今週は人為ミスについて考えてみたい.
実は先週PCの動作が急に不安定になった.マイクロソフトのパワーポイントとワードで文章入力をすると,フリーズしてしまう.アプリケーションを再インストールしても状況は変わらない.
以前にも同様の現象が発生し,Windowsの再インストールをしている.
このPCを使い始めて1年半,2度目のOS再インストールだ.
今回も2日がかりで,Windowsの再インストール,アプリケーションの再インストール,各ソフトの再設定を行った.
恥ずかしながら,この過程でミスを犯してしまった.
重要なファイルをバックアップしていなかったのだ.
しかも前回は,変換辞書,アドレスブック,IEのお気に入り等のバックアップがなく苦労したのに,今回もIEのお気に入り以外はバックアップ出来なかった.
これらの反省を踏まえ,人為ミスの分析と再発防止に関して考えた.
不具合の原因解析に「人為ミス」と書いて済ませてあるレポートを見たことがある.人為ミスは原因とはいえないだろう.人為ミスが発生した原因,誘因があるはずだ.
人為ミスの原因は以下の4つに分類できると思う.
- 正しい情報を持っていなかった.【情報ミス】
情報がない,または間違っていたため発生する人為ミス.
例えば部下に文房具を買ってきてもらう時に,間違った型名を指示してしまう.
製造現場では,作業指示書が間違っている,という事例と同じ.
- 情報を正しく受け取らなかった.【認識ミス】
いわゆる勘違いミス.
指示された文房具を買って来る時に,型名を聞き違えて(覚え違えて)違う物を買ってきてしまう.
製造現場では,通常,作業のたびに作業指示書は見ない.作業指示書の内容を記憶して作業している.ネジを3本締めなさい,と書いてあるのに2本しか締めなかったというミスと同じ.
- 判断を誤った.【判断ミス】
判断を伴う作業でのミス.または判断すべきでない作業で判断をするミス.
購入指示された文房具が売り切れのため,別の型名の物で良かろうと判断する場合.
製造作業現場では,極力判断を伴う作業をさせないようにしている.しかし班長やスタッフ業務担当者は,しばしば判断をしなければならない場面に直面する.例えば,生産中に部品が不足した.同じ規格の部品を代用してよいかどうか,判断し間違うミス.
- 行動を誤った.【行動ミス】
情報を正しく受け取り,正しく判断したが行動がうまく出来なかった.
指示された文房具を棚に見つけたが,間違って隣の物を取ってしまうミス.
それぞれの人為ミスの対策を考えてみる.
本来人為ミスにはポカよけ対策を考え,ミスが発生しない,たとえ発生しても次工程に行かないようにするべきだ.ポカよけは発生した工程により,千差万別の対策となる.それ以外の対策をここでは議論する.
【情報ミス】
情報が間違っていたという事実には,更に原因があるはずだ.
作業指示書の内容が間違っていたというのであれば,これも人為ミスの可能性が高く,なぜ間違えたのかを更に分析をしなければならない.
【認識ミス】
認識の間違い,記憶の間違いの二通りがある.
認識の間違いは,間違う誘因があるはずだ.説明が複雑.指示が間違えやすい.
記憶の間違いは,以前の指示の記憶だけで実行しようとする場合に発生する.
ここまで分析すれば,対策はおのずと明確になるだろう.
【判断ミス】
判断能力が低くてミスをする.もしくは能力を過信してミスをする.
チェックリストにより,判断基準を合わせる,判断漏れを防ぐのがよい.
上位者や同僚のダブルチェックも,ミスの防止に役立つ.
【行動ミス】
うまく行動できない誘因を分析する.
やり難い:例えば,設備の後ろに隠れているスイッチを操作する場合など容易にミスが発生する.
間違えやすい:例えば,天井灯を消灯する場合,どのスイッチがどの電灯か識別されていなければ,容易にミスが発生する.
対策は,「やり難い」「間違えやすい」誘因を取り除けばよい.
ここまで分析すると,実に簡単に「原因」「対策」を検討できる.
しかし「人為ミス」の対策に,「作業者に注意しました」「作業者を再教育しました」というレポートをしばしば見かけるのは,この当たり前のことが出来ていないという証左だ.
一度あなたの部下がやった人為ミスの分析を見直してみてはいかがだろうか.
ちなみに今回犯した私のミスは「判断ミス」だ.
前回一度やっているので,すぐに出来るという過信が,今回の判断ミスの原因となった.
その遠因は,前回再インストール時に,もう二度とこの様な事故はないだろう,一度やったから二度目はうまく出来るはずだ,と過信したためだ.もし謙虚に考えていたら,次回のために手順を記録していたはずだ.
対策としては,自動バックアップソフトを導入し,定期的にバックアップを取っておく.さらに今回バックアップを取り忘れた項目を自動バックアップの範囲としておく.これでミスは防げる.想定外のミスが発生しても,ひとつ前のバックアップがあるので,被害は小さくて済む.
しかし当面はバックアップソフトを購入する資金がないので,再インストール時の手順をチェックリスト形式で作ることにする.
このコラムは、2011年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第197号に掲載した記事に加筆修正しました。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】