中国メディアによると、香港発大連行き中国国際航空106便で10日、機体が約7千メートル急降下するトラブルがあった。中国の航空当局は13日、操縦室内で電子たばこを吸った副操縦士が、空調装置を誤操作したことが原因とする調査結果を発表した。
トラブルは10日午後7時半(日本時間午後8時半)ごろに発生。高度約1万メートルを飛行中の操縦室内で電子たばこを吸っていた副操縦士が、煙が客室に漏れるのを防ごうと空調装置を操作した際、誤って客室内の空調システムを停止させた。そのため客室内の酸素が不足し、高度約3千メートルまで緊急降下したという。
客室では天井から酸素マスクが下りたが、その後空調が復旧し、機体は再び通常の高度に上昇。午後10時半(日本時間午後11時半)ごろ、大連空港に着陸した。乗員・乗客計162人にけがはなかった。(瀋陽=平賀拓哉)
(asahi.comより)
基本的には、コックピットで操縦士が喫煙するなど論外だ。電子タバコでも方式によっては、一酸化炭素を吸入することになる。
血液中のヘモグロビンは肺で酸素と結合し体全体に酸素を配給している。
ヘモグロビンは一酸化炭素との親和性も高い。一酸化炭素との親和性は高度に依存し、上空にゆけば一酸化炭素と結合しやすくなる。従って操縦中の喫煙は、相対的低酸素症を引き起こし、事故などで急減圧の際に脳に十分な酸素が配給されず、判断力等の低下につながる可能性がある。米国FAAでは、乗務時はもとより乗務8時間前からの喫煙を禁じているそうだ。
当然この事故の原因は副操縦士の規則違反にある。
飲酒の様に、喫煙による血中ヘモグロビンの一酸化炭素親和性を測定出来れば類似の事故は再発防止できるかもしれない。しかしあまり現実的とは思えない。それよりは、今回の事故で見つかった「誤操作」のリスクを解消する対策の方が有効だと思うがいかがだろう。
この事例では、副操縦士の人為ミスは「情報の誤り」「認識の誤り」「判断の誤り」「行動の誤り」の内の「行動の誤り」に分類される。
「行動の誤り」を防止するためには、
・行動そのものを取りやめる。
・行動の誤りを誘発する要因を排除する。
という対策が考えられる。
- 行動そのものは取りやめる対策
記事から判断すると、客室の酸素濃度が低下すると自動的に高度を下げる機能が装備されているようだ。この機能を外してしまうと本当に空調設備の故障が発生した時に困る。
上空では客室空調設備の停止ができないようにインターロックをかけておく。
上空で意図的に客室空調を止める必要がなければ、この対策は有効だろう。
操縦室も空調を止める必要があるのだろうか(もちろん喫煙以外に・笑) - 行動の誤りを誘発する要因を排除する対策
「押し間違えた」という人為ミスを誘発する要因を考える。
似ているので押し間違える。
近くにあって一緒に押してしまう。客室設備の操作盤と操縦室内の操作盤を分ける。
スイッチの色・形を客室系と操縦室系で別にする。
などが考えられる。
操作盤の配置変更は、難しくてもスイッチの色・形の変更は現場レベルでも可能だ。
航空機会社の新機種設計にこのアイディアを取り入れれば未然防止となる。
我々製造業でも、職場での喫煙が重大な事故原因となる可能性がある。
工場そのもの、設備、従業員に甚大な被害が発生するだけでなく地域社会にも被害は拡大するだろう。
このような重大リスク対策を従業員のモラルだけに頼っていても良いだろうか?
このコラムは、2018年7月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第694号に掲載した記事です。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】