代の目減り分を補償して欲しいという要求が平気で出てくる.日本人にしてみれば,理解しがたい要求だろう.しかし給与アップは,彼らの真の要求ではない.真の要求は,自分や家族が幸せになることだ.真の要求を満たしてやるため,給与アップで応えるのは一つの方法でしかない.
能力を育成し,もっと高い給与を払っても見合うようにしてやる.
もっと高い給与が払える会社に転職させる.
給与アップ以外にも従業員を幸せにしてやる方法はある.

民族性が違うのだから,と諦めればその先はない.
違いを認め,共通点を見出す.その先に解決策があるはずだ.


このコラムは、2010年9月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第172号に掲載した記事です。

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