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台湾・韓国企業の夜逃げ

香港日本商工会主催のセミナーで香港工業会のスタンレー・ラウさんのスピーチを聞きました。

短い時間であったので概要のみでしたが、台湾企業の「夜逃げ清算」はベストソリューションだと冗談をおっしゃっていました(笑)

私のセミナーでは「夜逃げ」は推奨しませんが、もっと事例を交えて具体的な戦略のお話をしました。

スタンレー・ラウさんのスピーチにご興味を持たれた読者様があったようなので、もう少し詳しく説明することにする。

毎年労働者の最低賃金が上昇し続けている。その上昇幅は十数%である。
今年の電機労連の賃上げが1000円だからその絶対額でも華南地区の賃金上昇のほうが大きい。

また中国政府の政策変更により、ローテク産業に対し「来料加工」の優遇政策が取り消されている。これにより今まで優遇を受けていた税金還付がなくなる。

追い討ちをかけるように元高、材料費の高騰である。

このような経営環境の悪化に経営を継続できなくなる工場が増えてきた。
工場をたたんで、もっと労務費の安い中国内陸やベトナムに転出しようにも今年から施行されている「新労働契約法」によりままならない。
会社をたたむ時に従業員を解雇することになり、従業員の勤務年数にあわせて「経済保証金」を支給しなければならないからだ。現有の設備を売り払ったところで、「経済保証金」がまかなえない。

そんな窮地に陥った企業が夜逃げをしているのである。
生産設備も、原材料、完成品もそのままにしてある日突然経営者が姿をくらませてしまう。

日系の企業では考えられないことだが、台湾、韓国系の企業で夜逃げをしてしまうところがでている。

これで一番戦々恐々としているのが、中国のローカル政府である。
「来料加工」という制度は、工場には法人格がなく、鎮などのローカル政府が建物と従業員を来料加工廠に貸していることになっている。従って夜逃げをされてしまうと、労働者に経済補償金を払わねばならないのは、ローカル政府なのだ。


このコラムは、2008年7月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第42号に掲載した記事です。

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勝てる戦略

谷、準決勝で敗れる 五輪3連覇ならず

 柔道女子48キロ級準決勝で、谷亮子(右)はドゥミトル(ルーマニア)に敗れる

北京五輪は2日目の9日、五輪3連覇を目指していた柔道女子48キロ級の谷亮子(トヨタ自動車)が準決勝で敗れ、3位決定戦に回った。

(asahi.comより)

  ジムで運動をしながら実況中継を見ていたが、明らかに格下の選手に負けてしまった。大変残念な結果になった。

ドゥミトル選手は「負けない作戦」で戦っていたように見える。自ら組まない。
相手に組ませない。こういう試合を見ているとフラストレーションがたまる。

一方われわれの戦いの場である世界の工場中国の戦況はどうだろうか。
「最低賃金の上昇」「新労働契約法の施行」「原材料高」「元高」不利な状況がそろっている。今までどおりの戦略で戦っていては必ず負ける。

雇用コストの上昇を上回る生産改善を狙う。
原材料・元高に負けない付加価値を生み出す。

「勝てる戦略」を持つ必要がある。


このコラムは、2008年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第第46号に掲載した記事です。

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モノ造りの力

 このメルマガで何度も「モノ造りの力」ということをお伝えしてきた。
先日テレビ朝日の番組でFAMZONという婦人靴ブランドを紹介しているのを見た。ヒール部分を交換できるパンプスをデザインし、人気になっているそうだ。気分によってヒールの色や形を変える、出かけるシチュエーションに合わせてヒールの高さを変える、そんなアイディアが多くの女性に受けているのだろう。

同社のホームページを見ると昨年6月に100足限定で販売開始、9月に正式販売後数日で在庫がなくなり販売停止、11月に再度販売開始している。

生産上の問題でもあったのだろうか?
番組では1/100mmの精度が必要だと紹介していた。
勘合部分は金属をインサート成形しているので、精度に問題はないはずだ。
多分靴底とヒールの接触部分の平面度精度が1/100mm必要になるのだろう。

このヒールを生産しているのは、カメラ部品を生産している町工場だ。
元々高精度の部品を生産していたのだろう。それでも量産をするのに苦労があったようだ。

アイディアを形にする、デザインを実現するためにはモノ造りのブレイクスルーが必要になる。

ノートPCのボディをアルミ合金にするために、Appleは工場にNCマシンを何台も並べた。これはあまり美しいモノ造りの力ではないが(笑)MacBookProのキーボードタッチは他社のNotePCとは別次元だ。

誰かが頭の中に描いたモノ、誰かが図面の上に描いた線を実現するのは、現場の匠によるモノ造りの力だ。


このコラムは、2018年4月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第651号に掲載した記事です。

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モノ造りのプライド

 日本で購入したスティック糊を開封した。
購入した時には気がつかなかったが、先日開封した折に思わず「すげぇ~」と声が出てしまった(笑)

中国のモノ造り現場にいるとがっかりすることが多い。

「見えない部分の品質」
「中国的モノ造り現場」

見えない部分はどうでもいい。製品説明書がくしゃくしゃに入れられている。
そんな中国的製品を見慣れてしまった者にとって、衝撃的な体験だった。

衝撃的な感動を受けたスティック糊はスティックのお尻の部分にT字型の紙片が差し込まれていた。T字の横の部分が包装袋の幅と同じ長さになっている。
つまりこの小さな紙片は円筒形のスティック糊が包装袋の中でくるくる回ってしまわないように回転留めの役割を果たしている。

店頭に陳列した際に、お客様に対してスティック糊が「そっぽを向く」という失礼がないように、いつも正面を向くようにしてあるわけだ。

こういうこだわりを、「モノ造りのプライド」と私は言いたい。
コストや手間より優先するモノ。それがプライドとかこだわりというモノだ。


このコラムは、2018年12月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第755号に掲載した記事です。

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渾水摸魚

 húnshǔi:水が濁っている間に魚を捕る。
どさくさに紛れて利益を上げる。と言う意味の中国成語だ。

武漢封鎖中の2月上旬。
中国ではマスクが足りず、マスクの争奪で傷害事件が発生するほどだった。BYD、富士康など全く異業種がマスクの生産を表明した。
日本向けに出荷予定のマスクも輸出許可が出ずに倉庫に滞留。真偽は判らないが、国内需要に回されたのではなかろうか?コロナ禍真っ最中、そんな状況だった。

最近はマスクの増産も進み、海外に出荷する余力も出てきたようだ。

「中国、マスク輸出外交に綻び 粗悪品多く許可制導入」

マスクなどの医療物資を援助した国は127カ国に達するそうだ。しかしオランダやスペイン、フィンランドなどで粗悪品が大量に見つかっている。

そのため中国当局は4月1日から輸出企業に許可制を導入し、10日からマスクなど医療分野に厳格な製品検査や申告を義務付けた。その結果、4月1日から13日までに、マスク3,165万枚、防護服50万着、ウイルス検査キット118万個、人工呼吸器677台で品質基準に適合していない製品などが見つかったため没収している。

20世紀末から中国の生産工場を指導しているが、相変わらずだなぁと感心する。
儲かりそうだと思うと、果敢に参入する。石橋を叩いて壊す日本人とは対極のチャレンジ精神だ。
しかし第三者の検査で不良をリジェクトするようではダメだ。モノ造りの基本的な考え方や技術を磨かなくてはならない。

周辺技術の重要性


このコラムは、2020年4月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第969号に掲載した記事です。

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アビガンの生産

 「アビガン原料、中国頼み 政府の備蓄3倍目標に盲点」

日本企業が開発したアビガンが新型コロナウィルス感染症治療の有効性を期待されているが、国内の備蓄を増やす目処が立たないと言う。
その原因は

  • 原材料の生産を中国に依存している。
  • 新型コロナウィルス感染症の治療には、インフルエンザ治療の3倍必要。
    200万人分の備蓄では不十分。

原材料を国内生産するためには、環境対応にコストがかかりすぎる。そのため環境規制のゆるい中国に生産を移管してしまっている。

以前メールマガジンでこんな記事を書いた。

「日中モノ造りの発展」

日本も中国も製造業の出発は、低コスト生産力から出発している。その後日中の発展を分けたのは、製造力を磨いた日本と、高度生産設備を手っ取り早く先進国から導入した中国の戦略の違いだ、と言う主旨だ。

アビガンの開発は高い技術力が必要だったはずだ。しかしアビガンは海外での基本特許が切れていると言う。中国では原材料からアビガンを生産できる。中国でもアビガンは必要だ。日本に原材料を輸出する余裕はない。

多くの局面で中国の技術力は日本を凌駕し始めている。
このままでは、日本は中国の下請けに転落するのではなかろうか。日本の環境規制を緩くすることは不可能だろう。制約を嘆いても何もならない。制約は進歩のジャンピングボードと考えたい。


このコラムは、2020年4月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第969号に掲載した記事です。

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20世紀型モノ造り

 先週は久しぶりに「無料工場診断」で中国民営企業を訪問した。
昨年は大きなプロジェクトが2件入っており、無料工場診断に出かける時間が取れなかった。そんな訳で久しぶりの無料工場診断訪問となった。

この企業は、新興市場向けの電子製品を大量に生産している。
ベルトコンベアに大量の作業員を配置し生産する方式を「20世紀型モノ造り」と呼んでいる。名称は私の勝手な定義なので、一般的に通用するかどうかは分からないが、同一機種を大量に生産する方式と考えていただければ良い。

それに対して「21世紀型モノ造り」は、多品種少量生産に適応したモノ造りだ。
2001年から切り替わったと言う意味ではないが、顧客の要求が多様化した時代に適応するために進化して来た生産方式だ。日本では20世紀末から「21世紀型モノ造り」に替わって来ている。

この企業の経営陣は、次の問題を抱えていると認識している。

  • 離職率が高く作業者が定着しない。
  • 現場監督者の能力が足りない。

解決策として「現場監督者研修」を研修企業に依頼して来た。たまたまこの研修企業が我々のパートナーだったので、研修講師と一緒に我々も工場診断に立ち会う事になった。しかしこの企業の問題は監督者の研修だけでは解決困難だろう。監督者の研修で作業員の離職率を下げられるとは思えない。

現場診断により、以下の点を確認した。

  • 離職率は1年で現場作業者全員が入れ替わる高水準。
  • 月例の品質会議の資料を見ると、重大不良発生の原因が「作業不良」であり、その対策は「作業者の再指導」「該当作業者に罰金」となっている。

では21世紀型モノ造りを導入すれば問題が解決するかと言うと、多分無理だ。
高離職率のまま21世紀型モノ造りを導入すれば、更に混乱するだけだろう。
作業者は、採用条件の月給がそこそこ良いので応募して来る。しかし給与条件は毎日10時間労働の残業代が含まれている。新規採用者は1週間程働いてそれに気がつく。短期間で離職する者が多い。

この企業に問題解決の方策がないかと言うとそうではない。
多くの日系企業は、20世紀型モノ造りでも結果を出して来ている。離職率が高いので、作業工程を分割し短期間で作業習熟出来る様にする。20世紀型モノ造りはこのような活用が可能だ。

この企業には以下のアドバイスをした。

  • 生産効率を上げて残業時間を減らす。
     具体的には、50人1ラインの編成を30人1ラインとする。現在7ラインの稼働を10ラインとすれば、現状の生産量はほぼ確保出来る。
     その上で作業改善をして編成効率を上げれば生産効率が上がる。人数が少ない方が、編成効率を上げやすくなる。
    生産効率が上がれば、残業なしでも同じ給与を払えるだろう。
  • 直行率(現状96%)を上げる。
     電子製品の組み立てでは初回量産時に直行率95%程度は達成可能だ。この状況から、改善を継続し3ヶ月以内に直行率99%以上になる様に初期流動管理をする。改善のコツは高速で改善を回す事だ。不良品を放置し、まとめて不良解析・対策をするのではなく、不良発生時に即解析・対策を繰り返す。
  • 不良解析の能力を上げる。
     不良解析を「作業ミス」で終わりにしない。なぜ作業ミスが発生するのか原因を突き止めなければ有効な対策は打てない。
  • 新人作業員の作業訓練効率を上げる。
     TWI(企業内訓練)を活用すれば、作業訓練効率を上げるだけではなく、監督者と作業員の信頼関係が出来、離職率も下がるはずだ。

以上を3ヶ月程度繰り返せば、生産効率は1.6倍以上になると試算した。
ここからまとめ造りを止めるなど、全体のレイアウト変更を含む大掛かりな改善をして行けば21世紀型生産方式に近づいて行くはずだ。

今回の工場診断では、「枯れた製品」を新興市場向けに再活用する、という気付きを得る事が出来た。まだ物が十分行き渡っていない新興市場に対し既に原価償却が終わっている製品を生産すれば、そこそこ利益が得られるだろう。今までは、中国で生産した物を日本を初めとした先進国に輸出する、中国市場で販売する、という戦略の日系企業が多かったと思う。アフリカ、南米などの新興市場向けに、過去の製品を再活用する事を検討するのも良いかも知れない。


このコラムは、2017年5月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第529号に掲載した記事です。

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米国製造業の国内回帰

コロナ禍で製造業の国内回帰が進んだ米国で、浮き彫りになった「現実」

ワイヤードの記事だ。もともと製造業の街だったミネソタ州ダルースでマスクの生産をしようと中国から設備を購入。生産を開始するが、センサーの故障でセンサーを中国から取り寄せる時間は操業ができなくなる。中国と米国の労働安全の認識の違いにより、危険なメンテナンス作業を強いられる。など多くの問題を克服しなければならなかったそうだ。

一度失われたものづくりの文化は、一社が努力しても簡単には復活できない。ということだろう。日本には伝統的にものづくりの技術を尊重する文化があるなどと安心できるだろうか?

経営効率を高めるために、現場作業者を派遣社員にして現場のものづくり技術を霧散させてしまったことは記憶に新しい。最近でもマスク不足のため中国のマスク生産設備を輸入した、というニュースを聞いて驚きと失望を感じた。

日本には創業1500年の企業がある。伊勢神宮の20年おきの遷宮を支えるため燕三条の企業が「和釘」を復活させた。など古来からものづくりの技術を守る文化はある。しかし伝統的建築に関する分野だけでは安心できない。

痛くない注射針の岡野雅行さんの岡野工業は引き継ぐ者がなく廃業したと聞いている。日本のものづくり文化が危機に直面しているのではなかろうか?


このコラムは、2021年7月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1167号に掲載した記事です。

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自律型人財

自律型人財とは

  • 自分でやることを決められる人財
  • 決めたことを実践できる人財
  • 仲間を巻き込みチームとして働くことができる人財

という定義で考えてみた。

自律型人財を社内に育成できれば、まずは業務効率が上がるはずだ。
つまり指示をしなくても、組織の目的、方針、目標から自らの役割、仕事を決定する能力がある。
そしてそれを実践する能力があり、定型業務を担う人材を巻き込んで成果を上げることができる。従って自律型人財のn倍の成果を上げるはずだ。

その能力をさらにブレイクダウンすると、組織の方針・目標から解決課題を列挙し、優先順位を決定。現状を把握し課題解決の達成目標を設定。
仲間を巻き込んで課題達成を阻害している原因を解明、原因を除去する対策、直接課題達成する方法を検討。この過程を巻き込んだメンバーと一緒に実施。目標を達成するまで、改善を繰り返す。

この様な活動を通して、巻き込んだメンバーの能力を上げ、定型業務人材を自律型人財に変換していく。定型業務人材は、この過程で自己成長・問題解決の達成感を得て定型業務人材から自律型人財に成長する。

この様な正帰還が働くと組織の力はあっという間に増強されるはずだ。

私たちが実践しているQCC道場は自律型人間を増やし、組織力を上げるのを目的としている。


このコラムは、2021年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1182号に掲載した記事です。

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派遣をきるな!

 82号のコラム「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るあるメーカーOB」にご感想をいただいた。

Z様からのご投稿
 「『うちは派遣を切りません』と言え」には、反論、大いにあります。派遣社員とは、本来、景気が悪くなるなど、生産を縮小するときには、きれるもの、きられるものだと思います。そういった正社員とは異なるポジション(雇用形態)として存在価値があるものです。
会社のために派遣社員も貢献してきたのも事実です。しかし会社のために貢献しているのは、社員だけでなく取引先(様々なサプライヤー、販売代理店・・・・・)も同じことです。
正規社員と派遣社員では、雇用体系が違うように給与体系も違います。高校新卒の場合、短期的には派遣社員の方が高収入であることは、少なくありません。多くの場合、結果として低賃金なだけで、本来は正規社員と同じ能力、同じ仕事であれば、リスク分高給でなくてはならないのです。
 多くの派遣社員は言います。「本当は正社員になりたい。」その気持ちはわかります。しかし、それと派遣社員の雇用が不安定であると言う処遇は別物です。これを取り違えると「派遣切り=悪」の図式になってしまいます。
「××の正社員になりたい。」と言う気持ちだけに肩入れしすぎると、多分優良企業は、数年すると過剰雇用のため没落する図式ができてしまいます。
 「ものづくり」に関して現実的に考えると、派遣社員の比率を上げるということは、それだけ正社員への負担は重く、正直なところ正社員は誰でも務まる職種でなくなります。
 以前工業高校を卒業して、現業に配属になった新入社員に話したことがあります。「以前なら君らの内のひとりが班長になればよかった。あとのメンバーは班長の指示通り、まじめに仕事してくれればよかった。しかしこれからは違うよ、全員が班長になって、指導や監督をする立場になってもらわなければならない。ただまじめに黙々と仕事するだけの人材を正社員として置いておけない時代になったんだよ。」と。
 かなり冷徹な意見ととられるかもしれません。君はバイヤーとして、ものを買うように人を扱おうとしていると批判されるかもしれません。しかし、僕の反論は、人を扱うようにものを買っています、と。(まったく屁理屈ですね。)
 それであっても、「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るOBのような方を僕は敬愛します。本文を読みましたが、一本筋が通っていますよね。このような方とは、意見が食い違ってもいっしょに仕事できると楽しいですし、勉強になります。

再びZ様からのご投稿だ。

バブル崩壊後に経営者が日本的な経営(長期安定雇用による現場力の向上を目指す)に自信をなくし、アメリカ流の経営手法に盲目的に飛びついたのが、元凶だと思う。

現場の人員を変動経費型にするため、派遣社員、契約社員という需要ができた。需要があるからそれを商売にする会社ができる。と言う訳だ。

派遣会社は安直に人さえ集めれば即経営が成り立つということで、志のない経営者がどんどんそういう商売に参入する。言ってみれば、人を集めて顧客企業に派遣すればそこで現場教育も経験も与えてくれるわけだから、自分達は
人をぐるぐる回しているだけで利益が出る。「モノ造りはヒト造り」の基本が忘れ去られた状態が続いていたわけだ。

またそういう働きかたを選んだ人たちにも責任はあるはずだ。背に腹を変えられなかった人たちもあるだろうが、特に若い人たちが刹那的にその日暮の仕事として派遣労働者というスタイルをとった人たちも有るだろう。

3者共に責任のあることを、人道的な切り口だけで批判したり同情したりするのは意味がない。むしろ口当たりの良い言葉だけで現実を覆い隠す結果になる。


このコラムは、2009年2月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第83号に掲載した記事です。

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