カテゴリー別アーカイブ: 信頼性技術

サムスン新スマホ、リコール後も発煙か 米報道

 韓国サムスン電子の最新型のスマートフォン(スマホ)「ギャラクシーノート7」の発火問題で、リコール(回収・無償修理)された従来の端末から交換した安全対策済みの端末でも異常が報告された。米メディアによると、米国時間の5日にケンタッキー州の空港から離陸しようとしていた米サウスウエスト航空の機内でノート7が発煙した。この端末を持っていた乗客によると、2週間前に新しい端末に交換したばかりだったという。

 5日の発煙を受け、米消費者製品安全委員会(CPSC)や米連邦航空局(FAA)が調査に乗り出した。サムスンは発煙が「新しい『ノート7』に関連したものかどうか現時点では確認できない」とコメントしたという。

 サムスンは8月19日にノート7を発売。しかし、一部電池に問題があったことが判明し、9月2日に米国や韓国など主要10カ国・地域で出荷済みのほぼ全量にあたる250万台を回収・交換することを決めた。ただ、9月下旬には韓国メディアが新しい端末で異常放電などの問題が起きたと報道。米国内でも新端末の異常が報告されたことで、再度、対応を迫られる可能性がある。

(日本経済新聞電子版より)

 メルマガ第492号でサムスン・ギャラクシーノート7の回収に関してコラムを書いた。今回はその続報であり、回収交換した電池でも発煙事故が発生したということだ。
サムスンは電池の問題ではないとしているが、充電残量が不自然に急減、端末が異常発熱などの事故が電池交換後にも発生している。

ノート7には、韓国のサムスンSDIとTDK子会社の香港アンプレックステクノロジーの電池が使われている。問題を起こした電池はサムスンSDIが製造したものと発表されている。しかし市場の情報では東莞ISM製となっている。電池セルはサムスンSDI製、それをモジュールとして組み立てたのが韓国半導体メーカの中国工場東莞ISMということなのであろうか?

回収交換品でも同様の問題が発生しているということは、回収交換用の電池もサムスンSDI製ということなのだろうか?
普通の感覚ならば、問題を起こしていないメーカ製に切り替えると考える。しかし回収交換にかかる費用を請求された場合、納入業者としては自社製品で交換してもらった方が費用は少なくなる。他社製に交換した場合、交換部品単価には利益が含まれる。一方自社製で交換すれば、部品単価は製造原価だ。

発煙発火という重大事故を起こしていながら、このような損得勘定をしているとは思いたくないが、ユーザの安全・利益を忘れた企業に未来はない。


このコラムは、2016年10月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第497号に掲載した記事に加筆しました。

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サムスン、最新スマホ250万台回収 電池に異常

【ソウル=小倉健太郎】サムスン電子は2日、8月19日に発売したスマートフォン(スマホ)の最新製品「ギャラクシーノート7」で、販売済みのほぼ全量にあたる250万台を米国や韓国など10カ国・地域で回収すると発表した。日本では発売していない。消費者から充電時に出火したなどといった連絡を受けて調査したところ、一部の電池に異常が判明した。10カ国・地域では当面販売も中止するため、業績への影響は避けられない。

(以下略)全文

(日本経済新聞電子版より)

 以前、メルマガでボーイング787のリチウムイオン電池発火事故に関してコラムを書かせていただいた。当時運行再開を目指してとった対策は、リチウムイオン電池セルの異常発熱の原因を特定しないまま、「リチウムイオン電池の冗長化」だった。

サムスンのギャラクシー発火事故では、リチウムイオン電池の製造過程による不良により、電池内部で正極と負極が短絡し発熱発火したという結論になっている。

サムソンの発表によると、

  1. バッテリー内部でセルの極端子が押される。
  2. 絶縁テープが乾燥する過程で一部収縮する。
  3. バッテリーを包むパウチパックは電池を巻くことになっているが、いくつかが一部弱い部分側に上がっている現象が発見された。

製造時に1と2の不具合がある製品、3の不具合がある製品で、電極間の短絡が発生し発熱発火する、という事だ。

電池の構造も製造工程も分からないので、この説明の意味が理解出来ないが、本来内部構造以外にも電極間短絡を引き起こす原因があるはずだ。
それらに対して、どう検証し、今回の原因から外したのかをキチンと説明するべきだろう。(新聞記事にそこまで要求するのはムリがあるが、社内もしくは顧客に提出する不良解析レポートは、そのようなロジックで書くべきだ)

設計時の問題。
材料の問題。
製造過程の問題。
運用中の問題。
という様に、もれなくだぶりなく問題を列挙し、一つずつ検証する。

B787機の事故の真因は後の情報で「過充電」であった疑いがもたれている。
電池側の冗長化で耐発熱性能を上げるよりは、電源側に過充電防止の冗長性を持たせる方が、よほど効果的であり安価に対策出来たはずだ。

サムソンの事例が今後どのような展開になるのかはまだ不明だが、少なくともB787の事例は、中途半端な解析(もしくは政治的決着)による対策は有効とはいえない、という教訓を与えてくれた様に思う。


このコラムは、2016年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第492号に掲載した記事に加筆しました。

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リチウムイオン電池発煙・焼損事故

 リチウムイオン電池による発煙・焼損事故が、航空機から携帯端末に至るまで広い範囲の応用で、頻繁に発生している。NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報データベースを検索してみると953件がこの10年間で報告されている。(リチウム以外のバッテリーを含む)

残念なら、こちらのデータベースは「事故の発生原因」を取り扱っており、根本原因であるリチウムイオン電池の発熱原因については簡単な記述に留まっている。

それらの原因をピックアップしてみると

  • バッテリーセルの封口部に製造上の不具合によって生じた導電性異物による内部短絡。
  • 製造上の不具合によるバッテリーセル内の短絡。
  • 製造上の不具合のより負極板上に異物が付着したためセパレータが破損、内部短絡。
  • 電池セルのかしめ工程の作業不良による電解液流出。
  • 充電極性違い(他社製充電器仕様)
  • 落下等による変形でセパレータが絶縁劣化
  • 水没による回路基板のトラッキング。

などがあった。

ほとんどが製造上の不具合となっている。
具体的な不具合の記述はないが、リチウムイオン電池を生産している企業には、どの様な不具合なのか想定出来るだろう。これらの潜在不良を発生ないため、工程FMEAなどにより予め対策をしておく。
電池メーカでなくても「短絡」「かしめ作業」等のキーワードから潜在不良を洗い出し、同様の未然防止対策が可能となる。

またユーザの取り扱いによる事故(最後の3件)に関して、どのような対策を実施すべきか事前に検討をしておく。

なかには、充電器コネクタ部の絶縁不良による焼損事故もあった。
コネクタの絶縁部に使用している難燃剤(赤燐)による絶縁劣化と推定される。この不良現象は、過去から知られており難燃材料を赤燐から臭素に変更する事で対策していた。しかしRoSH指令により、臭素系の難燃剤が使えなくなり再び赤燐を使用する事になり、このての事故が再発している。
これは電池メーカ以外にも大いに参考になるだろう。

この様に他社事例を研究し、自社製品の不具合未然防止に役立てる事が重要だ。


このコラムは、2016年11月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第504号に掲載した記事に加筆しました。

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B787、遠のく空 原因特定難航

 ボーイング787型機のバッテリートラブルは、運航停止命令を受けて世界中の同型機が1カ月近く飛べなくなる異例の事態になった。日米両国が調査を続けているが、原因は不明だ。国内2社の欠航は約2千便に上り、「夢の飛行機」と呼ばれた最新鋭機の視界は晴れない。

 「認可時の想定より不具合の発生率が高い」

 米国家運輸安全委員会(NTSB)の7日の会見で、ハースマン委員長はこう指摘した。ボーイングは、バッテリーが発煙する確率を1千万時間のフライトで1回以下と想定していた。だが実際は、就航から10万時間以内に日本航空機と全日空機でトラブルが2回起きた。

 NTSBは、日航機の出火は電池内部のショートが発端だとしている。電池のプラスとマイナスがつながってしまう現象だ。ショートで発生した高熱が電池の化学反応を促し、さらに高温になる「熱暴走」が起き、並んでいる電池に広がった。ただ、ショートの原因はわかっていない。

 高松空港に緊急着陸した全日空機のバッテリーでも熱暴走があったことがわかっている。日本の運輸安全委員会は、製造元のGSユアサ(京都市)に持ち込んで分解を続けるが、詳細な調査は難航している。

 熱暴走の原因は何か。東京理科大の駒場慎一准教授(電気化学)は「過充電を挙げる。リチウムイオン電池は容量を超えて充電すると、溶けた金属リチウムが内部でとげ状になり、プラスとマイナスの電極をつないでしまってショートを引き起こすという。

 リチウムイオン電池は国産充電池の7割を占め、電気自動車やノートパソコンにも使われている。燃えやすい有機溶媒を使っているので過充電を防ぐ保護回路があるのが一般的だ。駒場准教授は「保護回路がうまく機能しなかったか、保護回路の限界を超えた瞬間的な電圧がかかった可能性がある」と指摘する。

(asahi.comより)

 メルマガ293号で取り上げた,B787機のバッテリー焼損事故の続報だ.

焼損事故の原因究明は相当難しい.

出火元(バッテリィ)の特定は比較的簡単だが,なぜバッテリィが出火元となったかを,現物の解析から特定するのは,困難な場合が多い.「陽極と陰極がショートし,熱暴走が発生した」と原因特定が出来た様に見えても,ではなぜ陽極と陰極がショートしたのか?と更に原因特定を進めようとすると,証拠が残っていないことが多い.全てが燃えてしまっている.

つまり陽極と陰極がショートしたというのは,まだ現象レベルであり,原因ではない.

電池内に残留または混入した金属粉によるショート.
電池内の絶縁セパレータの絶縁不良によるショート.
充電電圧が高いことにより,リチウム金属が析出することによるショート.
などショートが発生する原因の他にも,電池の短絡による内部温度上昇による焼損も,事故後には見分けがつかなくなっていることが多い.

例えば,電源コードを束ねている結束帯「ねじりっこ」の芯は金属製の方が作業性がずっとよい.しかしプラスチック製の芯材を使った物が一般的だ.それは,万が一火災事故が発生した場合に,金属芯を使った結束帯の場合は針金だけが燃え残るからだ.燃え残った現物調査で,電源コードの結束帯が火災の原因と特定されては困るので,作業性が悪くてもプラスチック芯の結束帯を使う.

焼損してしまった物から,事故の真因を分析するのは困難な作業となる.
通常は,可能性のある原因を列挙し,再現実験またはシミュレーション実験をすることになる.

例えば充電回路の不良が原因であっても,焼損を受けており,特定するのは難しい.

製造時の検査記録から機能的に問題がないと分かっても,出荷後に問題が発覚することはままある.例えば,出力電圧を決定する部品が,出荷後劣化し電池に高電圧がかかっても,証拠はすべて焼けてしまっている.

今回の事故は,電池,充電回路,保護回路のメーカがそれぞれ別のメーカになっている.これも原因解析を難しくする要因となる.


このコラムは、2013年2月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第296号に掲載した記事に加筆しました。

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B787トラブルの原因、バッテリーか全体のシステム設計か

 全日本空輸が運航する米ボーイング787型機が高松空港に緊急着陸したトラブルで、国土交通省運輸安全委員会は17日、同機のメーンバッテリーが黒く炭化していたことを明らかにした。バッテリーはジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)が供給するリチウムイオン電池。原因は特定できていないが、かつて発火トラブルが起きた電池の安全性が再び問われることになった。

 今回のトラブルで米連邦航空局(FAA)は世界で飛ぶ787型機の運航を当面見合わせるよう航空各社に命じた。バッテリーの安全が確認できるまでとしており、期限は明示していない。

 運輸安全委によると緊急着陸した787型機のバッテリー内部は真っ黒に炭化。
電解液などが噴き出したとみられ、重量は約5キロ減っていた。金属製のバッテリー容器は2センチほど膨張。過剰な電流や電圧によって電解液が過熱して噴き出した可能性があるという。

 GSユアサは17日、技術者3人を高松空港に派遣。運輸安全委の航空事故調査官らと合流し、原因究明を始めた。18日朝には米運輸安全委員会(NTSB)やFAA、ボーイング社から計4人が加わり、安全委と合同で調査を進める予定。

 バッテリーの重点調査が進むのは、米ボストン国際空港でトラブルが起きた日本航空の787型機の出火元もバッテリーだったため。GSユアサはボストンにも技術者を派遣、調査をしている。

 リチウムイオン電池は小型で大容量の電気を蓄えられる。ただ従来のニッケル水素電池より過熱・発火しやすいとされ、2006年にはノートパソコン用のソニー製電池が発火、大規模回収に追い込まれた。原因は製造工程で異物が混入、ショートしたこととされた。

 こうした経験を踏まえ同電池で先行してきた日本メーカーは安全のノウハウを蓄積。GSユアサは三菱自動車の電気自動車やホンダのハイブリッド車向けにリチウムイオン電池を供給。高い安全性が必要な車載用や産業用で実績を積んできた。

 787型機の調査ではトラブルの原因がバッテリー自体にあるのか、システム全体にあるのかが焦点。GSユアサ幹部は「バッテリーは周辺部品と組み合わせたシステムとして運用される。単体で発火・過熱することは考えられない」と語る。

(日経電子版より)

 B787機は,開発が3年間遅れた上に,立て続けに問題が発生している.
新聞の報道から判断すると問題は,燃料漏れとバッテリー焼損の二つある様だ.

バッテリー焼損は,本記事の1月16日高松空港での全日空機の発煙事故以外に1月7日にもボストン空港で日本航空機が火災事故を起こしている.

両方とも,今回旅客航空機に初めて採用されたリチウムイオン電池が原因となっている.

事故を起こしたANA機は,昨年就航し1ヶ月後に電気系統に不具合が見つかっている.10月にはエンジンがかからずバッテリーを交換したと言う.
実はこの機体固有の問題が,まだ解決せずに表面的な処置(バッテリー交換)しか出来ていないのかもしれないが,事故の頻度を考えると,波及性のある問題の様だ.

以前リチウムイオン電池搭載の携帯電話でやけど事故,ノートPCで発煙事故が発生した.電池内の異物によるショート,過充電による発熱などを,製造の技術,充電回路技術で克服して来た.民間航空機では初の採用だが,自動車,戦闘機,人工衛星には既に採用されていると聞く.

飛行のメカニズムを電気化し,機体を軽量化する事が可能になり「低燃費」をB787機のセールスポイントとして実現している.その陰の立役者がリチウムイオン電池だ.

30数年前,駆け出しのエンジニアだった頃,リチウム電池を製品に搭載するために評価実験をしたことがある.電池に関する知見がなかったので,リチウム電池に関する論文を片っ端から読んでみた.リチウム電池の安全性評価実験に「ショットガンテスト」というのが有り,驚いた事を今でもよく覚えている.電池をショットガンに詰めてオーク材の板に撃ち込む試験だ.ずいぶん乱暴な評価試験をするモノだと驚いた.リチウムという材料に対する不安を,消去するにはそのくらいの事をしなければならなかったのだろうと推測している.

B787の開発でも,慎重に評価が行われたはずだ.航空機の故障は,一気に数百人の命が失われるリスクを持っている.故障は限りなくゼロに近くしなければならない.初期故障は起こるモノ,などと言う言い訳は通用しない.一号機から事故ゼロを目指さなければならない.

世の中で発生している故障や事故のほとんどは,再発事故と言える.
今回の事故は,以前のリチウムイオン電池事故の形を変えた再発なのか?
それとも,新たな原因による事故なのか?
今後発表されるであろう,事故調査の結果を注視したい.


このコラムは、2013年1月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第293号に掲載した記事に加筆しました。

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コピー製品

 中国で暮らしていると,お札に始まりブランド物まで偽物は何でも揃っている.

日本のモノ造りも,欧米製品の物まねから始まり,力をつけて来た.それを考えれば,中国の製造業も発展過程にあるといえるのかもしれない.
しかし決定的に違うところがある.

日本が頑張って物まねをした時代にはアナログ技術しかなく,それを物まねするだけでも実力がついた.しかし今はディジタル技術が発達し,ほとんどコピーポンで同じモノが作れてしまう.

ソフトウェアのコピーを思い浮かべていただければ,ご理解いただけるだろう.

ハードウェアのモノ造りも同じだ.
ディジタルスキャンをすれば,実用レベルでほぼ問題ないモノが簡単に出来てしまう.化学製品ですら,分析装置を持っていれば成分を分析し同じ配分のモノが造れるだろう.
製品の機能部分をブラックボックス化できなければ,すぐ真似されることを覚悟した方が良い.

しかしこういう物まねを続けていても,技術的な進歩はない.

10年ほど前,アルミ電解コンデンサが1年程で寿命不良になるという不具合が,PC電源市場に蔓延したことがある.

これは電解コンデンサに入れる電解液に問題があった.
日本のメーカは,電解コンデンサの性能を上げる(直流抵抗を下げる)ために電解液を水溶性の物を使って成功していた.それの成分配合を真似した台湾企業が,電解液を中国のコンデンサメーカに販売した.多くの電解コンデンサメーカが,高性能(高価格)商品を生産できると,喜んで電解液を買った.

しかし水溶性電解液が,コンデンサの封止ゴムを腐食させ電解液が漏れ,あっという間に寿命不良となる.
実は日本メーカはこれを知っており,封止ゴムの方に対策を施してあったのだ.電解液だけを真似したので,寿命不良が多発して業界全体で大問題となった.

キーテクノロジーを支える周辺技術が理解できなければ,真似をしてもうまくはゆかない.

日本も真似をしていた過去を持つが,技術を極めようという姿勢を持っていた.
それは相手から技術を盗もうという姿勢ではなく,相手から学ぼう,相手を超えようという意欲から生まれる.安易に技術を盗んで金を儲けようという考えからは、このような意欲は生まれない。


このコラムは、2010年10月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第174号に掲載した記事に加筆しました。

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技術を伝承する仕組み

 先週の雑感「トラブルは繰り返す」で、世の中で発生している不具合は殆どが再発問題だ、と書いた。

技術が正しく伝承されていないから、何年おきかに形を変えて同じ不具合を繰り返すことになる。

東京大学大学院・中尾 政之教授の
「失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する」
東京大学名誉教授・畑村 洋太郎氏の
「失敗に学ぶものづくり」
にあるように、不具合や事故などの「失敗」を次世代に継承してゆく必要がある。

以前SMT積層セラミックコンデンサにクラックが発生する不具合を経験したことがある。メーカの説明書には「応力を加えるとクラックが発生する」と書かれている。
しかし製造工程の、思いもよらない作業がSMTコンデンサに応力を加えていた。そのため、製造作業の工法を変え、SMTコンデンサに応力が加わらないようにした。
更にSMTコンデンサにかかる応力を考慮し、設計基準を作成。設計基準が守られていることを確認するチェック項目を、設計レビューに導入した。

しかし数年後に別の事業部の製品で同じ不良が発生した。
当時不具合の再発防止が、全社に行き渡っていないことをおおいに反省した。

そこで事業部単位で埋もれてしまっている「信頼性技術」を全社で共有する定例会議を作った。この会議では、設計者や品質エンジニアが「失敗」を共有し、再発を防止するために、純粋技術的に発表・議論することとした。

当初私の意図を理解できていない役員が、失敗を責める局面が何度かあったが、それらを極力排除し、技術の共有・伝承に努めた。失敗したエンジニア本人が発表するのではなく、品証エンジニアが、事実を伝えるようにする。失敗を発表することが「栄誉」であるように動機付けをする。などなど「明るく」失敗を語り合える場を作り上げた。

このような仕組みや仕掛けを作ることが、技術を伝承する仕組みになるはずだ。


このコラムは、2012年2月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第246号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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トラブルは繰り返す

 私は、技術用語に特化して中国語を紹介するメールマガジンを配信している。そのメールマガジンで、ウィスカーは中国語で『晶須』と言うことを、2年前に紹介した。
そのバックナンバーをご覧になった読者様から、先週メッセージをいただいた。古い記事でも、誰かの役に立っていると分かると大変嬉しい。

ウィスカーと言うのは、単一分子が髭状に成長したものだ。
カーボンウィスカーは、強度の強い素材として利用されている。
しかし錫ウィスカーは、歓迎されざるトラブルの原因となる。

初めて錫ウィスカーが見つかったのは、Dip ICのリードの肩の部分から、ウィスカーが成長しリード間を短絡する不具合だった。当時ウィスカーが信頼性問題の原因になることがまだ知られておらず、錫メッキをしたリードフレームにICチップを乗せた後、肩の部分をプレス成型で曲げていた。

メッキ層に機械的適応力がかかると、ウィスカー発生の加速要因となる。

したがってプレス曲げ加工をした後に、メッキをすれば問題はなくなる。
しかしICの場合は構造上リードを成型した後にメッキをすることは困難だ。錫メッキに、鉛を添加してウィスカーの発生を抑えた。

その後、ウィスカーによる不具合はぽつぽつとあったが、大きな問題になることはなかった。

しかし環境問題で、鉛の添加が出来なくなり、また業界全体で問題となった。
セットメーカは部品メーカに対し、鉛の使用を禁止したにもかかわらず、鉛フリーの錫メッキは認めないなど、矛盾した対応で混乱した時期があった。

一度解決したと思われたウィスカーが、鉛を使えなくなり、また問題としてクローズアップしてきた。

世の中の問題は、殆どこのような「再発問題」なのだと思う。今まで知っていた不具合現象が、何年かの周期で再発する。
ウィスカー問題のように、環境問題に起因して再発することもある。技術の進歩に伴い、再発することもある。
一番情けないのは、技術の伝承がうまくゆかずに再発するケースだ。

あなたの会社には、技術を伝承する仕組みがありますか?


このコラムは、2012年2月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第245号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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モグラ叩き問題

 モグラ叩き問題と言うのは、ゲームセンターにあるモグラ叩きゲームを思い起こしていただきたい。穴から顔を出すモグラを叩くゲームだ。穴から顔を出すモグラと同様に、同類の問題がしばしば発生し、その都度に問題解決をしなければならない問題のことを言う。

本日はなぜモグラ叩き問題が解決できないのかを考えてみたい。

当然モグラ叩き問題が発生している現場ごとに、事情は違うだろう。しかしいささか乱暴だが一言で言ってしまえば「現象として現れる問題にとらわれ、その原因にアプローチしていないから、問題は手を替え品を替えて現れる」と言うことだ。

「人為ミス」による問題に関してしばしばこのメルマガで取り上げている。
人為ミスは「現象として現れる問題」であり「原因」ではない。「人為ミス」と言う言葉を使って再発防止対策を検討している限り、モグラ叩きは続く。

例えば電子部品を搭載したプリント基板を筐体にねじ止めする場合を考えてみよう。プリント基板に実装されたトランジスタなどの発熱部品を放熱のため筐体に密着される様にねじ止め固定する。
このような構造の電子製品は、市場に出てから一定比率で故障が発生する。
プリント基板、筐体のねじ位置の誤差、プリント基板に実装した部品の位置誤差により、発熱部品のリード半田付け点に応力がかかり続けることになる。時間とともに半田フィレットに亀裂が入り、最終的には非導通となり故障する。リード部分に高電圧がかかっていると、亀裂の隙間で放電し発煙出火の危険すらある。

このような故障は、ハンダ割れが発生→半田フィレットに応力がかかっていた→筐体への固定により応力がかかる。と言う具合に問題から原因にフォーカスし対策を検討する。対策としては取り付け方法の設計変更が有効だ。既出荷品や対策完了前の生産には、プリント基板固定後再半田をし、半田フィレットの応力を解放すると言う対策を考えることが出来る。

このように原因にアプローチすれば、問題根絶の対策を考えることが出来る。
しかし問題の原因解析を人為ミスで終わりにしてしまえば、作業員の再教育、作業員の固定、などと言う対策しか出て来ず、人が替わればまた問題が発生する。
人為ミスと言う「現象」にとらわれている限り「原因」にアプローチ出来ない。


このコラムは、2016年2月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第465号に掲載した記事に加筆したものです。

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かつてない困難

 「かつてない困難からは、かつてない改革が生まれる。
  かつてない改革からは、かつてない飛躍が生まれる。」

松下幸之助の言葉だそうだ。

リチウム電池の発火事故で大規模回収に直面しているサムソンは、間違いなく「かつてない困難」に直面している。

私も前職時代に「かつてない困難」に何度も直面した。

サムソンのリチウム電池は自社のグループ企業の問題だが、私が担当していたコンピュータの周辺装置は協力メーカからの購入品であり、自社にとっては未知の技術領域だった。それでも協力メーカの設計技術者や品質技術者らと議論を重ね問題解決が出来たのは、原理・原則に基づいた正しい問題解決の道を外さない様に心がけたからだと思っている。

その過程で得た信頼性技術、解析技術の知見を自社に蓄積し、未然に問題発生を予防するノウハウを得る事が出来た。

高耐圧部品の絶縁不良問題、高電圧半導体の電解腐食問題、プラスチック部品の環境応力割れ、ゴム樹脂のブルーミング、ハンダ付けの応力割れ、メッキ部品の水素脆性破壊などは、短期間の評価では見つからない信頼性問題だ。また電解コンデンサの四級塩電解液による回路ショートなど、業界全体で未知の不良現象もあった。

こういう問題を一つずつ解決し、設計基準や評価手法を確立していく。
その結果製品の信頼性設計技術が向上する。

信頼性問題に直面している最中は、既に出荷してしまった製品への対応、まだ問題が顕在化していない出荷済み製品の寿命予測、など本筋ではないが緊急に対応する必要がある問題が山ほどでてくる。しかし現在の対応に消耗してしまってはダメだ。かつてない困難をかつてない飛躍に結びつけるために、せねばならぬことを忘れない様にしなければならない。

かつてない飛躍とは、信頼性問題を起こさぬ様、事前に対策を打てることだ。


このコラムは、2016年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第492号に掲載した記事です。

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