子zǐ华huá⁽¹⁾使shǐ于yú齐qí，冉rǎn子zǐ⁽²⁾为wéi其qí母mǔ请qǐng粟sù⁽³⁾。
子zǐ曰yuē：“与yǔ之zhī釜fǔ⁽⁴⁾。”请qǐng益yì，曰yuē：“与yǔ之zhī庾yǔ⁽⁵⁾。”冉rǎn子zǐ与yǔ之zhī粟sù五wǔ秉bǐng⁽⁶⁾。
子zǐ曰yuē：“赤chì之zhī适shì齐qí也yě，乘chéng肥féi马mǎ，衣yì轻qīng裘qiú⁽⁷⁾；吾wú闻wén之zhī也yě，君jūn子zǐ周zhōu⁽⁷⁾急jí不bú继jì富fù。”

《论语》雍也第六-4

⁽¹⁾子华：孔子の弟子。姓は公西こうせい、名は赤せき、字あざなは子華。
⁽²⁾冉子：孔子の門人。姓は冉ぜん、名は求きゅう。字あざなは子し有ゆう。
⁽³⁾粟：留守中の手当ての米。
⁽⁴⁾釜：量詞。六斗四升。
⁽⁵⁾庾：量詞。十六斗。
⁽⁶⁾秉：量詞。十六斛。一斛は十升。
⁽⁷⁾周：救済する。
⁽⁷⁾轻裘：軽くて温かい革の衣服

素読文：
子華しか、斉せいに使つかいす。冉ぜん子し其その母の為ために粟ぞくを請こう。
子し曰いわく：“之これに釜ふを与あたえよ。”益まさんことを請こう。曰いわく：“ 之これに廋ゆを与えよ。”冉ぜん子し之これに粟ぞく五ご秉へいを与あたう。
子し曰いわく：“赤せきの斉せいに適ゆくや、肥馬ひばに乗り、軽けい裘きゅうを衣きる。吾われ之これを聞く。君子は急きゅうなるを周すくいて富とめるに継つがず。

解釈：
子華が孔子の使いで斉に行った。冉有は子華の母親のために米を与えるよう孔子に求めた。孔子は「六斗四升ほどやっておこう」と言ったが冉有はもう少し多めにと求めたので、十六斗与えることにした。しかし冉有は八十斗与えた。
それを知った孔子は「子華は斉に出かけるのに、肥えた馬に乗り、軽裘を着て行った。貧しい者を助けるのは意味があるが、富める者に援助することはない、と言うではないか。」と冉有を叱った。

肥馬と軽裘は裕福な家の象徴なのでしょう。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ博bó学xué于yú文wén，约yuē⁽¹⁾之zhī以yǐ礼lǐ，亦yì可kě以yǐ弗fú畔pàn⁽²⁾矣yǐ夫fú⁽³⁾。”

《论语》雍也第六-27

⁽¹⁾约：学んだことを集約し応用する。
⁽²⁾畔：「叛」に同じ。背く。
⁽³⁾矣夫：感嘆語気

素読文：
子曰わく：“君子は博ひろく文ぶんを学び、之これを約やくするに礼れいを以もってせば、亦また以もって畔そむかざるべきか。”

解釈：
子曰く：“君子たるもの多くの書籍に学び、学んだことを礼に従って実践する。そうすれば学問の道を外れることはないだろう”

《論語》為政第二-15で、孔子は「学びて思わざれば則ち罔し」と言っている。この「思う」は本章の「約する」に通じるものがあると思う。どちらも学んだことを実践できる形に変えることだと解釈している。

子zǐ曰yuē：“质zhì⁽¹⁾胜shèng文wén⁽²⁾则zé野yě⁽³⁾，文wén胜shèng质zhì则zé史shǐ⁽⁴⁾，文wén质zhì彬bīn彬bīn⁽⁵⁾，然rán后hòu君jūn子zǐ。”

《论语》雍也第六-18

⁽¹⁾质：質素な。飾らない生まれつきの素質。
⁽²⁾文：文才。教養による美しさ。
⁽³⁾野：粗野。文才に乏しい。
⁽⁴⁾史：記録を司る官吏。言葉が華麗、きらびやか。偽善的。
⁽⁵⁾彬彬：『质』と『文』が調和している。外観、内容が共に整っている。

素読文：
子し曰いわく：“質しつ、文ぶんに勝かてば則すなわち野やなり。文ぶん、質しつに勝かてば則すなわち史しなり。文質ぶんしつ彬彬ひんぴんとして、然しかる後のちに君くん子しなり。”

解釈：
子曰く「素質があっても教養がなければ、野人に過ぎない。教養があっても素質が悪ければ、言葉だけの偽善的官吏に過ぎない。素質と教養が揃って初めて君子と言える。」

『文』は学習・読書によって頭を鍛えることで身につきます。
『質』は善行を積むことにより心を鍛えることで身につきます。

子zǐ谓wèi子zǐ产chǎn⁽¹⁾，有yǒu君jūn子zǐ之zhī道dào四sì焉yān：“其qí行xíng己jǐ也yě恭gōng，其qí事shì上shàng也yě敬jìng，其qí养yǎng民mín也yě惠huì，其qí使shǐ民mín也yě义yì” 。

《论语》公冶长第五-16

⁽¹⁾子产：姓は公孫、名は僑、字名を子産。鄭国の宰相。

素読文：
子し、子し産さんを謂いう。君くん子しの道みち、四よつ有あり。“其その己おのれを行おこなうや恭きょう。其その上かみに事つかうるや敬けい。其その民たみを養やしなうや恵けい。其その民たみを使つかうや義ぎ。”

解釈：
子は子産を称して曰く、子産には君子が守るべき四つの道があった。それは“己の行いに対し謙虚である。上に使えて敬親である。民に対して慈恵深い。民を使役するに道理にかなっている。”の四つである。

孔子は子産が「恭敬惠義」の大夫であったと称し、君子たるもの「恭敬惠義」であらねばならないと説いています。残念ながら現代日本には「恭敬惠義」の為政者が少ない（皆無？）ように思います。

子zǐ谓wèi“子zǐ贱jiàn⁽¹⁾，君jūn子zǐ哉zāi若ruò人rén⁽²⁾。鲁lǔ无wú君jūn子zǐ者zhě，斯sī焉yān取qǔ斯sī⁽³⁾。”

《论语》公冶长第五-3

⁽¹⁾子贱：子し賤せん。孔子の弟子。姓は宓ふく、名は不ふ斉せい。魯の人。
⁽²⁾若人：かくのごとき人。
⁽³⁾斯焉取斯：一番目の『斯』は子賤、二番目の『斯』は君子の徳を指す。

素読文：
子し、子し賤せんを謂いう、君くん子しなるかな、若かくのごとき人ひと。魯ろに君くん子し者しゃ無なくんば、斯これ焉いずくにか斯これを取とらん。

解釈：
孔子は子賤を評して言われた「このような人物こそ君子と呼ぶべきだ。もし魯の国に君子が多くいなければ、子賤も君子にはなれなかっただろう」

君子は君子によって育てられる、と言うことでしょう。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ之zhī于yú天tiān下xià也yě，无wú适shì⁽¹⁾也yě，无wú莫mò⁽²⁾也yě，义yì⁽³⁾之zhī与yǔ比bǐ⁽⁴⁾。”

《论语》里仁第四-10

⁽¹⁾适：厚遇する。
⁽²⁾莫：疎遠にする。冷淡にする。
⁽³⁾义：適切な。妥当な。
⁽⁴⁾比：親しくする。

素読文：
子し曰いわく：“君子の天下に於おけるや、適てき無なきなり。莫ばく無なきなり。義ぎに之これ与ともに比ひす。”

解釈：
子曰く「君子たるもの世の人や事に当たる時、選り好みはしない。ただ道理に従うのみだ。」

最近忖度という言葉をしばしば耳にしますが、大切なのは道理だと孔子は教えています。

仪yí封fēng人rén⁽¹⁾请qǐng见jiàn，曰yuē：“君jūn子zǐ之zhī至zhì于yú斯sī也yě，吾wú未wèi尝cháng不bù得dé见jiàn也yě。”
从cóng者zhě见jiàn之zhī。出chū曰yuē：“二èr三sān子zǐ⁽²⁾，何hé患huàn于yú丧sàng乎hū。天tiān下xià之zhī无wú道dào也yě久jiǔ矣yǐ，天tiān将jiāng以yǐ夫fū子zǐ为wéi木mù铎duó⁽³⁾。”

《论语》八佾第三-24

⁽¹⁾仪封人：儀の国の防人さきもり
⁽²⁾二三子：諸君。年長者が若者に呼びかける時に使う。
⁽³⁾木铎：世人に警告を発し教え導く人。（weblio参照）

素読文：
儀ぎの封人ほうじん、見まみえんことを請こう。曰いわく：“君くん子しの斯ここに至いたるや、吾われ未いまだ嘗かつて見まみゆることを得えずんばあらざるなり。”
従じゅう者しゃ之これを見まみえしむ。出いでて曰いわく：“二に三さん子し、何なんぞ喪うしなうことを患うれえんや。天てん下かの道みち無なきや久ひさし。天てん将まさに夫ふう子しを以もって木鐸ぼくたくと為なさんとす。”

解釈：
儀の防人が孔子の一行に面会を求めて言った。「この関を通られる君子には、全てお目にかかっております。ぜひお目にかかりたい」
孔子の門人たちは、孔子を防人の部屋に案内した。
面会を終えた孔子は門人に言う。「諸君。私が下野されたことに失望することはないぞ。世の道徳が地に落ちて久しいが、天は私を世の木鐸としようとしているのだ」

官位を辞し弟子と共に諸国巡遊の旅をしていた孔子らしい言葉です。

子zǐ曰yuē：君jūn子zǐ无wú所suǒ争zhēng⁽¹⁾，必bì也yě射shè乎hū⁽²⁾。揖yī让ràng⁽³⁾而ér升shēng，下xià而ér饮yǐn，其qí争zhēng也yě君jūn子zǐ 。

《论语》八佾第三-7

⁽¹⁾无所争：人と争うようなことはしない
⁽²⁾必也射乎：争うのは弓の試合くらいだ
⁽³⁾揖让：拱手して譲り合う

素読文：
子し曰いわく、君くん子しは争あらそう所ところ無なし。必かならずや射しゃか。揖ゆう譲じょうして升しょう下かし、而しこうして飲のましむ。其その争あらそいや君くん子しなり。

解釈：
君子は争わない。争うとすれば弓の試合ぐらいなものだ。それも拱きょう手しゅ^(*)してゆずりあって弓道場にあがり、勝負がすむと弓道場を下って仲よく酒をのむ。こういう争いが君子の争いだ。

^(*)拱手：右手で左手のこぶしを軽く包み、胸元で両手を組み合わせて頭を下げる礼。

子zǐ曰yuē：“君jūn子zǐ食shí无wú求qiú饱bǎo，居jū无wú求qiú安ān，敏mǐn⁽¹⁾于yú事shì⁽²⁾而ér慎shèn于yú言yán，就jiù⁽³⁾有yǒu道dào⁽⁴⁾而ér正zhèng⁽⁵⁾焉yān，可kě谓wèi好hào学xué也yě已yǐ。”

《论语》学而第一-14

⁽¹⁾敏：素早く行う
⁽²⁾事：なすべき事
⁽³⁾就：ついて
⁽⁴⁾有道：学識、道徳のある人
⁽⁵⁾正：正してもらう

素読文：
子曰わく：“君子は食しょくに飽あくことを求もとむる無く、居きょに安やすきを求むる無し。事ことに敏びんにして言げんに慎つつしみ、有道ゆうどうに就ついて正ただす。学がくを好このむと謂いうべきのみ。”

解釈：
君子たるもの飽食を求めず、安住を求めない。行動は俊敏だが、巧言を慎む。
有徳者の指導を得て、自らの言動を正す。こういう者が学を好むといえる。

子zǐ曰yuē：君jūn子zǐ不bú重zhòng⁽¹⁾则zé不bù威wēi⁽²⁾，学xué则zé不bú固gù⁽³⁾；主zhǔ忠zhōng信xìn，无wú友yǒu不bù如rú己jǐ者zhě⁽⁴⁾，过guò则zé勿wù惮dàn⁽⁵⁾改gǎi。

《论语》学而第一-8

⁽¹⁾重：重々しい
⁽²⁾威：威厳
⁽³⁾固：頑固、かたくな
⁽⁴⁾不如己者：自分より劣る者
⁽⁵⁾惮：はばかる

素読文：
子曰く：“君子重おもからざれば則すなわち威いあらず。学まなべば則すなわち固こならず。忠信ちゅうしんを主しゅとし、己おのれに如しかざる者を友とすること無かれ。過あやまちては則すなわち改あらたむるに憚はばかること勿なかれ。”

解釈：
子曰わく：“君子たるもの軽々しくては威厳が保てない。学べば物事に捕らわれることはない。忠義を第一とし、自分より劣る者を友とすべきではない。過ちを自ら正すことに躊躇してはならない。”

小人はこれと反対。軽々しい振る舞いからは威厳は感じられない。学ばないから世間の流言飛語、噂話に捕らわれ右往左往する。小人同士群れ集い、自らの過ちは隠蔽する。