タグ別アーカイブ: 企業文化

日本人の誇り

 最近の報道で日本人精神の歪みを強く感じる。

幼い我が子を虐待し死なせてしまう。
学校でのいじめを苦に自殺する子供がいる。
列車車内で無差別に殺人をする。
看護師が患者の点滴に界面活性剤を混入させる。
日本は安全だという神話は夢物語に変わってしまった。

先週オウム真理教幹部の死刑執行が報道されたが、二十数年前から日本人の変容が始まっていたのかもしれない。

私たち日本人は
エレベータの中でタバコを吸う。
散歩中の愛犬の落し物を放置する。
列車から降りる人をかき分けて乗車する。
横断歩道を渡っている人にクラクションを鳴らす。
駐車場の入り口に車を駐車する。
このような人たちを嗤える立場ではなくなってしまった。

台湾出身の評論家・黄文雄氏はこれを「武士道」の喪失だと言っている。
「台湾人の美徳とされる「日本精神」が、日本人から失われ始めている」

日本の武士道は台湾ばかりではなく、世界中から一目置かれていると言ってもいいだろう。第二次世界大戦の敵国であった米国までが日本の武士道を畏れ、敬意を持っているという。

武士道を一言で言うことはできないだろう。あえて武士道の精神を短く言うならば、論語から引いて「仁義礼智信忠孝悌」と言えるだろう。

仁:儒教の最高位の徳。論語の中で子路は「剛毅木訥仁に近し」と言っている。
義:社会的かつ人道的な正義。
礼:礼儀・作法。
智:物事の本質をわきまえること。
信:人を欺かないこと。
忠:誠実であること。
孝:父母を尊敬し大切にすること。
悌:年上の者を尊敬して従うこと。

中国から伝わった儒教精神が、江戸期に庶民にまで広がり武士道は形成された。
「日本では宗教を教育していないのにどうして道徳教育を授けることが出来るのか」という西欧人の質問に対し、新渡戸稲造は「日本には武士道がある」と答えている。

しかし日本の社会は、道徳より野心を優先する社会になってしまったようだ。
しかもその野心が個人的なものになっている。

なぜそうなってしまったのか?私の仮説はこうだ。
日本のコミュニティは「村社会」だ。村社会であるから「仁義礼智信忠孝悌」を守っていなければ、存在を許されない。隣近所から「どう見られるか」が優先事項となる。道徳を守っていなければ生きてはゆけない。

核家族化が進み、近所づきあいもなくなり「村社会」は崩壊し、個の集まりになる。周りには「武士道」を語る大人がいないまま子供が成長する。その結果、人の命に対する尊厳という最もプリミティブな道徳観念が育たなかった。

つまり「村社会」が道徳教育機関であったが、村社会の崩壊とともに道徳教育を担う者がいなくなってしまった。

文科省は「特別の教科 道徳」というものを設け、修正を試みている。しかし道徳は知識ではなく実践だ。教室での教育だけで解決するとは思えない。社会全体で取り組まねばダメだろう。

企業、地域などあらゆる社会単位で「道徳」を取り戻す試みをすべきだ。
武士道を核心とした企業文化を作れば、強い企業になることができると思うがいかがだろうか?


このコラムは、2018年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第691号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

作業員の質

 最近SNSを利用して中国企業の人事部門、品質部門の人たちと議論を始めた。日本人は私一人(笑)他は全部中国人幹部だ。

ある民営企業の品質部門幹部が、こんな悩みをSNSに揚げた。この企業はSMT部品を実装機にかけられる様にテーピングの作業をしている。作業員の60%が臨時工だ。

しばしば異部品を混入させ顧客クレームを発生させている。品証部門は顧客に対しするクレーム処理に忙しい。彼は臨時工の質が悪いからクレームが発生すると愚痴っている。

SNSのメンバーからは様々な意見・アドバイスが飛び交う。

  • 教育が足りていない。
  • システムに問題がある(ミスに対して罰金だけで、褒賞が足りていない)
  • 工程に問題がある(自動化すればミスはなくなる)
  • 経営者の従業員に対する「愛」が足りない。

臨時工の質に問題があるから、教育する、褒賞を与えてやる気を引き出す。
しかし出された対策では、効果が確信できないと私には思える。

例えば、東京ディズニーランドは90%の職員が臨時工だ。それでも一人一人の従業員が自ら工夫し、顧客の感動を目指して仕事をする。だから多くの顧客がリピータとなって業績が上がる。

確かに「教育」は重要だ。東京ディズニーランドでは1日だけの臨時工でも例外なく1日の導入教育をする。スターバックスでは80時間の導入教育をしているそうだ。この教育の目的は、企業の目的を明確にし従業員の役割を理解させる事だ。
今現在顧客クレームを垂れ流している現状には何ら役に立たない。血を流している患者に、健康の意義を説いても始まらない。

この企業に今必要なことは、まずクレームを撲滅することだ。
現場を見ていないので、確かなことは言えないが、作業そのものが異部品混入のリスクを抱えていると思える。

  • 部品置き場の識別管理ができていない。
  • 作業完成品の識別管理ができていない。
  • 同じ作業台に複数の部品が置いてある。

など現場の問題をしっかり見極めれば、自動化(テーピング中にAOI検査)などの設備投資をせずとも、5Sの徹底で解決するだろう。

その上で、自分たちはなぜ働くのかを明確にし、それを企業文化として育てる。
その役割の責任者は経営者自身だ。経営者の心を変えなければ、この企業は「絶望の工場」のままだろう。


このコラムは、2018年6月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第678号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

続・言葉の定義

 先週のコラム「言葉の定義」について書いた。
今週は、もう1件言葉の定義の事例をご紹介したい。

私の友人は、深センに営業所を開設するために上海から深センに赴任して来た。
当時毎月開催していた勉強会にご参加いただき、それ以来密度の濃い交流をさせていただいている。

深センに赴任して、オフィスを開設し、日本人を含む社員を採用。しかしほどなく、全員が退職してしまった。途方に暮れた友人は、私たちの共通の師匠である原田則夫師に相談に行った。

一通り経緯を説明。「それは大変だったなぁ」と言葉をかけていただけると期待していたが、一言「それは君が悪い」と言われたそうだ。仕事の定義をきちんとしていないから、辞めてしまうのだと指導されたそうだ。

それ以来友人は、仕事の定義をし始めた。毎日1件、パワーポイント1頁にまとめる事を自分に課した。
「顧客クレーム」「顧客クレーム対応」など言葉を一つずつ定義して行った。
ある程度まとまった所で、再び原田師に会い指導を受けた。

後日、原田師は私に、あいつはモノになるよ、とそっと話してくれた(笑)
原田師の予言通り、深セン営業所(全員中国人)は彼がいなくても回る様になり、無事上海に帰任した。その後、会社から出資を受け新規ビジネスを起業している。

当時友人とは「言葉の定義」が先か「企業文化」が先かで議論した事がある。
私はまず企業文化を整えるべきだと主張した。しかし今考えれば、言葉の定義が文化を創るのだから、友人の主張の方が正しかった。

特に私たちの様に、異文化環境で仕事をしている者は言葉の定義を明確にする事が重要だ。バベルの塔は、人々が違う言葉を事で崩壊したと言われている。一つの企業で定義の違う言葉が使われ始めると、企業文化は崩壊を始める。


このコラムは、2016年7月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第485号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人材と組織力

 先日中国ローカル企業の経営者と話をする機会があった.1時間余り話をした.彼は日本の技術に興味があり,いろいろなことを質問された.

彼は,
台湾企業が日本的経営をよく理解しており,中国企業の先を進んでいる.
中国人,台湾人,日本人の違いは何か.
と言うことに興味があるようだった.

残念ながら,私は台湾人経営者で日本的経営を本当に理解している人にはお目にかかったことが無い.
私が知っている台湾人経営者達は,必要な能力・人材は外から調達すれば良いと思っているフシがある.確かにその方が即効性があり,企業の力を増すことが出来るかもしれない.

しかし本当にこのやり方で組織の力を高めることが出来るであろうか?

営業力,技術力,管理力を買われて外から「金の力」で招聘された人材は,確かに高い能力を持っているだろう.しかしその能力は個人のものであり,その人材を雇っても組織力の向上にはならない.

なぜなら,その人材が持っている能力は彼の労働市場価値を差別化し,高給を得るための源泉だ.彼にとっての「金のなる木」を簡単に別の人間に与えることは無い.

例えば,営業能力を高めるためにどこかのトップセールスマンを引き抜いたとしよう.彼は自分が持っていた人脈を活用し,短期的に営業成績を上げることができるだろう.しかしその人脈は組織の力にはならない.新たに職を得た会社で更に彼の「個人人脈」を拡大し,また別の会社に出てゆく.

つまり「金の力」で得た人材は「金の力」で他に買われてゆくのだ.

台湾人経営者は,優秀な人材を雇用している間に得た売り上げ利益と,彼に支払った報酬の差額がプラスであれば良いと諦観しているように見える.しかし彼が退職する時には元からあった顧客ごと,出てゆく可能性もある.

この様なことを繰り返していても,組織の力は一向に強くならない.
即戦力を期待して雇った人材は,戦力は発揮するが組織力は高められない.

経営理念をしっかり定め,人材を育成することにより組織力を高める経営を目指さなくては,いつまで経っても優秀な人材を探すことしか出来ないだろう.


このコラムは、2010年5月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第154号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

組織風土の改革

 部下の仕事ぶりにこんな不満を持っておられる方はいらっしゃるだろうか?

  • 指示したことしかできない.
  • もう少し気を回して欲しい.
  • 指示待ちではなく,自発的に仕事をして欲しい.

こういう不満は,中国だからとか,従業員の年代とかに関わらず,普遍的な不満だ.

一方部下の方もこんな風に考えているのではないだろうか?

  • 上司の指示が曖昧で何をすればよいか良く分からない.
  • 毎日毎日同じような仕事でつまらない.
  • もっとやりがいのある仕事があればすぐ転職したい.

上司と部下がこの様な関係では,仕事で成果を出すのは困難だ.

上司は部下を「管理」しようとし,組織にはいつも緊張感が高まっている.
部下は「管理」される息苦しさを感じ,職場は閉塞感が漂っている.
こんな残念な結果になっていないだろうか?

こういう残念な結果に陥っている組織は,圧倒的にコミュニケーションの量が不足している.
この状況を打開するためには「共通の言語」が必要だ.「言語」と言っても中国語とか日本語という意味ではない.

「共通の価値観」と言った方が分かり易いかもしれない.日々話す言葉の様に共通のモノが組織内に必要だ.

ここに来るのは「組織の目的」とか「経営理念」というモノではなく,もっとベーシックな組織風土のようなモノだと考えている.組織風土がまず強固に出来上がっていなければ,「経営理念」も砂上の楼閣となろう.

顔を合わせたら挨拶をする.仕事を始める前に職場を掃除する.
こうした皆が暗黙のうちにとる行動の元になっている価値観を「共通言語」と表現してみた.
神が人々に複数の言語を与えたため,バベルの塔が崩壊したという伝説は、共通言語欠落の象徴だろう。

そうした共通言語を持つ事が「躾」であり,共通言語の上に「ホウレンソウ」が芽生える.
ホウレンソウは勝手に生えて来る訳ではない.
ホウレンソウに適した土壌が必要であり,種を蒔かねば生えてこない.
そこに適切に水を与え,日光と肥料を与えなければならない.

これは経営者や経営幹部の仕事だ.
組織風土を改革出来るのは,経営者であり,それを支援するのが経営幹部だ.


このコラムは、2013年1月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第292号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

組織間の協力

 中国の工場を見ていると、日系、台湾系、大陸系問わず部門ごとに「蛸壺化」しており、部門間の協力・協調が見られないことが有る。

以前に指導した自動車部品工場は、前工程のプレス工程で加工した半完成品を後工程の転造加工工程で加工して製品を生産している。プレス工程の方が生産能力が高いため、転造加工工程の前には半完成品の中間在庫がたまる。
プレス工程は後工程の都合を考えず、自分の都合だけで全力で生産する。そのため、中間在庫がふくれあがり従業員食堂に半完成品を置く様になる。
その結果、従業員は食堂が使えなくなり、職場の加工機械の横で食事をする事になる。それでも相変わらず次工程の都合を考えずに生産を続け、経営者は外に倉庫を借りる事を考えはじめる。

購買部門は、受注に従いどんと発注をかける。一気に納入された材料は倉庫に格納される。生産計画部門は、注文書の納期に合わせ生産計画を立てる。その結果倉庫から生産計画に合わせ、材料が一度に出庫される。プレス工程はすぐに生産完了し、中間在庫に積み上げる。各職場が、自分の都合しか考えていない。

後引き生産にすれば、このような事は発生しない。
しかしロット単位でまとめづくりをしていると、後引き生産のメリットが中々理解出来ない。いきなり小ロットで平準化生産しようと、指導しても理解して貰えない。段取り替えがムダ、などなど100個もデメリットを並べ立てる(笑)

こういう時に、各部門の代表者に集まってもらって、各自の都合を話し合って貰う。これで上手く行くなら、とっくに問題は無くなっている!と言う声が聞こえてくる(笑)
続きが有る。

もちろん各自の都合を主張してもらっても,上手く行くはずはない。
各自の都合を話し合った後に、役割をチェンジしてもらい相手の立場で議論をしてもらう。
例えば、プレス工程、出庫係が立場を入れ替えて、議論する。
「一度に出庫すると、プレス工程現場に置ききれなくて困る」と出庫係が言う。
「そうは言っても、何度も出庫作業をすれば効率が悪くなる」とプレス工程が反論する。
こういう議論で、プレス工程の責任者が、自分たちで倉庫に取りにいくと言うアイディアを思いつけば、大成功だ。

いかがだろうか?
この方法は、工場経営の師匠・原田師が実施していたジョブローテーションから思いついた。原田師は管理職を定期的にジョブローテーションさせていた。製造部長が、購買部に異動になる。こういう事を頻繁にしていた。幹部は皆他の職場を経験しているので、相手の気持ちがわかっている。そのため部門間の対立は、簡単に調和出来る。
模擬ジョブローテーションとして,役割を変更してディベートをしてみたら上手く行くのではないかという発想だ。

まだこの方法を試した事はない。
もし試された方が有れば、是非ご一報いただきたい。


このコラムは、2016年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第469号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

組織の使命・任務

 先週のメルマガで,「組織の壁」に関して書いた.
組織の壁がない企業文化は,一夜にして完成しない.まずは組織の壁を低くする仕組みを持つ.その仕組みの一つが,各組織,各個人の職務分掌をオーバーラップさせておくという趣旨だった.

しかし職務分掌が拡大することになり,従業員の不満又は給与アップの要求が出ないかという心配もあろう.私は,職務分掌を決める前に,組織の使命・任務を職員自身で決めてもらうという方法を取っている.
今まで何例か試してみたが,全ての例で従業員のモチベーションは上がった.

「職場の使命・任務をお前たちで考えろ」と丸投げしても,結果は出ない.今まで与えられた職務分掌で仕事をしてきた人に,いきなり180度異なる成果を求めても,どうすればよいか戸惑うだけだ.

まずは経営者が,会社の使命・任務を明確にする.
経営理念に基づいて,従業員・顧客・仕入先などパートナー・社会・株主など会社の利害関係者に対して,会社はどういう使命を持ち,どういう任務を果たしているのかを明確にするのだ.

その会社の使命・任務を決めた過程を従業員に明確に示す.
その上で,組織単位ごとにリーダ,志願者でチームを作り,各組織の使命・任務を決定する.これも○○日までに提出するように,と指示をするのではなく1,2日経営者,経営幹部も一緒に缶詰になって決める.

これをやって従業員のモチベーションが下がった事例は,今のところ一例もない.
与えられた職務分掌に従って仕事をするより,自ら自分の仕事のあり方から考えた方が,モチベーションが上がる.
これでモチベーションが下がってしまう幹部職員は,本当に会社にとって価値のある人材かどうか再考した方がよいだろう.


このコラムは、2010年7月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第161号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

組織の壁

 先週のメルマガで,中国人職員の「自己責任意識の不足」に関して書いた.自分の責任範囲を小さく囲み,問題を極力「他責」とする傾向があるようだ.

こういう人たちにとって「組織の壁」は安心できる防火壁の役目を果たしている.ではこの組織の壁はどうやれば取り払うことが出来るだろうか.

昔の日本企業は,個人の責任範囲をあいまいにしておくことにより,組織の壁を低くしていた.こういう組織運営がうまく行くのは,自己責任意識の高い職員がいることが前提となる.

野球の守備範囲を例に考えてみよう.
二塁手と遊撃手の守備範囲は,固定的な線が引かれているわけではない.状況によってその線は変動する.ランナーがいない局面では,二塁ベースの後ろ辺りまで遊撃手の守備範囲となる.なぜなら二塁手が打球を捕球しても,振り返って一塁に送球せねばならなくなり,送球が遅れる.そのためバッターランナーをアウトにできなくなる可能性があるからだ.

しかも相手打者、ボールカウント、守備位置やピッチャーの投球コースによって守備範囲は毎回異なる.それを補うのが,オレが何とかする,と言う自己責任意識だ.

これがうまく行くのは組織構成員が,組織の目的を強く共有しているからだ.特に日本の様に「均一性」が高い組織文化が前提ならば,こういう組織運営はすんなり受け入れられる.

しかし,多様性が組織文化となっている中国の組織では,自分の責任範囲があいまいになっていることに順応できる人は少ないであろう.他人のミスまで自己責任として引き受けなければならないのだ.

それを改善するためには,責任範囲は明確にするが,その責任範囲が隣同士オーバーラップしているようにする.オーバーラップしている範囲で問題があれば,双方の責任とする.こうすることにより,組織間の協業が発生し,組織の壁は低くなるだろう.

そういう組織の中で仕事をしていれば,自然と自己責任意欲も養われるはずだ.


このコラムは、2010年7月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第160号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

継続力

 継続するという力は,非常に重要だ.
禁煙とか,ダイエットではなく組織の継続力について考えてみたい.
例えば,5Sを継続する力のことだ.

5Sを継続させるのは,意外と難しいのではないだろうか.
初めは皆一生懸命取り組むが時間が経つにつれて,徐々に熱が冷めてくる.5S継続の秘訣を考えてみよう.

まずは敷居を低くする.
中国で工場を経営するW社長は,5Sを始める時に,全員に雑巾を配った.
当然W社長自身もマイ雑巾がある.これで全員が拭き掃除から始めた.誰でもが出来る事から始めようと思った.とおっしゃっていた.

難しくて敷居が高いようでは,継続などは望めないだろう.敷居を低くして,まずは出来るところから入る.

二番目に責任を明確にする.
W社長の例で言えば,全員が雑巾を持っており,拭き掃除をする場所が決まっている.W社長も自分のデスクの拭き掃除は自分の責任になっている.

掃除ばかりではない.
何かを始める時に,担当者を決め期待する成果を明確にしそれに責任を与える.
日本人と違って,責任が曖昧になっているのを中国人は好まない.きちんと誰の責任か決めておく.そしてそれがマンネリにならないように,時々責任者を入れ替える.責任者といっても,管理職のことではない.誰が責任を持ってその仕事をするかということだ.

三番目.コトを造る.
楽しいことは継続できる.これは誰もが同意できるだろう.しかし仕事そのモノは楽しいものではない.仕事を楽しいと感じるのは,仕事を通して得られる達成感,自己成長を実感するからだ.

この達成感や自己成長を,お互いに認め合い,実感するための「コト」を造るのだ.

5Sで言えば,社長の月例巡視で優秀部署を決め,社長が食事会に招待する.これが「コト」だ.

技能を研鑽する継続力を持つために,「技能オリンピック」を年一回開催する.QCC活動を継続する力を与えるために,QCCの成果発表会を開催する.

日常とはちょっと違う「ハレの場」を演出するのが,コト造りだ.

この三つをやれば,継続力がつく.
規則・罰則で継続力をつけようという発想ではうまくゆかないだろう.
イソップ童話に出てくる,北風と太陽が旅人のコートを脱がせようとした逸話と同じだ.
旅人にムリにコートを脱がせようとするより,脱ぎたいと思わせればよいのだ.
継続も同じで,継続したいと皆に思わせるのがベストだ.


このコラムは、2010年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第170号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ライバル

 ライバルがいると、成長が早くなる事もある。「事もある」とネガティブ気味に書いてみた(笑)

ライバルと競争する事でより成長意欲が高まると言う効果はある。しかしこの効果は万能ではない。負ければもっと頑張る事もあるだろうが、追いつけないと分かると、モチベーションはしぼんでしまう。
社内ライバルの場合は、競争心が激しくなりすぎると具合の悪い事もある。
他人と比較されるのを嫌がる人もいるだろう。

皆が皆一昔前の「企業戦士」ではない。今時「24時間戦えますか?」などと言っていると「社畜」扱いされかねない。

やたら部下同士の競争心をあおる様な指導は、限界があるだろう。
順位が固定化してしまうと、競争心だけでは組織全体が停滞する。つまり上位の者はいつも上位なので安心する。下位の者は上位に行けないのであきらめ感を持つ。こうなると競争心をあおっても動かなくなる。最悪なのは、競争心がある優秀な者(組織運営上都合のいい人)は競争環境を求めて出て行く事になる。

成長し続ける組織では、メンバーのライバルは昨日の自分自身だ。メンバーは相互の成長を支援し、昨日の自分自身と競争する。
こういう組織ならば、どこと戦っても勝てると思うがいかがだろうか。


このコラムは、2016年6月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第479号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】